ゾンビ(映画)

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ゾンビ(映画) - (2020/04/25 (土) 20:19:54) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/01/27(金) 01:43:43
更新日:2023/05/14 Sun 17:02:44
所要時間:約 6 分で読めます




ゾンビ(原題:Zombie/Dawn of the Dead)


概要

1978年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督のホラー映画。

現在でこそゾンビ映画の巨匠として有名だが、当時はまだ無名だったロメロ監督の名を世に知らしめた出世作である。*1

ホラー映画のクリーチャーとしてのゾンビという存在を世界中に認知させるのに貢献した作品でもある。

ロメロの才能や可能性に注目したイタリアのホラー映画界の大物、ダリオ・アルジェント監督*2がロメロにアプローチを掛け、彼をサポートする代わりに映画を公開する権利の一部を所有する…という体制のもとで製作された。

制作された時代が時代な為、特殊メイクは若干稚拙だが(明らかに絵の具な血、作り物くさい食われた脚など)、腹を食い破られるシーンは今なお見応えがあり、かなりリアル方向にグロい。



ストーリー

前作にあたるナイト・オブ・ザ・リビングデッドから三週間が過ぎた。
全米中で蘇った死体が人々を襲い、襲われて死んだ者もまた動く死体となって生きた人々を襲うという、最悪の事態を迎えていた。

テレビ局のスタッフであるフランは恋人のスティーブンと共に局のヘリでの脱出を決意。
スティーブンの友人であり一緒に脱出を誘われたSWAT隊員のロジャーは、相棒のピーターを連れて一行に合流し、四人は共に旅立つ。

逃避行の最中、蓄えの乏しい物資を求めてショッピングセンターに辿り着いた四人は、このショッピングセンターをひとまずの拠点とする。

入口を封鎖し、内部のゾンビ達を掃討する事で安全地帯を確保する一行だったが、その作業中にロジャーがゾンビに噛まれて負傷してしまう。

ゾンビに噛まれたロジャーの容態は日に日に悪化していき、看病の甲斐も無く遂に死亡。
他のゾンビの様に徘徊したくないという相棒の遺言通り、ピーターはゾンビとなったロジャーを射殺するのであった。

その後、三人となった一行は安寧な中でも満たされない閉塞感を感じながら、ショッピングセンターでの生活を続けていたが、ある日暴徒と化した一団がショッピングセンターを発見した事で、事態は再び急展開を迎える。

暴徒達がショッピングセンターの扉をこじ開けた事でゾンビ達が再び建物の内部に雪崩れ込み、スティーブン達と三つ巴の戦いが繰り広げられる。
ピーターの活躍により暴徒達の撃退には成功するものの、暴徒に撃たれて負傷したスティーブンはゾンビに襲われて死亡。

ゾンビと化したスティーブンが隠れ家に大群を連れて迫った為、脱出せざるを得なくなったピーターはスティーブンを射殺し、フランだけを逃がし自殺しようとするが、結局思いとどまりフランと合流。
なんとか飛び立つも燃料の残り少ないヘリという絶望的な状況。
それでもピーターは笑う。

「いいさ、いけるところまで行こう」



登場人物

◆フライボーイ(スティーブン・アンドリュース)

演者:デビット・エンゲ
一応主人公*3
フランの恋人であり若干ヘタレ。実は家族がおりフランとは不倫の関係。
本業は天気のリポーターで、ヘリが操縦できるのも恐らくは仕事柄。アホっぽい偽警官供にも顔が知られているなど割と有名人らしい。
ヘタレなのに行動力だけはあり、暴徒が自分達の拠点であるショッピングセンターの品物を略奪するのを見ていられず発砲。
やり過ごそうとしたピーターの作戦をご破算にした上、銃撃戦から逃れてエレベーターの上に隠れる。
しかし暴徒に発見され腕を撃たれ、追い詰められたエレベーターの中でゾンビに襲われてしまう。*4
死ぬ間際に自分を襲ってきたゾンビを一人で撃退したが、そこで事切れてエレベーターに閉じ込められた。
数時間後ゾンビ化し、自分を待っていたフランとピーターのもとにゾンビの群れを引き連れ隠れ家の入り口を解放してしまう。
最後は屋上に繋がる部屋で待ち構えていたピーターに射殺される。

◆フラニー(フランシーン・パーカー)

