ダンゲロスSS上海
合体は少年少女の夢
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合体ッ!!
ガシャガシャガシャーーーン!!
戦隊ウンコウジャーの新作映画発表会場。
この作品の見どころはなんといっても、乗り物が合体するところである。新幹線、バス、自動車、飛行機、船が一つとなり、怪物を打ち倒す。
上海のアクションスター、ジェット・ワンの5年ぶりに出演する映画が日本の戦隊モノだというニュースは、大きく取り上げられた。
「合体は子供達のみならず、大人達の夢でもある!」
その一言は、大拡散され、一大キャッチフレーズとして上海を沸き上げていた。
会場である豪華ホテルに、茶山明日歩と和夫が足を踏み込んだとき、それは起こった。
「え?」
周辺がアマゾンになっていたのである。
豪華ホテルの会場の面影はカケラもない。鬱蒼とした森。
豪華ホテルの会場の面影はカケラもない。鬱蒼とした森。
「え、うわうわ」
和夫の体が浮く。何が起きているのか和夫はわからないまま明日歩に助けを求める。
「助けてください!」
「あなたも遂に飛べるようになったのね。お母さん感激だわ」
「今はそんな状況じゃないでしょ!?」
和夫は宙に飛んでいく。同じく飛んできた金髪のイギリス人、姿が曖昧な人物。彼女らは喬 芽芽 と郭 亀岩 の護衛対象である。そして、わけもわからずぶつかった!
合体ッ!!
ガシャガシャガシャーーン!!
こうしてスーパー和夫が誕生した。
明日歩はスマホを見る。ダンゲロスSS上海のホームページだ。
「6、護衛対象について。BルートPCを二人以上含むマッチングが成立した場合、複数の護衛対象を同一人物として描写して良いこととします。と書いてあるわね」
宙に浮いたスーパー和夫は「それ僕達が見ていいやつなの!?」とツッコミたかったが、彼はそれどころではなかった。
深い森の中からバスが飛び出してきた。
明日歩の前に急停車する。
明日歩の前に急停車する。
『このバスは、アマゾン駅経由、アマゾン駅行きです』
「ふーん、このバスのウンコーダイヤグラムは私に応えてくれるのかしら」
明日歩は悠然とバスに乗り込んだ。
「ちょっと、どこにいくんですか!? 置いていかないでください!」
和夫は不可思議な超常現象に襲われながらも、なんとかバスに乗り込むのだった。
茶山明日歩は遂に、斎藤あやめのうんこを見つけていた。
バスの中。
明日歩は隣の席に鎮座する斎藤あやめのうんこに、語り掛ける。
明日歩は隣の席に鎮座する斎藤あやめのうんこに、語り掛ける。
「ねえ、どうしてこの危険な上海で身を隠すことにしたの?」
姿をくらますにしたって、危険すぎる。
今や誰もがダイヤ争奪に駆け回っている。その勢いはとどまることを知らず、表立って探すような奴らまで現れるほどだ。
今や誰もがダイヤ争奪に駆け回っている。その勢いはとどまることを知らず、表立って探すような奴らまで現れるほどだ。
「いや、僕うんこじゃありませんけど」
「……そう? 現実を受け入れた方がいいわ」
この世にはうんこになったと自覚できないうんこがたくさんいる。
それは仕方のないことだ。誰もが自分がうんこになったなど、信じたくない。現実を受け入れる準備が必要なのだ。
銃声。銃声。
しかし、よりにもよって、あの斎藤あやめのうんこがその症状になるとは。どうにも明日歩には思えなかった。
「いや、明日歩さんこそ何を言っているんですか。僕は斎藤和夫です」
「そう、和夫」
和夫になりきりたいうんこなのだろう。
真実はいつも残酷だ。真実を告げて、このうんこが受け入れられなかったとき、果たしてどうなるのか。
