その男、凶暴につき

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&font(#6495ED){登録日}:2019/05/14 Tue 20:26:34
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 9 分で読めます

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#center(){&sizex(5){&font(b){コドモに、見せるな。}}}



*■その男、凶暴につき
&font(b){『その男、凶暴につき(英:Violent Cop)』}は、89年に松竹富士が制作、配給した日本映画。
人気タレントである[[ビートたけし]]の主演、初監督作品として注目される一方で、タレント映画の常識には当てはまらない凄まじいまでの暴力性が話題となった。
本作以降、たけしは本名の北野武名義で映画制作を続けていき日本映画界を代表する一人となる。
本作は、その北野映画の第一作目である。

**主要スタッフ
-監督:北野武
-脚本:野沢尚
-製作:奥山和由
-音楽:久米大作
-撮影:佐々木原保志
-主演:ビートたけし


*【概要】
#openclose(show=元々は、当時の松竹で絶大な発言力を持っていた奥山和由による企画である。){
企画当時、たけしはフライデー襲撃事件後の謹慎が解けてから僅かという時期であり、
相変わらずレギュラー番組を多数抱えるテレビの人気者である一方で、アウトローとしての暗い面の印象を強く残していた頃であった。
これに目を付けた奥山は、たけしを主演としたアクション映画を企画。
これを『仁義なき戦い』で知られる深作欣二に監督させるという方向で進め、たけしサイドも深作が撮るならば…と、忙しいTV出演の傍らに映画の撮影に臨むことを了承した。

…しかし、当事者の深作によれば、奥山が主張する「アクション映画である」という方向性に疑問を感じ、話し合いを重ねている内に深作のスケジュールの方が合わなくなってしまい、已む無く辞退を申し出ることになってしまったという。

たけしの方も、深作が撮るという条件で引き受けた仕事だったことから、代理の監督を立てる方向の話には難色を示し、此方も降板を口にする事態に。

…困った奥山だったが、ここで逆転の発想として、スケジュールをたけしの好きにしていいことを条件に、&font(b){たけし自身に監督を薦める}と、これにはたけしも興味を示し、&font(b){脚本を自由にいじっていいこと}を条件に監督を引き受けた。

こうして、意図せず&font(b){たけしの初監督作品}が決まった。
撮影はたけしのテレビのスケジュールと調整し、一週間置きに撮影された。
現場では、最初こそ芸人のノリを持ち込んでスベってしまったりしていたようだが((芦原誠によると剣道着に身を包んで「 赤胴鈴之助だ!」と突入してきたという。))、
いざ撮影が始まると、殆ど映画を見たことが無かったと語るたけしは、一発勝負が命を信条とする己の芸人としての感性のみで、次々と印象的なシーンを作り上げていき、
撮影を学んだ人間や、現場で育った人間には当てはまらない、斬新な演出や画面構成の妙に、助監督以下のスタッフも先ずはたけしの周りに集まってから直接の指示を仰ぐようになり、完璧にたけし中心に現場が動いていった。
撮影が進む度に次々と脚本も変えられていき、台詞がその都度修正されるどころか、遂には役者に&font(b){アドリブでその場に合った台詞}を求めるようになったという。
尚、たけし自身は初の監督業について「こんな大変な仕事は無い」と溢していたものの、本作の撮影中には既に次回作の構想を口にしており、現在まで映画製作を続けている。

原作となる脚本を執筆した野沢尚は、こうして大幅に内容が変更されたことに反発し、自分の名前をクレジットから外すように求めたものの、たけしの判断なのか、結局は現在でもそのままにされている。
野沢は本作が失敗することを望んでいたものの、願いに反して本作は高い評価を以て業界に迎え入れられることとなり、興行的にも成功と言える成績となった。
かく言う野沢自身も、特にラスト辺りの展開の演出を評価しており、本作を傑作だと認めている。
一方で、本作の成功を「たまたまだ」ともしており、いつかたけしが失敗すると見ていた。((実際に、たけしは興行的には失敗となった映画も少なくない。))
尚、野沢は04年に本作の没シナリオを元に『烈火の月』を刊行。
好きな映画を聞かれた際に、変更前の『その男、凶暴につき』と答える等、後々まで野沢なりの意地があったことが窺える。
また、たけしは本作でのいざこざも踏まえたのか、次作『[[3-4X10月]]』で、たけしの方から野沢に脚本を以来しているが断られており、仕方なく脚本はたけしが自分で書くようになったという。

