ランド・オブ・ザ・デッド

登録日:2020/1/19 (日曜日) 09:22:00
更新日:2020/02/17 Mon 00:10:42
所要時間:約 10 分で読めます




「ランド・オブ・ザ・デッド」とは、2005年に公開された、アメリカ・カナダ・フランスの合作ゾンビ映画である。
監督・脚本はゾンビ映画の開祖たるジョージ・アンドリュー・ロメロ
特撮はトム・サビーニの弟子グレッグ・ニコテロ。


概要

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」「死霊のえじき」と世界観を共有している、シリーズ四作目。
上記のゾンビ映画の正統シリーズである初期ロメロ三部作からのまさかの続編(・・・・・)ということでマニア層のファンを驚かせた。
だが既に世間に溢れていた粗製乱造も含むゾンビ映画の氾濫に飲まれた部分もあり、決して注目を集められた作品とはならなかった。

……しかし、下記の通り本作に於いてもジョージ・A・ロメロのゾンビ観が貫かれており、単なるモンスターや舞台設定に留まらないゾンビのキャラクター性と世界の変容が描かれている。

ゾンビ発生により文明が崩壊した世界で人間の狂気や愚かさを描いていた前三部作と違い、本作ではゾンビが蔓延した世界ながら人間達が過去作とは比べ物にならないほど文化的な生活をしており、ヨーロッパ中世時代並の格差社会が描かれる。

また、過去作でのゾンビは悪意を持たない災害の一種としての側面が強かったが、本作ではヒエラルキーの最下層にいる虐げられし者達の象徴として描写されているのも大きな特徴。

ただし、ロメロ作品では時系列が降る毎に最初は元が人間でおりながら野生動物程度の知能しかなかったゾンビが徐々に“新しい種”として人間とは別の生命体へと成熟していく様子が描かれてもおり、本作でのゾンビの姿は前作(「死霊のえじき」)を象徴する“学習させられたゾンビ”であるバブの姿から更に発展した描写である。*1

ストーリー

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」から三年後。人間達はペンシルベニア州ピッツバーグ市のダウンタウン、通称「ゴールデントライアングル」で暮らしていた。ここは二方を川(アレゲニー川とモノンガヘヒラ川)に、一方を電気柵で囲まれゾンビを恐れる必要が無い理想的な立地であり、少数の富裕民は高層ビルフィドラーズグリーンで優雅に暮らし、大多数の貧民達はスラムに追いやられていた。

ある日、自我に目覚め一際高い知能と感情を持つゾンビ「ビッグ・ダディ」は、物資調達のために遠征してきた傭兵達によって仲間のゾンビ達が一方的に虐殺される光景を目の当たりにし、復讐を決意。フィドラーズグリーンを目指し、ゾンビの大群を従えて行軍を開始する。

一方で傭兵の一人、チョロ・デモーラは貴重なワインを賄賂に街の最高権力者ポール・カウフマンに擦り寄り自分をフィドラーズグリーンに住まわせるよう頼むが、拒否されたため、報復として対ゾンビ用装甲車デッドレコニング号をビッグ・ダディ達の襲撃によるどさくさに紛れて強奪し、500万ドルを要求。断ればミサイル攻撃すると脅す。

それを受けたカウフマンは傭兵部隊隊長のライリー・デンボらにチョロ暗殺を命じるのだった

三つ巴の「革命戦争」が始まる…

デッドレコニング(死の報い)

大型トラックを改造して生み出された対ゾンビ戦用装甲車。
多数の重火器に加えて迫撃砲やミサイルポッドや花火発射器も備わっており、ゾンビが相手では過剰とも言える無敵の強さを誇る。

主要登場キャラクター

物資調達部隊

デッドレコニング号をはじめ、バイクやジープといった乗り物、そして大量の銃で武装した傭兵達で構成された部隊。
全員、スラム街で生活する貧民である。
ストレス発散の捌け口としてゾンビを利用しており、必要以上にゾンビを虐殺したり、逆さに吊るして射撃の的にしたりと人間の残虐性を露にする。
ゾンビ』のヒャッハーな暴走族と本質的には大差ない。

