ダンゲロスSS上海
万事屋上海紀行・最終日 魔幇白黒大決戦
最終更新:
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本SSは、以下のSSより設定を採用する。
- 万事屋上海紀行・一日目 時爆上海狂騒曲(白髪黒羽1回戦SS)
- 万事屋上海紀行・二日目 王道蛇道男々道(上)(下) (白髪黒羽2回戦SS)
SSの内容を全体的に採用する(基本の正史)。
白髪黒羽は地下大放水路での爆弾騒動を『清海』、トラブルバスターズ槌歌、女陰黄泉らと共に解決、日ノ御子神楽を保護する。
白髪黒羽が、時限爆弾に仕込まれていたダイヤの欠片を手にした。
白髪黒羽・日ノ御子神楽の両名はその後、劉炎嵐、ギャラハッド・ソネットと接触。
ギャラハッドから「本来清王朝のダイヤは存在しない」と聞かされ、現在のダイヤが
『共同幻想の現実化』ではないか、という仮説を立てる。
屋台街での騒動を通し死神・灰蛇絡と遭遇、『魔幇』の差し向けた集団を協力して撃破。
紆余曲折の末、白髪黒羽が『清王朝のダイヤ』本体を手に入れる。
- ────だからこれは、燃え滓の物語(劉炎嵐2回戦SS)
SSの内容を一部採用する。
劉炎嵐が五爪の翁への宣戦布告を大々的に行う。
ただし、清王朝のダイヤについては事前に白髪黒羽の協力の元、自らが所持しているように見せかけている。
劉炎嵐が五爪の翁への宣戦布告を大々的に行う。
ただし、清王朝のダイヤについては事前に白髪黒羽の協力の元、自らが所持しているように見せかけている。
劉炎嵐は上海全土に向けて、魔幇のボス・五爪の翁への宣戦布告を行う。
それを受け、五爪の翁率いる魔幇の活動も活発化している。
- ペインフル・メモリーズ(透明ワニ2回戦SS)
SSの内容を全体的に採用する。
透明ワニ・スパイクはトラブルバスターズ槌歌・茶山明日歩らと協力のもと
恋辻メーメーを救出、強敵・メカ妊娠願望マン1号とジュニアを撃破する。
電子部門幹部・落雷磊落も死亡し、監獄が全壊したことで囚われていた者たちが解放される。
SSの内容を全体的に採用する。
ただし、『麒麟の涙』の設定で「基本の正史」と抵触する部分について
「ギャラハッド・ソネットの祖先が存在しない秘宝として広めたものが
大多数の共同幻想により実体化し、機能し始めた」と変更する。
ただし、『麒麟の涙』の設定で「基本の正史」と抵触する部分について
「ギャラハッド・ソネットの祖先が存在しない秘宝として広めたものが
大多数の共同幻想により実体化し、機能し始めた」と変更する。
目艮竟がクラム・ハードシェルと接触。百年前の出来事が『貴婦人のダイヤ』を通じ明らかになる。
張三の兄・張无忌及び蜃麗人を謀殺し『魔幇』を生み出したのは七鴉であると考えられる。
- EP2.黑闇劍の執行者(郭亀岩2回戦SS)
SSの内容を全体的に採用する。
ただし、一部戦闘・設定においてメメント・クレイヴ・マイハート(双喜2回戦SS)を採用する部分がある。
ただし、一部戦闘・設定においてメメント・クレイヴ・マイハート(双喜2回戦SS)を採用する部分がある。
郭亀岩・カムパネルラ・ジョバンニ・双喜がデスアクメマンと交戦する中で、桃猫の正体が明らかになる。
デスアクメマンは最終的に倒されたが、桃猫は亀岩の元を離れることを決意、双喜と行動を共にする。
また、双喜は妹分・三尸との出会いと別れを経験する。
- 陰と陽 (拳狐2回戦SS)
SSの内容を全体的に採用する。
ただし、蘇・雷の扱いについては白髪黒羽のSSに準ずる扱いとする。
ただし、蘇・雷の扱いについては白髪黒羽のSSに準ずる扱いとする。
拳狐と海圻、金剛シグリの三名が『魔幇』の叩頭卿・陽堂堂とグランドスラムで交戦。激闘の末に撃破する。
- 時間がないので無題ということで(喬芽芽2回戦SS)
SSの内容を部分的に採用する。
基本的には正史として扱うが、カルミアが持つ秘密については郭亀岩のSSに準ずる扱いとする。
基本的には正史として扱うが、カルミアが持つ秘密については郭亀岩のSSに準ずる扱いとする。
喬芽芽と大戦持A子が、陸飛燕を追うジャニス・チャン一派と衝突、勝利する。
SSの内容を全体的に採用する。
下山師匠と「きみ」については、「きみ」が現時点においても未定義の状態とみなす(Aルートとして扱う)。
下山師匠と「きみ」については、「きみ」が現時点においても未定義の状態とみなす(Aルートとして扱う)。
死神と「きみ」は下山師匠の助言や太郎丸権蔵の助力のもと、鞍馬山の異変に対し
名づけを保留状態、『未命名』とすることでひとまず解決する。
その後、「きみ」は女陰黄泉・倒萩らと共に脱出ゲーム会場に向かったが、そこで何があったかは語られていない。
――「きみ」が何者かは、いまだ定義されていない。
白髪黒羽と他のキャラについて、最終日までに上記のSSの通り、遭遇・交流があったものとする。
白髪黒羽は貧民街でダブル・ハピネス・キャンペーンに出くわす。
居合わせた恋辻メーメー・喬芽芽・果成いっぽらと共に双喜・桃猫に遭遇。
桃猫を追う郭亀岩とトラブルが起こる中、安撫部による襲撃を受ける。
紆余曲折の末に安撫部を退け、桃猫と亀岩の仲の修復に一役買うこととなる。
再度訪れた屋台街では張三・希美と相席し、食事を通じて交流を深めるも
そこに酒の神・スクナヒコナノヒメが現れ、屋台街中に酒気を撒き散らし始める。
さらに魔幇大幹部・黄嫦娥の襲撃も重なる中、スクナヒコナノヒメを鎮めるべく
飲み比べ勝負を行う。酒豪で鳴らす黒羽・張三が苦戦する中、神楽も参戦。
結果としてスクナヒコナノヒメの鎮圧に成功する。
田子坊では巫小夢・大夢姉妹の手により『狐の祟り』にかかってしまう。
様々な不運に見舞われる中、拳狐と戦う羽目に。
だが、人間に恨みを持つ妖狐・十叶望が暴れ始め、周囲を巻き込む被害を出し始める。
スクナヒコナノヒメの助力を得て、十叶を説得することに成功。
『祟り』についても、女陰黄泉を半ば利用する形で止めるのであった。
お詫び
今回のSSは、時間的都合により未完成となっております。
本編中の引用構文は、筋書きとなっております。ご了承ください。
本編中の引用構文は、筋書きとなっております。ご了承ください。
1.前夜
Side:『魔幇』本拠地
――百年節も残すところ、あと一日。
最終日のセレモニーの準備が進む中、『魔幇』所属員の面持ちは暗かった。
最終日のセレモニーの準備が進む中、『魔幇』所属員の面持ちは暗かった。
ダイヤを奪取するために幹部クラスが数名派遣されながら、その全員が敗れるという大失態。
それどころか、魔幇四天王までもがダイヤを巡る戦乱の中で倒される有様。
更には『上海大賽』優勝候補・劉炎嵐による挑発放送、提籃橋監獄の崩壊、黑闇劍の実験情報の流出――
この数日で起きた上海各地での事件は、魔幇上層部の腸を煮え繰り返させるには十分であった。
それどころか、魔幇四天王までもがダイヤを巡る戦乱の中で倒される有様。
更には『上海大賽』優勝候補・劉炎嵐による挑発放送、提籃橋監獄の崩壊、黑闇劍の実験情報の流出――
この数日で起きた上海各地での事件は、魔幇上層部の腸を煮え繰り返させるには十分であった。
当然、魔幇の面々も指を咥えて見ていたわけではない。
『清王朝のダイヤ』を奪還すべく、息がかかった者たちによる捜索も各地で行われていた。
七宝老街の一件は電子部門・双子布ハイドの手によって中継されていたために、ダイヤの所持者が
入れ替わったことも知られていた。
『清王朝のダイヤ』を奪還すべく、息がかかった者たちによる捜索も各地で行われていた。
七宝老街の一件は電子部門・双子布ハイドの手によって中継されていたために、ダイヤの所持者が
入れ替わったことも知られていた。
白髪黒羽――『万事屋』を名乗る、日本からの闖入者。
白黒半々に染め上げた長髪とスーツ、それに合わせて白と黒の二丁拳銃を使いこなす女傑。
魔人能力『創造上の想像力 』によって、様々な現象を引き起こすトリックスター。
白黒半々に染め上げた長髪とスーツ、それに合わせて白と黒の二丁拳銃を使いこなす女傑。
魔人能力『
その目立つ姿と、少女を同行させているという目撃証言から発見は容易と思われた。
だが――
だが――
「こちら、九龍城砦にて対象を発見」
「何? いや、奴は今礼拝堂に入っていったぞ?」
「待て、対象は貧民街の宿から動いていないはずだ!ずっと見張ってんだぞ!」
「何? いや、奴は今礼拝堂に入っていったぞ?」
「待て、対象は貧民街の宿から動いていないはずだ!ずっと見張ってんだぞ!」
末端を含めた構成員から入る情報が、ことごとく食い違う。
鉄砲玉を送り込もうにも、生半可な戦力では返り討ちに遭うため手が出せない。
そもそも複数の目撃証言が出ている時点で、一つを除けば他は偽物。
既に偽情報をしらみつぶしに当たるだけの人員を回す余裕もなくなってきている。
鉄砲玉を送り込もうにも、生半可な戦力では返り討ちに遭うため手が出せない。
そもそも複数の目撃証言が出ている時点で、一つを除けば他は偽物。
既に偽情報をしらみつぶしに当たるだけの人員を回す余裕もなくなってきている。
さらに不運は重なる。
電子部門幹部・落雷磊落の死と双子布ハイドの敗北によって電子部門が手薄になった隙に、
電梟 によるハッキングにより、魔幇の情報網が一時麻痺する事態となった。
大幹部の一角『七鴉』が、落雷磊落の能力『壱:電気人形 』を引き継ぐことにより
上海の電子網を支配下に置くことで一応の終息を見たものの、通信障害の影響は大きかった。
電子部門幹部・落雷磊落の死と双子布ハイドの敗北によって電子部門が手薄になった隙に、
大幹部の一角『七鴉』が、落雷磊落の能力『壱:
上海の電子網を支配下に置くことで一応の終息を見たものの、通信障害の影響は大きかった。
そのような混乱の中、魔幇の首領――『五爪の翁』へと進言する者がいた。
「恐れながら、今は百年節の完遂に注力すべきかと。
……わたくしの占術が、そう告げておりまする」
……わたくしの占術が、そう告げておりまする」
魔幇の諜報部門責任者、飛星 。
彼の能力『筮錘推命 』は過去から未来までを見通す、恐るべき精度を誇る占術である。
占術を利用し、魔幇に邪魔立てする者を排除してきた大幹部の発言といえど、首領への直訴――
それも、暗に『魔幇を虚仮にする者を放置せよ』という内容に、周囲の者たちがざわめいた。
だが、飛星は構わずに続ける。
彼の能力『
占術を利用し、魔幇に邪魔立てする者を排除してきた大幹部の発言といえど、首領への直訴――
それも、暗に『魔幇を虚仮にする者を放置せよ』という内容に、周囲の者たちがざわめいた。
だが、飛星は構わずに続ける。
「占術によれば、百年節の最終日に――『魔幇』に仇なす者どもがこの地に集うと出ております。
老大 に直々に喧嘩を売った『红虎 』劉炎嵐。
我らが魔幇を裏切り、解体を目論んでいる張三。
そして『清王朝のダイヤ』を持つ女狐、白髪黒羽――
彼奴ら以外にも何人か集うようですが、いずれも我らの敵であることは明白。
こちらから追わずとも、彼奴らから出向いてくれるのであれば――
セレモニーの場で、大々的に公開処刑を行うのも一興かと」
我らが魔幇を裏切り、解体を目論んでいる張三。
そして『清王朝のダイヤ』を持つ女狐、白髪黒羽――
彼奴ら以外にも何人か集うようですが、いずれも我らの敵であることは明白。
こちらから追わずとも、彼奴らから出向いてくれるのであれば――
セレモニーの場で、大々的に公開処刑を行うのも一興かと」
恭しく跪きながらも、大胆不敵な提案を淡々と述べる飛星。
暫しの静寂の後、老大と呼ばれた男――
『魔幇』に約70年君臨する首領、『五爪』は、厳かな声音で答えた。
暫しの静寂の後、老大と呼ばれた男――
『魔幇』に約70年君臨する首領、『五爪』は、厳かな声音で答えた。
「……良かろう。『魔幇』に刃向かう者共がどうなるか。
今一度、衆目に晒してやるとしよう」
今一度、衆目に晒してやるとしよう」
その場の者たちは一斉に跪き、誰ともなく老大を称える声を上げ始める。
静かな称賛は、やがて熱狂を生み――『魔幇』の構成員たちの心は一つとなる。
その様子を、七鴉が五爪の傍らで満足げに眺めながら夜は更けゆく。
決戦は、百年節最終日――!
