SCP-4946

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SCP-4946 - (2019/03/05 (火) 09:47:17) のソース

&font(#6495ED){登録日}: 2019/03/03 Sun 20:33:00
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SCP-4946とは、怪奇創作サイトである「[[SCP Foundation]]」の本部において発見されたオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスは堂々の''Keter''。

*概要

SCP-4946とは、「赤痢による死亡者届出件数にて観測される確率論的異常」である。
このオブジェクトが出現して以降は、報告される1日あたりの赤痢による合計死亡者数が「2025/06/06以降の日数をnとした場合のフィボナッチ数列におけるn番目の値」となってしまっている。
しかも、一つ一つの赤痢による死亡例そのものは、目立った不審な点のないごく普通の細菌感染症による不幸な転機でしかない。その発生数が明らかに不自然であることを除いては。

以下、用語についてちょっと解説。

・「赤痢」とは大腸の感染症の一種であり、一般的には赤痢菌が原因となる。発熱・腹痛および血液が混じった激しい下痢を主症状とし、重症化すると死に至る例も多い。明治時代の頃は日本でも大流行していた((赤痢菌を世界で初めて発見したのは日本人の医学者、志賀潔である。赤痢菌の学名「&italic(){Shigella}」は彼の名から取られている))が、現代ではもっぱら衛生状態の悪い発展途上地域の病気となっている。全世界で毎年8000万人〜1億6500万人が赤痢に感染し、そのうち60万人が命を落としているという。コワイ!
・「確率論的異常」とは、大雑把にいうと「理論上はいちおう起こりうるけど、まあ現実的な確率では絶対起きないよね」という奇跡に近いことが実際に起きてしまう異常である。例えばレアガチャで最高レアのキャラクターを10体連続で引くとか、つのドリルを10連続で命中させるとかいった、TASさんでもないと到底狙う気になれないような事象がホイホイ発生してしまうことになる。
・「フィボナッチ数列」とは、ある項の数が1つ前の項と2つ前の項の和になる数列のこと。最初の2項はともに1であり、以降は1+1=2、1+2=3、2+3=5、3+5=8、5+8=13…と続いていく。1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,…

上記にもあるようにこのオブジェクトが出現したのは2025/06/06。現実世界より少しだけ進んだ時間軸で発生した異常であり、この報告書の視点も近未来で通常運行している財団によるものである。


…この説明だけではよくわからんと思うので、少し具体例を挙げてみよう。

*具体的に考える

SCP-4946の発生当日である2025/06/06。
この日に報告される赤痢の死亡者数は、フィボナッチ数列の第1項である「1」人となる。
つまり、この日のうちに赤痢によって命を落とした人は、全世界上に1人しか存在しない、ということになる。
先述した通り、本来であれば赤痢の年間死者数は60万人であり、1日あたりで割れば1650人程度が毎日死んでいるはずの病気である。
ところが、SCP-4946が発生させる「確率論的異常」により、世界中にいる今にも死にそうな赤痢の重症患者たちは、1人を除いて全員が「奇跡的に」その日の命を繋ぎとめてしまうのだ。
結果としてこの日に予定通り(?)赤痢で死んでしまった1人だけが、死亡者数として数えられ、報告されることになるのだ。

SCP-4946の発生翌日、2日目にあたる2025/06/07。
この日に報告される赤痢の死亡者数は、フィボナッチ数列の第2項。つまりまたしても「1」である。
この日にもSCP-4946の異常性により、全世界の赤痢患者のうち1人だけが落命し、それ以外の大多数は「奇跡的に」お迎えを跳ね除ける。

以降もこの調子で、SCP-4946発生からの日数に対応したフィボナッチ数列の項の人数だけ赤痢の死者が出て、死亡者数に数え上げられていくことになる。
3日目なら2人、4日目は3人、5日目は5人、6日目は8人…と、徐々にその数は増えていく。



…さて、勘のいい読者ならもうお分かりだろうが、この異常性、''とんでもなく危険である。''
フィボナッチ数列は前2項の和を次の項に取ることから、その数は後になるほど加速度的に増える一方であり、決して減少することはない。

