日本海外旅行(笑ゥせぇるすまん)

登録日:2021/10/17 Sun 20:47:49
更新日:2021/11/08 Mon 05:56:22
所要時間:約6分で読めます





「日本海外旅行」は「笑ゥせぇるすまん」のエピソード。
雑誌初出は1971年の「週刊漫画サンデー」と初期であるが、単行本初出が1999年に刊行された「帰ッテキタせぇるすまん」1巻と長年日の目を見なかった話である。
アニメ化は「笑ゥせぇるすまんNEW」12話Bパート(こちらのサブタイトルは「ニッポン海外旅行」)と、作品全体のラストエピソードとなっている。

本作が発表された1970年代前半の日本は、高度成長期で国民が経済的に豊かになっていたものの、海外旅行については予算的な面で一般庶民には敷居が高く、農協のパックツアーや東南アジアなどへの買春ツアーが主なものだった。
今回は、そんな時代の中で海外旅行をしたくてひたすらお金を貯めている女が喪黒にひっかかった話である。


【あらすじ】

鈴木(島井)ちか子は旅行代理店の店頭で広告を物欲しそうに眺めていた。


「お嬢さん!海外旅行に行かれるつもりですか?」
喪黒福造が声をかける。
突然声をかけられたことで、ちか子は早足で逃げようとするが、喪黒も後を追いかけ、さらに殺し文句を言う。


「おしいですなあ。すごく格安のがひとつだけあるんですが」


ちか子はこの言葉を聞いて食指を動かし、振り返ってたずねる。

「格安って、どのくらい安いのッ!?」

二人は喫茶店で話をすることにした……


【登場人物】

CV:玄田哲章
おなじみ笑ゥせぇるすまん。
今回は初期の話ということで、ちか子を積極的に罠にはめてくる。

  • 鈴木ちか子(漫画版)/島井ちか子(アニメ版)
CV:水樹奈々
29歳(漫画版)/36歳(アニメ版)のOL。吊り上がった糸目に眼鏡というさえない容貌。
親からは結婚しろとうるさく言われ、会社の同僚からはケチと言われながらも、海外旅行のために必死にお金を貯めている。
アニメ版で確認する限り、貯金額は約79万円。それだけあったら近場の格安旅行なら行けそうな気がするが
ちなみにアニメ版で苗字が違うのは、トークショーでの監督曰く、『おしまい(NEWアニメの終わり)が近い』という意味を込めて変更したとのこと。水樹奈々が演じたキャラで一番のブス







【顛末】
喫茶店にて、喪黒は社会福祉団体の一員として、海外旅行を計画したと語る。


値段をちか子がたずねると、
「アジア・アメリカ・ヨーロッパ周遊で5万円です」

「ご、5万円!?」

アニメ版では、ちか子の大声で客が一斉に振り向く。
ちか子は50万円の間違いじゃないかと喪黒に問うが、喪黒曰く、本当はタダでもいいが、参加料として(アニメ版では事業としての体裁を保つためとして)5万円にしたとのこと。
「わ、わたし参加します! いえ、参加させてください!」
ちか子は乗り気になってしまう。
「おや、さっきはあまり海外旅行に関心がないように見えましたが……何しろわたしどもも出血奉仕なので、値段だけにつられるような方のご参加は……」
喪黒もご遠慮をちらつかせる。これに慌てたちか子はもっと話が聞きたいと喪黒に懇願する。
アニメ版では、ここで遊園地の観覧車に移動。

「本当はわたし海外旅行することだけが今の夢なんです!」
ちか子は今の年になっても彼氏もおらず、上記のように親からは結婚しろとうるさく言われ、会社内ではケチと言われる日々を送っていた。
「でもわたしは男なんかより世界中を旅行して本当の自分を見つけたいんです!」
「みんながわたしをケチと呼んでいるのも知っています。でもそれはわたしが海外へ行くために必死に貯金をしているからなんです」


「いやーーよくわかりました!」
喪黒がOKを出す。
「あなたのように海外旅行に夢をかけていらっしゃる方に参加していただきたかったのです!」




その後、ちか子は仕事中でも、漫画版では飛行機に乗り込むところ、アニメ版では逆に飛行機から降りたところを歓迎されるという夢想に浸り、思い出し笑いを浮かべていた。
同僚のOLたちも、そんなちか子の様子を不思議がる。
「男じゃね?」
男性社員の一人が推測するが、OLたちは「ないない」と否定する。
「いやいやいや、今の世の中何が受けるかわからんぜ」
そんな時、ちか子に男からの電話がかかってくる。
「ああ~、喪黒さん! 先日はどーも! え……19時にマノス……魔の巣ですね…」
みんな呆気に取られていた。