うんこの魔法少女である茶山明日歩にも予想はできない。
うんこの魔法少女である茶山明日歩にも予想はできない。
ならばここは話を合わせるのが吉と、明日歩は判断した。
「アンタらの会話、何一つ理解できないんだが、そろそろ手伝ってもらっていいか!?喬 芽芽 も、なんか言ってくれ!」
爆走するバスの窓から銃をぶっ放す。郭 亀岩
彼の能力は玄武印。指先から光の印を出し、押印した対象をあらゆる攻撃から護る。
彼の能力は玄武印。指先から光の印を出し、押印した対象をあらゆる攻撃から護る。
「すっごくきれい。このダイヤ、世界一かわいい私にぴったり……」
「こいつも話聞いてねえや!」
芽芽は、清王朝のダイヤを目の前にして鼻息を荒くしていた。肉を出された猛獣のような様相。今にも飛び掛かろうとしている。
「よくみろよ! この人は世界一かわいい桃猫 だろ!?」
「世界一かわいいのは私ですけど!?」
桃猫はグイェンの護衛対象である。
合体したことにより、和夫が桃猫の能力を継ぎ、相手の一番欲しているものの姿に見えるようになったのだ。
二人が口論を始めようとし、それを遮るように渦中の人物が声を上げる。
「だから僕は和夫です!!」
「そうね、和夫。あなたはうんこだけど和夫よ」
「あなたは世界一かわいい私に似合うダイヤでしょう?」
「なあ、桃猫。どうしちまったんだ。そんな男みたいな話し方してなかっただろ?」
「僕は和夫だァァ!!」
『次は、アマゾン。アマゾン。お降りの際はお忘れ物など、ございませんようお願いいたします』
四人しかいないバスの中。和夫の声と共に、もう七度目になるアナウンスが車内に響く。
巨大な植物の蔓が、窓ガラスを割ってバスの車内に侵入してきた。車体に巻き付いてバスを持ち上げ始める。
状況は緊迫していた。グイェンが対処していたが、圧倒的な自然を前に、拳銃一つでは敵わない。
窓ガラスと蛍光灯が割れて破片が和夫に襲いかかるが、芽芽が全てはたき落とした。
「仕方ねえ――【玄武印】」
グイェンは光る指先をバスの壁にかざし。能力を発動。
蔓は弾かれて、バスから離れる。半ば持ち上がっていた車体はガクンと揺れて、また地面を走り出す。
グイェンは遠ざかっていく巨大植物を見て、ほっと一息ついた。
「すぐ切れやがったか」
印には耐久地が存在し、切らしてしまった場合10分ほど、彼は能力が使えない。
「あのなあ、もうちょっと手伝ってくれてもいいんじゃないか?」
グイェンの言葉に芽芽は肩をすくめる。
「私はかわいいし最強だけど、遠距離攻撃とかないし」
同じく明日歩も肩をすくめた。
「私はうんこしか出せないし」
茶山明日歩、芸名キュアアースホール。うんこの魔法少女。必殺技、プープダイナマイトはステッキから大容量のうんこを放つ。
「ホントにアンタら護衛する気あんのかよ……」
明日歩は天井を仰いでいた。
「上に、うんこの気配を感じるわ」
また明日歩が意味もわからないことを言い出したと和夫は思った。
しかし、この警告をよく考えて聞くべきだった。
割れた窓から敵が入ってきた。褐色の肌。文明人ではない珍妙な服装。
アマゾンの原住民だ。
前に4人。後ろに3人。武器は木槍に弓、投石器。
アマゾンの原住民だ。
前に4人。後ろに3人。武器は木槍に弓、投石器。
「きゃああああっ!」
芽芽が悲鳴を上げる。最強でかわいいはずの彼女を一体何が恐怖させるのか。
その場にいる誰もが一目で理解した。
その場にいる誰もが一目で理解した。
「ちんこが……丸出しだ……」
「イィィー! イイィオォイー! オォオォィィー!」
ダンダンと足で踏み鳴らして叫ぶ。呼応して屋根の上にいるであろう他の敵達も、ダンダンと踏み、叫んでいる。
