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ダンゲロスSS上海
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ダンゲロスSS上海

暴と秩序

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dangerousss_shanghai

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あいつがくるぞ、あいつがくるぞ。

ピンチになればやってくる。
どこからともなくやってくる。

覚悟しろ、覚悟しろ。

ハッピーエンドがやってくる。

足音立てて、やってくる。

――――魔人カーメン第一話『万有引力』より


◆【オーメン(omen)とは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:前兆。きざし。特に、よくないことが起こる前兆】◆


歌が聞こえる。

魔■■の殿上で。
何故歌が聞こえてくるのかには意味はない。
ただ歌うだけのことに。衝動のままに歌うことに意味など求めるものではないのだから。

「私はね!なりたいんだ!■■■!」

歌が聞こえる。
少女の希望の歌が。私に笑いかける少女が歌うのぞみの歌が。

「この国に!私たちが暮らせるように!!」

目を閉じれば思い出す。
思い返せば思い知る。
あれこそが、あの日々こそが。
宝石のようにきらびやかであったのだと。


「あの■■■■みたいな、皆の拠り所になれる『ヒーロー』に!!」


とおい、きおくである。


◆【在摇滚中焕然一新とは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:ロックで新たに生まれ変わる】◆


「なんで私・・・こんなことになっちゃってるの~~~~!?」

ドーモミナサン、大戦持A子です。
お元気ですか、私はNO元気です。

「しかし、ハンターたるもの、常に細心の注意を払っていなければなりませぬ」
「そうですとも」
その言葉に頷き、長い顎鬚をしごくおじいちゃん。
「不用意な発言は命取りになりますぞ」
「そうだトモ」
その言葉に頷き、長いチャイナ服の袖をしごくアフリカ人。
「では、お互いに気をつけましょうぞ。このような場所であればこそ、いつ誰が聞き耳を立てているか分かりませんでな。…ところで、あの噂――――」

やたらと不穏な会話。やたらと不穏な人たち。あとなんかゴリラ。
はではでしい雰囲気で覆い隠せないくらいに不穏で剣呑でNONNONな会話。

拝啓、お父さんお母さんお姉ちゃんお兄ちゃん弟に妹。
今私は、カジノでバニーガールをやっています―――――

きっかけは話すと少し長くなるぞ。
プロローグの後、気が付いたらかばんがない。
パスポートもない。
サイフもない。
お金がない。

      • 以上!!

「ハァ・・・」
カジノの裏で『魚肉ソーセージ』と『乳酸菌飲料』で一休み。
なんかどこぞの魔法少女とのタイアップだったのだが食品とのコラボに関しては絶大な不人気のためやたら在庫が余っているそうだ。
そのためその辺のコンビニでタダ同然で売っている。ラベルが古すぎて擦り切れてるため賞味期限を見るのは怖くて目を逸らすことにしている。

しかしカジノの傍にコンビニってちょっと台無しではないだろうか。まあどうでもいいけど。

「おかげで飢えて死ぬことはないし、此処にいる限り雨風もしのげてるけどさあ・・・」
それにつけても金が欲しい。金がない限り上海を出ることもままならないのだ。
この件が片付くまで出る気はないとはいえ片付いたらすぐ出ることができるようにしておかないと色々が色々である。

「吾輩もそろそろギョニソ以外のものを食べさせて欲しいんですけどねえA子や」
「それか早く私を魔幇に引き渡して貰えませんか?」
そう言いながら私の頭の上でもしゃもしゃとギョニソをかじる亀。

「うるさいね…あなたみたいなしゃべる亀、確かに珍しいしキラキラしてるけどさあ」
「流石にあなたが『ダイヤ』だなんて信じないよ?」
こんな珍生物をあなたが求めていたものです!とギャングのボスに渡してみてごらんなさい。
ただでさえ仕事に失敗している身だ。ナメてんのかオラとビートたけしの映画みたいな目に会わされるに決まってる。
亀甲縛りでこの亀と共に上海の藻屑と消えるのはごめんである。
亀とともに去りぬ。やかましいわ。

「清王朝のダイヤって話なんだからさすがの亀でもまだ生まれてないでしょ?」
「そもそもこうやって頭にのっけてブラついてるのにだーれも近寄ってこないじゃない、探されてないでしょ、あなた」
「本当なんだがねえ…」
まだなんか言ってる亀にデコピンで返す。

「さ、午後からも頑張りますか…」
億劫だなあとは思いつつも夕方からは大人の時間よということで自由時間だ。
私も望めば夜勤できるそうだがセンパイのお姉さまたちと太客の取り合いになるのは流石に胃が痛いし貞操も惜しい。
ダイヤのことについて多少調べに行くくらいは出来る…

と。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「♪嘘だと言ってよバーニィ、ハッハ~♪」
テコ、テコテコテコ・・・