ライリー・デンボ

演者:サイモン・ベイカー
物資調達任務のために雇われた傭兵達の隊長。一応主人公だが影が薄い。
頼れる賢いナイスガイで人望が厚く、仲間は多い。世界が一変するまでは幸せな人生だった。
ちなみに弟がいたがゾンビに噛まれてしまい、一時間も掛からずゾンビ化した事を語っている。*2
スラムの盛り場で買った車を渡そうとしなかったチワワと争い、銃撃戦の末に射殺。
さらに見せ物としてゾンビの餌にされそうになっていたスラックを救ったことで、治安維持部隊に逮捕される。
その後、カウフマンにより釈放され車と武器を条件にチョロ暗殺を命じられる。
しかしそれは罠で、カウフマンはライリー諸共反乱分子を始末するつもりだった。
同年の映画では洋風貞子に殺される社長役。ついてねえな。ベレッタ92FSを所持。


チャーリー・フック

演者:ロバート・ジョイ
ライリーの部下。スナイパーの達人。顔の半分が火傷により爛れている。
この火傷の原因である火事の際、ライリーに救われた事から彼に恩義を感じている。
ちなみに天国の存在を未だに信じていて、自分のことを「いてもいなくても一緒なやつ」と自嘲している。
傭兵仲間からは馬鹿にされているが、気が小さいので言い返せない。しかしライリーは誰より彼を信頼している。
スラックの背後のゾンビを間一髪で倒したが、後に背後から迫る花嫁ゾンビをスラックが撃った際は「僕はケガさせなかったぞ!」と左耳を押さえて痛がっていた。
来世ではエイリアンとプレデターの戦いに巻き込まれている苦労人。


マイク

演者:ショーン・ロバーツ
新入隊員。チョロが酒を調達に入った先でゾンビに襲われた際、八つ当たりのような嫌がらせでばら撒いた葉巻を拾わされる。
しかしそこに潜んでいた警官ゾンビに噛まれ、ライリーが助けに来るも己のゾンビ化を悲観し自害。
来世はアルバート・ウェスカー。大出世である。ちなみに同じくロメロ作品の「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」にも出ている。

カウフマン直属の傭兵


ブルーベイカー

演者:アラン・ヴァン・スプラング
ダウンタウンに通じる橋の入口に設けられた前哨基地の司令官。デッドレコニング号を戦力の要として管理していて、チョロはこれを奪うつもりだった。
ビッグ・ダディ率いるゾンビ軍団の襲撃に遭い、交戦の末戦死。ゾンビ化した。
中の人は本作とはパラレルワールドの設定である『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』及び『サバイバル・オブ・ザ・デッド』にて、略奪者と化した軍人「サージ」を演じている。例によって、顔が似た別人というせっていである。

マノレッティ

演者:サッシャ・ロイズ
カウフマンからチョロとライリー暗殺の密命を受けライリー達に同行する傭兵のリーダー格の男。闘牛士の名前らしい。
物資を取りにゾンビがうようよいる外に行かされる遠征部隊と違って、あまりゾンビと出会わないのかかなりビビっている。
首の筋一本で頭が繋がった神父ゾンビに「頭がない」と余裕ぶっこいて噛まれ、スラックに射殺される死亡フラグの人。
来世では魔物と人間のハーフとして刑事をやっている。何気にイケメン。

モニカ(モータウン)

演者:クリスタ・ブリッジス
マノレッティの同僚の女性兵士。
早々に噛まれて退場したマノレッティの代わりにライリー達を殺そうとするが、ライリーには見抜かれており武器を取られた。
その後、自分達の見張りをスラック一人にし、隙を突こうとピルズベリーにアイコンタクトするも、裏切られて殴り倒され気絶。
目を覚ました直後にチョロを射殺しようとしたがゾンビに噛まれ、更にスラックにヘッドショッドされるなど散々な目に遭う。

ピルズベリー

演者:ベドロ・ミゲル・アルセ
マノレッティ、モータウンの同僚だが彼らを裏切りライリーの味方になる。サモア出身。
肥満体型の大巨漢であり存在自体が死亡フラグだが、フラグをへし折るほどの最強キャラ。
後に人気テレビドラマシリーズの「ストレイン」や「ロストガール」などにも出演している。