不気味な光景だった。彼らの文化を知らず、意思疎通も取れる気配はない。
そんな人間がこの狭いバスの中に武器を持って存在している。それがこれほどまでに恐ろしいことなのかと、和夫は感じていた。
グイェンは銃を構えている。
部族の男達は殺気を感じ取っているのか、叫びながらも、非常に硬い表情だ。
一触即発の空気。
部族の男達は殺気を感じ取っているのか、叫びながらも、非常に硬い表情だ。
一触即発の空気。
「イィィオォオォー!」
和夫の隣にいる明日歩も呼応して叫んでいた。
「ええっ!? 何してるんですかやめてください」
すると、先頭の男が明日歩に興味を持ち始めた。
「イ……?」
近づいてくる男。
グイェンと芽芽は和夫を庇って二、三歩下がる。
明日歩は何かに気づいた様子で男を見ている。
「イィイイー。イィィー」
「イイイィー!」
男の問いに明日歩が返事を返す。
「もしかして原住民の言葉がわかるんですか明日歩さん!?」
「いえ、何言ってるか全然わからない」
「わからないのかよ!」
明日歩は男の手にあるものを見ていた。
うんこだ。
「イ〜」
男は明日歩にうんこを差し出した。
これは何を意味するものなのか、さっぱり理解できなかった和夫とグイェンは見合う。
「何してるんだあれは」
「僕にわかるわけないじゃないですか」
明日歩は口を手に当てて驚き、頬を赤くした。おずおずと、受け取った。
「え、何だ。もしかして婚約申し込まれたのか?」
明日歩の反応からグイェンは予想するが、彼は女の心が全く読めないと自覚している。
そのため芽芽に質問を投げかけた。
そのため芽芽に質問を投げかけた。
しかし、芽芽は鬼の形相でその様子を見ていたので、黙った。
可愛さとは無縁の顔に、女の恐ろしさを垣間見た。
「ありがとう。私、本当に嬉しい」
「イィィー!」
男の喜びが部族内で伝播する。硬かった表情は和らぎ、お祝いムードとなっていた。
グイェンも銃を握る手を少し緩めた。
これはいい方向に持って行けたのではないかと、和夫も安堵する。
これはいい方向に持って行けたのではないかと、和夫も安堵する。
「私、何かお返ししなくちゃ」
「イィー!」
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
「イオオオオアアアアア!!」
「「えええええっっ!!」」
大容量のうんこが部族の男達を襲う。
あっという間に前の4人はうんこに埋もれてしまった。
あっという間に前の4人はうんこに埋もれてしまった。
明日歩はうんこに駆け寄った。
「酷い……! 一体誰がこんなことを!」
「「お前だ!!」」
グイェンと和夫は思わず声を合わせて突っ込んだ。
この時、芽芽だけは気づいていた。
部族の男は一番可愛い芽芽と、奴がおそらく最も欲しがる女(和夫)を前にしているのにもかかわらず、明日歩に求婚したのは、集団で一番ブサイクな女(彼女も可愛い方だけど)から攻略しようと考えていたからだ。
本命の女は最初に手を出さず、周りから落としていく。チラチラと芽芽と和夫への視線があったことから、芽芽は確信していた。
男は一番かわいいと思った女に求婚すべきなのだ。それなのに二番手はおろか、三番手に求婚するなど、愚の骨頂。唾棄すべき低俗。
それに対して、しっかり気づいた彼女。
それに対して、しっかり気づいた彼女。
やるじゃない、キュアアースホール。と小さく呟く。
「そんな劣等なクズ、死んだ方がマシよ」
「ええ……すげえ人種差別だなオイ」
グイェンはその意図を知らず、ドン引きする。
明日歩はわなわなと怒りに震えていた。
「絶対に許さない、このアマゾンを作り出した能力者を、私は倒す!」
