SCP-2460

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SCP-2460 - (2017/10/15 (日) 01:30:31) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/10/14 (土) 16:39:14
更新日:2023/06/07 Wed 15:59:09
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SCP-2460は、シェアード・ワールドThe SCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
項目名は『Dark Satellite (暗黒衛星)』、オブジェクトクラスは当初Safeだったが、Keterに格上げされた。

概要

SCP-2460は、地球を周回している重力的アノマリーである。定義上、これは地球の自然衛星という事になる。
表向きには、SCP-2460の軌道上には空間的に散らばった、巨大なスペースデブリの塊がある事にしており、50km圏内への接近を禁止し、財団以外に観測がされないようにしている。
高度が上空395kmから1万2430kmになる楕円軌道を4時間で公転しており、その中心部には約50m×30m×15mの物体が存在する。しかしながら、この大きさにして1.24×1013kg (124億トン) という異常な程大きな質量を持つと推定される。推定される平均密度は5.51×108kg/m3であり、地球の10万倍、白色矮星と同程度とされている。

SCP-2460は、視覚的には様々な種類の物体が表面に沸いては沈む事を繰り返すように見える。これらは中心から105mより内側の範囲内で戻ってくる。
大半は宇宙塵と岩片だが、以下のようなものもある。
  • SCP-2460の "表面" である約50m×30m×15mの微小天体。クレーターが存在しない。
  • オールトの雲由来と推定される、直径5mの彗星核。
  • 高重力下で超流動状態となっている推定される約1000トンの水素とヘリウム。
  • ワニのようなミイラ化した人型生物が乗っている、全長10mの未知の宇宙船。
  • それぞれ1人の人型生物を載せた90機のカプセル。ミイラ化している。
SCP-2460は可視光線の範囲内の光子に対しては、0.01という低い反射能である物の相互作用を持つ。もし光子が素通りするなら、SCP-2460は不可視である。
一方で、それ以外の波長や電荷、磁気モーメント、波動放射の一切を放出する事が無い。SCP-2460と相互作用を持つのは、他に重力のみである。

SCP-2460の性質

SCP-2460は、一見するとブラックホールに似ているが、ブラックホールではない。
その実態は量子スピン消失によってフェルミオン物質から位相転換した、電磁相互作用を持たないボソン物質の塊である。
と言っても、物理学の専門用語が乱立して、何を言っているのか分からん人の方が多いだろう。
専門用語に深入りして説明すると、専門用語の解説に専門用語が必要となってしまうため、多少 "正しさ" を犠牲にしても、なるべく平たく説明する事を試みる。
物理学に明るい人は、以下の説明部分は読み飛ばしてもOK。


一言で言うと、SCP-2460は、通常の物質を形作っているフェルミオンがボソン化、更に電磁相互作用が欠如した事によって、重ね合わせが発生した結果1つの塊となったものであり、何千もの物体が1つに重なった結果、大きな質量を獲得し、その重力によって重なった状態を維持しているのである。
SCP-2460の本体から時々物体が湧き出て見えるのは、実際には物体同士が1つの重心を中心に揺れ動いている結果である。
更に2013年2月15日、[編集済]の惨事により (*1) 保持板付きのスチールボルトがSCP-2460に衝突した結果、見かけは変化していないが、ボルトはSCP-2460と同じくボソン物質に変化している事が判明した。
これは即ち、SCP-2460は触れたフェルミオン物質をボソン物質に変換する性質があるのである。
SCP-2460から見える物体も、そのような経緯を辿った "犠牲者" である。
一方でボルトは保持板に取り付けられた状態を維持しており、これはミリ秒未満の差においては物体の重ね合わせが発生しない事を意味している。
だから、岩塊や宇宙船のような大きな物体は、構成する部品や原子が互いに重ね合わさらず、素粒子サイズの極小の塊にならないのである。

本当の性質

SCP-2460が偶然財団の所有する軌道ユニットに接近した機会を用いて、財団はSCP-2460の接近有人探査を試みた。
その結果、SCP-2460の5km以内に接近した途端、無線通信が途絶した。通信途絶後もカメラによって観察を行ったが、エージェントは通信途絶に気付いた後、燃料噴射を行ったが、船体を無意味に通過するだけであり、結果脱出も軌道修正も行えず、中心の塊へと落下した。
哀れ、エージェントはSCP-2460の一部となってしまったのである。