離反した傭兵

チョロ・デモーラ

演者:ジョン・レグイザモ
本作の副主人公。物資調達部隊の副隊長。
フィドラーズグリーンに住む事を夢見て汚れ仕事をし、カウフマンに媚を売ってきた。
しかしいくら金を払っても自分を住まわせる気がない事に怒り、秘密をばらすと脅すも拒否された上に暗殺されそうになった。
復讐の為にビッグ・ダディらの襲撃のどさくさに紛れてデッドレコニング号を盗み、ミサイルを突き付けてカウフマンに500万ドル要求する。
その後、自分を殺しに来たライリー達と対峙するも、命を救ってくれたライリーと結果として和解。
ゾンビがダウンタウンを襲撃したことを知ると最早カウフマンへの報復は不要と判断し、ライリー達が乗ってきたワゴン車で相棒のフォクシーと共にクリーヴランドを目指す。
しかし道中でゾンビに噛まれてしまい、フォクシーと別れてカウフマンに復讐するため一人でフィドラーズグリーンを目指す。
前世はルイージ。そしてラテン農民のラッパー
彼の結末はビッグ・ダディ(ランド・オブ・ザ・デッド)を参照。オーイエイエイエふざけんな

フォクシー

演者:トニー・ナッポ
チョロの相棒。額が禿げ上がった口髭の男。
チョロと共にワゴン車でクリーヴランドを目指すが、途中でチョロが噛まれ、彼がカウフマンとの決着をつける為に介錯を拒否した為、彼を街の近くまで送る。
当初は自分も一緒に行くつもりだったが、チョロに「いい暮らしをしろよ」と乗ってきたワゴン車と物資を託されたため別れた。
コルトM1911A1とウィンチェスターM1300を携行している。

プリティーボーイ

演者:ジョアンナ・ボーランド
チョロの部下の金髪美女。ボーイなのに女。デッドレコニング号のミサイル射手であり運転手。チョロの謀反には無理矢理加担させられていた。
ライリーの仲間になった後半はデッド号を運転してゾンビを轢き殺しまくる。

アンカー

演者:トニー・マンチ
チョロの部下の男。花火の打ち上げを担当している。
プリティーボーイと同じく無理矢理協力させられていた為、ライリーに速攻で投降した。
来世ではキューブに閉じ込められた挙句に焼却処分される人。

マウス

演者:マクスウェル・マッケイブ・ロコス
チョロの部下。拳銃一挺渡されて桟橋に待機させられた可哀想なやつ。マウスだけに小屋で出会ったドブネズミと仲良くなった。
呑気にヘッドホンで音楽を聴きながらスケボーで遊んでいたらゾンビに襲われた。バカ。
前世はデスランド住人。

スラムの住人

ゴールデントライアングルに住む人間の大多数が相当する。傭兵達も同様。
食糧や抗生物質が満足に行き届いておらず、ゾンビに襲われないとはいえ過酷な生活を強いられている。
ストレス発散のため、ゾンビを見せ物にしている。

ローチ

演者:アール・パストコ
見世物小屋でゾンビを戦わせる賭博をやっている男。後述のチワワの手下。呼び名はゴキブリの意。

チワワ

演者:フィル・フォンダカーロ
スラム街の酒場を取り仕切る、小人症の男。ライリーに車を売ったが、カウフマンに命じられて隠した。
怒ったライリーを酒場の騒動のどさくさに殺そうとしたが、チャーリーに射殺される。

マリガン

演者:ブルース・マクフィー
富裕層に対するレジスタンスのリーダー。元傭兵だったが、スラム街に全てを押し付けて搾取するカウフマンに反旗を翻した。
しかしそれを嫌ったカウフマンに逮捕され、投獄。ゾンビ襲撃時のどさくさで仲間に助けられ、後に町の指導者になる。

スラック

演者:アジア・アルジェント
本作のヒロイン娼婦。元傭兵という事もあってか男勝りで粗っぽい性格。
レジスタンスに関与したために盛り場でゾンビの餌として闘技場に放り込まれるが、ライリーに救われるも共に逮捕される。
その後、ライリーと共にチョロ暗殺を命じられる。
演じたのはロメロとビジネスでのパートナーでもあったイタリアのホラー映画の名匠ダリオ・アルジェントの娘で、彼女自身も映画監督である。*3