「なあ和夫。あいつはいつも、アレなのか?」
「はい、いつもアレです」
あまりの出来事に狼狽していた部族3人が、動き出した。
芽芽の背後から襲いかかる。一番弱弱しく見えたのだろう。
芽芽の背後から襲いかかる。一番弱弱しく見えたのだろう。
「イィィイー!」
「可愛い私には絶対に勝てないよ♡」
芽芽が軽々と敵の攻撃をいなして叩き落とす。木槍が彼女の体を貫こうにも、傷一つ付かない。投石もキャッチして、相手を威圧する。
あっという間に3人を制圧してしまった。
「私、上にいる奴らも片付けてくるね♡」
芽芽は割れた窓から颯爽と飛び立つ。
数分も経たず、男を一人連れて戻ってきた。顔面に数発もろに殴られた跡がある。
数分も経たず、男を一人連れて戻ってきた。顔面に数発もろに殴られた跡がある。
「イィィピ……」
「何か聞けるかと思って」
「いや、明日歩さんでも言語がわからないんですよ」
明日歩は男の前に座る。
取り出したのは先ほど求婚で受け取ったうんこ。
取り出したのは先ほど求婚で受け取ったうんこ。
「イピィー」
「助けてくれと言っているわ」
「え、わかるんですか?」
グイェンはその様子を見てあることに気づいた。
「なるほど、うんこ翻訳か」
「うんこ翻訳!?」
明日歩はうんこの声を聞くことができる。そしてうんこは原住民から生まれたため、原住民の言葉が理解できるのだ。
「イィイー(私は)」
「イイィイピー(お前を)」
「イイオイ(許さない)」
明日歩はそのまま原住民の言葉をうんこを介して翻訳していく。これが本当にあっているなら、大事な情報源になる。
「キュアアースホール。こいつに聞いてくれないか、このアマゾンを作った人物を」
「わかったわ。イィイー、イィイピオイー」
「なんで喋れるんですか」
「イ?」
男は怪訝な顔をしたあと、得心がいったかのように頷いた。
どうやら通じたようだ。
どうやら通じたようだ。
「イオピーオォイ(ブス女死ね)」
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
「イオオオオアアアアア!!」
「貴重な情報源がぁぁっ!」
大容量のうんこによって男は埋もれてしまった。もうバスの中はうんこまみれになっている。
「よくやったわキュアアースホール」
「なんで満足そうな顔なんですか芽芽さん」
「大丈夫よ♡ まだ男達はいるんだから」
次の男には下手なことを言えば、どうなるかをきちんと教えてから質問するようにした。
隣でうんこに埋もれて動かなくなった同族を前に、恐怖を覚えたようだ。
隣でうんこに埋もれて動かなくなった同族を前に、恐怖を覚えたようだ。
「イィイー(私は)」
「イィオピーオピ(神様を)」
「イィィイーオー(知っている)」
「コマネチ(コマネチ)」
グイェンはそれを聞いて、考えを巡らせる。
「どうやらアマゾン能力者は神様と崇められているようだな」
「え、今コマネチって言いませんでした?」
「こんな世界を作ったのだから、そりゃ神様扱いされるわな」
明日歩は男の話を聞き出していく。
「イオピーオピ(神様)」
「イピィー(助けて)」
「イオピーオピ(神様)」
「イピィー(助けて)」
グイェンはどうやらこれ以上聞ける情報はないのかと落胆する。
「ちょっと待って」
人の視線に敏感な芽芽は気づいていた。
この男、助けてと言っているが視線がきちんと定まっている。
この男、助けてと言っているが視線がきちんと定まっている。
私達を見ているわけじゃない。
少しズレている。
私達の後ろ。
少しズレている。
私達の後ろ。
「どうして気づかなかったのかしら」
そいつはずっと私達と一緒に乗っていたのだ。