この観測の結果、SCP-2460の中心から5km以内では通信が行えない事、そして通信途絶の最期の瞬間、見かけの物質密度が付近より1000倍も一気に増える事が観測された。
この観測結果は、SCP-2460は決して中心の塊が本体ではなく、その周辺部の5km圏内が全体である事を示している。
電磁相互作用の欠如が重ね合わせの理由の1つであるが、電磁相互作用は光子が伝達する力である。光子の波長の1つは電波であり、無線通信が途絶したのは相互作用の欠如と関連している。 (*2)
また、見かけの物質密度が増えた事は、実際には何もあるようには見えない5km圏内には、不可視の物体が存在する事を意味している。
目に見える、つまり可視光線も光子の波長の1つであるため、やはり相互作用の欠如は不可視と関連しているのである。
実際のところ、SCP-2460の "見える" 部分は、全て後から取り込まれた外部由来の物体であり、SCP-2460の本体とは異なって観る事が可能である。
ただし、なぜそのように部分的ながら電磁相互作用が可能なのか、財団は理由を完全には解明出来ていない。

QK-クラスシナリオ

SCP-2460の存在は、触れた物を通常物質と相互作用させる事が出来ないボソン物質に変換する事であるが、宇宙にある限りは、せいぜい人工衛星がもしかすると衝突する恐れがあるかもという点だけで、ぱっと見での危険はないかもしれない。

しかしながら、実際にはSCP-2460は極めて危険である。
SCP-2460は、物質が重なり合っているせいで非常に重い塊である。そうなると、僅かな引力の変動で軌道が簡単に乱れやすく、地球に落下する恐れも十分にある。
先ほど挙げた人工衛星の衝突でさえ、SCP-2460の質量を増やし、軌道を変える恐れがある。先述の50km圏内立入禁止はこれが理由である。
SCP-2460が地表に落下すると、SCP-2460に触れた地球の物質はボソン化され、ボソン化されていない物質と相互作用する事が出来なくなる。つまり、そこには何もない "穴" が開いたのと同じ状態となる。
SCP-2460はそのまま中心部へと落下し、圧力が無くなった周りから、高温のマントルや核が "穴" を通じて地表へと噴き出すだろう。
これで終わりではなく、SCP-2460は反対側から出て、また地球へと落下する軌道を繰り返す。地球は自転している為、次回は別のところに "穴" を開ける。これを繰り返せば、地球は決して触れる事の出来ない高密度の岩石の塊へと変質するだろう。
これがQK-クラスシナリオ (量子縮退世界終焉シナリオ) である。

地球にSCP-2460を落下させないためには、SCP-2460を遠ざける必要がある。ところが、SCP-2460は重力でしか相互作用をする事が出来ない。
そこで財団の科学者は、直径22km程度の小惑星を誘導、どうにかしてSCP-2460を弾き飛ばす方法を提案している。
恐竜を滅ぼした隕石の2倍も直径の大きい小惑星を地球に誘導したり、ちょっとでも誘導にミスがあればSCP-2460が地球に落ちてしまうような方法を取るのだから、当然簡単な話ではない。

本当の正体

ところで、SCP-2460は不幸にも地球の周回軌道上に存在するのだろうか。

実際のところ、この質問に意味はない。なぜならば、SCP-2460は宇宙に広く存在する可能性の方が高いのである。
SCP-2460の性質は、重力でのみ観測可能で、電磁波では観る事も、自ら放射する事も無く、その全体の相互作用は気付かれないほど微弱である。
これとそっくりな物が、現実の宇宙論においても存在する。「暗黒物質」である。
暗黒物質は、実際に宇宙に存在するはずの質量の大半が、実際には観測できない事から暗黒と呼ばれる物質の事である。宇宙論最大の謎の1つの正体に対し、財団はSCP-2460は暗黒物質であるとの結論を出している。
宇宙の85%に存在する暗黒物質が、地球の近くにあるのはむしろ当然で、しかも未だにQK-クラスシナリオで滅びていない事の方が奇跡ですらある。

追記・修正はボソン化してからお願いします。

ご静聴ありがとうございました、それでは良い夜を。 ― コーデリア・アージェント博士



SCP-2460 - Dark Satellite
by WrongJohnSilver
www.scp-wiki.net/scp-2460
ja.scp-wiki.net/scp-2460 (翻訳)
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。


(*1)関連は不明だが、この日はロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下する天文現象があった日である。この時小惑星が人工衛星やスペースデブリと衝突した事は (少なくとも表向きには) ない。
(*2)本文中ではこの内部から無線通信が行えない範囲をシュバルツシルト半径と呼んでいる。厳密にはSCP-2460の後ろ側に存在する背景が見えており、光子がSCP-2460を通過して届いている事から、ブラックホールのシュバルツシルト半径とは意味が異なる。

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