SCP-060-JP

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SCP-060-JP - (2021/01/17 (日) 21:03:37) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/12/10 (火) 23:22:00
更新日:2023/12/24 Sun 18:32:02
所要時間:約 7 分で読めます 




ここを出て行っても、受け入れてくれる場所など無いというのに、なぜ逃げようとするのだろう。 -████博士

わたしはわたし
わたしはふつうにいきたいだけ

SCP-060-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスはSafe。
……正直このクラスに対する信頼性がどこまであるか疑問だが、とりあえずこのSCiPに関してはクラス詐欺はない、収容手段の確立されたSCiPと認識して頂いて大丈夫だ。
確立されているからこそ、その扱いに関して財団も、そして我々第三の壁の先からも悩ましく感じるところがあるのがコイツ……いや、『彼女』の特徴なのだが。



特別収容プロトコル

とりあえず現時点で確立されている収容プロトコルを紹介しよう。いくらか収容過程での変更も入っているのでかいつまんで。
  • サイト-8141の人型用収容セルに、最低限の家具とPCを与えて収納。
  • 収容セルの扉をレベル3以上の職員のみが開閉できるように設定した前提のもとで、オブジェクトにレベル0の一般職員相当のIDを交付。
  • PCはサイト-8141内ネットワークに該当権限範囲内で接続可能に財団内部ネットワークや一部のウェブサイトを模擬したサーバーにのみ接続可能に設定。
  • オブジェクトに交付されたIDで発行される各種電子申請の状況を監視し、出張願いや配属転換願いを却下する。
  • 移動に関する議論を行う際には、直筆メモのスキャン画像かビデオ映像によって行う。(=電子文書による移動提案は禁じられる
  • (追記として)収容セル内の清掃は不要。

PCを通じた電子書類の監視に重点が置かれており、曲がりなりにも人型収容セルを利用しているにも関わらず実体に関する記述がおざなりなことがわかるだろうか。
ついでに言うと、大概の人型オブジェクトにおいて指示される「どのような生活環境に置くか」の記述が不十分……ハッキリ言おう、どうやって衣食を提供するかの指示がない
別の収容プロトコルを参照せよとかそういう記述もない。ついでに清掃は不要、と明言されているからかなりロクでもない環境と言わざるを得ない。
で、そのうえで「ここから移動させてくれ」との申請がオブジェクトから出されたら却下せよ、との指示。ナチュラルに畜生行為にすぎませんかとも一見思える、が。

忘れるなかれ。財団は決して不要に冷酷なことは行わない。
先の記述で実体という表現を使ったことを訂正しよう。このオブジェクト、電子記録における記述こそが実体であり、すべてなのである。


オブジェクトの概要

このオブジェクトを一言で語るならば、電子化された記録以外に一切の痕跡を残さない人物である。
名簿の電子データ、各種発注記録などを通じて記録上では特定の人物██████が存在し生活しているように振る舞うのだが、
目視、各種センサによって存在を確認できない他、実世界上において彼女の行動の痕跡は一切発生しない。
彼女による発注によって得られる商品の扱いがどうなるかの記述は存在しないが、
財団によるカバーストーリー発令の記述がないあたり、一貫して誤発注と認識された可能性が高い。

財団が彼女を発見したのは、神奈川県のある小学校にて「200█年度入学予定児童の名簿に記録された██████が登校しない」事件が発生したことに端を発する。
所在市の教育委員会の調査により登録された住所に同姓の一家が居住しているが児童当人は存在せず、しかし戸籍・出生記録・乳幼児健診の記録が存在するという事実が明らかになり、
この矛盾を同市で超常現象*1記録収拾を行っていた財団職員が感知。
調査により児童が誕生した(はずの)病院の電子カルテにて██████の母親の妊娠からの出産記録が確認されるも、
担当医の直筆日誌にて該当する人物は想像妊娠の診断が下されたことが判明。担当医へのインタビューの上で日誌内容に誤りがないことが確認され、
超常現象として処理され戸籍から抹消された……はずだったのだが、翌年に同小学校の2年生名簿に名前が確認されたことで、財団の回収対象と相成った。