突如、バス内に巨大な蔓が出現した。
誰にも反応できなかった。芽芽を貫かんと迫り、しかしその特異な体により、バスの後方に押し出される。
誰にも反応できなかった。芽芽を貫かんと迫り、しかしその特異な体により、バスの後方に押し出される。
巨大蔓の勢いは凄まじいものだった。芽芽を車外に出すほどだ。
芽芽越しに、男と、バスの座席と内装を破壊し貫通したのである。
芽芽越しに、男と、バスの座席と内装を破壊し貫通したのである。
芽芽は車外に押し出され、転がる。
「芽芽さん!?」
「大丈夫、ノーダメだから!」
芽芽は無事を伝え、すぐに体勢を立て直す。
ぐしゃぐしゃに押しつぶされた男を横目に見て、顔を顰めた。ほとんど原型をとどめていない。肉の破片。
ぐしゃぐしゃに押しつぶされた男を横目に見て、顔を顰めた。ほとんど原型をとどめていない。肉の破片。
後部座席の一部が大穴に変わった。異常なまでの威力。
『終点、アマゾン駅。アマゾン駅。お降りの際はお忘れ物など、ございませんようお願いいたします』
八回目のアナウンスが響く。
その主は糞の上を悠然と歩いてくる。
「私は何処にも行くことができない。私の行く先全てがアマゾンとなる。あなた達は一体何処へ行こうと言うの?」
運転手がアマゾンの主だった。
グイェンはすぐに行動に出た。和夫を抱えて大穴から車外に出る。強い体幹とバランス力は、糞の上でもしっかりと安定感を持っている。
「ぶへっ」
明日歩は動き出そうとして、滑って転んでいた。顔中、糞まみれになった。
「明日歩さん!? なんでうんこ使いなのに滑ってるんですか。グイェンさん離してください!」
「ダメだ、あそこは危険すぎる」
「明日歩さん!!」
和夫の悲痛な叫びは、中にいる明日歩の耳にも届いていた。遠くなっていく声。
バス内には明日歩と運転手の二人だけとなった。
「こんにちは運転手さん」
「私は何処にいる……?」
「上海の、新作映画発表会場よ」
明日歩は糞まみれになった顔をあげて、目の前の女を観察する。
運転手の服、濃灰色のショートヘア、小柄、くりっとした目は虚ろで、やや褐色気味の肌、色気のない体形。若く見えるが、高校一年生の明日歩より年上なのは間違いない。
彼女の背後には巨大な蔓がいくつも蠢いている。アマゾンの謎生物が彼女を守っている。
「あなたのウンコーダイヤグラム。刺激的で楽しかったわ」
「楽しかった、そう。それはよかった」
彼女は、何かを思い出すように目を瞑る。誇らしげな顔にも見え、反面、あまり興味がないようにも見えた。
彼女はアマゾンのいろんなことを知っている。対する感情も一つではないのだろう。
バスのウンコーダイヤグラムはいつも複雑だと、明日歩は考える。毎回目的地とは違う場所に行ってしまう。
「あなたはこのアマゾンが大好きなのね」
「そういう時期もあった、最も尊いことで、価値があり、全てにおいて優先されるものだと思っていた。いや、今もそう思う。そのはずなのに、興味が持てない」
「あなた、アマゾンの中に居すぎよ。いくら好きな映画でも、何度も同じものを見ていたら飽きるに決まっているわ」
「飽き……? 飽きたのか? 私は」
運転手の雰囲気が変わった。
さすがにマズいことを言ったかと思った明日歩は逃げようとするが、滑ってうまくいかない。糞の上を平泳ぎするも、前進する気配がない。
さすがにマズいことを言ったかと思った明日歩は逃げようとするが、滑ってうまくいかない。糞の上を平泳ぎするも、前進する気配がない。
逃げられないと思った明日歩は最終手段に出た。
「あの、領収書お願いします。宗教法人キュアアースホールで」
「……このバスは領収書ができない」
