Do335 プファイル

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Do335 プファイル - (2016/10/01 (土) 12:17:00) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/06/23 (月) 04:43:00
更新日:2024/01/26 Fri 13:37:24
所要時間:約 5 分で読めます




Do335 プファイルは、第二次大戦中にドルニエ社で開発された単座双発戦闘爆撃機である。
エンジンを串型配置*1にすることで大出力と空力特性を両立させた、ドイツの万国びっくりウェポンカタログの中では比較的真面目な部類。
実戦投入前にドイツが降伏したため実働記録こそ残されていないが、そのネタじみた奇抜な外観とレシプロ機トップクラスの性能から、イロモノ好きマニアからの評価は高い。


性能諸元(A-1)

全長:13.85m
全幅:13.80m
全高:5m
翼面積:38.5m2
空虚重量:7,400kg
最大離陸重量:9,600kg
エンジン:ダイムラー・ベンツDB603E 液冷倒立V型12気筒(1,800馬力)2基
航続距離:2,150km
最高速度:763km/h(高度6,400m)
実用上昇限度:11,400m
固定武装:30mm機関砲1門、機首上部20mm機関砲2門
爆装:最大1t(胴体内500kg、主翼下250kg。主翼のマウントは増槽との選択懸架式)


開発史

ドルニエ社は元々、大型飛行艇や旅客機の制作に定評のあった航空機メーカーだった。
ドイツ再軍備化以降は培ったノウハウを活かして重爆撃機の開発に勤しんでいたが、何を思ったか1937年に串型配置双発機の特許を取得・データ収集に勤しむようになる。
とは言え軍からは「おまえら大型機作るの得意なんだから、余計なこと考えずに爆撃機に専念しろよ……」という辛口評価だったようだ。
実は串型配置双発機は本機だけではなく、古くは同社の双発旅客飛行艇でも採用された由緒正しい……かどうかはともかく、奇抜ではあるが初めてではなかった。
あとは『今まで製造された中でもっとも美しい飛行艇』ことDo26なんかも有名。全部ドルニエ製ですね、わかります。
当時はエンジン出力の補填と空力特性の悪化防止を両立させるための苦肉の策であったようだ。

そして42年、ドイツ航空省の「単座で爆装500kg時に800km/h出せる爆撃機の開発はよ」という無茶ぶりに対し、ドルニエ社はktkrとばかりにこの形式を用いた設計案を提出。
ゴーサインが出されたことで開発が開始される。
設計開始から程なくして、空戦戦力の補充等の理由から多用途重戦闘機に仕様変更されるが、そもそも用途がほとんど変わらないので基本設計は変えなかったとか。
まあ、元々爆装時に800km/hを目的とした高速爆撃機であり、エンジン配置が単発戦闘機に近いため双発機としては運動性が良かったというのが大きかった。
ちなみに似たような開発経緯(双発単座爆撃機→双発戦闘爆撃機)を辿った機体としてはMe262なんかが有名。こっちはジェット機だけど。

試作初号機は翌年10月に完成、初飛行を終える。最高速は600km/hと計画値からは大きく劣ったが、運動性や加速力、元が爆撃機だけに積載量が大きく、
火力面の発展性に優れる点が評価され、44年には生産最重要機種に指定される。また、この頃に機体形状から「プファイル(矢)」の愛称が付けられた。
一部では長い機首を鼻に見立てて「アマイゼンベア(オオアリクイ)」とも呼ばれてたようだが。

各方面から期待されていた本機だが、44年3月の大攻勢で生産拠点のマイツェル工場が壊滅。
半年後にようやく数機が完成し、実用テストが軌道に乗り始めたところで終戦。総生産機数も35機程度と振るわなかった。
実戦投入はされていないはずだが、イギリス空軍のパイロットが飛行中の本機を目撃したという報告がある。
生産機数の少ない不遇の高性能機としては、目立った欠点もなく、純粋に間に合わなかっただけというのはなかなか珍しい。
仮に大量生産が成っていれば、連合軍に相応の出血を強いたであろうことは想像に難くないというのが現在の評価。
まあ、たかが一機種が戦局を覆すなんぞほぼありえないので、せいぜい降伏が長引く程度ではあっただろうが。