演者:ゲイラン・ロス
ヘリ組の紅一点。テレビ局員の女性でスティーブンの恋人であり、彼の子供を妊娠している。
妊婦なのに喫煙者だったり、ベッドシーン(正確には事後シーン)があったりと色々とツッコミ所がある。
煙草1本すらあげようとしない冷めた性格だが、中盤からはヘリの操縦や銃の扱いも積極的に覚えていき、開き直った女は男より精神的に強い事をうかがわせる。
とはいえ、流石にスティーブンが死んだかもしれないと聞かされた時は、咄嗟に銃を持ってゾンビの群れに突入しようとした。
ピーターの制止を受けて数時間待つが、結局恋人の変わり果てた姿を目撃し、ヘリでいずこかへと飛び去った。

◆ロジャー・デマルコ

演者:スコット・A・ラインガー
スティーブンの友人で、メンタルの浮き沈みが激しいフィラデルフィア市警のSWAT隊員。
ショッピングセンター封鎖作業の途中でゾンビに喰われかけた事が原因で頭のネジが飛ぶ。
その後、ゾンビを見くびって調子に乗ってDQNじみた行動をしたせいで本当に噛まれてしまう。
噛まれた後はカートに乗っている。後にようやく冷静になったものの、ゾンビ化してしまい、ピーターに射殺される。
死後はモール内にあった観葉植物の土の下に埋められた。

◆ピーター・ワシントン

演者:ケン・フォリー
黒人のSWAT隊員。モト冬樹ばりにちょっと額が広いナイスガイ。
行動力、判断力、戦闘力の全てが優れた男であり、彼の提案するプランにはほぼ間違いがない(ロジャーやスティーブンが足を引っ張る事で毎回ご破算になるが)。
しかし、しばしやるせない状況に心を痛める繊細な一面も持つ。
ゾンビの脅威からロジャー、スティーブンを救えなかった事を後悔しており、ラストではフランだけ逃して自殺をしようと考えていた。
しかし最後の最後の土壇場で「行けるとこまでいく」と思い留まり、ゾンビを蹴散らしてフランと共にヘリで逃げた。*5
クレジットでは大体2番手3番手だが、本編を観ればわかる通り劇中では最も活躍しており、事実上の主人公である。Wikipediaでもキャスト欄はピーターが一番上だったり。

テレビディレクター

演者:ジョージ・A・ロメロ
序盤でテレビ局内で情報が錯綜する中、我らがロメロ監督が試行錯誤している技術者として登場していた。
スタッフクレジットが出ている場面で10秒ほど、フランとスティーブンが奥で報道を傍観している手前の方でインカムを付けたイケてる髭面七三分けがロメロ。
ちなみにその隣にいる中年女性は奥さんである。

ウーリー

演者:ジム・バフィコ
キチでガイなSWAT隊員。序盤からいきなり登場するヴィラン
強い差別意識を持ち、アパートに立てこもったプエルトリコ人たちを犯罪者・一般住民の区別をせずに無差別に射殺するなど凶悪。
最期はピーターに射殺された。
ゾンビが登場する前に物語から退場したにもかかわらず、そのイカレっぷりから視聴者に絶大なインパクトを残す。

スレッジ&ブレイドと暴走族

演者:タソ・N・スタブラキス&トム・サヴィーニ
本作のヴィランズ。ショッピングセンターを襲った奴ら。集団で武装していたため生き残ってきたっぽい。
だが、ショッピングセンターの物を奪うのではなく、DQNの如く破壊しまくると何がしたいのかわからない。特に血圧計に執着して食われてる奴。
結局多数の犠牲者を出した挙げ句に去っていく。お前ら本当に何がしたかったんだ。
リーダー格のスレッジは呼び名の通りスレッジハンマーを武器にゾンビ相手に無双し、ブレイズと共にピーターを苦しめるがピーターに撃たれた後ゾンビに食い殺され肉片と化す。
サブリーダー格のブレイズも呼び名の通りマチェーテ、サーベル、ボウイナイフといった複数の刃物を武器にゾンビ相手に無双し、スレッジと共にピーターを苦しめるが、ピーターに撃たれプールに落下して死亡する。後に「ランド・オブ・ザ・デッド」でゾンビ化した姿で再登場し、シリーズ初の再登場キャラクターとなる。
演じたトム・サヴィーニはロメロ映画の第一人者で、特殊メイクからキャスト、果てはスタントマンまでやってる超人。