なんか、バニーガールの幼女があるいてきた。
『逆』の方の。

「じ…」

「じ?」

「児ポ――――――――――――――――!!!」

「うわあ!?いきなりなんなんだぞお姉さん!?」


◆【児ポとは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:児童ポルノの略。えっちなのはいけないとおもいます。】◆


このカジノ、パスポートもない私をいきなり働かせられるからもしやとは思っていたけど相当な闇らしい。
まだ明らかに女子小学生、それも低学年の女の子にさせていい恰好ではない。
夜勤しなくてよかったなあ…

「…あのねキミ?よろしくないんだよこういうことは?」

「なんでだ?カッコいいんだぞこの恰好!」
ズビシ!!
「『きっと魔人ガンバル~ポケットの中のチェンソー~』に出てくるバーニード・アイスマンにソックリなんだぞ!」
「あまりよろしくないんじゃないかな!?何らかのなにかに引っかかるんじゃないかな!?」

そういいながら教育に悪そうな決めポーズを決めてくる幼女。
当人が気にしてなさそうなのが救いだがいくら何でも気にしなさすぎる。大丈夫かいろいろと。
あとそんな恰好でそんなポージングする奴は恰好よくはない。断じて。

「いくら何でもこんな子まで働かせなくても…」
「は…」
「?」
「ハタラク…?」
「ただの不法侵入者(コスプレ)?!」
まさかの一般通過逆バニーなのこの幼女!?

いや、まあ。こんなゴリラとアフリカ人の闊歩するカジノにうろついてる時点でただのコスプレではないけど。
しかしこれは…! 私は思わず幼女の肩を掴み、その目を見つめる。

「?」

その目には光がなく、ただ虚ろに私の目を見返していた。

「この路地裏が暗いからそう見えるだけじゃないですかねA子や」
「おヌシの目もどっこいどっこいですよ?」

頭の上の亀がそんな事を言ってるがシカトする。

そして私は悟った。この幼女がどういう環境で育ってきたのかを。
いやまあ、なんとなく察してはいたけども!!
このカジノの周りはみんな目が死んでいるのだ!!
そしてそんな死んだ目をした人間を食い物にしているのだ!!このカジノは!

「偏見がひどいですねえ…」
「あとそろそろ心の声がダダ漏れてることを指摘してあげたほうがいいのでしょうか?」

「そんなことないんだぞ!!」

私の手の中でもみくちゃにされながら幼女はぷんすことしていた。
「別に私は『幸せ』に暮らしているんだぞ!」

「あ、ああうん、ごめんね?」
そっか…まあ、この上海はクソ治安だしロクでもなさそうだけど。
ちゃんとこんな…まあ、割としっかりした服まで着ているってことはそれなりなとこの子ではあるのかな?
可愛がられてはいるってことかなあ…少なくとも私よりは…

「そうだぞ!愛の魔人レインボー魔人も言ってたんだぞ!」
「愛は、最強なんだぞ!」

「はは…」
微妙にかみ合わない会話に苦笑い。天真爛漫と言っていいんだろうか?服装が何もかも台無しにしてるけど…

そんな風にしていると、後ろから気配がした。
「あ゛」

やべえ!パイセンだ!!
ひょっとして…もうお昼休みブッチぎっちゃってましたかァーーーー!!?

「あああああすいませんすいませんさぼってたわけじゃないんです!!」
幼女を片手に振り回しながらわちゃわちゃと言い訳をする。

ガシッ!!

「ひいいっ!?」

肩を掴んできた!?そんなにマジ怒りなの!?

と。

「ぱふぁ」

目の前のセンパイの口が。

通常の『13倍』はあろうかという大きさまで開かれた。

「え――――――――」

「お姉さん!!」

そして。
ぐいっ、っと体を引っ張られるような感触がして体が動いたと思うと。

ばぐうううん!!!

さっきまで私がいた場所がセンパイの口によって。
『なくなって』いた。

「な、な、な、な…!!!?」

ぐちゃ、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ…ゴクン。

「トローリトロケル!!」

「なあああああああああああああああ!!!?」

そのまま幼女に腕を引かれて離れる私。

「あ、あれ!?アレアアレアレアレなに!?ナニなにナニ!!?」

「…ッ!!魔幇幹部謹製の『嘉隷奴匆抗夫(カレー・ド・スコープ)』だぞ!」
「魔幣(マルシェ)印のカレーで嘉(よろこび)を感度13倍に増幅されて奴隷化した兵隊たち!」
「最近抗争の時に現れては暴れまわってる奴らなんだぞ!!」

「そんなのまでいるのココォ!?」

治安が終わってるとかそういうレベルじゃないよ!
世紀末だよ世紀末!アポカリプスなう!!

「ッポぉ―――――う!!!!!」

「今度はナニィ!?」

路地裏から出てカジノの表まで出るとそこは地獄絵図だった。
バニーガールのパイセンたちや黒服のお兄さんたちが尋常じゃない力で周囲にカレーを食わせまわっている…!!