2.決・戦・前・夜
Side:解決屋『炎嵐』
一方、そのころの白髪黒羽はというと――解決屋『炎嵐』の事務所にいた。
「……万事屋。事情を説明してもらおうか」
事務所の主、劉炎嵐は相も変わらず怒気を滲ませながら、応接室の椅子でくつろぐ黒羽を睨む。
黒羽の横では、日ノ御子神楽が戸惑うような視線を黒羽に向けている。
……当の黒羽はというと、テーブルの上に置かれた料理を紙皿に取り分けていた。
黒羽の横では、日ノ御子神楽が戸惑うような視線を黒羽に向けている。
……当の黒羽はというと、テーブルの上に置かれた料理を紙皿に取り分けていた。
そして、この場にいるのはこの三人だけではない――
「……俺からも聞きてえな、なんだって红虎のトコでメシを食うことになってんだ」
「同感ね、解決屋同士の懇談会……ってわけでもないでしょうし」
「同感ね、解決屋同士の懇談会……ってわけでもないでしょうし」
黒羽の向かいに座る一組の男女。
『破幇同盟』――張三と林希美。
『破幇同盟』――張三と林希美。
「……己も、好敵手 と呑気に食卓を囲んでいる場合ではないのだが」
事務所の隅に立つ狐面の拳士――拳狐。
「ええと、私も随分場違いのような気がしなくもないような……」
神楽のさらに隣に座るチャイナ服の女性、恋辻メーメー。
ここにいる面々は、全て『万事屋』がこの日までに縁を繋いだ面々である。
正確には他にも何人かいるものの、個々の事情でここには集まっていない。
正確には他にも何人かいるものの、個々の事情でここには集まっていない。
「んー?明日にゃ百年節の最終セレモニーがあんだろ?
だからその前の決起集会っつーか、腹ごしらえっつーか」
だからその前の決起集会っつーか、腹ごしらえっつーか」
「だから! それを! なぜ俺の事務所でやるんだって聞いてるんだ!」
「やー、最初は『清海』に頼むつもりだったけど赤ジャケ……海圻の奴から
すんげえ丁寧に断りの電話入れられちまってさ。なーんか『清海』の方も大変だとかで。
詳しくは教えてもらえなかったけど『ダイヤを持ってるお前は今近づくな』だとさ。
『トラブルバスターズ槌歌』にゃ最初の数日寝泊まりさせてもらってるのと
あいつらも魔幇が仕切ってた監獄ブッ壊して明確に敵対した以上、中立地帯の話もパーだ。
そこにダイヤ持ちのアタシまで行ったらどうなるか、火を見るよりも明らかだろ?
かといって、アタシはこっちに隠れ家のアテがあるわけでもねえんだよな。
グッさんとこに転がり込むことも考えたけど、マオちんとの蜜月邪魔する程アタシも無粋じゃねえし。
……で、皆がそこそこ集まっても問題なくて家主が文句言わなさそうな場所として
思いついたのがここだった、って話だよベニトラ」
すんげえ丁寧に断りの電話入れられちまってさ。なーんか『清海』の方も大変だとかで。
詳しくは教えてもらえなかったけど『ダイヤを持ってるお前は今近づくな』だとさ。
『トラブルバスターズ槌歌』にゃ最初の数日寝泊まりさせてもらってるのと
あいつらも魔幇が仕切ってた監獄ブッ壊して明確に敵対した以上、中立地帯の話もパーだ。
そこにダイヤ持ちのアタシまで行ったらどうなるか、火を見るよりも明らかだろ?
かといって、アタシはこっちに隠れ家のアテがあるわけでもねえんだよな。
グッさんとこに転がり込むことも考えたけど、マオちんとの蜜月邪魔する程アタシも無粋じゃねえし。
……で、皆がそこそこ集まっても問題なくて家主が文句言わなさそうな場所として
思いついたのがここだった、って話だよベニトラ」
「……文句なら大有りなんだが。
第一、魔幇の奴らに今ここが襲われたらどうする気だ?そこは他の連中とさほど変わりないだろう」
第一、魔幇の奴らに今ここが襲われたらどうする気だ?そこは他の連中とさほど変わりないだろう」
「あー、そこはぬかりねえよ。神楽ちゃんに頼んで、入口に『関係者以外立入禁止』を貼ってもらったかんな。
ついでにアタシがこの建物全体に【無人】ってイメージも刻んでる。
それに、蛇絡に何匹か蛇を借りて、アタシらの影武者やってもらってっからな。
まー、ここにカチ込んでくる余裕なんざねーだろ」
ついでにアタシがこの建物全体に【無人】ってイメージも刻んでる。
それに、蛇絡に何匹か蛇を借りて、アタシらの影武者やってもらってっからな。
まー、ここにカチ込んでくる余裕なんざねーだろ」
「勝手に俺の事務所に妙な小細工をするんじゃねえ!」
頭から蒸気を噴き始める炎嵐に構わず、黒羽は酒を紙コップに注ぎ始める。
酒を受け取りながら、張三が炎嵐を宥める。
酒を受け取りながら、張三が炎嵐を宥める。
「……まあ落ち着け、红虎。
酒だのなんだのは口実さ、『魔幇』を倒すための会議はせにゃならん」
酒だのなんだのは口実さ、『魔幇』を倒すための会議はせにゃならん」
「絶対にコイツは主客逆転してると思うんだが……
それに『魔幇』を倒すったって、俺のやることは決まってる。
首領とサシでの勝負、これに尽きる」
それに『魔幇』を倒すったって、俺のやることは決まってる。
首領とサシでの勝負、これに尽きる」
「んじゃ、アタシらでそれ以外を分担ってことでいいか?」
血気に逸る炎嵐を咎めるでもなく、黒羽がさらりと話を進める。
そんな中、張三が神妙な面持ちで告げる。
そんな中、張三が神妙な面持ちで告げる。
「……一人、俺がケリをつけたい男がいる。
魔幇の実質No.2の座にいる大幹部――『七鴉』。コイツだけは俺にやらせてくれ」
魔幇の実質No.2の座にいる大幹部――『七鴉』。コイツだけは俺にやらせてくれ」
「私も――私から家族を、財産を奪った許せない相手がいます」
張三の言葉に同調するように、恋辻メーメーが肩を震わせる。
電梟 が魔幇のデータベースから抜き出した、幹部リストの一枚――
諜報部門統括・飛星の書類をくしゃりと握りしめて訴える。
諜報部門統括・飛星の書類をくしゃりと握りしめて訴える。
「オーケイ。だが、助太刀はさせてくんな。
チョーさんは『破幇同盟』を組んでる以上わかってるとは思うけどな」
チョーさんは『破幇同盟』を組んでる以上わかってるとは思うけどな」
「……己は強者とやれるなら誰でも構わん」
拳狐が皆から離れた立ち位置のまま、静かに頷く。
「ぶれねえな~~~、キツネマスクは」
「……ごめん、話の腰を折るようで悪いけれど。
改めて『清王朝のダイヤ』について確認しておきたいわ。
……結局『清王朝のダイヤ』って何なの?」
改めて『清王朝のダイヤ』について確認しておきたいわ。
……結局『清王朝のダイヤ』って何なの?」
林希美が黒羽を真っすぐに見つめる。
――彼女もダイヤと無関係ではない。ダイヤの欠片をその身体に宿しているのだから。
――彼女もダイヤと無関係ではない。ダイヤの欠片をその身体に宿しているのだから。
「んー……アタシもはっきり断定できるわけじゃねえけど。
皆の情報をできる限り継ぎ合わせると、こういうことじゃねーかな、って推理ならある」
皆の情報をできる限り継ぎ合わせると、こういうことじゃねーかな、って推理ならある」
3.万事屋、ダイヤについて語る。
Side:白髪黒羽
……こっからはアタシの推理、っつーか推論だ。
ベニトラには一回ちらっと言ったと思うけど、そのへんもコミコミで改めて整理する。
ベニトラには一回ちらっと言ったと思うけど、そのへんもコミコミで改めて整理する。
まず、事の起こりは清王朝成立初期。
とある宦官――ギャラちんのご先祖が、奸臣を暴くために架空の宝物を設定した。
――それが『清王朝のダイヤモンド』ってわけだ。
とある宦官――ギャラちんのご先祖が、奸臣を暴くために架空の宝物を設定した。
――それが『清王朝のダイヤモンド』ってわけだ。
だが、架空だったはずの『清王朝のダイヤ』は人々の強い思念によって
『本当に』存在することになった……ようは共同幻想の産物、ってことだな。
『本当に』存在することになった……ようは共同幻想の産物、ってことだな。
そして、誕生した時点では――おそらく、ただそれだけの代物だったんだろう。
『清王朝のダイヤ』が何なのか、どんなものなのか、どの位の価値があるのか……
共同幻想という性質上、『すごいお宝』という所までしか共通認識がなかったために
『すごいお宝』以上の意味や役割がないまま、引き継がれていったんだろうな。
『清王朝のダイヤ』が何なのか、どんなものなのか、どの位の価値があるのか……
共同幻想という性質上、『すごいお宝』という所までしか共通認識がなかったために
『すごいお宝』以上の意味や役割がないまま、引き継がれていったんだろうな。
その風向きが変わり始めたのが、清王朝の後期――衰退期、と言っちまってもいいかもな。
共通認識がないまま、各個人が思い思いの『秘宝』を想像した結果、
『清王朝のダイヤ』はそれに合わせて無数の側面を持つお宝に変貌していった。
願いを叶える願望器、純粋に巨大な宝石、魔人を生み出す結晶体……
共通認識がないまま、各個人が思い思いの『秘宝』を想像した結果、
『清王朝のダイヤ』はそれに合わせて無数の側面を持つお宝に変貌していった。
願いを叶える願望器、純粋に巨大な宝石、魔人を生み出す結晶体……
……そして、今を遡ること百年前。
その多種多様な側面を、強引に王権証器 へと集約し、上海を束ねようと目論んだ奴がいる。
――『魔幇』の大幹部、七鴉。
奴の企みは皮肉にも成就し、『魔幇』が上海を治めるに至った。
そして『清王朝のダイヤ』も『魔幇』のものとなり、支配体制が完成した――
その多種多様な側面を、強引に
――『魔幇』の大幹部、七鴉。
奴の企みは皮肉にも成就し、『魔幇』が上海を治めるに至った。
そして『清王朝のダイヤ』も『魔幇』のものとなり、支配体制が完成した――
――だが、そこに歪みが生じてきたんだろうな。
折角王権証器 として役割を固定したはずの『清王朝のダイヤ』も、真実を知る者が一人、また一人と減っていく……その一方で、魔幇の規模は拡大しつづけた。
結果として『清王朝のダイヤ』に対する皆の認識が、再度バラけ始めたんだ。
いつから異変が起きたか断定はできねーけど、遅くともここ十年ってトコだろう。
そのあたりでダイヤに関する不可解な動きが増えたのも、そう考えると頷ける点が見えてくる。
折角
結果として『清王朝のダイヤ』に対する皆の認識が、再度バラけ始めたんだ。
いつから異変が起きたか断定はできねーけど、遅くともここ十年ってトコだろう。
そのあたりでダイヤに関する不可解な動きが増えたのも、そう考えると頷ける点が見えてくる。
本来なら門外不出の筈の秘宝を、魔人を生む実験に使用したり、一部の幹部に見せびらかしたり。
秘宝の扱いとしちゃ迂闊に過ぎるが……これもイメージがバラけるのを防ぐためにわざとやっていたとすれば説明はつく。
統一は難しくとも、択一にはできる――
そうやってギリギリの状態でダイヤの性質を適度に揺らがせながら、百年節を待った。
万人の目に大々的に晒すことで、再度王権証器 としての権能を取り戻し、固定するために。
秘宝の扱いとしちゃ迂闊に過ぎるが……これもイメージがバラけるのを防ぐためにわざとやっていたとすれば説明はつく。
統一は難しくとも、択一にはできる――
そうやってギリギリの状態でダイヤの性質を適度に揺らがせながら、百年節を待った。
万人の目に大々的に晒すことで、再度
……盗まれたのは、流石に計算外だったろうな。
誰が何のために、ってのは探偵じゃねえアタシにゃ分からねえ。
ただ、結果としてイメージが揺らいだまま街に解き放たれた『清王朝のダイヤ』は――
いくつかの認識を『欠片』という形で放出しながら、本体も人から人へと渡っていった。
……んで、今本体をアタシが持ってる、ってわけだ。
誰が何のために、ってのは探偵じゃねえアタシにゃ分からねえ。
ただ、結果としてイメージが揺らいだまま街に解き放たれた『清王朝のダイヤ』は――
いくつかの認識を『欠片』という形で放出しながら、本体も人から人へと渡っていった。
……んで、今本体をアタシが持ってる、ってわけだ。
正直、本体の割に不思議パワーを感じてなかったんだが、それも納得できる。
アタシ自身が『清王朝のダイヤ』を『こういうもの』と考えてなかったからだ。
ようは『未定義』なら――こいつは出来た当初と同様の、単なるお宝に過ぎないってことだ。
……このへんは死神ちゃんから聞いた鞍馬山の話なんかも齧って思いついたことだけどな。
アタシ自身が『清王朝のダイヤ』を『こういうもの』と考えてなかったからだ。
ようは『未定義』なら――こいつは出来た当初と同様の、単なるお宝に過ぎないってことだ。
……このへんは死神ちゃんから聞いた鞍馬山の話なんかも齧って思いついたことだけどな。
さて、こっからはそれを踏まえての――改めて、皆の協力の話になる。
少なくとも『魔幇』の手に渡れば、また王権証器 として――
あるいはもっとヤバい代物、例えば『人造魔人製造機』とか『魔幇に逆らう者の処刑装置』みたく
扱われるのは想像に難くないだろう。
――だから、奴らがやろうとしてることをハックする。
あるいはもっとヤバい代物、例えば『人造魔人製造機』とか『魔幇に逆らう者の処刑装置』みたく
扱われるのは想像に難くないだろう。
――だから、奴らがやろうとしてることをハックする。
――『清王朝のダイヤ』を、皆の前で『未定義 』状態にして、固定する。
当然、そんなことするのを魔幇の連中は黙って見てはいねえだろうさ。
だから魔幇の連中を蹴散らして、改めて宣言する――ってのが手順だな。
だから魔幇の連中を蹴散らして、改めて宣言する――ってのが手順だな。
その為には――アタシ一人じゃ流石に無理だ。
だから、皆の力を借りる。……頼むぜ。
だから、皆の力を借りる。……頼むぜ。
===
黒羽が頭を下げ、皆に助力を乞う。
それを受けて、改めて互いに協力し『破幇』を誓い合う面々。
皆で再び勝利祝いの酒宴を開くことを約束しながら、英気を養うために宴会を行うのであった。
4.祝宴開宴、五爪降臨!
