SCP-892-JP

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SCP-892-JP - (2020/07/27 (月) 19:49:26) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/01/26 (木曜日) 20:00:00
更新日:2024/04/16 Tue 20:49:47
所要時間:約 6 分で読めます





爆発は芸術たりうるが、何を爆発させるかが問題だ。



SCP-892-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『ミス・げいじゅつはばくはつだヴァンダリズムに反逆を』。オブジェクトクラスは「Euclid」に指定されている。

SCP-892-JPは、人間の頭部を大雑把に形取ったように見える全長10センチメートルの胸像である。
若い女性の声で喋ることができ、当人の性格が温厚なこともあって財団の収容には至って協力的だ。

このオブジェクトの持つ異常性は二つ。
一つめの異常性は、胸像と何らかの芸術的な話題について語り合った際に発現する。
会話を終えた直後に、胸像が『貴方はこんな芸術の才能を秘めていますよ?』という予言めいたひと言を投げかけてくるのである。

胸像の言葉を受けた人間は、なぜかその気になってしまい実際に胸像が指摘した通りの芸術にチャレンジしてしまう。
そして、実際に完成した芸術作品は、財団の美術部門の鑑定によると類い稀な芸術性を秘めた作品に仕上がるのだ。

二つ目の異常性は、SCP-892-JPの周りに芸術作品が存在していない場合、日本国内のどこかに展示されていた芸術作品を自らの手元にランダムにテレポートさせてしまうという物である。

此方の異常性は、Dクラスに財団所有の芸術作品を持たせ、【話し相手】として胸像の保管ユニットに24時間おきに入室させることで完封が可能だ。



財団との関わり


財団が、全国の美術館や博物館など芸術に関連した施設の連続爆破事件の容疑者としてマークしていた某女性芸術家のアトリエに突入した際にこのオブジェクトは回収された。

胸像自身の供述によると、このオブジェクトは元々は人間であり、手に触れた芸術作品をその二倍の質量を持つ爆発物に変質させ、自動的に爆発させてしまう異常性を後天的に獲得してしまったそうである。

――そう、後天的に。

その意味が明らかとなったのは、財団の施設内で発生したある『事件』がきっかけであった。

財団の日本支部がマークしている要注意団体の一つ、『博士』が生み出したと推定される某オブジェクトが収容を突破し、逃げ回る過程でSCP-892-JPの保管ユニットに接近した際にこのオブジェクトが持つ最後の異常性が明らかとなったのである。

なんと、胸像の保管ユニットに接近した『博士』のオブジェクトが勝手に自爆してしまったのだ。

SCP-892-JPは、『博士』の生み出した悪意に満ちたオブジェクトを破壊する能力を保持している。
そう考えた財団は、SCP-892-JPに対してインタビューを敢行した。