その中心にいるのは筋骨隆々のラガーマン。
胸元には『谷翔平』とデカデカと書かれているが…?

「私はぁ!」
「魔幇実働部隊ィ!!鉄砲玉部門!!謎の野球選手『O』デース!!」

「なぜそこで野球!?」
魔幇ってギャングだよね!??

「このカジノにぃ!!『ダイヤ』があるのではという情報がながれマーシタァ!」
そんなことは気にせずカズダンスを…カズダンス?いや古いな?しかもサッカーだな????
「よッテェ!!」
ズビシィ!!
「このカジノを今から『まっ平ら』にしまァす!!」
「探しやすいようにネぇ―――――!!!」
「いけっ奴隷ドモ!!」

ゴバカァッ!!

そんなとんでもない発言と共に周囲の嘉隷奴匆抗夫達が爆発するように『13倍』の大きさに膨れ上がると。

「遅え!!」
「眠てえ!!」
「五月蠅え!!
「抜かせ!!」

「そして何より――――」

「カレー臭え!!」


ボッ!!


熱を帯びているかのような怒声とともに。
周囲が本当に『熱を帯びた』――――


◆【Burn new win rockとは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:新しく勝利の音を燃やす。いわゆる処刑用BGMとしての造語】◆


「――――おう!!ビンゴだぜ『電梟』!」
「カレー臭え奴隷どもだ!」
『うひひっひひひ…み、みつけられたんだよ?』
『彼女とのコラボカレーの影響で売り上げはガタオチ』
『こんな場末の鉄砲玉にいいようにされるまで落ちぶれたんだあよ』
「幹部の方は抑えに行ってるんだろ?じゃあここで実働部隊を潰せば――――」
『ハイ・クラス(※上海スラムで当然、という意味)!カレー部門、これにて壊滅するってわけだあよ!』

劉炎嵐は、怒っていた。
男は上海一の喧嘩屋である。
故に荒事には人一倍敏感であった。

「魔幇よぉ、ちょっとオイタが過ぎたみたいだなあ!!」
「上海イチのマフィアだからって…チョーシくれてんじゃねえぞ!!」
故に殴る。
男にはそれが出来る暴力があった。

「おーう!すさまじいー!!これはやってられませんですねー!イケ、奴隷ども!」
「「「「「「トローリトロケル!!」」」」」」
故に逃げられる。
男の強さは上海に住むものならば誰もが知っているのだから。

「…チッ!?奴隷どもを残して逃げやがったか!?」
爆発と見まごうかのような炎が吹き荒れる。

魔人能力とは心象の発露、願いの発現。
男の怒りを表すその異能名は『THE・炎怒』。

異能名も心象も願いもシンプルに骨太に明快なその男は。
名前の如き炎嵐となって。

「どきやがれぇっ!!」

カジノ内に吹き荒れた。


◆【Rejuvenated with rockとは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:音楽で生き返る。音楽で元気になる。音楽が流れることにより状況が変化することを意味する造語】◆


「ぬわ―――――!!?」

物情騒然、拳乱豪火、浴び凶漢。

拳と炎が乱れ飛び凶漢が舞い落ちてくる。
カレーとバニーの舞い踊る空間においてあまりにも一介の社会人(未満)は無力であった。

「に、逃げよう!!」
「え、お姉さん!?」

そうしてA子は幼女の手を掴みここから逃げようとする。
だが。

「トローリ!!」「トロケル!!」
「あッ!!?」

カレーたちにその動きを見咎められたのか、炎嵐からA子たちに二人ほど矛先が向いた。
逃げられない。逃げられない。逃げられない。
そう悟ったA子は亀と幼女を抱えて何とか盾になろうとする。

それを。
「逃げんなぁ!!!」
見咎めずに逃がすまいと炎嵐が炎を放つ。

「ハァウス!?」「ジャワッ!!」
カレーを焼き尽くさんと炎が迫り、実際に焼き尽くし、膨れ上がり―――

「ひっ…!!!」
こちらの方まで迫ってくる。
状況は悪化の一途。カレー二人からすら逃げられなかった彼女がそれらをたやすく呑み込む炎にあらがえるわけがない。
盾にすらならない。盾にすらなれない。涙をながそうにも眦(まなじり)から蒸発するその熱量を前に。
この圧倒的な暴力の前に。あまりにも無力。

と。

「え…」
ぐいっ、っと体を引っ張られるような感触がして体が動いたと思うと。

ぽーん、と。

その場から私の体が動き。
さっきまで私がいた場所が。
「あ、あ…」

『なくなって』いた。

さっきまで腕の中にいた幼女が残ってて。
腕の中にいたはずの幼女を残して。
A子の瞳に。
炎に呑まれて消えていく姿が残した。

A子の瞳は、その風景を無彩色に残していた。
何も輝きを返さない、石ころのように。


◆【Rockとは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:体制に対する反乱、政治・社会的問題、芸術、恋愛、哲学など、幅広いテーマを持たせた音楽。もしくは石のこと。】◆


