青井葦人

登録日:2025/07/04 Fri 18:59:42
更新日:2025/07/04 Fri 19:07:09
所要時間:約 10 分で読めるけん





ありがとう、福田のオッチャン。俺をここに連れてきてくれて。
この試験に受かっても受からなくても…
俺は絶対プロになるぞ!!!

青井(あおい)葦人(あしと)は、漫画『アオアシ』の主人公。

作中では、名前は基本的に「葦人(アシト)」とカタカナのルビを振られる、あるいはそのままカタカナで「アシト」と表記される。
作品外の文章では大抵「アシト」と表記されるため、当記事中でも基本的にそれに倣う。
ただし「名前の表記が特殊」なだけで「いつも名前で呼ばれる」わけではなく、名字の「青井」で呼ばれる場面も多い。

アニメ版CV:大鈴功起
舞台版キャスト:杉江大志(2019年版)、あおい(2022年版)

人物

愛媛県双海町(伊予市)育ち。
訛っているが、「~やろ」「~けん」など、伊予弁がわからなくても読解できる程度のものに留まっている。
母の紀子と兄の瞬と3人暮らしの母子家庭。幼い頃から母子家庭であるようだが、父親については一切描かれておらず経緯も不明。

モジャモジャの天パ頭で、作中でも頻繁にイジられる。

陽気で人懐っこい反面、我が強く我慢のきかない性格で、幼少期はそのせいで周囲との軋轢も強かった様子。
「◯◯の生まれ変わり、それが俺! ◯◯死んでないけど!」*1など大言壮語するのが口癖だったが、現実を思い知っていくにつれてあまり言わなくなった。
基本的に単純馬鹿で、本編内では直接触れられないが勉学も最低レベル。
食事のプロ意識など当然皆無で、スポーツ医学を志すヒロイン・一条花に献立を押し付けられることに。

Jリーグには全然興味がなく、W杯で日本代表の試合よりビッグマッチを観たりしているような典型的な行儀の悪い欧州サッカーファン
とはいえ、さすがに日本代表クラスであれば顔と名前は一致する模様で、当然プロへの敬意はちゃんとある。
物語後半ですらネット上で観れる試合もハイライト映像ばかり観てるという描写があったりと、そのへんは大分不真面目。

一方、サッカーに夢中になると何もかも顧みずに打ち込みすぎてしまうきらいがあり、
花はプレーの雰囲気に加えそうした部分に若き日の義兄・福田達也の面影を見ているが、それは「『衝動のままに進んだことで選手生命を絶たれた』福田のよう」ということであるため、危うい雰囲気を感じた時には引き留めるよう努める。
アシトはそんな花の気持ちも顧みることができず、何度も突き進みすぎてしまうことになるが……。

エスペリオンユースでの背番号は33。


来歴


我の強い性格のせいでどこのサッカークラブに行ってもすぐハブられたり追い出されていたが、双海浜中学サッカー部では受け入れられ、弱小チームながら楽しくサッカーをしていた。
根っからのサッカー少年のため一応「プロになりたい」という夢は持っていたものの、漠然とした夢にすぎなかった。
中学最後の県大会ベスト8、アシトがひたすら攻めるワンマンながら優位に進めたものの、アシトと顔見知りである対戦チームの選手が挑発目的でチームメイトを嘲笑、さらに母親を水商売と揶揄されたことに耐えかねて頭突きをかましてしまいレッドカードで退場、そのまま敗戦。
愛媛の有力校からサッカー推薦を検討されていたが、それもこの件でおじゃんになってしまう。

しかし、たまたま帰郷して試合を見ていた福田が、プレーに興味を持って声をかけてくる。
基本の出来ていないアシトに基本技術の一つ「コントロールオリエンタード」を教えるも上達が見えず見切りをつけかけたが、
最後に一つ気になっていた「異常にボールを回収できる理由」を問い質した時、アシトが信じられない回答を見せたことで考えを改めた福田は、セレクション(入団試験)の応募用紙を渡して去る。