BAR「魔の巣」にて二人は落ち合う。
「フフフ…会社の人たち喪黒さんのことを私の彼氏だと思ってるらしいんですよ」
「ホーホッホッホッホ。そりゃまた光栄ですな」
喪黒にどんなところへ行きたいかを尋ねられると、ちか子は「フランスやスイスなどの風景の素晴らしいところ」と無難な答えを返す。


「ジーーッ」

喪黒が無言のまま見つめる(アニメ版ではさらに肩をつかむ)のに対し、ちか子はうろたえるばかり。
「ちか子さん。あなたはすばらしい風景を見るために海外へ行きたいのですか? あなたの目的はもっと他にあるでしょう?」
「な、何をおっしゃるんですか!?」
「わたしに隠してもダメです! ほんとのことをおっしゃい! ドーーーン!!」




喪黒のドーン!に当てられたちか子は本音をぶちまげる。


「そうよ! わたしの本当の目的は海外へ行って外国人の男を彼氏にすることだわ!」

「日本にいたら全くもてないわたしだけど、海外へ行けばわたしだって日本人の女だからということでチヤホヤされるかもしれないし、それでもだめなら、今まで貯めた貯金…強くなったという日本円の力を借りることにするわ!」
「そしてその彼と恋人同士のようにしている写真を撮りまくって、今まで散々わたしをバカにしてきた会社のやつら全員に送り付けてやるのよ!!!」


翌日、ちか子は海外旅行のために会社に休職届を提出する。社会福祉事業に参加したということで社内からも評価られ、部署内では貫禄がついてきたと言われるほどだった。



+そして出発当日……
パスポートやビザの取得、予防接種の注射などしかるべき準備を済ませたちか子は、高級そうなスーツを身にまとい、待ち合わせ場所である銀座の高級レストランへ向かう。
レストランに入って「もう外国へ来たようだわ」と興奮するちか子は、喪黒が座ってる席に案内された。
ちか子が他の人はどうしたと聞くと、喪黒は「厳しい資格審査を通ったのはあなた一人だけ」と答える。
チャーターした飛行機などはどうするのかとたずねるちか子に、喪黒は「どうせ飛行機なんかいりませんから」と言う。

「ちょっとおことわりしておくのを忘れましたが、わたしどもの企画は日本国内、それも東京での世界一周旅行というわけなのです」
そう、東京では世界中の雰囲気(グルメ)が味わえるということで客に世界のグルメを楽しんでもらおうという詐欺心づもりだったのだ。
パスポートを取ったり予防接種をしたのも海外旅行へ行く気分を出すための余興だという喪黒にちか子はつかみかかるが、喪黒は「そんなはしたないことをしたら日本の恥になる」という。
「わたしどもは約束は守ります。この東京で、充分あなたの海外旅行の目的を充分にかなえてさしあげます」
喪黒はそう言うと、メフィストなる男(CV:梅津秀行)を呼び出した。
メフィストは挨拶をした後、手にキスをしたりちか子に頬ずりしてすり寄ってくる。ちか子は抵抗もできずになすがまま。
何はともあれ、ちか子は外国人の男を彼氏にするという目的を果たしたのであった……
「ちか子さん。どうか彼といっしょに海外旅行をエンジョイしてください」

+そして……
漫画版では羽田空港、アニメ版では成田空港にて。
ちか子がメフィストに有り金をだまし取られてドロンされたというニュースが流されていた。さらにアニメ版では黒ずくめの男が絡んでいるとも報じられた。
喪黒はそんなニュースを尻目に、無言でアメリカ行きの飛行機に乗っていった。
いつもの締めの台詞もなく、アニメ版で「ホーホッホッホッホ」と笑うのみで……



【余談】

  • 海外旅行をするときは、いいカモだということで日本人は何かと犯罪のターゲットになりやすいものです。スリ、病気、レイプ、殺人……これらの犯罪に巻き込まれないよう、治安の悪いところへ興味本位に近づいたり、下心を持って夜の街へうろつかないよう、充分に気を付けましょう。

追記・修正は下心を持たずに海外旅行ができる人がお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2021年11月08日 05:56