「…ちっ!!結局逃がしたか!!」

めんどくせえ。
自身が上海一の喧嘩屋という自負がある。
その莫大な経験値が保証する。
拳を交えればその実力もある程度は予測がつく。
こいつらはカレーで多少増幅されただけの一般人だ。

「死なねえように加減して『怒る』ってのは…やりにきいもんだなあオイ…」

慣れない怒り方のせいで多少気疲れを起こしてしまう。
怒るにしても趣味はある。
こんな生煮えみたいな炎は俺の炎じゃない。

「とっととこんな事態は焼き尽くしちまってよお!例の大会にでもスカーっと出てえなあオイ!!」

そう言いながら腹をボリボリ掻きながら野卑にカジノを出ようとする。

とりあえず死にだけはしないように整えてはやり、後は救急車にでも任せるとする。
こちらに向かう道中でオッサンからもらったリンゴを懐からだし、乱暴に噛り付き―――

と。

「―――あ゛?」

そこに。
ひとりの女がいた。

「ああ?」

その目には光がなく、ただ虚ろに俺の目を見返していた。
何も返さない、石ころのような瞳。

「……おい、女。」

その立ち振る舞いを見ればわかる。
コイツ、素人だ。
奴隷どもと比較してすら尚格下。
『精神』すらもあまっちょろい、キャベツ畑やコウノトリを信じてるようなスットロい未通女(あまちゃん)みてーなツラしたヤツだ。
だが――――

「お前に何があったのかは知らねえ」

その目には光がなく、ただ虚ろに俺の目を見返していた。

「事情も良く分からねえ」

光がなく。
何も返さず。
全ての光を吸い込む闇のごとき。
されど。

「実際のところ興味もねえ」
「…だがな」
「『その目』をしてるんならよ」

俺と同じ『(ねつ)』だけを宿している、『石炭』の如き瞳!

「生煮えじゃあすまねえぞ?」

俺と同じ瞳。焔の点いた瞳。
手加減できる要素は微塵もない…!!


◆【石炭をばはや積み果てつ】◆
◆【意味:森鴎外の小説『舞姫』に登場するフレーズ。この文を通じて主人公の旅の孤独感や過去の希望の喪失を表現している】◆


女が走り寄る。
凡庸に走り寄る。
鈍足に走り寄る。
さらには拙速に。

たとえ時限爆弾を持っていようが何も脅威にすらならない動き。
だが、それを容赦なく吹き飛ばす。
だが、それでも全力を出す。

だが、『止まらない』のだ。

「―――ハッ!!」

自身が上海一の喧嘩屋という自負はある。
その莫大な経験値が保証する。
拳を交えればその実力もある程度は予測がつく。

それでも、全力を出す。
それでも、接触を許してしまう。
それでも、『止まらない』のだ。
そうだろうなと、炎嵐は思った。

『それでも』

未通女(あまちゃん)だっつーんだよ・・・未通女(あまちゃん)だっつーんだよォ!!だから!!」

俺と同じ焔の点いた女だ。
しがみつくくらいは、してのけるだろう。
故に、油断はしない。
故に――――

こいつは差し違えるための時限爆弾(たとえ)すらも持ってないと看破しきっている。
抱き付かれてもなんの痛痒も感じない、なんの武器も持ってない未通女(あまちゃん)
キャベツ畑やコウノトリを未だに信じてるような、何も貫くものを持たない甘い奴。

『だとしても』

「例えそんな目をしててもなあ!!手前と俺の力の差じゃあァ!!差し違えることもできねえんだよお!」

ただその『焔』に急き立てられただけの石炭(いしころ)を。
叩き潰す。

「甘え!!」
「足りねえ!!」
「燃えねえ!!」
「遅え!!」

「そして何より――――」

「クソ弱え!!」

女を全力で叩き潰すために。完全に焼き尽くすために。
その両腕を構え――――

すると。

『ぱきん。』

と音がして。

「…あ?」

抱きついてるだけだった石炭(いしころ)が。

『・・・ゴクン。』

豹変した。

『ギチイ!!』
「お、おお、お!?」

背骨がきしむ。

『ぎり、ぎりりぎり。ぎり。めき。がぎ。』
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

肉が歪む。

『ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいいいいいいい!!!!』

力が空間を伝播する。
さきほどまでとはレベルの違う暴力が締め付ける。
劉炎嵐を締め付ける―――!!