貧乏暮らしで、そんな突拍子もない話で息子を東京に行かせるなどもっての他の青井家であったが、「1日行って受けるだけならたいしたことじゃない」と言って兄が工面してくれたお金でセレクションに向かい、
ユース生の異次元じみた技術で現実を見せつけられ、さらに場違いな甘ちゃんぶりに腹を立てたユース生の阿久津渚に心身共に痛めつけられて心を折られかけるも、奮起して合格。

しかし、県内有力校のサッカー推薦候補、地元ではワンマンで無双したアシトの基礎技術は、日本最高の育成組織・エスペリオンユースのレベルにおいては無に等しかった。
また、「『個人戦術』『インテリジェンス』という概念が存在せずどこまでも『勘』でしか動けない、ユースでは通用し得ない選手
とヘッドコーチの伊達望、サッカーオタクお嬢様の海堂杏里両名から酷評され、チームメイトのユース生からも最初の紅白戦で見限られる有様だったが、
望のもとに即日直談判して助言を仰ぎ、仲間たちの協力もあって飛躍的な成長速度で「止めて蹴る」技術を(Bチームでギリギリついていける程度まで)改善。
今度は戦術面の欠如によって同じ左サイドの浅利・黒田から全否定されるも、試合の土壇場で連携の基本「トライアングル」を急速に理解し、
予想を裏切って早々に、「サッカーができる」スタートラインへと立ち始めた。


俯瞰の目

アシトの唯一の取り柄である特殊能力。
度々「イーグルアイ」とも別称されるが、比喩・イメージとしては多くの場合は鷲ではなくカラスが出てくる。

文字通り、ピッチ上を空から俯瞰するように把握する才能。
試合が終わってから、特定の場面におけるピッチ上の22人全員の配置をその場で迷わず書くという、常識では考えられないようなことが可能。
しかし、これはNHKの特番でシャビに同様のことを実験させ、シャビは全員とはいかないまでも大半を正確に書いてみせた……というエピソードが作中で引き合いに出されていて、現実の延長線上にある能力として描いている。

バーのママをしている母に女手ひとつで育てられた関係上、幼い頃は母が帰れるまでバーで過ごすことがよくあり、日夜暇潰しに店の中で兄とドリブルごっこをしていたのが成長に繋がった、と作中では推測されている。
こちらはイニエスタが似たような経験をしていたというエピソードがあわせて言及されている。

そのため幼少期から能力を体得していたが、特別な能力という自覚がなく、ろくな指導も受けず仲間も頼りにならない中学時代には漫然と能力を使っており、こぼれ球の来そうな場所を予期する程度だった。
なおアシトの場合、サッカーにおいて視野を確保するための行動でシャビも物凄い数を行っていた「首振り」は良くも悪くも人並みにしかやっておらず、その状態でも能力は普通に使えているため、(後に意識的にやるようになったが)首振りは必須ではない模様。
また、日常生活でも無意識に視野・認識を広く取っており、突然「いつもの通り道にある赤い看板の数」を聞かれても正確に答えられるほど。
セレクションやユースのハイレベルな環境に置かれたことで自然とその能力を活かし始め、盤面からゴールへの道筋を描いてそのために動くプレーをするように。
冴えている時は22人の「次の動き」までを予測する、未来予知じみた能力へと開花し始め、点を獲るためのイメージを広げていく。

フィニッシャーの位置に…自分を持ってくればいいだけだ。


しかし――



コンバート


DFに転向しろ。

お前に適任だ。言っておくが、一時的にDFをやれとかそういう次元の話じゃないぜ。
今後一切 お前をFWでは起用しない。

その矢先に福田から告げられたのは、DF……サイドバックへの強制コンバートだった。
アシトの能力ではFWとしてはプロどころか高校全国大会の1~3回戦レベルが限界と断じられる。
まず足元で収められない致命的なボールコントロールの下手さ。これは改善の余地も否定していないが、
何よりの問題は、スピードの最高速はあるがアジリティ(俊敏性)やショートスプリント(加速力)が「ない」という生まれ持った身体的才能の欠如
一般的にパワーのない小柄なFWの多くにとってこれらは最重要能力であり、「ない」という評価はかなり厳しいだろう。