ゾンビ

人間が一度死に、謎パワーで蘇ったもの。
死因を問わず人間は死ねばゾンビになり、ゾンビに噛まれると確実に衰弱死し、結果としてやっぱりゾンビ化する。ピーター曰く噛まれれば最長でも3日で死に至るとのこと。
動きは緩慢だが、執着心が強く、一度目にしたものはドアをこじ開けても追い続ける。
またある程度生前の記憶も持つらしく、ゾンビ化したスティーブンは他のゾンビの目を欺き続けた偽装された隠れ家への入口をあっさり突破した。
群れで活動する性質があることも言及されており、誰かが移動すると周囲のゾンビ達も付いてくる傾向にある。
恐らくモールにゾンビが集合していたのも、生前の記憶からモールに引き寄せられた連中が他のゾンビ達を巻き込んで集団化したためと思われる。
知性はないがはしごを登れるらしく、ラストシーンの屋上へはわらわらと登ってきている。
弱点は頭で、胴体から切り離したり脳を損傷させるたりすると活動停止する。
また、足元がフラついているせいか転びやすく、2~3体程度なら非武装でも押し通れるほか、バーナーや発煙筒など火を近づけると逃れようとする。
詳細は当該項目参照。


リメイク

2004年には本作をメイクしたドーン・オブ・ザ・デッド(映画)(原題:Dawn of the Dead)が公開されている。

ただし、リメイクと言っても登場人物は全て一新されており、物語も原作が主眼に置いていた登場人物同士のドラマより、人間とゾンビの戦いがメインとなっている。
ショッピングセンターが舞台という点以外は原作とは完全に別物と考えるべきだろう。

ちなみにピーターとロジャーの人がチョイ役で出ている。



ショッピングモール

本作こそがゾンビ作品におけるショッピングモール(劇中ではショッピングセンターと呼ばれている)の扱いに関するテンプレを作ったと言っても過言ではない。
リメイク版のドーン・オブ・ザ・デッドを始め、ゲームのデッドライジングシリーズなど、本作に影響を受けたゾンビ作品は数知れず。

実は撮影で使われたモールに本来銃砲店は無く、他所で撮った別撮り映像を編集でモール内にあるように誤魔化している。現実と同じ仕様だったら多分詰んでた。
また、営業中のモールをそのまま使っているため、撮影可能な時間帯が深夜から早朝の営業時間外に限られるなどかなり苦労があった模様。



余談

ゾンビ役は一般からエキストラで集められたが、当時は失業率が高かったこともあり人員が殺到したらしい。

本作は、先述したようにロメロとアルジェントが提携して製作した関係で、多くのバージョン違いが存在する。
基本的には「英語圏ではロメロが監修したバージョンが、非英語圏ではアルジェントが監修したバージョンが公開される」という取り決めがなされており、実は「ゾンビ」という題はアルジェントの考案によるもの(ロメロなら「ドーン・オブ・ザ・デッド」)。

まず、基本としてロメロ自身が手掛けたバージョン。
アルジェントが監修したバージョンはアクション的な魅せ場を優先した編集がなされているほか、彼が手掛けた映画でお馴染みのロックバンド・ゴブリンが音楽を手掛けており、不気味ながらもポップで耳に残る曲調は評価が高い。
また、一部の残酷シーンをカットしたりボカしたりした北米バージョンも存在する。

日本ではアルジェントのバージョンをベースに更に編集を加えたものが公開され(そのため、初公開当時の宣伝では「アルジェント監督作品」として扱われていた)、死者が蘇ったことに対する理由付けとして、冒頭で惑星が爆発するシーン(この爆発により死者を蘇らせる光線が地球に届いた…というもの)が独自に付け加えられている。
このバージョンは現在では映像が現存していない(行方不明になっている)が、よく訓練されたゾンビマニアの協力を得て*6、日本初公開版を再現したバージョンが2019年に一部の映画館で公開された。

当時の地上波ロードショーでは更にカオスな事態になっており、情報が乏しかった&当時はまだおおらかな時代だったこともあって、テレビ放送の尺に合わせるために細部を大幅にカット・日本語吹き替えの独自解釈・アルジェントの別の映画からBGMを拝借して編集したというこのバージョンは「サスペリア版」と呼ばれて一部で語り継がれている。




地獄が満員になると死者が歩き出すのさ…



追記・修正はエレベーターの中でゾンビに襲われてからお願いします。


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