自身が上海一の喧嘩屋という自負はある。
その莫大な経験値が保証する。
拳を交えればその実力もある程度は予測がつく。

こいつは『何も持ってなかった』

それはまぎれもない真実だ。
ならば、なぜ。この暴力はどこから来た。

【その目には光がなく、ただ虚ろに俺の目を見返していた】
【ただ、虚ろに俺の】
【俺の―――】

「そうか!手前・・・『喰ったな』!?」
「俺の懐にあった『カレー』!喰いやがったな!!」

劉炎嵐は先ほど『嘉隷奴匆工夫』たちと戦闘し、それなりに彼らの身を整えた。
そして荷物のリンゴを取り出しながら腹に入れ、その代わりを入れていたのだ。
『13倍』の身体能力をもたらす魔幣印の『カレー』を。

「『喰って』!!『13倍』になりやがったなあっ!!!?」

腹を掻きながら、その懐に―――!!

さきほどまでとはレベルの違う暴力が締め付ける。
13倍。文字通り桁が違う。
決して侮れるものではないその膂力。

だが。

「――――ハッ」
「だから未通女(あまちゃん)だっつーんだよ・・・未通女(あまちゃん)だっつーんだよォ!!だから!!」
「手前と俺の力の差がァ!たかが『13倍程度』で埋まるかよ!!」

「甘え!!」
「足りねえ!!」
「燃えねえ!!」
「遅え!!」

「そして何より――――」

「クソ弱え!!」

「手前が俺を超えたいなら・・・せめてェ!!『100倍』はァ!!!持ってこォォォォォオオい!!!!!」

打撃音(どずん)!!

鈍い音が大戦持A子の背中に振り下ろされる。

打撃音(どずん)!!打撃音(どずん)!!打撃音(どずん)!!

だが。

「う・・・」

倒れない。

「うぎゅ・・・・・・」

倒れない。

「うぎゅううううううううううるるるううるるるうぃいいいいいいいいいあるるるるるるうううう・・・!!!!」

倒れない・・・!!!

「ああ゛!?」
なんで剥がれねえ。なんで折れねえ。なぜ俺とコイツの力が拮抗する。
コイツから伝わる『熱』が俺を灼く。俺を灼くほどの熱をなぜ出せる。たかが『13倍』でなぜ出せる。
非実在(アリエネ)ェ!!コイツまさか―――――

2皿同時(1 3 × 1 3)に・・・!!?


1皿+1皿(1 3 × 1 3)はいくつだと思う?◆
◆オレたちは1+1で200だ。10倍だぞ10倍。◆


「馬鹿か手前!!胃袋が・・・爆発するぞ!?」

「うぎ・・・!!うぎぎ・・・!!!ぎ・・・!!」
「うgcgんこいえrげrぃほおfxれぽgcmrちおmgh、pしおあx、jgrtp。k・・・!!!!」
言葉にならない咆哮をあげる。眦(まなじり)から涙がこぼれ口咥内(くちのなか)が血であふれる。

その悉くが蒸発する。蒸発する。蒸発する。蒸発する。

「ば・・・か・・・・な・・・・!!」
その内腑!非実在(アリエナ)い激変のハズ!!
さっきまでキャベツ畑やコウノトリを信じてるようなスットロい未通女(あまちゃん)みてーなツラしてた奴の『精神』か、これが!?
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!?」
何がコイツをここまで変えた!!

インパルス『加速』ッ!!

強い言葉を探す。

『我慢』『不屈』『鉄壁』っ!!

強い言葉を。もっともっと強い言葉を。

『反応』!『集中』・・・『迅速』!『神速』!

足りない。足りない。足りない。足りない。

『突破』(うごけ)『献身』(うごけ)『根性』(うごけ)『再生』(うごけ)!!

(ターン)後の死が視えている。死なないために搔き集める。

もっと(『不撓』)!!もっと(『気迫』)!!強く(『激励』)っ!!更に(『鼓舞』)っ!!

それでもなお届かない。思いだせ。思い出せ。もっともっと強い言葉を思いつけ。

まだだ(『号令』)『渾身』(マダダ)寄こせ(『重撃』)『両断』(ヨコセ)

思い出せない思いつかない語彙が尽きる尽きて尽きてしまう尽きて尽きたら尽きて死ぬ。(あ、あ、あ、あああああ!!な、ナーバス!ナーバス!ガーリレイ!ガーリレイ!)

『応援』(たりない)タスケテ(『幸運』)『努力』(だれか)ダれカ(『奇跡』)

死ぬ死ぬ死ぬ。死ぬ、しぬ。しぬ、しぬ。しぬしぬしぬしぬししししししs――――(ナーリレイ!ナーリレイ!ガーバス!ガーバス!ガーリバス!ガーリバス!)


