ただし、セレクションの際には「フィジカルテストで全体(受験生86人*2)の20番目」と結構高い評価を受けていた。
スタミナに関しては初期から度々、非常に優れていることが示唆されており、スタミナ+トップスピードの部分で稼いだのだろうか。

福田は初めからFWをやらせる気は全くなく、理想のチームのSBを埋めるピースとしてアシトに声をかけており、
基礎が絶望的なアシトに、慣れたFWのままでまずまともにプレーするための最低限の基礎を学ばせ、やっていける見込みが芽生えた段階で宣告するという予定通りの展開だった。

ショックを受けるが、絶対にここでプロになると決めた手前、望まぬコンバート程度で投げ出すなどできなかった。
こうして(これまでは問題にはなっていなかったが)守備なんてキョーミなしの典型的な俺様FWだったアシトは、左サイドバックを新たな戦場にして、本当に一から守備を学ぶ。

当初は「SBで上手くやっていけばFWに戻してもらえるかもしれない」という欲があり、隙あらば得点を狙ってアピールしようとしていたが、
「フィニッシャーの位置に自分を持ってこようとするのは、やめろ」と福田から早々に諌められる。
しかし、指摘される頃にはアシトもその言葉を受け止める素地は出来てきており、そこからSBとして自然に自分の力を発揮できるようになっていった。


福田が出会った時に見た「サイドバック・青井葦人」のイメージとはつまり、サイドバックにして司令塔
ピッチを最も広く見渡しやすいのがサイドバックであるという点に着目したこれは、現実でも2010年代から流行していった概念。
加えて、福田の夢を共有する栗林の言葉から「攻守コンプリート」……文字通り攻守両面を完璧にこなすサイドバックについて考えるようになる。

基礎的な守備技術を身に着けた後の主なテーマは「俯瞰の目を守備に活かすこと」で、攻守コンプリートへの道をここに見出していた。
攻撃に比べて守備では理論に縛られやすく、SBが板についた後もなかなか形にならなかった。

慣れてきてからも概ねサイドバックとしての左サイドからの攻め上がりを中心としていたが、
大一番の青森星蘭戦、同じ俯瞰の目を持つ天才・北野蓮との対決が最後の一押しとなり、
中で試合を作るサイドバック」、いわゆる偽サイドバックとしてのプレースタイルを確立。
福田としてはアシトがサイドを居場所としたまま司令塔になるのか、偽SBになるのかについては静観のスタンスを取っていて、自分で答えを掴むまでそこには一切手を付けなかった。

このあたりでは既にエスペリオンユースのレギュラーとして認められる存在になったアシトだが、技術面に関しては最後まで一貫して評価は低い。
まあ、これに関しては比較対象のレベルがアシトのステップアップと共に上がり続けているせいでもあり、
ほぼ素人だったユース入団から1年足らずで、世代のトップレベルの場で最低限通用する程度まで成長しているのだから、相当伸びているのは間違いないのだが……


余談

『実況パワフルサッカー』のコラボでアシトが実装された際には、新規の金特殊能力として「イーグルアイ」が登場。
その後、バルサとのコラボでイーグルアイ持ちのシャビが実装されるという元ネタ(?)との逆転現象が起こっていた。



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最終更新:2025年07月04日 19:07

*1 当時存命の人物を挙げることが大半だが、プスカシュ(06年没)を挙げた時はちゃんと前半部だけだった。

*2 彼らもアシト同様エスペリオンが名指しで招いた選手であり、フィジカル面で能力が低いとは考えにくい。