何分実世界側に当人が干渉しない、というか存在しているかどうかが限りなく疑わしいオブジェクトのため財団の側も干渉手段は限られたのだが、
あたかも実在の人物の移動のように電子記録上の手続きを行えば、その所属・所在を操作できることが判明。
ひとまずサイト-8141に移動させることに成功し、職員IDを付与して施設内の扉の開閉記録から動向確認が行えるようにしたが、
あまりにも自由にサイト内を移動し(ているように)各種発注の改変を行い続けることで職務上の障害になりかねなかったため、
専用オフィスの提供の体裁で人型収容セル内に拘束し、現在に至っている。


彼女の収容の変遷

報告書にはSCP-060-JPに関する記録ログの一部が補遺として登録されており、これを見ることで現在に至るまでの動向が確認できる。
説明済みの部分は省きつつ一部を紹介する。

ログ-8

担当の████博士の養子とする形で戸籍移動を行い、
サイト所在地への引っ越し・財団所有の学校施設への転校手続きによってSCiPの移動に成功した記録。
これによりとりあえずの収容は出来た……のだが。

ログ-11

「再度」発生したSCiPによると思われる衣料品の過剰注文の事案に対し、
日本支部理事-█から収容方法の改定による対応を求められる記録。
この時点で彼女が「サイト内のどこにいる(ように振る舞っている)」のかを把握する術がなかったため、
「一般職員として雇用したうえで」「人型収容セルを改装した専用オフィスに異動する」現在の収容プロトコルの概形が作られる。

ログ-17

SCiPの職員IDによる出張届や旅費申請が行われる事案発生。
提出された旅行記録を追跡した結果空港にてSCiPの本名が呼び出される事案を確認。まごうこと無き収容違反である。
なお出張先のSCP関連疑惑事案の観察、という名目での出張申請だったが、該当する内容の報告書は提出されず。
旅行代をわざわざ出してやるわけにもいかないんだよ、ということで申請の監視も行われることになった。
このSCiPは当ログ時点で推定10歳前後*2。性質上誰もこの子に躾が出来ない、歯止めもかけられないなので、
こうした事例は「全面的な申請の拒絶」によってしか食い止められないのが面倒なところである。

ログ-19

衣料品などを取り扱う通販サイトへのアクセスを試みる事案発生。……とにかくおしゃれしたいのかね、この子。
与えられたPCでの接続が許可されていなかったため、外部への情報漏洩には至らなかった。
元々はサイト-8141内ネットワークへの接続は可能なようにされていたのだが、彼女の外部への強い欲求から
万が一にも情報漏洩などが起きる可能性を避けるべく、疑似通販サイト・編集済みニュースサイト・疑似電子申請システムを用意した
独立サーバーを用意することとなった。これにより彼女は電子的に袋小路に閉じ込められたことになる。

ログ-25

SCP-060-JP、人型収容セル内から逃走。
Dクラス職員による定期清掃の後、人型収容エリアの扉を開錠しようとする記録が発見され、逃走が発覚。
幸いにして該当する扉のクリアランスレベルが2だったため収容違反には繋がらず、清掃は無期限に停止された。


現在、彼女の収容セルでは与えられたIDでの一日数百回に及ぶ扉の開錠試行アクセス可能領域内での外部へのSOS送信模索
常態化していることが確認されている。
誤解無きよう言うが、財団としてはよっぽどそいつを自由にさせることに重大な問題がない限りは、財団の収容下という前提での権利侵害の意図はない
ないのだが、彼女に対して財団は一切のコミュニケーションが取れていない。彼女はあくまでも「自分が存在し、行動した痕跡を記録に残す」ことしかできず、
このため「今現在時点で彼女がどうしているか」を財団が把握する手段は相変わらず存在しないためである。
このため財団は「なぜ彼女が収容されねばならないのか」を一切説明できないまま拘禁を続けるしか方法がなく、彼女の財団への嫌悪感は強まるばかりである。
状況を改善しようにもコンタクトが取れないのではどうしようもない。困り果てたとある博士のメモがこれ。

本当なら心理的診断が必要なのかもしれないが、SCP-060-JPとは顔合わせできないし。困った。 
  • ████博士

場合によるが、倫理委員会が出張ってくる可能性もある。

財団は彼女を確保した。財団は彼女を収容した。だが。


SCP-060-JP

不在の人


財団に彼女を保護することなど、可能なのだろうか。


本当なら追記・修正が必要なのかもしれないが、SCP-060-JPとは顔合わせできないし。困った。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-060-JP - 不在の人
by broken_bone
http://ja.scp-wiki.net/scp-060-jp

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