ピロリ、ピロリッ♪

間の抜けたチャイム音が響く。
傍にあるコンビニの自動ドアが開いた音だ。

「ヘイ!エビバデリッスン盛り上がれ~?」
「今週もやってく『ミムメモ☆魔幇チャンネル』の時間だぜ~?」

そのコンビニから外線のものであろうラジオが流れてくる。

「まずはフツおた読んでくぜェ~~~?ラジオネーム・・・えーと?『魔☆インドう』さんって読むのかな?」
「『ニュースを見たぞ。上海に行った途端に早速失敗したようだな愚か者!』」
「『現状上海は封鎖されておるからの、手助けは期待するなよ』」
「『・・・まあ、最期の情けでこのラジオからお前に助言を送ってやる』」
「『この曲を聴け。そして気付け』」
「『最強の言葉は、すでに教えているんだからな・・・!!』」
「厳しいご家庭だねェ~~~?でも正しいぜ」
「ここ上海は魅力もタップリだけど危険もタップリだからねえ、甘く見てたら痛い目見るぜェ?」
「特に魔幇には逆らわないように気を付けなァ!?だが歓迎するぜ」

ウェルカムトゥザ上海、おじょうさん!!

「ではやっていきましょう、リクエストされた曲はこちら!!」
「『セクシーコ魔ンドー外伝すごいよ!魔サルさん』の主題歌で・・・」



































『ロ魔ンス』(あいにきづいてください)!!」

あぁ『愛』ぃい(ガーリバス)!!!!

その言葉を叫んだ瞬間。

ぶち、ぶちぶちぶちいいい!!!
「・・・・裂けた―――――!!?」

A子の筋肉がはじけ飛ぶ。はじけ飛ぶように膨れあがる。
膨れ上がり、ぱつぱつだったスーツも一緒にはじけ飛ぶ。

「お、オワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」

産まれたままの姿になったA子が吠える、吠える、吠える。
獣のように吠えながら、人のように腕に力を。神のごとく殺意を宿す。

もうチャンスは今しかない。今しかもうチャンスはない。
A子に武術は分からぬ。だがゴネて生きることには一際敏感である。

敏感であるがゆえにA子は知っている。産まれた時から知っている殺し技。
それは両の腕に力を込めて。全身に力を込めて。矢を引き絞る弓のように力を込めて。
ただひたすらにひたすらにひたすらにひたすらに泣きわめいて吠えて吠えて抱きつぶす子供の駄々(ころしわざ)

その名は――――愛の抱擁(バックブリーカー)

「ラブ!!!」

「ハッ、手前・・・」
さっきまでキャベツ畑やコウノトリを信じてるようなスットロい未通女(あまちゃん)みてーなツラしてた奴が。

「ミー !!」

「キャベツは、ど、う、し・・・」
この、俺を―――――!!!

「ドゥ―――――!!!!」

死ねえ!!

ばきん。

決め技:縛胴崩柱(バックトゥザフューチャー)


◆【Love me do(らぶみいどぅー)とは:意味・読み方・使い方】◆
◆【意味・対訳:愛してるよ】◆


「・・・・・・」
むくり。

そして男は起き上がる。
横を見ると全力を出し尽くしたのか気絶して泡を吹いている全裸のA子がいた。
全裸、というかはちきれたジャージがほとんど紐のようになって各部を絶妙に隠していたりする。どうでもいい。

さすがに脊椎をブチ砕かれて平気とは言い難い。

が。

何も初めてじゃあない。平気じゃないだけでまだ戦うつもりならば戦える。
怒りの炎が燃えている限り。燃え尽きることがない限り。

腹をなでる。先ほどA子に喰われた『カレー』を隠しておいた腹の部分を。

劉炎嵐は何故カレーを懐に入れていたのか?
使用するつもりだった?
100分の1の実力の相手に隠し持っていた?
なぜ?

上海最強の喧嘩屋だ。
拳を交えれば大体の実力を推し量れる。

つまり――――

「お前は正面からぶつかろうとはしなかった」
「ずいぶんとちょこざいな真似をしてる搦め手を使ってくる奴だ」
「そんな奴相手にこっちも油断はできねえからなあ――――」

その手合わせをもってしても。炎をぶつけても。
なお警戒を持つに値する強者が。底の知れない奴が。
そこにいたのだ。

奥の手を隠しておこうとする位の、警戒を持つに値する相手が。

「逃げたかもしれねえとも思ってたが、そんなわけじゃなかったようだな?」
「『ゴミ掃除』の方を優先してたってわけかい?」

聞こえてくる。聞こえてくる。音楽が聞こえてくる。
何故聞こえてくるかに意味はない。
■■■■の登場シーンにはBGMが流れてくる。それはもはや『常識』――――

そこには。

恐怖に顔を歪ませた。
謎の野球選手『O』の頭蓋を持った、■■■■が。

そこに、現れた。

「あ、あなた『様』は…!!?」
A子の傍にいた亀が、おびえる。恐怖する。
未知ではなく既知による恐怖。

■■■■は、そんなおびえるような亀に対して、驚くほどやさしい雰囲気を向ける。
向けながら、謎の野球選手『O』の頭蓋をそっと床に置いた。

「僕の方こそ逃げてくれてると思ってたんだけどね」
「いや、計算外だったさ」
「まさか彼女がそこまで『ヤる』とはね――――」

「なんだオイ、ジャイアントキリングされた格上におお、負けてしまうとは情けねえってか?」
「そもそもお前、俺と奴隷どもとの戦場から誘導してソイツを逃がそうとしてたじゃねえか」
「それが気が付いたらソイツ一人だけになってる上に何を勘違いしたか俺を倒しにかかる始末だ」
「油断しててツメが甘かったのはそっちもだったんじゃねえのか?」