Side:郭亀岩
――百年節最終日、『魔幇』の本拠地。
通常であれば魔幇に関わりのない者が足を踏み入れること能わぬ伏魔殿だが――
百年節最後の締め括り、その盛大なセレモニーの為に大広間が解放されていた。
伝統的な中国建築様式の
通常であれば魔幇に関わりのない者が足を踏み入れること能わぬ伏魔殿だが――
百年節最後の締め括り、その盛大なセレモニーの為に大広間が解放されていた。
伝統的な中国建築様式の
表社会・裏社会を問わず各界の名士が集う会場を警護するのは、魔幇の下部団体の構成員が主である。
その中に、点心會の面々の姿があった――もちろん、郭亀岩も、である。
その中に、点心會の面々の姿があった――もちろん、郭亀岩も、である。
その傍らに、桃猫 の姿はない――それもむべなるかな。
桃猫がこの場に現れようものなら、大半の人間には『清王朝のダイヤ』に見えてしまう。
そうなれば無用の混乱を招くのは、想像に難くない。
だが、亀岩もまた桃猫と共に逃避行を続けるわけにもいかなかった。
魔幇の命令で、下部団体の所属員は尽く徴集され、セレモニーの警備にあたることとなったからだ。
点心會はボス・嗣信 を含めても五名しかいない弱小団体。
一人でも欠ければ、それは魔幇からの不信と不興を買う。そうなれば、点心會は――
桃猫がこの場に現れようものなら、大半の人間には『清王朝のダイヤ』に見えてしまう。
そうなれば無用の混乱を招くのは、想像に難くない。
だが、亀岩もまた桃猫と共に逃避行を続けるわけにもいかなかった。
魔幇の命令で、下部団体の所属員は尽く徴集され、セレモニーの警備にあたることとなったからだ。
点心會はボス・
一人でも欠ければ、それは魔幇からの不信と不興を買う。そうなれば、点心會は――
前日、隠れ家で龍龍 からの連絡を受けた亀岩は悩むこととなった。
嗣信や仲間たちと、桃猫を天秤にかけざるを得ない状況――
嗣信や仲間たちと、桃猫を天秤にかけざるを得ない状況――
「私のことは心配せず、ボスさんたちを助けてあげてほしいアル。
……その代わり、一つだけ約束して欲しいネ。絶対に、生きて帰ってくる、って」
……その代わり、一つだけ約束して欲しいネ。絶対に、生きて帰ってくる、って」
亀岩も最初は食い下がったが、桃猫の強い意志を込めた約束の言葉に折れる形となった。
幸い、この隠れ家ならば魔幇の手も逃れられるだろう。それでも、桃猫を置いていくことに
亀岩は不安を隠しきれずにいた。
幸い、この隠れ家ならば魔幇の手も逃れられるだろう。それでも、桃猫を置いていくことに
亀岩は不安を隠しきれずにいた。
「……気がかりですかい、桃猫ちゃんのことが」
その間も目線は来客者各位を向いている――
『透視眼』による、武器や危険物の持ち込みチェックを行っているのだ。
「……まぁな。『魔幇』はダイヤのお披露目をするつもりでいるんだ。
桃猫が俺のいない間に連れ去られて、ここに連れてこられるかも……と思うと気が気じゃねえ」
桃猫が俺のいない間に連れ去られて、ここに連れてこられるかも……と思うと気が気じゃねえ」
「心配もわかりやすがね……聞きましたよ、礼拝堂で一度こっぴどくケンカ別れしたって」
「あれは喧嘩なんかじゃ……ああもう、集中だ集中!」
からかう弟分の言葉を振り切るように、亀岩は警備を続ける。
――皮肉にも彼の不安は、このあと的中することとなる。
――皮肉にも彼の不安は、このあと的中することとなる。
Side:下山師匠と「きみ」
「いやあ、馬子にも衣裳という言葉があるけれど、なかなかどうして似合っているじゃあないか。
たまには私も一糸くらいは纏ってみようかな、っとこの言い方だと普段が全裸みたいに聞こえるね。
まあアルクトゥールス星人に着衣という文化がないので実際みんな全裸なんだけどね。
この話前にどっかでしてたっけ?してない? まあどっちでもいいか!
しかし一糸纏わぬという表現があるからといって一糸だけ纏うのはそれはそれで全裸以上に
煽情的な妄想を掻き立てられてしまうね、私としたことが年頃の男の子の前で随分と
ピンクでアハハーンな話題を振ってしまったよ、セクハラだとか訴えないでくれたまえ」
たまには私も一糸くらいは纏ってみようかな、っとこの言い方だと普段が全裸みたいに聞こえるね。
まあアルクトゥールス星人に着衣という文化がないので実際みんな全裸なんだけどね。
この話前にどっかでしてたっけ?してない? まあどっちでもいいか!
しかし一糸纏わぬという表現があるからといって一糸だけ纏うのはそれはそれで全裸以上に
煽情的な妄想を掻き立てられてしまうね、私としたことが年頃の男の子の前で随分と
ピンクでアハハーンな話題を振ってしまったよ、セクハラだとか訴えないでくれたまえ」
……すいません、師匠。師匠の姿以上に、今のぼくの姿と居場所がどうにも理解しがたいのですが。
「んん? いやあ、今回は『魔幇』百年節最終日の招待客というのが『きみ』の役割だよ。
本当は私が出るはずだったんだが、いかんせんアルクトゥールス星人たる私は常人には見えないし
なによりドレスコードとやらが面倒でね。見えないのに律儀にドレスコードを守ろうという
私の心構えはもっと称賛されてしかるべきだと思うよ。ほめてほめてー。
……ともあれ、私の灰色の脳細胞が、このセレモニーで『清王朝のダイヤ』が見つかると
告げているものでね。そこで『きみ』に出席をお願いする次第だよ」
本当は私が出るはずだったんだが、いかんせんアルクトゥールス星人たる私は常人には見えないし
なによりドレスコードとやらが面倒でね。見えないのに律儀にドレスコードを守ろうという
私の心構えはもっと称賛されてしかるべきだと思うよ。ほめてほめてー。
……ともあれ、私の灰色の脳細胞が、このセレモニーで『清王朝のダイヤ』が見つかると
告げているものでね。そこで『きみ』に出席をお願いする次第だよ」
それはいいんですが……
なんで、死神さんまで一緒なんでしょう?
なんで、死神さんまで一緒なんでしょう?
「依頼を受けたからです。
『魔幇百年節出席に伴う用心棒一名、女性優遇、栗毛ならなお優遇』と
わたしをピンポイントで指名するかのような条件がてんこ盛りの、わけのわからない依頼でしたけど」
『魔幇百年節出席に伴う用心棒一名、女性優遇、栗毛ならなお優遇』と
わたしをピンポイントで指名するかのような条件がてんこ盛りの、わけのわからない依頼でしたけど」
……師匠の仕業ですね、たぶん。
ともあれ……知り合いがいてくれることは、ありがたいです。
あと……服、似合ってますね。
ともあれ……知り合いがいてくれることは、ありがたいです。
あと……服、似合ってますね。
「ありがとうございます。 ……レンタルなので汚すと借金が増えるので困るのですが」
……せちがらい事情を聞いてしまった。
とはいえ、やはりマフィアの総本山というべきだろうか……
ガラの悪そうな人も大量にいるし、それ以外はいかにもセレブといった風情の人しかいない。
どちらにせよ、ぼくに縁のない世界の人々のように思える――
『未定義』のぼくが言えた義理ではないかもしれないけれど。
ガラの悪そうな人も大量にいるし、それ以外はいかにもセレブといった風情の人しかいない。
どちらにせよ、ぼくに縁のない世界の人々のように思える――
『未定義』のぼくが言えた義理ではないかもしれないけれど。
「まあまあ、袖振り合うも他生の縁と言うだろう?
ちょっと飲み物ぶっかけてセレブにお近づきになってみちゃーどうだい?
安心したまえ、きみがいくらボコられようと私には関わりのないことだからね!
……ああごめん嘘だよ嘘、泣かないでおくれ。ちょっとかわいい女の子を侍らせている
我が弟子にささやかなやきもちを焼いただけだよ。ところできみ、餅はきなこ派?砂糖醤油派?」
ちょっと飲み物ぶっかけてセレブにお近づきになってみちゃーどうだい?
安心したまえ、きみがいくらボコられようと私には関わりのないことだからね!
……ああごめん嘘だよ嘘、泣かないでおくれ。ちょっとかわいい女の子を侍らせている
我が弟子にささやかなやきもちを焼いただけだよ。ところできみ、餅はきなこ派?砂糖醤油派?」
……とりあえず、大根おろし派と言っておきます。
と答えを適当に濁しながら、師匠が示す女性のほうを見る。
……随分と可愛らしい女性が、身なりの良い女性の警護をしているのが見えた。
師匠はあちらの女性にこそやきもちを焼くべきでは?と思うほどに、可愛らしい人だった。
と答えを適当に濁しながら、師匠が示す女性のほうを見る。
……随分と可愛らしい女性が、身なりの良い女性の警護をしているのが見えた。
師匠はあちらの女性にこそやきもちを焼くべきでは?と思うほどに、可愛らしい人だった。
そんなことを考えているうちに、会場の照明が一段落とされ――
壇上がスポットライトで照らされる。
壇上がスポットライトで照らされる。
そこに鎮座していたのは――思わず畏れを抱かせるような老人だった。
丸眼鏡に中華服を着た、杖を突いた老爺……と言うとありきたりに思えるかもしれないが、
その体躯は遠くから見ても、ぼくより二回りはゆうに大きいことが窺える。
何より、その異様な威圧感。
……あの人物こそが、『魔幇』の首領 ということだろう。
丸眼鏡に中華服を着た、杖を突いた老爺……と言うとありきたりに思えるかもしれないが、
その体躯は遠くから見ても、ぼくより二回りはゆうに大きいことが窺える。
何より、その異様な威圧感。
……あの人物こそが、『魔幇』の
「お集まりの皆々様、今宵は百年節の締め括りの大夜会にお越しいただき、ありがとうございます。
まず初めに、我らが『魔幇』を束ねる長――『五爪』からご挨拶を……」
まず初めに、我らが『魔幇』を束ねる長――『五爪』からご挨拶を……」
周囲の人々が、壇上の老人――五爪に向けて拍手を送る。
ぼくも半ば慌てて調子を合わせ、手を叩いた――そのとき。
ぼくも半ば慌てて調子を合わせ、手を叩いた――そのとき。
ズン ズン ズン
――入口のほうから、足音が聞こえた。
思わずそちらに目をやる。
思わずそちらに目をやる。
ギリ ギリ ギリ
人々のざわめきと共に、歯を食いしばる音が聞こえる。
ミチ ミチ ミチ
ざわめきが悲鳴に変わり、空気が熱を帯びていく。
「……来たぞォ、魔幇の大鼠!」
――『魔幇』に喧嘩を売った、上海きっての解決屋。
『红虎 』・劉炎嵐の姿が、そこにあった。
『
その後ろには、左右を白黒に染め上げた奇抜な女性。
炎嵐以上に大きい、鉄の棒を携えた老丈夫。狐面を被った、長髪長身の男性――エトセトラ。
いずれも場に相応しい正装ながら、明らかに周囲と異なるオーラを纏っているように見えた。
炎嵐以上に大きい、鉄の棒を携えた老丈夫。狐面を被った、長髪長身の男性――エトセトラ。
いずれも場に相応しい正装ながら、明らかに周囲と異なるオーラを纏っているように見えた。
「悪いが、百年節のラストセレモニー――そのまま『魔幇』解散セレモニーにさせて貰うぜ!」
白黒の女性が、炎嵐の横に並び立って高らかに宣言する。
その手には『清王朝のダイヤ』が一瞬煌めき、再び彼女の掌へと収まっていく。
――会場の熱狂 が、一段と増すのがわかった。
だが、その熱狂を一瞬で冷やすように、五爪の低い声が響く。
その手には『清王朝のダイヤ』が一瞬煌めき、再び彼女の掌へと収まっていく。
――会場の
だが、その熱狂を一瞬で冷やすように、五爪の低い声が響く。
「……来たか、小童どもが」
かつ、と杖を一突きし――壇上から降り、闖入者へと老人が向き合う。
その傍らには、どこからか推参したであろう『魔幇』の幹部と思しき者たちが集う。
その傍らには、どこからか推参したであろう『魔幇』の幹部と思しき者たちが集う。
「……来い! 貴様らの公開処刑を饗宴の華としてくれる!」
――五爪の号令と共に、戦争が始まった。
5.善性と悪意のスクランブル!