音楽はプリズム、T-SQUAREでの活動で知られる久米大作が叙情的ながら狂気を孕んだ本作にマッチした楽曲を提供。
また、メインテーマの一つとしてエリック・サティの『グノシエンヌ第一番』のアレンジが用いられている。
久米の北野映画への起用は、現在の所、本作が最初で最後である。

こうして完成した&font(b){抜き身の刃}の様な強烈な暴力性を持ったフィルムに、奥山は『コドモに、見せるな。』というキャッチコピーを付けた。
宣伝上、監督・主演ビートたけしとして売り出されたものの、たけしはクレジット上では監督・北野武。主演・ビートたけし。として分けており、これは以降の&font(b){北野映画}にも基本的に引き継がれていくことになった。
完成した映画には降板した深作欣二の他、黒澤明も称賛を送り、黒澤は“所詮はお笑い芸人が作った映画”という偏見が垣間見えていたマスコミや世間の風潮に反し、逸早くたけしの才能を認めて応援した一人となった。
}

*【物語】
港南警察署の刑事、我妻涼介は暴力や恐喝も用いて行き過ぎた捜査を行う危険な男。
先日もホームレスに暴行を加えたのを目撃した中学生の一人の家に現行犯逮捕もせずに押し掛け、散々に脅して強引に出頭させたのが問題になったばかり。

騒動ばかり起こすので同僚からも距離を置かれている我妻を、新任の署長でエリートの吉成も危険視しており、君の様な刑事が必要だと嘯きつつ、目の上のたん瘤として釘を刺すのだった。

私生活では心を病んだ妹の灯を抱え、自分の居ない間に男を連れ込んだりする妹の行動に心を痛めたりしつつも、鬱屈した怒りを犯罪者にぶつける日々を送っていた。

我妻の唯一の理解者は先輩の岩城。
また、新人の刑事で一見すると情けない印象で周囲くらもバカにされていながらも、実際には中々に有能で、何処と無く掴み所の無い菊地が相棒として付くように。

そんな中、管轄内の港で麻薬の売人である柄本の惨殺死体が発見される。
我妻は、柄本と関係のあった客を車で轢いてまで逮捕したり、売人に過剰な暴行を加えながら情報を集め、麻薬の横流しをしていたのは岩城だと聞かされる。
悩む我妻だが、その矢先に岩城は口封じの為に自殺に見せかけて殺害されてしまう。

菊地の質問には曖昧な返事を返しながらも復讐を誓った我妻は、遂に一連の麻薬ルートの首謀者である実業家の仁藤の許まで辿り着く。
仁藤の子飼いでアッー!趣味で被虐趣味の殺し屋の清弘は、自分達にまで到着した我妻を危険視し、次々に関係者を殺害した上に灯を拉致するのだった。

怒りに燃える我妻は、今や仁藤の手にも余るようになった清弘を強引な嫌疑で署まで呼び寄せ、一人だけで対面して凄まじい暴行を加えた末に銃殺までしようとする。
しかし、菊地や他の同僚達に取り押さえられて未遂に終わり清弘は釈放されてしまう。
この行為については流石に見過ごされずに免職処分が降された我妻だが、吉成のせめてもの温情によって辞職を薦められ、我妻は自ら刑事を辞める選択をするのだった。

…しかし、それでも諦めない我妻は知己の裏ルートから拳銃を手に入れて仁藤の下へ。
清弘の暴走には関知していないとする仁藤を射殺した我妻は、灯の監禁場所でもある清弘のアジトの倉庫へと辿り着くが、既に清弘は連れてきていた仲間達とのトラブルにより重傷となっていた。
しかし、清弘は向かってくる我妻に何発かの弾を撃ち込むが止められず、反対に頭を撃ち抜かれて殺される。
そこへ、監禁されている間に薬漬けにされて犯され続けたことで完全に壊れてしまった灯が現れ、死体となった清弘の身体をまさぐって麻薬を探すのだった。

