SCP-414

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SCP-414 - (2017/03/10 (金) 05:24:39) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2016/12/27 Tue 11:35:01
更新日:2022/06/04 Sat 09:42:25
所要時間:約 8 分で読めます






きっと貴方の師は誇りに思っているわ、それにほら、恩師の後を継ぐのは助手にとっての夢みたいなものでしょう?



SCP-414はシェアード・ワールドThe SCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはKeter。



概要

SCP-414は、非社交的な人間を対象とする現象であり、性質上収容は不可能である。

円形の仮面と全身を覆う衣服を身に着けた長身のヒューマノイド群(SCP-414-1)と、
それに影響されてしまった人間の症状(SCP-414-2)の2つからなる。

SCP-414-1は主としてニート*1の要件を満たす人間を中心に接触を試みる*2
彼らは接触時だけ出現し、その後唐突に消失するため財団は彼らを一切収容することができていない。
通常は地元の福祉団体の従業員を自称する。
彼らと会話を交わすことで症状に至るのだが、なんとその「会話を交わす」のレベルが
「彼らの話しかけに応答する」だけで成立してしまう。
もっともこれは引きこもりなどの孤独な人間に接触することで発症させるため、このくらいグレードが低くないと
SCP-414-1が望む結果は起こせないんだろう。

これに影響されたことで発生する症状、SCP-414-2は現在判明している第5段階の症状まである。

第1段階では、影響された人は孤独感を感じるようになり、他者と積極的にコミュニケーションを取ろうとする。
この時点では、まだ「陰鬱な人が明るくなった」と好意的に受け取れるかもしれない。

第2段階では、他者とコミュニケーションを取らない活動で喜びを感じなくなる。
つまりゲームとかでも一人で家でやるようなゲームとかは好まず、誰かとスポーツしたりしだすことになる。

第3段階にまでなると、5日ごとに他者とコミュニケーションを取らないと苦痛になってしまい、ひとりで楽しんでいた記憶や
13歳以下の時の思い出をすべて忘れてしまう。ただし、「それを忘れている」ことは自覚している。

第4段階では、45時間毎に交流がないともはや充足感を感じられなくなり、ボランティアに従事したり、
集会を開いたりと積極的に社会的な活動に関わるようになる。2年以上付き合っていた人との思い出がなくなる。

そして最終段階では、誰ともコミュニケーションを取らないと、幻覚が見えたり、空虚感に苛まされるようになる。
対象は誰の記憶も覚えていられなくなり、15分間以上誰かとコミュニケーションを取らないとパニックに陷る。
ここまで行った人は死亡率が急速に高くなっていく。死因はすべてが自殺だという。

簡単に言えば、コミュニケーションが少ない人を積極的な性格に変えていくが、
その間に自我を完全に失い、「共同体の中のひとり」に薄めていってしまう最悪なKeterである。
確かにコミュニケーションが途絶してしまうことは問題ではあるが、こんな乱暴な治療があっていいわけがなく、
担当主任のアリス・オガワ博士は完全な収容ができた暁には、SCP-414-2の治療を最優先としたいと述べている。

いくら財団でも流石にすべてのニートを監視するわけにもいかないので、
現在は感染者を財団フロント団体を通してソーシャルワークに従事させたり、
訓練済み動物との交流を図らせると言ったメンタルケアを重点的に行っている。
またメンタルヘルスケアセンターの受診記録などを監視している。

事案

もともとアリス・オガワ博士は主任ではなく、前主任エリザ・チュアン博士の主任助手を務めていた。
チュアン博士がSCP-414-2症状に感染したのがアリス・オガワ博士が引き継いだ要因である。

チュアン博士はもちろんニートではないのだが、SCP-414-1集団からしてみるとはっきり言って『邪魔』な存在であり
ゆえにチュアン博士を財団施設内にまで入っていって集団で襲いかかり、その際になぜこんなことをしているのかを問われ
「基盤を必要とするがゆえに立ち止まってしまった彼らを『救う』」のがSCP-414-1の主目的であると述べた。
チュアン博士は「自分を忘れることがなぜ救いとなるのか」と尋ねると、
「利己的な行為ができなくなれば、社会のリソースを有効に使える、
そして最後に自殺させることで他者がそれを使える」と答え、迷い子たちを導くと主張した。
チュアン博士は利己主義は動機付けになり、故に社会はそれを必要とすると持論を述べるが、
それに対して「あなたはよほど重症のようだ、我々が治療しよう」と接近。

「貴方は我々を止めたいのでありましょう。ですが、貴方の試みは助力の停止を意味しているのであります。
貴方がたは確保し、収容し、保護する(secure, contain, protect)。
しかし私は社会であり、共同体であり、発展であります(society, community, progress)
― 人類を導く羊飼いなのであります。
貴方は道を見失い病んだ仔羊であります、しかし間もなくそうではなくなるでしょう」

SCP-414-1からすれば、SCP-414-2ではない人間のほうが「病んでいる」。
個ではなく社会全体の利益をこそ願うべきであると。
しかしチュアン博士の言うとおり、「社会はそんな個を必要としている」のも事実である。

ともあれ、チュアン博士はなってしまった。SCP-414-2に。

引き継ぎをしたオガワ博士はチュアン博士へのインタビューをした。

チュアン博士はオガワ博士の顔を見てなにかしら繋がりがあることは感じたが、思い出せなかった。
オガワ博士にあなたの仕事はなんなの、と質問したのでオガワ博士は「自分の師のライフワークを引き継いだ」と答える。
「あなたの師はどこにいるの?」とその『師』本人がオガワ博士に問うと、「私の知る限り、もう共に働くことは無いでしょう」と静かに返した。
最後に名前を聞かれ、アリスだとオガワ博士は伝えると、
「貴方と会えて嬉しかったわ、アリス。間違いなく、この研究は貴方にとってストレスが多いでしょう。
きっと貴方の師は誇りに思っているわ、それにほら、恩師の後を継ぐのは助手にとっての夢みたいなものでしょう?」
と返した。


(呟き) 貴方に戻って来てほしいというほどに強い望みではありませんでしたよ…
(大声で) 励ましてくれて有難うございます。さようなら。


このあと、もうオガワ博士はチュアン博士へのインタビューをすることはないとインタビューの最後に通告が出ており、
またチュアン博士は適切なセラピーを受けていたものの、自殺してしまっている。

余談

SCP-414の執筆者はSCP-2442SCP-2662も執筆したSoullessSingularity氏であり、
メンタル部分に着目したオブジェクトを書くのが非常に上手い人である。
が、3桁台ナンバーのKeterとしてはいささか不思議なものであることもまた事実である。

3桁台のKeterといえば、クソトカゲなんて例を持ち出すまでもなく、
SCP-017(影人間)、SCP-076(”アベル”)、SCP-106(オールドマン)、SCP-239(ちいさな魔女)といった
わかりやすいモンスターの集うナンバーである。
ではなぜSCP-414がこうも2000番台に見られるようなタイプのじわりと来るKeterなのかというと、
SCP-414は2016年にようやく書かれたためである。かつてもSCP-414に投稿された作品はあったのだが、
多くがDecommissionedとして消えていったのだ。
SCP-1000SCP-2000よりも後に書かれたと言えばわかりやすいだろうか。




SCP-414 - Regardless, I Might Prefer Myself Sick(それでも、私は病んでいる方が好きかもしれない。)



SCP-414 - Regardless, I Might Prefer Myself Sick
by SoullessSingularity
www.scp-wiki.net/scp-414
scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-414
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