『魔幇』との全面戦争に突入する一行。
雑兵を黒羽の『創造上の想像力 』で蹴散らし、炎嵐が五爪と向かい合う。
戦闘の混乱で来賓客が逃げ惑い、会場はパニックに陥る。
神楽も×印を使い、黒羽らのサポートに回りつつ自らと周りの人々を護ることに専念する。
因縁の相手として、張三は七鴉翁、メーメー&スパイクは飛星、
林希美はグレゴール・スムーレンバーグとの戦いに突入する。
拳狐は強者を求めるうち、『趙賓』藺 駑門客と出くわし戦闘に入る。
死神は「きみ」を守りながら脱出を促すも、下山師匠がなぜ自分に来客者の立場を与えたのか
わからないまま終わりたくない、と訴える「きみ」のため、共に会場に留まることを選ぶ。
芽芽は戦闘の混乱からカルミアを守るべく奮闘し、会場からカルミアを逃がすことに成功する。
だが、途中会場で見かけた亀岩や黒羽らが気になり、カルミアの後押しも受けて再び会場へと戻る。
亀岩は縁のある黒羽を咄嗟に守ってしまったことで裏切者扱いされるが、
点心會の面々も亀岩の決断に不満を抱かず、運命を共にすることを誓う。
辛うじて拮抗していた戦況だったが、次々と魔幇配下の者たちが参戦し
劣勢に追い込まれる。その窮地を救ったのは、双喜と共に現れた桃猫だった。
自らの能力で囮役を買って出た桃猫と、新鮮な欲望を浴びて元気溌剌の双喜、
そして駆け付けた芽芽の活躍で亀岩らは窮地を脱し、改めて桃猫と仲間を守るべく共に行動を開始する。
そんな中、会場に紛れ込むように果成いっぽが侵入する――
6.『破幇』と『蟲』と『七鴉』
林希美が立ち向かうのは、『蟲使い』のグレゴール・スムーレンバーグ。
過去の忌まわしい記憶を振り払うべく単身で挑むが、自身もテコンドーの達人であり
恵まれた体格と『蟲』を利用したトリッキーな戦術を織り交ぜた戦いに防戦を強いられる。
組み敷かれ、再び蟲を植え付けられそうになったところに、いっぽの飛び蹴りが炸裂する。
乱入してきた子供に嫌悪感を表すグレゴールだったが、その正体が『魔幇統府』であることに気づき動揺する。
だがいっぽは、あくまで一人の『ヒーローに憧れる者』として希美を応援するに留まる。
「おねーさんも、怪人ムシケンポーに打ち勝つヒーローになれるんだぞ!」
その声援と、空腹による『餓鬼』の発動で一気に形勢をひっくり返す希美。
ついに会心の一撃を与え、グレゴールを撃破。ムシケンポー、もといグレゴールは
爆発とともに倒れ伏し戦線から離脱する。
一方、張三は七鴉翁の『七つの子』で能力を複写されてしまう。
更には『参:越老越好』で肉体と武器である鉄剣を強化し、張三に対し優位に立つ七鴉。
希美が助太刀に入るも、『四:時空凌遅刑』を持つ大鴉を使役する七鴉にあしらわれてしまう。
いっぽも、七鴉の前では『魔幇統府』の顔に戻ってしまいヒーローとしての補正も失われてしまう――
7.復讐のアバレワニ占い!
恋辻メーメーと飛星との対決。
占いを悪用し、家族を破滅させ葬った仇を前に冷静さを失い、普段通りの戦いができないメーメー。
更には飛星が投げる筮錘による、因果にすら干渉する遠隔攻撃の前にやられる一方になってしまう。
スパイクの存在もバレてしまい、奇襲も『筮錘推命』の前に暴かれ通じない。
無力さに打ち震えるメーメーを嘲笑い、さらには両親のことも侮辱し精神的にも追い詰める飛星。
そこに黒羽が助太刀に入るが、『創造上の想像力 』すらも
占術で先読みする飛星。『創造上の想像力』で意識を逸らせてのスパイクの奇襲も空振りに終わる――
――その瞬間、飛星の足首に一匹の黒蛇が噛みつく。
灰蛇絡から譲り受けた毒蛇の一匹を、メーメーの『鱗語交流』でひそかに操り機を窺っていたのだ。
「そんな――こんな未来は、見えてなかった筈――」
「そりゃ見えなかったろうな。【紐が一本見えない】って想像をこっそり、テメーの錘につけといたからな」
毒で動きを止められた飛星に、迫りくる大顎を回避する運命はもはや巡って来なかった――。
復讐を果たし、緊張が抜けてへたり込むメーメーにスパイクが寄り添う。
幹部を倒されいきり立つ魔幇の面々だったが、双喜らの乱入で集中を乱し、あっさりと鎮圧される。
死神・「きみ」も合流しつつ、雑兵を撃退しメーメーを守りぬくことに成功する。
8.Rの怒り/燃えよ红虎
炎嵐と五爪の、真正面からの衝突。
五爪が牽制として杖から放った毒針を熱で溶かすも、それも織り込み済み。
気化した毒の煙で視力を一時的に奪われた隙に、強烈な一撃を食らう炎嵐。
熱で曲がった杖を捨て、齢を感じさせない肉体を露わにして真っ向から迎え撃つ五爪。
炎嵐も体温を上昇させるが、周囲で戦う仲間のことを考えると迂闊に最大火力が出せない。
本気を出せない様子を見て「弱い仲間を切り捨てられないことが貴様の弱さ」と断ずる五爪。
だが、その言葉が逆に炎嵐に火をつける。
「俺に、初めから一人でテメエら全員をブッ飛ばすだけの力がないことを!
俺自身が一番腹立たしく思ってるんだよ、クソ爺!!!」
拳に、瞬間的に全熱量を乗せる応用を土壇場で編み出す炎嵐。
遠慮なく全力の怒りを五爪の胸元へと叩き込む――!
全力の『红虎の怒り』の前に倒れる五爪は――素直に敗北を認める。
だが、その直後――
「ガ……ッ!?」
敗北を潔く受け入れたはずの五爪の身体が、本人の意思と無関係に蠕動している。
赤黒い血を口からどぼどぼと零しながら、ぐぐぐと背を丸める。
その表情は苦悶と怨嗟に満ちている――!
赤黒い血を口からどぼどぼと零しながら、ぐぐぐと背を丸める。
その表情は苦悶と怨嗟に満ちている――!
「なぜ、だ! なぜ、儂に―― オゴアアァァァァ!」
血涙を流す双眸がぐるりと裏返り――
五爪は糸の切れた操り人形の如く、倒れ伏した。
五爪は糸の切れた操り人形の如く、倒れ伏した。
その背が、弾けるように罅割れ――異形の影が飛び出す。
椰子の実ほどもある複眼の下で、不快なクリック音を響かせる大顎が蠢く。
人の首を簡単に狩り取れそうな大鎌のついた、二対の前肢が血脂に濡れる。
蜈蚣 を思わせる身体が、引き抜かれた脊椎の如く不気味にうねる。
人の首を簡単に狩り取れそうな大鎌のついた、二対の前肢が血脂に濡れる。
生理的嫌悪感を催す、人と同等の大きさの体躯を持つ『蟲』が、そこに鎮座していた。
「な…… 老大 ! バカな……そんなは ズガッ!?」
床に這いつくばったグレゴールが、五爪の変貌に驚愕し、目を見開くと同時に――
彼の身体もぼこぼこと波打ち始め、肌を突き破り『蟲』が這い出る。
彼の身体もぼこぼこと波打ち始め、肌を突き破り『蟲』が這い出る。
「……! これ、は……そうカ、チー……」
グレゴールが呪詛じみて吐いた言葉は、大量の蟲の軋り声にかき消された。
『蟲使い』だったはずの男が、蟲を詰め込んだ革袋に変わるまでそう時間はかからなかった。
『蟲使い』だったはずの男が、蟲を詰め込んだ革袋に変わるまでそう時間はかからなかった。
「……どうなってやがる」
「なぜ……」
「なぜ……」
炎嵐は思わず怒りも一瞬忘れ、目の前の悍ましき怪物の誕生に戦慄する。
希美もまた、倒したはずの相手が蟲を零しながら再び立ち上がるのを見て、言葉を失う。
希美もまた、倒したはずの相手が蟲を零しながら再び立ち上がるのを見て、言葉を失う。
ギロリ、と五爪の蟲が巨大な複眼に炎嵐の姿を捉える。
グレゴールだったモノから大量の蟲が這い出し、飛び回り始め――周囲の者に襲い掛かる。
グレゴールだったモノから大量の蟲が這い出し、飛び回り始め――周囲の者に襲い掛かる。
「! マズい……一般人に被害が出る!」
希美が向かってくる『蟲』を撃墜するが――数が多い。
このままでは、外に出てどれだけの無差別な被害を振りまくか――
このままでは、外に出てどれだけの無差別な被害を振りまくか――
「……何だよ、この蟲どもはよぉ!」
ごう、と入口で炎が噴きあがる。
――点心會の朱鳳 が『朱雀掌』で発した炎である。
――点心會の
「そこの人、ちょうど良かった! その蟲、外に絶対逃がさないで!」
希美が咄嗟に朱鳳に指示を飛ばす。
朱鳳は一瞬戸惑うものの、次々に飛び込んでくる異形の蟲を見てその手を緩めず炎を噴き続ける。
朱鳳は一瞬戸惑うものの、次々に飛び込んでくる異形の蟲を見てその手を緩めず炎を噴き続ける。
「亀岩、お前は桃猫ちゃんとあのホムンクルスのガキのとこに行ってやんな!
虎眼、ボサッと見てねえで手伝え!はたき落とすくらいはできっだろ!」
虎眼、ボサッと見てねえで手伝え!はたき落とすくらいはできっだろ!」
「わ、悪ぃ!」
入口を点心會の面々が固め、飛び交う蟲らを次々と焼き、打ち払う。
グレゴールの身体から湧き出る蟲は徐々にその数を減らし――ついには居なくなった。
グレゴールの身体から湧き出る蟲は徐々にその数を減らし――ついには居なくなった。
だが、七鴉の尖兵たる大鴉は未だに飛び回り、虎視眈々と獲物を狙っている――!
===
「……七鴉、テメェの仕業だな」
張三が鉄棍を伸ばし、先を鎖状に編み変えて七鴉を狙う。
七鴉が鉄剣で攻撃をいなしながら、事も無げに答える。
七鴉が鉄剣で攻撃をいなしながら、事も無げに答える。
「随分と周到なこった―― あんな規模の『蟲』、昨日今日じゃ育たねえ。
……いつからあんな仕込みをしていやがった?」
……いつからあんな仕込みをしていやがった?」
「……さあ、いつだったかな。
『五爪』は予想以上に永く頑張ってくれたのでね、忘れてしまったよ」
『五爪』は予想以上に永く頑張ってくれたのでね、忘れてしまったよ」
「……外道め。お飾りの老大 ってわけでもなかったろうに」
棍での打ち合いを続けながら、張三が舌打ちをする。
「老大、か。……馬鹿馬鹿しい。
『魔幇』の首領 は――存在しない」
『魔幇』の
「――ああ?」
七鴉がどこか自嘲じみた苦笑を浮かべながら、張三目掛け鉄剣の突きを繰り出す。
剣の先端が鴉の嘴を象って伸び、張三の右肩を掠める。
剣の先端が鴉の嘴を象って伸び、張三の右肩を掠める。
「『魔幇』とは、『幇 』の枠組みそのもの。
家長たる首領が誰であろうと、枠組みさえ壊れなければそれでよい。
魔人を束ね、上海を纏める『魔幇』さえあれば、な」
家長たる首領が誰であろうと、枠組みさえ壊れなければそれでよい。
魔人を束ね、上海を纏める『魔幇』さえあれば、な」
「……そんなクソみてぇな枠作りのために、兄貴を犠牲にしやがったのかと思うと怒りも一入だな!」
張三が怒気を漲らせ、鉄棍を振るう。
だが―― 今の七鴉は『弐:鉄杵』をコピーしている。
先端を網状にして身体を絡めとろうにも、鉄の網が七鴉によって呆気なくほどかれてしまう。
突こうが切ろうが縛ろうが、触れた鉄を加工できる条件は同じ。
それゆえに、張三の能力が通じない。
むろん、逆のことが張三にも言えるが――七鴉の能力は一つに留まらない。
だが―― 今の七鴉は『弐:鉄杵』をコピーしている。
先端を網状にして身体を絡めとろうにも、鉄の網が七鴉によって呆気なくほどかれてしまう。
突こうが切ろうが縛ろうが、触れた鉄を加工できる条件は同じ。
それゆえに、張三の能力が通じない。
むろん、逆のことが張三にも言えるが――七鴉の能力は一つに留まらない。
『参:越老越好』により、七鴉自身の身体能力、そして彼の持つ鉄剣が強化されている。
『伍:ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~』で、間合すらも無視して攻撃が当たる。
更に『四:時空凌遅刑』を操る鴉が同盟相手の動きを牽制している。
『伍:ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~』で、間合すらも無視して攻撃が当たる。
更に『四:時空凌遅刑』を操る鴉が同盟相手の動きを牽制している。
「怒りだけでは熱き鉄を保つこと叶うまい――
『魔幇』を壊すならば、張无忌殿の弟君とて排除するのみよ」
『魔幇』を壊すならば、張无忌殿の弟君とて排除するのみよ」
「――兄貴の名前を呼ぶんじゃねえ、七鴉!!」
蟲と化した五爪に改めて対峙する炎嵐。
卵を寄生させようとしてくるが、高体温の炎嵐には通じないとみるや
卵を高熱で弾けさせて衝撃波で攻め立てるなど、想像以上の狡猾さを見せる五爪蟲。
だが、七鴉のやり口に怒りのボルテージを上げた炎嵐の敵ではなかった。
9.七鴉の真意は何だったのか
藺との戦闘に明け暮れていた拳狐だったが、藺が五爪の異変に気付き手を止める。
「――友が朽ちた今、儂が戦う理由が無くなった」
「――そうか。だが、己にはある。
……強さの極みに立つ、それが我が戦いの理由よ」
五爪を誅殺した七鴉に、密かに怒りを燃やす藺。
その怒りを今しばらく拳狐へと向け、嘗ての『上海覇者』としての意地を見せる。
激戦の果て、勝ったのは――拳狐。
敗北により死を迎える藺の遺志を受け、張三と七鴉の戦闘へと助太刀する拳狐。
大鴉の『時空凌遅刑』は一時停止の繰り返し、故に拳狐の『為逸速的一息』との相性は最悪。
容易く大鴉を撃退すると、そのまま張三に助太刀する。
二対一となっても尚、優位に立ち回る七鴉だったが、ここでついに秘策が炸裂する。
張三の持っていた鉄棍に付与していた【鉄杵磨成八卦蛇】と現実の『鉄杵磨成八卦蛇』、
虚実合わせて十六の鉄蛇が、ついに七鴉を打ち倒す。
だが、張三が介錯の一撃を加える直前――
謎の人物が現れ、七鴉を葬り去る。
七鴉翁の七つめの能力は『漆:内練武功』――
わざと倒されることで、張三と自らの異能を受け継ぐ仔を産み落としたのだった。
10.未来からの悪意来訪:2025
現れた人物は、若かりし頃の七鴉と同じ顔を持つ青年だった。
名を『七鳳』と名乗った青年は、
『壱:龍飛九天:雲従其志』と『弐:鱗語交流』の合わせ技を披露し、
スパイクにメーメーを襲わせる。咄嗟に亀岩が『玄武印』で庇うが、一撃で砕けてしまう。
なおも襲い掛かるスパイクを、やむなく拳狐が打ち据えた隙に神楽が『行動禁止』で止めるが
神楽・亀岩が『参:硬気功如意自在演武』を行使する七鳳に吹き飛ばされ、重傷を負ってしまう。
勢いのままに、その場にいる面々を蹂躙する七鳳。
神楽を傷つけられ激昂する黒羽だったが、肉弾戦の速度に太刀打ちできない。
とどめの直前にいっぽが本来の姿を現し、拳狐と共に割って入るも、『四:恐怖の脳筋革命』によって
身体能力を極限まで下げられた状態での一撃を受け、二人とも瀕死にまで追い込まれる。
さらに炎嵐が思考能力を下げられ、敵味方の区別なく暴れる暴走状態に陥る。
止められるのは、ほぼ無敵の防御力を持つ芽芽だけだが――
「……ただでさえ可愛くないってのに、暴走するだなんて不細工の極みだわ」
だが、そのとき七鳳の双眸から放たれた光閃が二人を諸共に貫く。
「え――?」
「ガァッ――!」
「ガァッ――!」
胸を貫かれ、さしもの『红虎』も、そして芽芽も倒れ伏す。
芽芽が意識を失う前に見たのは、邪悪に微笑む自分の姿 ――
芽芽はこの能力を知っていた。知っていたはずだ。だが、意識から零れ落ちていた。
芽芽が意識を失う前に見たのは、邪悪に微笑む
芽芽はこの能力を知っていた。知っていたはずだ。だが、意識から零れ落ちていた。
『伍:閃耀的鑽石鏡 』。
桃猫と名乗る少女が持つ、理想の姿を見せる能力。
桃猫と名乗る少女が持つ、理想の姿を見せる能力。
――芽芽にとっての理想、それは即ち自分自身。
『可愛くてごめん』の防御を破る存在――!