嫌な物を見る様な目で壊れた妹の姿を見つめる我妻は、無言のままで灯も撃ち殺す。
倉庫を出ていこうとした我妻を、暗闇に潜んでいた仁藤の配下の新開が頭部を撃ち抜き殺害する。
……こうして、狂宴は終わった。

それから暫く後、かつての仁藤のオフィスを菊地が訪れた。
仁藤の後を引き継いだ新開は菊地に金を渡し、菊地に岩城の替わりが務まるのかと問うと、菊地は不敵な笑みを浮かべて余裕だと応えるのだった。

何かを感じた新開の秘書の視線が菊地を追っていくことを捉えた場面で物語は終わる。


*【主な登場人物】

-&font(b){我妻涼介}(ビートたけし)
主人公。
暴力を利用した強引な捜査ばかりをする凶暴な刑事。

-&font(b){我妻灯}(川上麻衣子)
我妻の妹。
精神を病んでおり、長らく施設に入っていた。

-&font(b){菊地}(芦川誠)
新人刑事。生真面目に見えて小洒落たバーに出入りする等、意外な一面がある。

-&font(b){吉成}(佐野史郎)
まだ若い新署長で、発言からキャリア組のエリートだと思われる。
自分の居る一年間だけは我妻に大人しくしていてくれと冗談めかして言っていたものの……我妻を疎ましく思う反面、事情を聞き出す相手として重宝していたような面も。

-&font(b){岩城}(平泉成)
我妻の唯一といっていい、頭の上がらない先輩だが、金が必要だったのか密かに麻薬の横流しを行っていた。
その事実を知った我妻本人に事情を話す等していたものの、その矢先に消されてしまう。

-&font(b){岩城の妻}(音無美紀子)
 
-&font(b){仁藤}(岸部一徳)
実業家として高級レストラン経営をする反面、売人達には知られていないものの、麻薬の密売ルートのトップとして君臨していた。
我妻を懐柔しようともしたものの、自らの理屈の通じない我妻に呆けなく射殺されてしまう。

-&font(b){新開}(吉澤健)
仁藤の腹心。

-&font(b){秘書}(速水渓)

-&font(b){清弘}(白竜)
仁藤の飼っている残忍な殺し屋。
男色趣味者。

-&font(b){柄本}(遠藤憲一)
麻薬の売人。
清弘に麻薬の出所を盾に、より高い地位を望む交渉を行うものの、その最中に殺される。

-&font(b){橋爪}(川上泳)
麻薬の売人。
我妻とも顔見知りで、凄まじい暴力の末に麻薬の出所が岩城であることを話してしまい、清弘に消されてしまうことになる。

-&font(b){清弘の手下}
織田(寺島進)、植田(小澤一義)、片平(佐久間哲)と名前が設定されている。
灯をレイプして薬漬けにするも、追い詰められていく清弘の狂気に反抗しようとしたしたことで殺されてしまう。



この他の主な出演は石田太郎、上田耕一、等。


*【余談】

-準主役級の配役となった芦川誠は、売れない役者としてバイト生活をしていた所を草野球を通じて軍団と知り合ったことが縁でたけしに拾われた。以降、北野映画の常連となると共に安定した役者人生を歩むことになる。また、この後でドラマで大ブレイクする佐野史郎や、芦川と同じく北野映画の常連となると共に映画、ドラマでの活躍が増えていった寺島進も本作では脇役ながら既に起用されており、興行成績に関わらず「後に売れる俳優を見出だす」北野映画のジンクスは既に発揮されているのかもしれない。

-2012年の英映画『セブン・パラダイス』で主人公が見ているのが本作。監督のマクドナーが北野映画の大ファンであることから。



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- 《その子供、凶暴につき》の元ネタ化  -- 名無しさん  (2019-05-14 20:34:09)
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