機体性能

串型配置は胴体内に2基のエンジンを縦列配置しているため、大質量のエンジンという重心部位が従来の双発機とは違って機体の回転軸を貫いている。
このため、双発機の大出力を維持しながらロールレートは単発機クラスを保持できた。
逆に機首の上げ下げという点では比較的機体の中心軸から遠いためやや劣るが、最終的には単発機に近いレベルの運動性を獲得している。
また、機首と後部でエンジンの回転が真逆のためトルクが打ち消されており、トルク偏向に伴う弊害がない。
おまけに縦列配置の利点として、片肺飛行でもちゃんと飛べるというのも隠れた評価点だった。
機体後部にもプロペラを持っているので前輪式*2になっており、前脚は後方折り畳み式、主脚は内側への引き込み脚。

機体前後にエンジンを搭載するという構造上、量産性はどうしてもアレなことにならざるを得なかった。
エンジンを共用してるTa152の生産性が高いだけに、何というか、惜しい。性能ではあっちよりはるかに上ではあるが。
ジェット戦闘機やロケット邀撃機と違って慣れ親しんだ液冷エンジン機で、エンジンの信頼性や整備性がわりかしまともだったのは救いっちゃ救いか?

主兵装の30mm機関砲はモーターカノンで、機体の中心線からの発砲という構造上、反動による機体のブレが小さい。
これと機首上部の20mm機関砲2門による大火力は、制空戦闘にも爆撃機邀撃にも極めて高い効果を発揮しただろう。
また、最大1tという爆装能力の高さから襲撃任務にも適していた。機体特性としてはサンダーボルトあたりが近いか。

邀撃機としても期待されただけあって、火災に対応すべく熱感センサー連動式の炭酸ガス消火装置を装備しているなど、総合的な防御力は良好。
機尾に色々付いているのでイジェクションシートが標準装備されており、脱出時には爆裂ボルトで垂直尾翼と後部プロペラを破砕投棄後、
キャノピーを排除して圧縮空気でパイロットごと座席を射出するようになっていた。
総合的には『双発機の速度に単発重戦闘機クラスの運動性がそなわり最強に見える』レシプロ機のある種の極致。
まあ実戦投入されてない機体に極致もクソもあったもんじゃないんだけどね

バリエーション

○Do335V
Vの後に製造順に番号がつくプロトタイプ。

○Do335A-0
戦闘爆撃機仕様先行量産型。

○Do335A-1
エンジンを強化した戦闘爆撃機型正規生産仕様。主翼下にマウントラッチが増設された。

○Do335A-4
最高780km/hを記録した高速偵察機型。

○Do335A-6
複座化された夜間/全天候戦闘型。

○Do335A-12
複座の機種転換訓練機。

○Do335B
駆逐機(重戦闘機のルフトヴァッフェ的表現)型。両翼から大型フェアリング付30mm機関砲が突き出しているのが外観上の特徴。
重量増に耐えるために前脚が強化されたほか、胴体下部に増加燃料タンクが追加装備されている。

○Do335B-6
計画のみの駆逐機複座夜戦型。エンジンに消炎ダンパーが付き、機首にFuG220レーダーが増設されている。

○Do-P256
胴体のエンジンを取っ払い、両翼下にターボジェットエンジンを搭載した複座長距離重戦闘機型。
30mm機関砲4門を搭載し、計画最高速度は882km/hという超性能だが、例によって計画のみで終わった。

○Do435
後部エンジンをジェットエンジンに換装したレシプロジェット複合試作型。武装計画案から、ベースとなったのはおそらく335B。
これも例によって計画のみ。

○Do635
本機(おそらくベースはA-4)を主翼で2機結合した双胴超長距離偵察型。案の定計画のみ。
ガチイロモノ機だが、某チート国家もツインマスタングとかいう無茶をやらかしてるのでドイツ限定の発想ではない。


アニヲタ視点のDo335

フライトシムで使ってみたいならとりあえずIl-2をプレイしてみよう、な!(モロマ
あとは大戦略シリーズあたりで登場してるので、ウォーシミュで使ってみたかったらそっちをどうぞ。




追記・修正はイジェクションシートを作動させて落下傘降下後にお願いします。

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