『可愛くてごめん』の防御を破る存在――!
「! そん、な――わたしの、能力――」
吹き飛ばされ目を覚まさない亀岩の側で、桃猫は愕然としていた。
自分の能力がこのような形で悪用された挙句――友達を傷つける結果になったことに、驚愕を隠せない。
そして、この呆気ないほどの蹂躙劇を、炎嵐と芽芽、そして桃猫以上に愕然と見つめる者がいた。
自分の能力がこのような形で悪用された挙句――友達を傷つける結果になったことに、驚愕を隠せない。
そして、この呆気ないほどの蹂躙劇を、炎嵐と芽芽、そして桃猫以上に愕然と見つめる者がいた。
――「きみ」である。
Side:「きみ」
――今、何が起きた?
ぼくの頭は、目の前の光景をどこか他人事のように処理していた。
『红虎』が怒り狂うあまりに暴走し、それを可愛い女の子が止めに入り――
『红虎』が怒り狂うあまりに暴走し、それを可愛い女の子が止めに入り――
そのあとのことが、ついさっき起きたことであるはずなのに、思い出せない。
靄がかかったような、不自然に黒塗りになったような感覚。
足元がふわふわする。景色がぐにゃりと歪む。
靄がかかったような、不自然に黒塗りになったような感覚。
足元がふわふわする。景色がぐにゃりと歪む。
その直後、ぼくは――死神ちゃんにどん、と突き飛ばされた。
……なぜ彼女がそんなことをしたのかは、すぐにわかった。
……なぜ彼女がそんなことをしたのかは、すぐにわかった。
一筋の光が、死神ちゃんの身体を射抜いた。
つい数瞬前まで、ぼくが立っていた場所だ。
つい数瞬前まで、ぼくが立っていた場所だ。
「……な」
死神ちゃんが、ぼくを突き飛ばした体勢のまま倒れ込む。
死神ちゃんの腹部から漂う、肉が焦げる匂いと、血の匂い。
ぼくを庇ったせいで負傷したことに、ショックを受けたが――それ以上に。
その手段が問題だった。
死神ちゃんの腹部から漂う、肉が焦げる匂いと、血の匂い。
ぼくを庇ったせいで負傷したことに、ショックを受けたが――それ以上に。
その手段が問題だった。
――目から放つ光線。
それは、下山師匠から半ば強引に貸し出された、ぼくの能力の一つだった。
それは、下山師匠から半ば強引に貸し出された、ぼくの能力の一つだった。
いや。目から光線を放つ魔人など、そう珍しくもないはずだ。
これは偶然だ。そうだ、そうに決まってる――
これは偶然だ。そうだ、そうに決まってる――
そんなぼくの淡い期待と祈りは、あっけなく砕かれた。
「――何を驚くことがある? 未分化の『我』よ」
死神ちゃんを貫いた男が、無慈悲に告げた。
――あれが『ぼく』だと?そんなわけがない。
だって、奴はぼくと似ても似つかない――
――あれが『ぼく』だと?そんなわけがない。
だって、奴はぼくと似ても似つかない――
「見苦しい否定だな。その証拠に――
もう、師匠の声は聞こえていないだろう? 下山アンドロメダの、喧しい声が」
もう、師匠の声は聞こえていないだろう? 下山アンドロメダの、喧しい声が」
内心を見透かすように告げられて、愕然とする。
そうだ。下山師匠の声が――さっきから、まったくしていない。
そうだ。下山師匠の声が――さっきから、まったくしていない。
ぼくは必死に呼びかける。借り物の通信能力を、自ら必死にオンにする。
でも――応答はない。誰も返事をしない。何も聞こえない。
でも――応答はない。誰も返事をしない。何も聞こえない。
「……理解できたか? 未分化の『我』よ」
――耳を劈 く悲鳴が、聞こえた。
それが、ぼくの喉から吐き出されたものだと気づくまで、随分とかかった。
いや、あるいは一瞬だったのか。わからない。体内時計がぐるぐると狂い、目の前がどんどん暗くなる。
身体に力が入らない。脳があらゆる情報の理解を拒み、生きる気力が漏れ出していく。
――『ぼく』は、誰なんだ。 誰でもいいから、答えてくれ。
それが、ぼくの喉から吐き出されたものだと気づくまで、随分とかかった。
いや、あるいは一瞬だったのか。わからない。体内時計がぐるぐると狂い、目の前がどんどん暗くなる。
身体に力が入らない。脳があらゆる情報の理解を拒み、生きる気力が漏れ出していく。
――『ぼく』は、誰なんだ。 誰でもいいから、答えてくれ。
11.2125:『魔幇』を受け継ぐモノ
「……ふん、『我』ながら惰弱者よ」
七鳳はもはや興味を無くしたと言わんばかりに、悲鳴を上げて崩れ落ちた青年を無視し――
視界の端で、鉄棍を杖代わりに立ち上がる張三を捉え、向き直る。
視界の端で、鉄棍を杖代わりに立ち上がる張三を捉え、向き直る。
「……まだ動けるとはな、錆鉄の残響よ」
「……ああ、『破幇』を為すまでは死ねないもんでね」
強がる張三だったが、その身体には明らかな異変が生じていた。
指先の皮膚が、ぱりぱりと赤錆た鉄のように剥落を始める。
指先の皮膚が、ぱりぱりと赤錆た鉄のように剥落を始める。
息も絶え絶えに横たわるいっぽが、その様子を見て悲痛な表情を浮かべる。
「……やはり、か。 張三、君は、もう……」
数日前、目艮竟が立てた仮説が実証された――されてしまった。
今の張三は、幻影の鎧騎士、クラム・ハードシェルと同様の――一種の形ある幻影のようなものだ、と。
心の底に燻っていた、魔幇の偽りへの怒りと無念が、彼を永く現世に留めていた。
だが、この百年節を巡る激闘で、その命の残り火を激しく燃やした結果――限界が、近づいている。
今の張三は、幻影の鎧騎士、クラム・ハードシェルと同様の――一種の形ある幻影のようなものだ、と。
心の底に燻っていた、魔幇の偽りへの怒りと無念が、彼を永く現世に留めていた。
だが、この百年節を巡る激闘で、その命の残り火を激しく燃やした結果――限界が、近づいている。
「……テメェと刺し違えてでも、ここで『魔幇』を終わらせる。
それが、俺の――最後の役目だ」
それが、俺の――最後の役目だ」
張三が残された生命力を振り絞り、鉄棍を構える。
だが、七鳳は嘲笑うような視線を向けるのみだった。
だが、七鳳は嘲笑うような視線を向けるのみだった。
「無理だな。我が“仔の陸”は『不死不敗』――そこで負けたばかりの惰弱者の力ではあるが。
負けぬ限り、我は不老不死なのだ。刺し違える、すなわち引き分けでは――我は死なぬ」
負けぬ限り、我は不老不死なのだ。刺し違える、すなわち引き分けでは――我は死なぬ」
「……陸?漆の間違いだろう?……親父に算数は習わなかったか?」
「先程の閃撃なら、借り物だ――尤も、返す相手はとうに居ないがな。」
それより、老头儿 が無理をするんじゃあない――
貴様らの言う『破幇』は、最早夢物語なのだから」
それより、
貴様らの言う『破幇』は、最早夢物語なのだから」
「……何だと?」
「我の存在こそが、貴様らの敗北の象徴なのだ――
我はこの時代より百年先、2125年の『魔幇』から来たのだからな」
我はこの時代より百年先、2125年の『魔幇』から来たのだからな」
七鳳の突拍子もない言葉に、張三は苦笑いを浮かべる。
「2125年、だと?何をバカなことを――」
「……その人の言っていることは……本当だと、思います」
鼻で笑い否定しようとする張三に、メーメーが震えながら答える。
彼女は一度見ている。『内練武功』がいかなる能力かを。
現れた脅威が、間違いなく未来から来たということを。
故に、七鳳の言葉が真実であるということを――理解してしまっている。
現れた脅威が、間違いなく未来から来たということを。
故に、七鳳の言葉が真実であるということを――理解してしまっている。
「『内練武功』は、己が認めた強者と己の子を為し、遥か未来より呼び出す能力だ。
つまり、我が生まれる未来が、その時点で確定する。
――百年先まで『魔幇』が存在し続けるという未来が、な。
たとえ我をここで殺せたとして、もはや我の存在そのものが未来を定める楔なのだ」
つまり、我が生まれる未来が、その時点で確定する。
――百年先まで『魔幇』が存在し続けるという未来が、な。
たとえ我をここで殺せたとして、もはや我の存在そのものが未来を定める楔なのだ」
「な――」
張三が、七鳳の言葉に思わず鉄棍を取り落とす。
――目の前の存在自体が、『破幇』が百年果たされぬ事実を物語る。
――目の前の存在自体が、『破幇』が百年果たされぬ事実を物語る。
そして七鳳の発言は、暗澹たる未来の暗示でもある。
彼もまた、親同様に七つの魔幇の力を操るのなら――その中に当然『内練武功』が含まれる。
仮に七鳳を斃せたとしても、七鳳の能力と倒した者の力を継ぐ新たな存在が産み落とされる。
そのたびに『魔幇』の永劫性は増し、『未来』が確定していく――!
彼もまた、親同様に七つの魔幇の力を操るのなら――その中に当然『内練武功』が含まれる。
仮に七鳳を斃せたとしても、七鳳の能力と倒した者の力を継ぐ新たな存在が産み落とされる。
そのたびに『魔幇』の永劫性は増し、『未来』が確定していく――!