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
明日歩はステッキから大容量のうんこを噴射する。運転手は蔓の葉を使って軽々と軌道を逸らす。
しかし明日歩の狙いは別にあった。反作用で糞の上を滑り、先ほど開いた大穴から脱出することができた。
「キュアアースホール!」
勢いよく脱出した明日歩を芽芽が受け止める。糞だらけだというのに、嫌な顔ひとつしない。
植物は繭を突き破るよう這い出た。バスはその力強さに耐えられずに破損し、蔓に巻き取られて潰される。
「うんちん、払いそびれちゃった」
「それ、今気にすることなの?」
外に出た明日歩と、芽芽は巨大蔓の正体を知る。
「ひまわり、ね」
巨大なひまわり。上海で見たどのビルよりも高く大きい。茎と蔓、葉が異様な変形をしている。
爆走していたときも、なぜ追いかけてくるのか疑問だった。運転手はバスだけではなく、あの巨大ひまわりも操作していたのだ。
運転手は葉の上に座って、明日歩たちを見下ろしている。
「私は何がしたい? どうして何の感情も沸かない? 教えてくれ。欲ある者たちよ」
明日歩は小さな声で妖精を呼ぶ。
「シニョ〜。いる?」
「はいプ!」
突如現れた妖精に、芽芽は驚いた。
「なにこれ可愛い〜!」
明日歩はスカートの中から、巾着袋を取り出してシニョ〜に渡す。
「念のため、これを」
「……あの敵は、それほどまでに強いプ?」
相手は仮にも神様だ。
用心しすぎることはない。
用心しすぎることはない。
「私に何かあっても和夫の姉、斎藤あやめだけは見つけてあげて」
「わかったプ。ご武運をプ」
妖精は光とうんこの粒を残して消えた。
「さっきの何?」
「お昼ご飯よ」
「随分と仰々しいお昼ご飯ね」
「カレーカツサンドよ」
「……そういうことにしといてあげる」
明日歩は本当に昼飯を渡していただけである。
「ねえ芽芽。私、勘違いしてた。あのウンコーダイヤグラム、あの運転手が作ったものじゃなかったんだわ」
「どういうこと? それって普通じゃないの?」
「おい、喋ってる暇はないぞ!」
和夫を抱えたグイェンが叫ぶ。
巨大ひまわりは蔓をムチのように振るい、二人に迫る。すぐに二人は横に跳んだ。
パァァンと軽い破裂したような音。地面に窪みが出来る。落ちていたバスの破片とタイヤが粉々に砕け散った。
あれが人体に当たればどうなるか。考えるまでもない。
「たぁぁ!」
芽芽は果敢に攻める。
攻撃を始めなければ、相手の出方もわからない。ダメージを受けない体は先行に適任だった。
攻撃を始めなければ、相手の出方もわからない。ダメージを受けない体は先行に適任だった。
「ぐっ!」
巨大ひまわりの周辺を振るう蔓を回避しつつ突貫するも、数が多すぎる。回避先を潰されて、押し出される。その度に受け身をとって、再び走り出す。
「あれじゃ、無敵とはいえ近づけねえな」
グイェンの評価の通りだった。彼女は無敵だが、決定打に欠ける。
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
明日歩が大量のうんこを放出しても、葉で防がれ、蔓で散らされてしまう。うんこの軌道を変えても、結果は同じだった。
グイェンも負けじと銃を撃つが、ダメージが入っている気配はない。
しなやかで、自由に曲がるのに蔓が硬い。
矛盾を体現したかのような素材。
なんでもありの異世界ならではのものだ。
しなやかで、自由に曲がるのに蔓が硬い。
矛盾を体現したかのような素材。
なんでもありの異世界ならではのものだ。
そういえばあの原住民が使っていた槍も、この蔓と同じ色をしている。
「僕に考えがあります」