フィボナッチ数列の第20項は「6,765」。つまり、異常性発現から20日後には、赤痢により報告される死者数は本来の非異常性の死者数である約1650人を既に大幅に上回っていることになる。
こうなってくると、先述した「確率論的異常」は全く逆方向に働くことになる。すなわち、特に病気もなくピンピンしている人たちが、SCP-4946のせいで「奇跡的に」突如として集団で赤痢を発症し、そしてその日のうちにポックリ逝ってしまうことになるのである。

フィボナッチ数列の第30項は「832,040」。ここまで来ると、本来なら1年間に出るはずの赤痢死者数がたったの1日で出てしまうことになる。
もうパンデミックなどと言ってられる次元の話ではなくなってくる。

そして、フィボナッチ数列の第50項は、''「12,586,269,025」''。驚異の100億超えであり、&color(red){赤痢による死者数が2019年現在の全世界の人口を上回ってしまう}ことになる。
言うまでもなく、人類が赤痢によって全滅する''GH-クラス:“デッドグリーンハウス”シナリオ''の完成である。
SCP-4946が初めて発生した日から人類滅亡まで、たったの50日。
夥しい数の死者により、実際にはもっと早い段階で人類の社会機能は崩壊するだろう。
Keterクラスに分類されるのも頷けるというものである。

財団の特別収容プロトコルには''「SCP-4946は未収容です」''の一文があるのみ。
この確率論的な赤痢の暴威の前に、果たして財団に打つ手はあるのか!?




(読者の皆さんも財団と一緒に考えてみよう!)






↓以下ネタバレ


























*雑な解決策

さて、ここでSCP-4946の概要の最初の部分をもう一度見てみよう。

>SCP-4946とは、「赤痢による死亡者&color(red){届出件数}にて観測される確率論的異常」である。

お分かりだろうか。
SCP-4946が異常な確率操作により実現しているのは、1日の赤痢による合計死亡者の「届出件数」、報告値の統計なのである。
つまり、SCP-4946は発生後の日数のフィボナッチ数に応じた「赤痢の死者を発生させる」ためではなく、フィボナッチ数に応じた「赤痢の死者数を報告させる」ために確率を弄っているのである。


SCP-4946発生からしばらくした後に財団はようやくこの性質に気がついたらしく、発生27日目にあたる2025/07/02には最終的な特別収容プロトコルが確立している。
その内容は以下の通りである。

・財団フロント企業の「サニー・スカイズ分析」に、赤痢による日間死亡者数の集計と広報を担当させる。
・財団は赤痢の死亡者数をSCP-4946発生以降の日数に応じたフィボナッチ数にして公表する。''実際の死者数に関係なく。''
・もし赤痢の実際の死亡例が財団以外の第三者によって報告された場合は、その報告を死者総数に加えて良い。その時点でSCP-4946は無力化し、Neutralizedになったと見なす。

以上。

性質さえ把握してしまえば、簡単な話だったのである。
SCP-4946は「赤痢による死者数の報告」を規定のものにするべく確率を改竄するのだから、だったら''最初からSCP-4946に規定された死者数を虚偽の報告として出してしまえば良かった''のだ。

SCP-4946によって夥しい数の赤痢死者数が発生してしまう前に、財団は先手を打って夥しい数の(実際にはまだ死んでない)赤痢死者数を届け出た。
すると、SCP-4946の「死者の届出件数を規定のものにする」効果が引き続き発現していることにより、思わぬ副次的な恩恵が発生した。
既に規定の件数になっている死亡者報告数に、わざわざこれ以上の死者を加えてやる必要はない。オブジェクトによってねじ曲げられた確率は、もはや死者を出すことがないようにするために奇跡を起こした。