「必定将死 ――我が産み落とされた時点で、貴様らの勝利はもはや消え失せたのだ」
七鳳の勝ち誇った邪悪な笑みの前に、『钢铁构架』――張三の、張り詰めていた精神の糸が、切れた。
巨躯が頽れるように膝をつき、絶望の表情を浮かべた。
巨躯が頽れるように膝をつき、絶望の表情を浮かべた。
「――落とし物だ。返すぞ」
足元に転がった鉄棍を拾い上げ、七鳳が一振りする――
刹那、鉄棍は八の首をもたげる邪龍となり、四つ首が張三の四肢を無慈悲に噛み砕く。
残る四つ首が部屋中を伸び回り――飛んでいた双喜の四肢を同様に挟み潰す。
刹那、鉄棍は八の首をもたげる邪龍となり、四つ首が張三の四肢を無慈悲に噛み砕く。
残る四つ首が部屋中を伸び回り――飛んでいた双喜の四肢を同様に挟み潰す。
「……聞いていなかったか? 我は貴様の力も受け継いでいるのだ。
愚父の力で借りるまでもない――」
愚父の力で借りるまでもない――」
どさり、と張三、そして双喜が床に叩きつけられ――動かなくなる。
……もはや勝敗は決した。
戦力になりうる者たちは次々に倒れ、残る戦意さえも悪辣にへし折られていく。
戦力になりうる者たちは次々に倒れ、残る戦意さえも悪辣にへし折られていく。
――もし、英雄 がいるのなら。
絶望的な盤面でさえ、ひっくり返してみせるのだろう。
絶対的な巨悪でさえ、討ち果たし平和を齎すのだろう。
絶望的な盤面でさえ、ひっくり返してみせるのだろう。
絶対的な巨悪でさえ、討ち果たし平和を齎すのだろう。
そんな未来を思い描く力を持つ者が、まだ、たった一人だけいる――
「……かはは、わかってねーなあ。
チェックメイトの盤面をちゃぶ台返しするからこそ面白れーんだろうが」
チェックメイトの盤面をちゃぶ台返しするからこそ面白れーんだろうが」
――『万事屋』白髪黒羽が、血と埃に塗れながら笑う。
「……減らず口だけはまだ叩けるようだな」
七鳳は、不快を隠すことなく――未だ心を折らぬ女に対峙する。
「百年先の繁栄を覆すことなど、誰にも出来ぬ。
幻を見せるしか能のない貴様には、特にな」
幻を見せるしか能のない貴様には、特にな」
七鳳が、黒羽に今度こそ引導を渡さんと構えを取る。
だが、黒羽は――辺りに転がる七鴉と五爪の亡骸を一瞥すると、どこか寂しそうな表情を浮かべて
七鳳に向き合った。
だが、黒羽は――辺りに転がる七鴉と五爪の亡骸を一瞥すると、どこか寂しそうな表情を浮かべて
七鳳に向き合った。
――彼の言う『幻』で、敵を討つために。
12.幻想Ⅰ:銀の弾丸、あるいは切札
Side:白髪黒羽
……百年先も魔幇は健在、ねえ。
アンタがブチ殺したジジイも、ベニトラがノシたボスとやらも、随分長いこと魔幇にしがみつき続けたんだってな。
んで、律儀にアンタも同じことを繰り返してるってワケか。
未来のココで、魔幇を影から日向から守り続ける番人として。
アンタがブチ殺したジジイも、ベニトラがノシたボスとやらも、随分長いこと魔幇にしがみつき続けたんだってな。
んで、律儀にアンタも同じことを繰り返してるってワケか。
未来のココで、魔幇を影から日向から守り続ける番人として。
「……然り。愚父の代わりに、我こそが『魔幇』の永遠を守るのだ」
……なめんなよ。
「……何?」
未来人だか黒幕ジジイの子供だか知らねーが、未来がアタシらを決めつける権利はねえ。
アタシらが未来を創るんだ――
今! ここで! 生きているアタシ達がだ!
アタシらが未来を創るんだ――
今! ここで! 生きているアタシ達がだ!
「……聞くだけ無駄だったな。貴様らはここで誰にも顧みられず『魔幇』の繁栄の礎となるのだ」
かはは、ここで死ぬ気はさらさらねえよ。
テメーが知ったかぶってるアタシらの末路は、テメーのオツムの中だけの妄想だってことを
今から証明してやるさ――
テメーが知ったかぶってるアタシらの末路は、テメーのオツムの中だけの妄想だってことを
今から証明してやるさ――
「――つまらぬ見世物しか芸のない小娘め、『平伏せ』」
七鳳が言葉に重みを乗せるのがわかる。確かボス爺さんの能力だったか。
だが、その能力――自分より強い奴に効くのかね?
だが、その能力――自分より強い奴に効くのかね?
なにしろ――【私は最強】だからなあ!
『創造上の想像力 』は、通常ならアタシ自身には影響を与えない。
だが、例外がある。
その一つが、最もシンプルな想像力の使い方――自己暗示。
だが、例外がある。
その一つが、最もシンプルな想像力の使い方――自己暗示。
もちろん、アタシ自身に付与したってことは――目の前の相手にも想像 が伝わる。
「……下らぬ。実に下らぬ強がりだ。
白髪黒羽。――貴様は、強者などではない!」
白髪黒羽。――貴様は、強者などではない!」
かはは、強がりか。そうかもな。テメーを倒すなんて……
アタシ一人じゃ流石に無理だ。
だから、皆の力を借りる。……頼むぜ。
だから、皆の力を借りる。……頼むぜ。
「その皆とやらがどこにいる? 身も心も傷つき斃れ、満足に動けるのは貴様一人だ」
いいや、一人じゃねえ。何十、何百――あるいは何千、何万。
その『想い』がここにある――
その『想い』がここにある――
――なあ、『清王朝のダイヤ』。
お前に奇跡を呼ぶ力があるというのなら、ほんの少しでいい。
アタシ達に、力を貸してくれ。――『コイツをブッ飛ばす力』を!
お前に奇跡を呼ぶ力があるというのなら、ほんの少しでいい。
アタシ達に、力を貸してくれ。――『コイツをブッ飛ばす力』を!
――ベタな祈りだと、アタシも思う。誰だってそう思う。
何も変わらぬ悪足掻きだと言われるだろう、つーか目の前でヒナ鴉が言ってやがる。
何も変わらぬ悪足掻きだと言われるだろう、つーか目の前でヒナ鴉が言ってやがる。
だから、もう一つ――願いのエネルギーに満ちたアイテムを重ねる。
十叶、アンタの『お守り』……使わせてもらうぜ。
十叶、アンタの『お守り』……使わせてもらうぜ。
『ダイヤ』と『お守り』、二つのエネルギーの力でダイヤが輝き――
それと共に皆の傷が癒えていく。
「――下らぬまやかしだな。我に勝てぬ者がいくら寄り集まろうと、結果は何も変わらない」
「やってみなきゃわかんねえだろ?
――ぶっ放すぜ、最大最強の『創造上の想像力 』!」
【【皆が立ち上がり、再び七鳳に立ち向かう】イメージを発揮し、総攻撃をかける黒羽。
だが、七鳳は能力を駆使し、あっさりと蹴散らしていく。
「まあまあ楽しめた手品だったな――終わりだ」
黒羽の元へと辿り着き、介錯の一撃を繰り出そうとしたところで――
拳狐の『為逸速的一息』が最大速度で叩き込まれる。
【さらに、吹き飛んだ先で炎嵐の最大温度の拳で殴り返され、】
その先で亀岩の『玄武印』を纏ったカウンターとスパイクの全力の噛み付きを受ける。
【神楽が×型の棍棒を振り下ろし、頭を打ち据えて『回避禁止』の楔を刻む。】
怯んだ隙に双喜、芽芽、死神の三人による連続コンビネーションを受け、
懐に飛び込んだ希美が『餓鬼』でがむしゃらに打ち合う。
いっぽの声援で希美の一撃を受けるたびに火花が散り、
【堪らず間合いを離したところに、張三が操る八又の鉄蛇が全身に噛みつき絡みつく。】
鉄蛇を操り返そうとした途端、幻のように消え失せる。
皆の異常なほどに完璧な連携で、これが想像だと気づき再度凌ごうとするが――
虚実入り交じった解決屋たちの総攻撃を凌ぎきれず、ついに七鳳が膝をつき倒れる。
「バカな――バカな! 貴様のまやかしが、ここまで強力なはずがない!
貴様の見世物はさっき終わったはずだろう!」
貴様の見世物はさっき終わったはずだろう!」
……終わった?いいや、さっきのは最大なんかじゃあねえよ。
むしろ、ついさっき始まったばかりさ――
むしろ、ついさっき始まったばかりさ――
――百年間の、長い長い認識時間がな。
「……なんだと?」
『百年先も魔幇は健在』『未来はもはや確定した』
……テメエは、確かにそう言ったな?
……テメエは、確かにそう言ったな?
「まさか。 ……まさか、貴様」
そう。アタシの最大の『創造上の想像力』を付与したのは――
百年先のテメエも当然、未来のここにいたはずだ。
百年っつー位だから幼少期の頃から、ずぅっとな。
アタシの能力は、複雑なイメージほど認識時間が長く要る。
裏を返せば、時間さえあれば――どんな重厚長大なイメージでも、テメエにブチ込める。
百年っつー位だから幼少期の頃から、ずぅっとな。
アタシの能力は、複雑なイメージほど認識時間が長く要る。
裏を返せば、時間さえあれば――どんな重厚長大なイメージでも、テメエにブチ込める。
「……詭弁を……!
なら、今ここで貴様を殺せばいいだけのこと!
そうすれば貴様が付与したイメージとやらも消え失せ――」
なら、今ここで貴様を殺せばいいだけのこと!
そうすれば貴様が付与したイメージとやらも消え失せ――」
おいおい、冷静に考えてみろよ。
今アンタがイメージを浴びてるってことは、百年先までイメージは残り続けてるってことだろが。
流石のアタシも、テメエらみたいに世紀単位で長生きしてるわけがねえだろ。つーかしたくねえ。
ってことはだ、アタシが刻んだイメージ自体はアタシが死んでも残り続けるってこった。
今アンタがイメージを浴びてるってことは、百年先までイメージは残り続けてるってことだろが。
流石のアタシも、テメエらみたいに世紀単位で長生きしてるわけがねえだろ。つーかしたくねえ。
ってことはだ、アタシが刻んだイメージ自体はアタシが死んでも残り続けるってこった。
「……おのれ……! もういい、貴様の戯言もここまでだ!」
アタシの言葉を振り切るように、ヒナ鴉が貫手をアタシの胸に突き刺す。
あらら。まだ気づかねえか?
【――今話してるアタシも想像だよ 。】
あらら。まだ気づかねえか?
【――
「な――」
ところで――
誰がこれで終わりなんて言ったっけ?
誰がこれで終わりなんて言ったっけ?
【愕然とするヒナ鴉の横っ面に、再度ベニトラの拳が叩きつけられる。】
その先にいるチョーさんが、吹っ飛んだヒナ鴉を巨大化させた鉄の塊で上からぺしゃんこに圧し潰す。
鉄の塊が引っ込むと同時に、神楽ちゃんが×印のバットをフルスイング――
その先にいるチョーさんが、吹っ飛んだヒナ鴉を巨大化させた鉄の塊で上からぺしゃんこに圧し潰す。
鉄の塊が引っ込むと同時に、神楽ちゃんが×印のバットをフルスイング――
まだまだ続くぜ、総攻撃。
ヒナ鴉――七鳳がボロボロにされながらも呪詛を吐く。
「……白髪黒羽……白髪黒羽アアァァァァァ!!」
……想像とわかってりゃ凌げるんだろ?やってみなよ。
『今』を必死に生きてる奴らの想いが、
『ダイヤ』を生み出した人々の願いが、
『魔幇』に踏みにじられた皆の無念が!
『今』を必死に生きてる奴らの想いが、
『ダイヤ』を生み出した人々の願いが、
『魔幇』に踏みにじられた皆の無念が!
そんなに軽いと思ってるんならなああああああ!!!!
『創造上の想像力 』の中でさらに『創造上の想像力 』が連鎖する。
想像の中でさらに想像が着火し、七鳳の体力と精神を削りゆく――!】
想像の中でさらに想像が着火し、七鳳の体力と精神を削りゆく――!】
13.偽りのGame Over
Side:七鳳
おのれ……おのれ!
この私が、想像如きに敗れるだと? あり得ぬ!断じて!
だ、だが……もはや想像とわかっていても、振り解けぬ!
このままでは、我は……
この私が、想像如きに敗れるだと? あり得ぬ!断じて!
だ、だが……もはや想像とわかっていても、振り解けぬ!
このままでは、我は……
……く、はははは! そうだ、なぜ忘れていた!
我には――『魔幇』には!『内練武功』がある!
結局奴の足掻きは!無駄ということだ!
我には――『魔幇』には!『内練武功』がある!
結局奴の足掻きは!無駄ということだ!
……いいだろう、負けを認めようではないか。潔く散ろうではないか!
だが!我を破ったものと、我の遺伝子は紡がれる!
そして先の百年の繁栄が確定される!なんと素晴らしいことか!
ならば、我の命などくれてやろう――来たれ、我が子よ!
だが!我を破ったものと、我の遺伝子は紡がれる!
そして先の百年の繁栄が確定される!なんと素晴らしいことか!
ならば、我の命などくれてやろう――来たれ、我が子よ!
『漆:内練武功』が発動したのが、わかる。
その刹那、我の目の前に人影が現れ――
我が胸に貫手を突き刺し、我が心臓を抜き取って握りつぶしてみせた。
その刹那、我の目の前に人影が現れ――
我が胸に貫手を突き刺し、我が心臓を抜き取って握りつぶしてみせた。
そうだ、それでいい――それでこそ!
これで、我が『魔幇』の未来は――
これで、我が『魔幇』の未来は――
……?
……なんだ? 我が子が――消えていく?
どういうことだ!我と強者の力を継ぐものが、なぜ――
……なんだ? 我が子が――消えていく?
どういうことだ!我と強者の力を継ぐものが、なぜ――
「……まだわからないのかい」
――脳裏に声が響く。二度と聞くはずのない、女の声……下山アンドロメダ。
「きみの心を折り、死という安易な逃げ道に誘ったのは――きみが想像した『幻想』だ。
白髪黒羽は、その背中を押しただけだよ――『創造上の想像力 』でね」
白髪黒羽は、その背中を押しただけだよ――『
何の話をしている?今更貴様がしゃしゃり出る場面では……
「『内練武功』できみが孕んだのは――『幻想』との子供だ」
……何を言い出すかと思えば、世迷言を。
我を打破したのは白髪黒羽だ、だから我は奴と我の子を――
我を打破したのは白髪黒羽だ、だから我は奴と我の子を――
「『内練武功』は、きみが強者と認めた相手の子供を孕むのだろう?