そんな中、和夫だけは冷静に活路を見出していた。
「俺達は攻撃に特化した能力がないんだぜ? 一体どうするっていうんだよ」
「足りないなら、合わせれば良いんです」
和夫はこの人達全ての能力をしっかりと観察していた。倒せるとするならば、これしかない。限られた状況で確信を持った、一番攻撃力がある方法。
「合体技です」
作戦を聞いた芽芽は可愛くも大きく笑った。
「さすが世界一価値あるダイヤね♡ そんなことまで考えつくなんて」
「和夫です」
和夫は明日歩を見る。
この作戦は明日歩の正確で精度が高いウンコントロールが必要だからだ。
実際、彼女の人生の中でここまでの技量が要求されたことはない。初めてのことだった。
実際、彼女の人生の中でここまでの技量が要求されたことはない。初めてのことだった。
「お母さん感激だわ。和夫ちゃんがここまで考えられるようになったなんて」
「息子になった覚えはないです」
明日歩は目標を見据える。
巨大ひまわりを背に待ち構えている運転手。神としての余裕と油断が、和夫達の作戦会議を良しとしていた。
巨大ひまわりを背に待ち構えている運転手。神としての余裕と油断が、和夫達の作戦会議を良しとしていた。
グイェンは腕を回した。
「じゃあ、いっちょやるか」
私は何をしているのか。
アマゾンは刺激的で楽しいはずだ。
来る度に新たな発見、冒険と巻き込んだ人との友情を育んで、泣いたり、笑ったり、成長を楽しんだ。
来る度に新たな発見、冒険と巻き込んだ人との友情を育んで、泣いたり、笑ったり、成長を楽しんだ。
あの頃は楽しかった。
私は過去を見つめるばかりで未来が見えていない。
しっかりと自覚している。
私は過去を見つめるばかりで未来が見えていない。
しっかりと自覚している。
けれどどうすればいいのか。何を辿れば良いのか。私は何処に向かえば良いのか。全くわからない。
私は映画の中にいるのか?
映画の中にいる人間はどうやって動けば良い。
映画の中にいる人間はどうやって動けば良い。
「教えてくれるのか、欲ある者達よ」
眼下では、大容量のうんこがこちらに放たれた。凄まじい勢いは、いつかテレビで見た消防の消火を彷彿とさせる。
いや、それとは比べものにならない量と威力だ。
いや、それとは比べものにならない量と威力だ。
「越えられると思っているのか、そんなもので」
相手は魔人能力を持っているとはいえ、ただの人。この世界の全てを作っている彼女に敵うはずもない。
うんこを葉で受け止める。
こんなものは脅威にもならない、はずだった。
こんなものは脅威にもならない、はずだった。
うんこは葉を貫通した。
うんこの中に芽芽の姿があった。穴を開けたのだ。
バスに穴を開けた時と同じ。無敵の芽芽を間に挟めば、威力を効率よく物体に伝えられる。
バスに穴を開けた時と同じ。無敵の芽芽を間に挟めば、威力を効率よく物体に伝えられる。
蔓で弾こうと当てるが、芽芽はもちろんのこと、うんこの勢いと量が多くてビクともしない。
「ほう、考えたな……」
しかしこの作戦には弱点がある。うんこを噴射している大元を絶てば終わりなのだ。
幾重にも葉を重ねて芽芽に対処する。これで時間が稼げるはずだ。
「狩りの時間だ」
明日歩がステッキを手に力を入れて、うんこを出し続けている。かつてない集中力で芽芽を押し上げていた。
今ここで明日歩がやられたら、全てが水の泡だ。
護衛対象が護衛を守るなど、作戦としてどうかと和夫は自身でも思ったが、みんな快く了解してくれた。
「来ました!」
和夫が声を上げる。
グイェンは伸びてきた蔓に銃を撃つ。和夫もそれに続く。和夫が持つ銃は元々はグイェンが桃猫に渡していたものだ。