「何、本当に計算外でね」
「本当に、まさかいきなりしがみついてくるとは思わなかった」
「おかげで彼女を離れさせるのに時間を取られてキミの炎を避けきれなかったよ」

「…ああ?」
いぶかしむ声を上げる彼に。

「なに、僕は『こども』だからね」
「守ろうとしてたみたい、だよ?」

そう、答えた。

「あ?」

「誰を?」
「僕を」

「誰が?」
「彼女が」

「まだまだ捨てたもんじゃないねこの世界も」
「彼女のような人がいるから世界はギリギリのところで踏みとどまっている―――」

そんなことを真顔で言ってくる■■■■を前に。
怒りでできた男は。
常に怒り続けている男は。

「・・・・・・・・・・ぷ。」
「ぷ、く、く、く、く・・・・」
「ぶぁーーーーはっはっはっはっはっは!!」

腹の底から、笑い転げていた。

「はははは、はあ…」
「負けだ。俺の負けだよ。あまちゃんもそこまで来ると笑うしかねえな」

「おい、勘違いするんじゃねえぞ『マーボードーフ』」
「俺は手前に負けたわけじゃねえーーーー笑いすぎて戦う気分じゃねえだけだからな?」
「ヤろうと思えばまだまだイけんだぞオラ」

「ふ…」
「肝に銘じておこう」

そして■■■■は、亀を一撫でしたのちに。
「今はまだちょっと騒がしいからね」
「落ち着いてから、戻って来なさい」
そう言って、消えていった。


◆【万有引力とは:意味】◆
◆【――:―――――――――】◆


『プルルルルルル、プルルルルルルル…』
『ピッ』

『もしもーし、劉くんなのかいだよ?』
『やっぱり海の物とも山の物ともしれない奴は駄目だったんだよ』
『普通に魔幇のスパイだったよ、【谷】翔平』

「―――ああ、こっちに来ていた魔幇が多分ソイツの直轄だ」
「完全にしてやられてたってわけだな」

『やっぱり海の物とも山の物とも知れない奴は安心できないんだよ』
『だから【海の物】を引き込むんだよ』

(劉のスマホに画像が流れる)
(そこには貝殻を模したような意匠のついた甲冑を着ている騎士と)
(女物のインナーでその鍛え抜かれたボディラインを見せつけるようにしているジャケットの男の画像があった)

『最近話題の連中でね、まずは彼らにコンタクトをとってみるんだよ』
『これでカレー部門は壊滅したわけだろうし『ブーパッポン』の手も空くだろう?』
『【茶山】の手も借りるよ…私たちは鞍馬山に向かわせてもらうんだよ』

「ああ、その辺は任せたぜ『電梟』」
「―――『下山』にも伝えといてくれ」
「『牙を突き立てろ』ってな」

劉炎嵐は上海一の喧嘩屋である。

「…横合いから思いっきりぶん殴る」
「グランドスラムの流儀に合わせて名乗らせてもらうぜ」
「梁山泊(り『ょ』うざんぱく)よりさらに上…劉山泊(り『ゅ』うざんぱく)とな」

だがそれは。
喧嘩しか出来ない男というわけはないのだ。

対魔幇上海区域魔人群レジスタンス『劉山泊』

対カレー部門対策チーム『ブーパッポン』リーダー・・・『茶山 踏晴(ふんばる)』
対上海蟹ランド対策班班長、『下山海老パーク』オーナー・・・『下山師匠』

劉山泊総首領――――『劉 炎嵐』

劇終

■然■后■呢■?■

「師匠ちゃんチェ~~~っく!!」
「どうも皆さんこんにちは、今世紀も恒例の師匠ちゃんチェックの時間やで!」

「今日のコスチュームは・・・これや!!」

テケテケテケテン!!

「逆バニ~♪」
「幼女が着ていたエッチ目な衣装やな、児ポとか言われてたけどこれはSSやから大丈夫や!」
「きっと魔人ガンバル~ポケットの中のチェンソー~に出てくる主人公、バーニード・アイスマンの服装らしいけど男なんやろか?男なんやろなあ…」
「ウチが着てる姿が見たい?別にええけど見たかったら事務所を通してくれんとな?」
「ほなな~!」


~♪(例のBGM)


何とか怖い魔人さんの攻撃から逃げ出せたA子。
気を取り直してダイヤを探しに行くんだけど・・・

ほえーーーーー!!?