その可能性を、きみ自身が否定したじゃあないか。
――― ¬ 『白髪黒羽は強者ではない』と」
その可能性を、きみ自身が否定したじゃあないか。
――― ¬ 『白髪黒羽は強者ではない』と」
……詭弁だな。我は、奴の刻んだ幻想によって倒されるのだ。
我を殺すのは、白ひ――
我を殺すのは、白ひ――
「なんだ、ちゃあんときみは幻想の強固さを知っているじゃあないか。
『魔幇』という枠組み自体が既に、強大な共同幻想の産物なのだからね。
その秘宝たる『清王朝のダイヤ』もまた然り。
きみは心の奥底で『幻想』こそ何物にも勝ると認めている――
ゆえに、きみから産まれるモノもまた『幻想』なのだよ。
……その証拠に、きみを殺した子供の姿。
『魔幇』という枠組み自体が既に、強大な共同幻想の産物なのだからね。
その秘宝たる『清王朝のダイヤ』もまた然り。
きみは心の奥底で『幻想』こそ何物にも勝ると認めている――
ゆえに、きみから産まれるモノもまた『幻想』なのだよ。
……その証拠に、きみを殺した子供の姿。
……あ、ああ……っ……!?
「つまりきみは――『想像妊娠』していたに過ぎないということだ。
想像は、想像する者がいなければ存在できない。
かの殭屍、女陰黄泉の権能を引き合いに出すわけではないけれど……
想像は、想像する者がいなければ存在できない。
かの殭屍、女陰黄泉の権能を引き合いに出すわけではないけれど……
きみの想像の中にしかいない、きみを殺す未来の子供もまた――きみの死とともに、消滅するというわけだ」
ば――ばかな!
それじゃあ我はどうなる――!『魔幇』の未来は!
それじゃあ我はどうなる――!『魔幇』の未来は!
「……すべてはきみの……いや。お前の妄想で終わるんだ」
も……妄想だと?
「お前が最大火力の『創造上の想像力 』を受けるということは
アジトも健在、つまり『魔幇』はあの戦いで滅びなかった、ということになる。
でもそれは、未来からお前が来襲し、敵対者を全滅させた……という前提のもとに確定した未来だ。
だが……お前がここで敗れれば、その時点で『魔幇』という組織は滅ぶだろう。
そうすれば、お前が生まれる前提となる歴史もまた、存在しなかったことになる。
ありきたりな言葉で言えば『タイムパラドックス』という奴だね」
アジトも健在、つまり『魔幇』はあの戦いで滅びなかった、ということになる。
でもそれは、未来からお前が来襲し、敵対者を全滅させた……という前提のもとに確定した未来だ。
だが……お前がここで敗れれば、その時点で『魔幇』という組織は滅ぶだろう。
そうすれば、お前が生まれる前提となる歴史もまた、存在しなかったことになる。
ありきたりな言葉で言えば『タイムパラドックス』という奴だね」
そんな……あり得ない!あり得てたまるかッ!
我は、我こそが『魔幇』百年の繁栄の体現だッ!首魁がどうなろうと!誰だろうと!
『魔幇』は!在り続けるのだ!そうでなくてはならない!
我は、我こそが『魔幇』百年の繁栄の体現だッ!首魁がどうなろうと!誰だろうと!
『魔幇』は!在り続けるのだ!そうでなくてはならない!
「……いい加減にしなよ。
はじまりから既に『幻想 』まみれの、蜃気楼の旗印だったんだ。
『魔幇』も『清王朝のダイヤモンド』も、そして貴様自身も。
『幻想 』はいつか醒めるものだ、それがわからないほど子供じゃあないだろう?」
はじまりから既に『
『魔幇』も『清王朝のダイヤモンド』も、そして貴様自身も。
『
ち、違う!我は、幻想などでは――い、嫌だ! 消えるのはいやだあああああああ!!
「……東西くんを見習えよ、見苦しい。
それに、一時であっても――」
それに、一時であっても――」
下山アンドロメダ! ……い、いえ、ししょ
「お前のような愚物が我が愛弟子を騙ったこと、万死に値する。
――消えろ、誰にも顧みられぬ幻よ」
――消えろ、誰にも顧みられぬ幻よ」
ぱちん。
――――――
……やれやれ。幻想が幻想らしく滅ぶのを見届ける役目を背負わされるとはね。
随分と真面目くさった役回りを押し付けられたものだね、いやはや。
まあわたしも思うところがあったことだし、アルクトゥールス星人の面目躍如といったところかな。
ともあれ、ケリはついたことだし、急いで戻らないとね――我が愛弟子のところに。
随分と真面目くさった役回りを押し付けられたものだね、いやはや。
まあわたしも思うところがあったことだし、アルクトゥールス星人の面目躍如といったところかな。
ともあれ、ケリはついたことだし、急いで戻らないとね――我が愛弟子のところに。
14.魔幇崩壊と皆の願い
Side:白髪黒羽
どうやら、アタシの全力全開の策は、うまく炸裂してくれたようだった。
……ようだった、とアタシ自身も確信が持てないのには理由がある。
……ようだった、とアタシ自身も確信が持てないのには理由がある。
『創造上の想像力 』が着火したあと。
幻想に反応し、虚空に向かって暴れていた七鳳の姿が……
足の先から頭のてっぺんへと、幻影のように姿が薄れ、そして消えてしまったからだ。
幻想に反応し、虚空に向かって暴れていた七鳳の姿が……
足の先から頭のてっぺんへと、幻影のように姿が薄れ、そして消えてしまったからだ。
「……万事屋。奴は、どこに」
チョーさん…… 奴なら、妄想の中に消えたってトコだろうさ。
――百年前、一人の男の奸計が生み出した『魔幇』は、今終わりを告げた……
ってことだけは、間違いねえよ。
――百年前、一人の男の奸計が生み出した『魔幇』は、今終わりを告げた……
ってことだけは、間違いねえよ。
「……そうか」
それを聞いて、チョーさんは安らかな表情を浮かべ――どさり、と倒れ込んだ。
希美ちゃんが血相を変えてチョーさんにすがりつくが…… 時間切れ、ということだろう。
……打ち上げの約束、守れなかったな。
希美ちゃんが血相を変えてチョーさんにすがりつくが…… 時間切れ、ということだろう。
……打ち上げの約束、守れなかったな。
……だが、アタシにゃまだやることがある。
戦いの余波でボロボロになった壇上に上がり、五爪のじーさまが腰かけていた椅子に足をかけ、
右手を高々と掲げ、『清王朝のダイヤ』を呼び出す。
右手を高々と掲げ、『清王朝のダイヤ』を呼び出す。
――『清王朝のダイヤ』を持つ者が命じる。
『魔幇』は、この日この時をもって――解散する!
『魔幇』は、この日この時をもって――解散する!
……ま、魔幇の連中はとうにくたばったか逃げたかしてるんで、聞いてるのはアタシらだけだけど。
こういうのは形が大事だしな。あ、神楽ちゃん、撮れた?
こういうのは形が大事だしな。あ、神楽ちゃん、撮れた?
「あ、はい、大丈夫だと思います」
アタシのスマホで撮ったこの映像を、電梟ちゃん経由で流してもらえばOKだろう。
さて、これで『魔幇』はなくなってめでたしめでたし――
と言うにゃあ、ちょっとばかり帰ってこないものが多すぎる。
と言うにゃあ、ちょっとばかり帰ってこないものが多すぎる。
……しょうがねえな。『清王朝のダイヤ』、悪いけど、もうちっとだけ力を貸してくんな。
皆に、最高最善の『幸せな夢』 を、届けてやりてえからさ。
皆に、最高最善の
アタシが祈りを込めた瞬間、ダイヤは宙に浮かび――
小さな光を辺りに、上海中に散らばらせていく。
光を受け取った人々は、思い思いの『幸せ』のイメージを受け取っていく。
それは、一時の夢かもしれない。それでも、ダイヤを巡って巡り合った皆に
少しでも幸福を―― アタシがダイヤに込めた『イメージ』が、広がっていく。
【皆の望む、最高の夢を叶える】――そんな、ありふれたイメージを。
イメージはやがて薄れ、消えていく。
けれども、それは受け取った皆の心に光を灯し、明日を生きる道標となる。
あるいは、現世を去るものへの最後の餞に。
こうして、ダイヤは力を使い切り、何物でもなくなり、消え――
……ん?
あれ、チョーさん? ……なんか消えるのキャンセルされてねえか?
あれ、チョーさん? ……なんか消えるのキャンセルされてねえか?
「……あぁ? こりゃ、一体……わっ」
「張三! ……良かった……良かった!本当に……」
「張三! ……良かった……良かった!本当に……」
……えーと、感動的なのはいいんだけど。
てか、ハッピー娘も消えてねえっつーか……なんかもう一人増えてねえか?
てか、ハッピー娘も消えてねえっつーか……なんかもう一人増えてねえか?
「……姉さん!」
「ふえ……? え、三尸? え、ここって天国でしたっけ?あれ?」
「ふえ……? え、三尸? え、ここって天国でしたっけ?あれ?」
「琅月 ……琅月なのかい?」
「……お、お父様!?お母様!? え、そんな――そんなことって――」
「……お、お父様!?お母様!? え、そんな――そんなことって――」
メーちゃんの側に、見慣れない男女……っていうか保護者?がなんか突然出てきてる?え?
慌てて見回してみれば、グッさんに見慣れない女の子が抱き着いてる……え、もしかしてマオちん?
死神ちゃんはぱちくりと目を見開いてるけど……角と羽根が消えてるっぽいな。
そのそばにいるボーヤも、なんか虚空に向かって涙を流しながら頷いてるし……
慌てて見回してみれば、グッさんに見慣れない女の子が抱き着いてる……え、もしかしてマオちん?
死神ちゃんはぱちくりと目を見開いてるけど……角と羽根が消えてるっぽいな。
そのそばにいるボーヤも、なんか虚空に向かって涙を流しながら頷いてるし……
……ていうか、一番この流れで消えてねえとおかしいのが消えてねえんだけど。
『清王朝のダイヤ』が、アタシの掌の上に乗っかっている。
少しばかり縮んだっつーか、オーラみてーなのは薄れてるけど……んんん?
『清王朝のダイヤ』が、アタシの掌の上に乗っかっている。
少しばかり縮んだっつーか、オーラみてーなのは薄れてるけど……んんん?
「……おい、万事屋。お前、何をやらかした?」
え?え?アタシ?いや何もしてねえよベニトラ!
やったとしたら……『清王朝のダイヤ』の仕業だろ?
それにしたって、こんなドラゴンボールみてえな蘇生だの何だのできるようなシロモノじゃねえだろ!
第一、アタシはダイヤに『皆に幸せな夢を見せてやってくれ』ってお願いしたくらいで……
やったとしたら……『清王朝のダイヤ』の仕業だろ?
それにしたって、こんなドラゴンボールみてえな蘇生だの何だのできるようなシロモノじゃねえだろ!
第一、アタシはダイヤに『皆に幸せな夢を見せてやってくれ』ってお願いしたくらいで……
……ん、待てよ。皆に……? ……もしかして。
アタシはダイヤをしまいこみ、代わりにスマホを取り出す。
そして、ある人物に大急ぎで連絡を取る――主人不在の自称殭屍に。
そして、ある人物に大急ぎで連絡を取る――主人不在の自称殭屍に。
あーもしもし? なあヨニ助、お前さっきなんかすげー幸せな夢かなんか見なかった?
「ええ?藪から棒にどうしたんですか万事屋さん。今ヨニは幸せですよそりゃ。
なんてったって探し求めてたご主人が見つかったんですから!
⊕ こんなの絶対夢なんかじゃありませんよ! ほっぺたもつねったら痛かったですし!」
なんてったって探し求めてたご主人が見つかったんですから!
⊕ こんなの絶対夢なんかじゃありませんよ! ほっぺたもつねったら痛かったですし!」
いや殭屍なのに痛覚生きてんのか……って。
……夢、じゃない? そっかー。 あはは。
……夢、じゃない? そっかー。 あはは。
なるほどな、ヨニ助がさっきのを『夢じゃない』って思ったから、みーんな現実になっちまったってわけだ。
……あれ。なんでみんなそんな妙な目でアタシを見てんだ?
いやいやいや、この流れアタシが悪いか!? どう考えても悪いのはヨニ助だと思うんだが!?
いやいやいや、この流れアタシが悪いか!? どう考えても悪いのはヨニ助だと思うんだが!?
「少なくともお主が余計な世話を焼かねば招かなかった、無用な混乱ではあるな」
うっせえよキツネマスク! 第一予想できるか、こんな結果!
「……おい、今双葉から連絡があったぞ。
各地で魔幇に消されたはずの人々が次々に生き返って混乱してるそうだ」
各地で魔幇に消されたはずの人々が次々に生き返って混乱してるそうだ」
ベニトラ、ちょっと眉間のシワを減らしてくんねえ?あと体温もちょっくら下げてくれねえ?
……っと、着信だ。 もしもし?
……っと、着信だ。 もしもし?
「万事屋か? 街のあちこちに金だの宝石だのが降り注いでるんだが、何か心当たりは」
悪ぃ赤ジャケ、今それどころじゃねーわ。この番号は現在使いたくありません、ガチャっと。
それで……神楽ちゃん、なんでアタシに指先向けてんの?
それで……神楽ちゃん、なんでアタシに指先向けてんの?
「万事屋さん。……自分でしでかした不始末は、しっかりつけましょう?」
だからアタシのせいじゃねえって!
……こういうときは、アレだな。
ほとぼりが冷めるまで―― 逃げるに限るっ!!
『創造上の想像力 』、【分身の術】!
ほとぼりが冷めるまで―― 逃げるに限るっ!!
『
「おい待て万事屋、逃げんなああああ!」
「……己から逃げられると思うてか」
「ちょっと万事屋さん! 逃げるのは禁止ですよ!」
「……己から逃げられると思うてか」
「ちょっと万事屋さん! 逃げるのは禁止ですよ!」
……まったく、ままなんねえもんだな!
とんだアイリスアウトオチじゃねーかよ!……かははははは!