富裕民

ゴールデントライアングル内で暮らす人間達のヒエラルキーの頂点に相当する人々。高層タワー「フィドラーズグリーン」でライリー達が集めた物資でゾンビ発生以前と変わらない裕福な暮らしを満喫している。
多分、ブッシュ政権の風刺。

ポール・カウフマン

演者:デニス・ホッパー
本作のヴィラン。ダウンタウンの最高権力者(というか独裁者)。フィドラーズグリーンの所有者でもある。
富裕層に快適な暮らしを提供し、貧困層をドラッグや娯楽を与えスラムに押しやった張本人。
保身のために一人だけ脱出しようとしたり部下をあっさり切り捨て、時には暗殺までする非情且つ自己中心的な性格。
チョロの要求に対しても二万ドル以上を受け取っておきながらもフィドラーズグリーンには住まわせず、邪魔と見なし暗殺しようとし、チョロが謀反を起こすと彼をテロリスト扱いするなど、明らかにブッシュ大統領を風刺したキャラクター
尚、チョロが言った「ゴミの中には死体もある」というのは、彼にとって都合の悪い人間を(チョロの仲間であろうと)殺して処分させていたから。
スラムにいるチョロやライリーなど貧困層を物資調達させる為に飼い殺し、スラムから出れないように仕向けている。
前世はクッパ。後、アヒルちゃん。……アメリカを代表する名優への認識がこれでいいのか日本のヲタク。
彼の結末はビッグ・ダディ(ランド・オブ・ザ・デッド)を参照。

サザーランド

演者:ジョナサン・ウィッタカー
カウフマンの部下の一人。
一人で大金を手に脱出しようとしたカウフマンを咎めたが、直後に騙し討ちで射殺された。

ニップ

演者:ジーン・マック
カウフマンの召し使い。肥満体型。
カウフマンがビッグ・ダディに襲われた際は、車のキーを所持したまま逃走し、主人を見捨てた。

ユニオンタウン

演者:グレッグ・ニコテロ
チョロが高級酒を持ってきた際に、すでに首を吊って自殺していた男。
妻子がおり、妻は「彼はゾンビにならない」と言っていたが、遺体を下ろそうとした息子の首に噛み付いた。


ゾンビ

過去三部作のゾンビと同じく、走らない、喋らない、知能が低い、人肉を食らう、生前の記憶や習慣が僅かにある、頭部を破壊しないと死なない、死んだ人間は死因を問わずゾンビになる、噛まれた人間は短時間で衰弱死するという特徴をもつ
また、過去作と違い炎を嫌がらない反面、流水を本能的に恐れる他、花火を打ち上げると見とれてしまい棒立ち状態になる弱点がある。*4
過去作では「自然災害」として描写されていたが、本作ではヒエラルキーの最下層の象徴である。

ビッグ・ダディ

演者:ユージン・クラーク
本作の真の主人公
ガソリンスタンドの従業員の格好をしたスキンヘッドの黒人ゾンビで、自我に目覚めたイレギュラーな存在。ピッツバーグ郊外に住むゾンビ達のリーダーとなっており、高い知能と感情を有している。
ロメロ映画によく登場する、ベンやピーター、ジョンと並ぶ「賢く強い黒人男性キャラクター」に相当する。
仲間が傭兵達に一方的に殺される様に怒りと悲しみを抱き、復讐のため奮起する。
傭兵から奪ったステアーAUGを携え、ゾンビの大群を率いてフィドラーズグリーンを目指すゾンビの革命家
詳しくはビッグ・ダディ(ランド・オブ・ザ・デッド)を参照。

  • ブッチャー
演者:ボイド・バンクス
肉屋のゾンビ。大きな肉切り包丁を持っている。
  • ナンバー9
演者:ジェニファー・バクスター
野球のユニフォームを着たバットを持った女の子ゾンビ。
  • タンバリンマン
演者:ジャスミン・ゲリョ
タンバリンを持ったゾンビ。
  • マチェーテゾンビ(ブレイズ)
演者:トム・サビーニ
「ゾンビ」に登場し、ピーターに射殺された暴走族の成れの果て。鉈を持ったゾンビ。
  • フォトショットゾンビ
写真撮影されたゾンビ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』のサイモン・ペグとエドガー・ライト。


追記、修正は先導者ビッグ・ダディに次いで川底を歩いて渡ってからどうぞ

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