お昼に食べたカレーがあああああああああ!?

次回、ひろがる*アース茶山(プリキュア)

『茶山とA子とふしぎなうんち』

次回も、茶山と一緒に!菊穴(リリース)!!

終われ


◆【魔幇:まほう】◆
◆【魔人が寄り集まり助け合う互助組織の通称。今は上海最大のチャイニーズマフィアの名称】◆


「…そうか」
「わかった、下がっていいぞ」

魔■■の殿上で。
男は一人、玉座に深く腰掛ける。

「…なれなくても、別によかったのに」

目を閉じれば思い出す。
思い返せば思い知る。
あれこそが。あの日々こそが。
宝石のようにきらびやかであったのだと。

歌は聞こえない。
少女はもう希望を歌わない。絶望に落ちないように足掻いているだけだ。

「いくら逃げだしても、探しても」
「いなかったろう?」

必死に踏ん張って、踏ん張って。

「作っても作ってもいなかった」

生き足掻いて、生き長らえて。

「育てても育ててもできなかった」

どれだけの試行錯誤を繰り返したのだろうか?

「もうあの頃には戻れないし、『あなた』の後継者は出来なかった」

『ガキ』が庭で遊ぶくらいなら許すが、庭の物を勝手に持って帰るなど許すはずもない。
奪われることなど許さない。

「…もう、いいだろう?」

だが。

「『あなた』がここが重荷というのならば、もう捨てちゃおう」
「足掻いて擦り減らして探し回っているくらいならば…」
「もう、こんな魔幇(トコロ)要らないだろ?」
「護れないのなら、もう逃げちゃおう」
「捨てて逃げて逃げ回って、一緒にどこか遠くで暮らそうよ」
「昔みたいに」

『彼女』が逃げ出してからもずっとずっとそのままにしている部屋の中で男が手遊びをしている。
石のはまっていない指輪をその五爪の指でもてあそんでいる。

「目を逸らして蓋をして。もう全部忘れちまったんだよな――――」

その部屋には。

「いいぜ、覚悟しな、做好觉悟(覚悟しな)」
「足音たててやってくる。从不知哪里来的(どこからともなくやってくる)」
「―――幸福的结局即将到来(ハッピーエンドがやってくるぜ)」

子供が着るようなサイズのウェディングドレスが飾り立ててあった。

男の目には光がなく、ただ虚ろにその花嫁装束を見返していた。
一度火がつけば熾火のごとく赤く朱く地を染める緋を孕んだ瞳を。

だが。

その石炭の如き瞳は。
全てを吸い込み尚も足りない輝きを宿していた。

この焔の名前を。

「―――大姐姐(ねえさん)」

愛と、呼ぶのだ。


◆【Q:とてもとてもとてもとても愛しているときは何て言えばいいんだ?】◆
◆【A:やっぱり愛しているの一言だよな】◆


ダイヤモンドなど形式上のものにすぎず。
求められるのはその地位に応じた強い『意思』、その象徴。

そこには一匹のガキがいた。
安っぽいアニメの服を着ておもちゃのようなアクセサリーやベルトをつけた童女。
暴力(こぶし)、権力(たちば)、財力(カネ)。およそ強さと呼ばれるあらゆるものとは無縁そうなチープな見た目。

その地位には一匹のガキがいた。


◆『元』魔人統合自治区崑崙山統率、果成いっぽ◆


その目には光がなく、ただ虚ろに世界を見返していた。


◆『元』上海魔人解放軍隊長、果成いっぽ◆


光がなく。
何も返さず。
全ての光を吸い込む闇のごとき。
されど。


◆『元』上海魔人自治区統括府総合代表、果成いっぽ◆


長い永いながい年月で擦り減って躰かたちだけはととのえて。
記憶も何も虚ろなままで上海を徘徊する■■■■となっても尚。
確かな『(ねつ)』だけは宿している。


◆『現』チャイニーズマフィア魔幇首魁、『魔幇統府(マーボードーフ)』果成いっぽ◆


生物の死骸や現象の跡が集まり固まる炭素が。(あらゆる透明な幽霊の複合体)
暗闇の中で尚輝くためにいきあがく。(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
歴史と時間の重みに潰され耐えて尚輝こうといきあがく。(あるいは修羅の十億年)

『金剛石』のように、ねじれ歪んだ不退転。

【私はね!なりたいんだ!■■■!】
たゞたしかに記録されたこれらのけしきは

【この国に!私たちが暮らせるように!!】
記録されたそのとほりのこのけしきで

【あの■■■■みたいな、皆の拠り所になれる―――】
それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで

【『ヒーロー』に!!】


―――在摇滚中焕然一新、『魔坊童婦』果成 いっぽ。


◆【金剛石(ダイヤモンド)】◆
◆【宝石言葉:純潔。永遠の絆。不屈―――】◆

◆【―――純愛】◆
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