とんだアイリスアウトオチじゃねーかよ!……かははははは!
EPILOGUE.
「やー、人間に生まれ変われたらとか思いましたけど、まさかこんなにも早く叶うとは思いませんでしたよ。
流石に敵いませんねえ、みんなを幸せにしたいだなんてでっかい欲望には」
「私も、姉さんと一緒にいられるなんて……夢みたい」
「ところがどっこい夢じゃないんですよねえ。……さーて、そうと決まれば。
ダブル・ハピネス・キャンペーン改め――ワンモア・ハピネス・キャンペーンでも開きましょうか!
人間になっちゃいましたけど、欲望を追いかける力は健在みたいですし!」
「……姉さんってば。それよりも、先にやることがいっぱいあるでしょう?」
「おおっと、そうでした。まずは――
世界でたった一人の妹と、たっぷりお喋りしましょう」
流石に敵いませんねえ、みんなを幸せにしたいだなんてでっかい欲望には」
「私も、姉さんと一緒にいられるなんて……夢みたい」
「ところがどっこい夢じゃないんですよねえ。……さーて、そうと決まれば。
ダブル・ハピネス・キャンペーン改め――ワンモア・ハピネス・キャンペーンでも開きましょうか!
人間になっちゃいましたけど、欲望を追いかける力は健在みたいですし!」
「……姉さんってば。それよりも、先にやることがいっぱいあるでしょう?」
「おおっと、そうでした。まずは――
世界でたった一人の妹と、たっぷりお喋りしましょう」
双喜:妹の三尸とともに、人間として生きる道を歩むことになる。
能力を活かし、人の欲望 を叶える解決屋として活躍するのは、もう少しだけ未来の話。
能力を活かし、人の
===
「やれやれ……『破幇』も成って、老头儿 は消えるのみと思っていたが。
随分と皮肉なロスタイムをもらっちまったもんだ」
「張三」
随分と皮肉なロスタイムをもらっちまったもんだ」
「張三」
ぱしん。
「ロスタイムだなんて、自嘲でも言わないで頂戴。
……まだまだアンタには、教わりたいこともいっぱいあるんだから」
「……すまん」
「謝るようなことじゃないわよ、アンタは私の『同盟相手 』なんだから。
まさか魔幇が滅んだからって、同盟を解消するなんて言わないわよね?」
「え、いやそりゃお前…… ……あーもう、行くぞ」
「行くって……どこへ?」
「行きつけの屋台に決まってんだろが。こっから先は……その。
素面じゃ喋れそうにないもんでな。それに、腹も減った」
「……ふふ。いいわ、付き合うわよ」
……まだまだアンタには、教わりたいこともいっぱいあるんだから」
「……すまん」
「謝るようなことじゃないわよ、アンタは私の『
まさか魔幇が滅んだからって、同盟を解消するなんて言わないわよね?」
「え、いやそりゃお前…… ……あーもう、行くぞ」
「行くって……どこへ?」
「行きつけの屋台に決まってんだろが。こっから先は……その。
素面じゃ喋れそうにないもんでな。それに、腹も減った」
「……ふふ。いいわ、付き合うわよ」
張三:騒動の後始末を済ませた後、元の職場に復帰。解決屋稼業も継続中。
林希美との『同盟関係』は続いている模様。
林希美との『同盟関係』は続いている模様。
===
「……魔幇という幻想を、本当に幻想で打ち破るとはね。
彼女がヒーローになるとは、思ってもみなかったよ」
「……結果にご不満でも?」
「まさか。……『魔幇』は破れ、七鴉翁も消えた。
そのうえ、善き者たちの願いを軒並み叶えて、嵐のように去っていく――
むしろやりすぎな位だよ。ご都合主義と言われても仕方ないくらいにね」
「おやおや、貴方らしくもない言葉ですな。
――英雄 の物語は、ハッピーエンドであってこそ、でしょう?」
「それもそうだね――っと、もうこんな時間か」
「おや、長々と引き留めてしまいましたか……何か約束でもございましたかな」
「ふふ……みんなと『魔人カーメンW』を見るんだぞ!」
彼女がヒーローになるとは、思ってもみなかったよ」
「……結果にご不満でも?」
「まさか。……『魔幇』は破れ、七鴉翁も消えた。
そのうえ、善き者たちの願いを軒並み叶えて、嵐のように去っていく――
むしろやりすぎな位だよ。ご都合主義と言われても仕方ないくらいにね」
「おやおや、貴方らしくもない言葉ですな。
――
「それもそうだね――っと、もうこんな時間か」
「おや、長々と引き留めてしまいましたか……何か約束でもございましたかな」
「ふふ……みんなと『魔人カーメンW』を見るんだぞ!」
果成いっぽ:『魔幇』の終焉を見届け、『魔幇統府』としての役目を終えた。
余生をヒーローごっこに明け暮れながら、次世代の上海を担う子供たちを見守ることに決める。
時々、目艮竟や張三のところに出向いて茶飲み話を楽しんでいるらしい。
余生をヒーローごっこに明け暮れながら、次世代の上海を担う子供たちを見守ることに決める。
時々、目艮竟や張三のところに出向いて茶飲み話を楽しんでいるらしい。
===
「……ったく、魔幇がブッ潰れたってのに。
なかなか世界ってのは良くなんねえもんだな……」
「しょうがないよホェンちゃん、あたしらがお役御免になっちゃうのも困りものだしね」
「いいんだよ、解決屋は暇なくらいが。
……っと、そろそろ時間だな」
「今日の相手は――『清海』の若き新リーダー、海圻くんだっけ。
はい、データまとめといたからねぇ」
「おう、毎回あんがとな、双葉。……今日もちょっくら『上海覇者』の座守ってくるわ!」
なかなか世界ってのは良くなんねえもんだな……」
「しょうがないよホェンちゃん、あたしらがお役御免になっちゃうのも困りものだしね」
「いいんだよ、解決屋は暇なくらいが。
……っと、そろそろ時間だな」
「今日の相手は――『清海』の若き新リーダー、海圻くんだっけ。
はい、データまとめといたからねぇ」
「おう、毎回あんがとな、双葉。……今日もちょっくら『上海覇者』の座守ってくるわ!」
劉炎嵐:『魔幇』のボスを斃した者として、上海中にその名がさらに轟く結果となる。
相棒の王双葉とは正式に男女の付き合いを始めたらしく、女心を勉強中。
相棒の王双葉とは正式に男女の付き合いを始めたらしく、女心を勉強中。
===
「ただいま戻りましたぜ、ボス」
「お帰り、亀岩! ボスさんならお孫さんと上海蟹ランドに言ったアルよ!」
「おう、桃猫出迎えありがとうな……って昨日も行ってなかったっけ?
人が引越しの手伝いだの人探しだのしてるってのに……」
「まあまあ、仕方ないアルよ。他のみんなもボスの付き添いで行っちゃったけどネ」
「……何だそりゃあ! ったく、やってられっか! おい桃猫、行くぞ!」
「え、行くってどこに?」
「上海蟹ランドに決まってんだろ! 俺らも今日は営業終了だ!」
「亀岩、これってひょっとしてデートアルか!? ……もうちょっとロマンチックな誘い方してほしいネ」
「で、デート……! う、そ、そうだな、悪ぃ」
「ふふ、照れてるネ。……亀岩と一緒ならどこでも幸せヨ、私」
「お帰り、亀岩! ボスさんならお孫さんと上海蟹ランドに言ったアルよ!」
「おう、桃猫出迎えありがとうな……って昨日も行ってなかったっけ?
人が引越しの手伝いだの人探しだのしてるってのに……」
「まあまあ、仕方ないアルよ。他のみんなもボスの付き添いで行っちゃったけどネ」
「……何だそりゃあ! ったく、やってられっか! おい桃猫、行くぞ!」
「え、行くってどこに?」
「上海蟹ランドに決まってんだろ! 俺らも今日は営業終了だ!」
「亀岩、これってひょっとしてデートアルか!? ……もうちょっとロマンチックな誘い方してほしいネ」
「で、デート……! う、そ、そうだな、悪ぃ」
「ふふ、照れてるネ。……亀岩と一緒ならどこでも幸せヨ、私」
郭亀岩:『魔幇』崩壊に伴い、点心會も裏稼業から撤退。解決屋としての新たな道を模索する。
人間に戻った桃猫とは現在同棲中。
人間に戻った桃猫とは現在同棲中。
===
喬芽芽:カルミアの上海進出を機に、彼女のバックアップのもと
『上海一カワイイ解決屋』としてメディア進出を果たす。
熱狂的ファンに支えられながら、単独ライブの開催も決定したとのこと。
『上海一カワイイ解決屋』としてメディア進出を果たす。
熱狂的ファンに支えられながら、単独ライブの開催も決定したとのこと。
恋辻メーメー:ダイヤの力で家族が戻ってきたことで、張琅月としての暮らしを取り戻す。
現在は教養を買われ、カルミアの秘書として勤務中。
仕事帰りに、芽芽や張三、林希美らと食事をする機会もあるようだ。
現在は教養を買われ、カルミアの秘書として勤務中。
仕事帰りに、芽芽や張三、林希美らと食事をする機会もあるようだ。
スパイク:琅月のもとで、ペットとして穏やかな日々を過ごす。
時折琅月のことを心配して、こっそりついてきては琅月にたしなめられている。
時折琅月のことを心配して、こっそりついてきては琅月にたしなめられている。
===
死神:期せずして生者として蘇った影響か、魂を縛っていた借金がなくなり自由を得る。
今も解決屋として上海で活動中であり、たまに劉炎嵐や郭亀岩らと共同で仕事をすることもある。
今も解決屋として上海で活動中であり、たまに劉炎嵐や郭亀岩らと共同で仕事をすることもある。
下山アンドロメダ:相変わらずアルクトゥールス星人として、天狗としての日々を謳歌している。
ちなみに最近ナチョスを口にして『エウレーカ!』と叫んで地球を七周半ほどしたところ
翌日筋肉痛になって泣きそうになったとかならなかったとか。……あ、ひょっとしてわたしが
直々にしゃべってるのがバレたかな? はっはっは、というわけでだいたいいつもどおりだよ。
ちなみに最近ナチョスを口にして『エウレーカ!』と叫んで地球を七周半ほどしたところ
翌日筋肉痛になって泣きそうになったとかならなかったとか。……あ、ひょっとしてわたしが
直々にしゃべってるのがバレたかな? はっはっは、というわけでだいたいいつもどおりだよ。
「きみ」:上海での経験を通して成長したものの、相変わらず能力は戻らないまま。
下山師匠との関係性も変わらず、弟子と師匠のまま。別にいいんだよ、もっとステディな仲になっても。
最終回発情期 なんてチープな表現をするわけじゃあないけれども、
チョーさんと希美ちゃんとか、红虎くんと電梟ちゃんとかくっついてるカップルもいるんだしさあ。
……というわけで、下山アンドロメダ、弟子について大いに語る(1)でしたー。
下山師匠との関係性も変わらず、弟子と師匠のまま。別にいいんだよ、もっとステディな仲になっても。
チョーさんと希美ちゃんとか、红虎くんと電梟ちゃんとかくっついてるカップルもいるんだしさあ。
……というわけで、下山アンドロメダ、弟子について大いに語る(1)でしたー。
===
拳狐:以前と変わることなく、拳の道を進む。
有耶無耶になった『红虎』との対決が近々大々的に行われることになり、研鑽に努めている。
有耶無耶になった『红虎』との対決が近々大々的に行われることになり、研鑽に努めている。
===
日ノ御子神楽:約3年間の誘拐から解放され、日本へと帰還。
高校に復帰し、卒業を目指すことに。
金剛シグリとは帰国後も連絡を取り合う仲となり、時々一緒に食事をすることも。
白髪黒羽との交流も続いており、将来的には『万事屋』への弟子入りも考えている。
高校に復帰し、卒業を目指すことに。
金剛シグリとは帰国後も連絡を取り合う仲となり、時々一緒に食事をすることも。
白髪黒羽との交流も続いており、将来的には『万事屋』への弟子入りも考えている。
===
おーす、帰ったぜ。
「……ふふ、おかえり。なんとか生きて帰ってきてくれたようだねえ、我が親友 」
まあな、いろいろ大変だったんだぜ。
成り行きでまさか『魔幇』ブッ潰すことになるとは思わなかったし。
そのあともなんかわけわかんねえ新興宗教相手にドンパチやったり、
悪の総合総社に売り飛ばされかかったり、AIの反乱に巻き込まれたり。
成り行きでまさか『魔幇』ブッ潰すことになるとは思わなかったし。
そのあともなんかわけわかんねえ新興宗教相手にドンパチやったり、
悪の総合総社に売り飛ばされかかったり、AIの反乱に巻き込まれたり。
「……そのどこまでが本当なのかはわからないけれど、まずはお疲れ様」
あんがとな。
あ、そうだ。これ、約束のおみやげ。
あ、そうだ。これ、約束のおみやげ。
「……え。まさか、これって」
うん。『清王朝のダイヤ』。
あ、安心しな。妙なふしぎパワーはもうそんなには残ってねえはずだから。
あ、安心しな。妙なふしぎパワーはもうそんなには残ってねえはずだから。
「そんなに、という修飾語を冠した時点で残存能力があるということではないのかい……?
そんな呪物を気軽にプレゼントされる身にもなっておくれよ」
そんな呪物を気軽にプレゼントされる身にもなっておくれよ」
呪物じゃねえよ。
――上海に生きるみんなの、願いの結晶なんだから。
――上海に生きるみんなの、願いの結晶なんだから。
白髪黒羽:『清王朝のダイヤ』を友人にプレゼントするという夢を叶える。
帰国後も『万事屋』として国内外を飛び回り、忙しい日々が続いている。
帰国後も『万事屋』として国内外を飛び回り、忙しい日々が続いている。