そう、&color(red){赤痢による現実の死者数が0になってしまった}のである。


こうしてSCP-4946の脅威は去った。
それだけでなく、患者を死に導く感染症であるところの赤痢も、ついでに根絶されてしまったのであった。

この功績を称えてか、SCP-4946のKeterクラス分類は取り消され、新たに''Thaumielクラス''に再分類されるという異例の経過を辿っている。
「Thaumiel?他の異常存在の収容には使えなくね?」と思うところだが、非異常性であるとはいえ赤痢だって立派な人類の脅威。それを抑え込めるのであればこの分類でも納得はいくというところである。
そもそも特別収容プロトコル制定までに27日かかっているところを見るに、それまでは現実に少なくない数の赤痢犠牲者が出ていたようだし。((フィボナッチ数列の第1項〜第26項までの総和が317,807なので、おそらくそれと同数の死者が出たものと思われる。サツバツ!))
「こまけぇこたぁいいんだよ」で済むか。



…さて、ここでもう一つ別の問題が浮上した。
「SCP-4946に規定された数の死者をでっち上げて報告する」のは良いのだが、その規定数はあくまでフィボナッチ数列に従って増加している。
つまり、SCP-4946の発生から50日後の2025/07/25には、先述した''世界人口を超える数の赤痢死者数をでっち上げて報告''しなければならなくなる。
いくら書面上の死者数とはいえ、こんな報告をして一般社会から不自然に思われないようにすることなんて果たして可能なのだろうか…?
致命的な赤痢症例の消失については財団諜報部ΘU-4946が一般市民の誤誘導に当たっているとの記載があるが、こちらの問題に財団がどうやって対処するつもりなのかは残念ながら報告書からは読み取れない。
まあ、情報改竄は財団の十八番なんだろうし、多分どうにか上手くやれる公算はあるんだろうが…気になるところである。


#center(){&sizex(7){&bold(){SCP-4946&br()&br()&ruby(あなた は “赤痢” で 死にました){You Have Died of Dysentery}}}}

…たぶん書面上だけの話だろうけど。


*余談

この報告書の原文は、数あるSCPたちの中でも指折りの短さを誇る。
その気になれば''スマホのスクリーンショット1枚に収まる''ほどである。
一見の価値あり。

また、このオブジェクトは当初は「SCP-4947」に投稿されていた。
しかしなんらかの事情があったらしく一つ前である現在の「SCP-4946」に移動されることになり、現在「SCP-4947」には同一作者による別の記事が投稿されている。


追記・修正は赤痢にかかったことのある人にお願いします。

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#right(){
SCP-4946 - You Have Died of Dysentery
by UraniumEmpire
www.scp-wiki.net/scp-4946
ja.scp-wiki.net/scp-4946(翻訳)
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- 報告ってどこにするんだろう…国連?WHO?1/1の死亡者数が1/2に報告されるとしたら先手打って1/1-23:00とかにフィボナッチ数に基づいてでっち上げて報告しちゃえばいいってことかな。  -- 名無しさん  (2019-03-03 23:44:11)
- 50日でKクラスってやばくね?→むしろ年間60万人の犠牲者を救える有能オブジェクトだったでござる  -- 名無しさん  (2019-03-04 09:44:00)
- ただ死者が出ない分食料とか他の問題が出てきそうな気もするが…  -- 名無しさん  (2019-03-04 20:14:26)
- ↑赤痢で死なないってだけでSCP-3984みたく死ぬことができないわけじゃないからへーきへーき  -- 名無しさん  (2019-03-04 22:10:47)
- 数年したら電子上ですらでっち上げが不可能になってそう  -- 名無しさん  (2019-03-04 23:25:06)
- 1年立つと書類上の死者が8531073606282249384383143963212896619394786170594625964346924608389878465365人になります…どう誤魔化すんだこれ  -- 名無しさん  (2019-03-04 23:31:45)
- 誤魔化す必要はないと思う。死者を出さないのが大目的で死人が出ないなら出鱈目な公表してるってバレてもいいじゃん。公表すら不可能な巨大数になる前に対処する必要はありそうだが  -- 名無しさん  (2019-03-05 00:34:26)
- ↑LV-クラス:捲られたベールシナリオに繋がるじゃんそれ   -- 名無しさん  (2019-03-05 09:37:58)
- 確率論的異常が上記の通りの内容だとするなら、世界の総人口がいきなり倍増するなんてことは確実にないだろうから総人口まで数値が増えたあとは毎日総人口ぶんの届出件数になるんじゃないか?  -- 名無しさん  (2019-03-05 09:47:17)
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