+ インタビューの記録を閲覧する
かつて胸像が人間だった頃、彼女はスランプに陥っていた。

「『芸術は爆発だ』って言葉があるでしょう? あれは比喩ですけどそんな風に全部爆発しちゃえばいい、そんなことまで考えていました」

そんな時、彼女の元を一人の男が訪れたのである。

「ええ、最初はいい人だなんて思いましたよ、でも、でも、気づいた時には…!」

今思えば、思わず罵倒を並べてしまうほど胡散臭い嫌な男だったのだが、その時の彼女は藁にもすがる思いで男の差し伸べた手に飛びついてしまったのだ。

――それが、悪魔の手だとは気づかずに。

男が彼女の記憶をいじったのだろうか。男の容姿に関しては何も記憶に残っていない。
しかし、男が自分になんらかの手術を施したことだけはハッキリと覚えていた。

「とりあえずそれが終わったとき私は美術館にいました。…その時はあいつに感謝しましたよ。見える景色がまるで虹の中にいるみたいだったんですから」

目に映るもの全てが輝いて見える…これが芸術なんだ…感涙に咽ぶ彼女は、思わず手近にあった美術品に手を触れてしまった。

その美術品が、突如爆発したのはそれから間も無くだったという。
阿鼻叫喚の地獄絵図の中、その場に立っていられたのは彼女だけだった。

恐怖に駆られた彼女はその場から逃げ出してしまった。
自宅に駈けもどり、恐怖の余韻を振り払おうとする。
しかし、ふと気がつくと、彼女はどこかの美術館の中にいた。

こうして、惨劇は繰り返されたのである。

「でも、1週間くらいしたころ、彼が現れたんです」

一人の男が、彼女のアトリエに乱入してきていきなり彼女に殴りかかってきたのである。

彼女は男に抵抗しながら、必死になって弁明した。自分自身もこの力には辟易している事を。

その話を聞いて、男は何かを察したらしい。
自分の非礼を詫び、こう提案してきたのである。

「俺には君を人に戻せない。でも、君を俺の作品にすることはできる。…ただし、君は人には戻れない、新しいアーティストを生み出す作品になる、それでよければ」

自分で自分が嫌になっていた女性は、男の申し出を快諾した。
すると男は、粘土ベラと粘土を取り出してーー

「芸術は爆発だ、ああそうかい、ならお前の作品も爆発してしまえ、糞野郎」

気がつくと、女性は今の姿…胸像になっていた。


因みに、インタビューを担当した研究員は音楽の才能があるとアドバイスをされた。


残されていたモノ

さて、結果的に女性と世界中の芸術作品を救ってくれた謎の芸術家であるが、胸像となった女性のアトリエを調査した際にその正体が判明している。
彼女のアトリエに残されていた、キャンバスの一つに微細な文字で以下の文章が5つ記入されていることが判明したのである。

その文章を、時系列順に並べ直したのが以下の文章である。

+ 閲覧する
■文章1
オーット! おめでとう!
博士の限定版コレクション、ミスター・めいげんシリーズの"ミス・げいじゅつはばくはつだ"を見つけたみたいだね! 
"ミス・げいじゅつはばくはつだ"はとってもアーティスティックなおねえさん! 
毎日退屈で灰色な毎日を送っているそこのキミ!
芸術に触れてキュートでクールな"ミス・げいじゅつはばくはつだ"と一緒に虹色の景色を見てみないかい!?
彼女といれば毎日は エックスプロ―ジョォォォォッン!!!
退屈なんてふっとんじゃうぞ!?
みんなで芸術を楽しもうね!

01. ミスター・にんげんはかんがえるあしである
02. ミスター・わたしにはゆめがある
03. ミス・げいじゅつはばくはつだ
04. [判別不能]
05. [判別不能]
06. ミセス・てきはほんのうじにあり(発売未定)

今後も続々新しいメンバーが加わるよ! さあ、楽しもうね!

新しいミスター・めいげんを応募しよう!: 今博士はちょっと困ってるんだ、なんたってこの世界いろんな人がいろんなことを言っている!
だからどれを選べばいいのかわっかんない! 
だからキミたちに協力をお願いするよ!
キミの好きなめいげんは何かな? 
教えてくれたみんなの中から抽選でキミが名付けた世界でたった一人の新しいミスター・めいげんをプレゼント! 
さあ、応募しようね!

■文章2
さっそくおうぼさせてもらいます! 「Are We Cool Yet?」をおねがいします!
匿名希望

■文章3
当製品、「ミス・げいじゅつはばくはつだ」、に対する改変行為は著しい著作権侵害及び威力業務妨害を含むと判断いたしました、
これ以上の妨害行為を行った場合、然る場所に訴え出させていただきます
Neoワンダークール重工法務課

■文章4
Are We Cool Yet? You Were Not Cool! :-P

■文章5
うるさいくたばれバー―――――――カッ!!!


一言だけ言わせてもらおう。
またお前かぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


救世主

オブジェクトの項目名で触れられている「ヴァンダリズム」とは、芸術作品など、本来なら『美しい』と愛でるべき対象を意図的に破壊する行為の事である。
神社などに落書きをしたり、狛犬を破壊する行為などがこれに該当する。

近年では、超極端なイスラム原理主義を信奉するタリバン政権が、偶像崇拝を禁止するためと言ってバーミヤンの石仏を破壊したのが記憶に新しいかも知れない。

流石の『彼ら』も、この行為だけは見逃せなかったという事なのだろう。

+ 考察
『博士』の「新ミスター名言募集」なる企画に応募していた事で『博士版・リトルミスターズ』のラインナップを把握していた『Are We Cool Yet?』のメンバーが、その後起きた芸術作品の連続爆発事件を知ってすぐに『博士』の仕業であると察し、芸術テロリストらしいやり方で仕返しをしたのである。


『彼ら』はただ、自らの愛するものを守っただけに過ぎないのかも知れない。
しかし、その行為は結果的に、一人の女性を曲がりなりにも地獄の底から救い出すことにつながったのである。



追記・修正は胸像と芸術関係の話題を交わした後でお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-892-JP - みす・げいじゅつはばくはつだヴァンダリズムに反逆を
by kyougoku08
http://ja.scp-wiki.net/scp-892-jp

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