グイェンは伸びてきた蔓に銃を撃つ。和夫もそれに続く。和夫が持つ銃は元々はグイェンが桃猫に渡していたものだ。
急いで刺しに来る蔓の軌道を弾丸でなんとか逸らす。
「相手は焦っている……!」
横凪に振るわれていたら、和夫達に逃げ道がなかった。バスの天板部分を使ってなんとか軌道を逸らす算段だったが、それはやらなくて済みそうだ。
和夫の予想通りだった。
あれだけ巨大な植物。絶大な破壊力。今までの敵は簡単に捻り潰せただろう。
あれだけ巨大な植物。絶大な破壊力。今までの敵は簡単に捻り潰せただろう。
経験不足。練度不足。根本的に戦闘の素人なのだ。
加えて圧倒的な力を取得したことによる慢心。それが和夫達を生かしていた。
加えて圧倒的な力を取得したことによる慢心。それが和夫達を生かしていた。
上では芽芽が葉を一枚、また一枚と貫通していく。
「行ける……!」
和夫が勝利を確信したとき、地面が盛り上がり始めた。
「何だ……!?」
茎と蔓が潜んでいたのだ。完全なる奇襲。地面の下までは想定していなかった。
和夫、グイェン、明日歩は衝撃と共に浮き上がる。宙を舞い、何もできない。大きな隙を晒している。
「明日歩さん!」
蔓が無防備な明日歩を叩きつける。ぐちゃりと明日歩の体はあっという間に潰れた。
にやりと、上にいる運転手は笑う。
完全に終わりだった。うんこの供給源は絶たれ、相手は打つ手がない。完全なる勝利。
しかし、うんこの供給は止まらなかった。
「な、何故だ……!?」
運転手は先ほど叩きつけた明日歩の体を見る。うんこだ。
明日歩の体ではない。うんこだったのだ。
うんこの分身を叩きつけたのだ。
明日歩の体ではない。うんこだったのだ。
うんこの分身を叩きつけたのだ。
迫り来るうんこの供給先を見る。地面の中から噴出されていた。穴を掘っていたのだ。
本体は地面の中にいる。
本体は地面の中にいる。
「まさか、僕と同じことを考えるとは思いませんでした」
宙に浮かぶ和夫はつぶやいた。
中学生で日本育ちの和夫は、ここ上海にきて成長をした。しかし運転手はこの戦いの中で急激に成長し、和夫と同じレベルに達した結果。互いに地面の中で奇襲をかけようとしていたのだ。
「いくら無敵の体とはいえ、芽芽さんには無茶させちゃいましたよ。地面を素手で掘らせるなんて」
地面の中にいる明日歩へ、蔓が当たらなくてよかったと安堵する。
和夫が新たに警戒するのは、その異常なまでの成長速度。
この戦闘を長引かせたら、負けは必至だ。けれど、もう喉元まで刃は迫っている。
この戦闘を長引かせたら、負けは必至だ。けれど、もう喉元まで刃は迫っている。
幾重にも重ねた葉をいつの間にか全て貫通していた芽芽は、凄まじい勢いと共に運転手の目の前に現れた。明日歩を叩くのに意識を寄せていた運転手は、咄嗟に反応できない。
「最強でかわいい正義のパーンチ!」
芽芽の拳は運転手の鳩尾に入った。普通の人間なら木っ端微塵になる威力だ。
拳とうんこと共に押し出され、運転手はひまわりの花の中央に叩きつけられる。
うんこの大奔流の中、しかし、運転手は余裕の表情を崩さない。
うんこの大奔流の中、しかし、運転手は余裕の表情を崩さない。
「私が自分の体に何の強化もしていないと思っていたのか?」
自身の弱点を理解していないはずがない。
世界をも創造できる能力を持ってして、体を作るなど容易なことだった。
世界をも創造できる能力を持ってして、体を作るなど容易なことだった。
確かに凄まじい威力だが、まだ耐えられる範囲だとほくそ笑む。
「あなたこそわかってない。私のダイヤちゃんは凄いんだから」
芽芽の突きつけた拳が光っている。
「ま、まさか……!」
玄武印。
本来は防御に使う能力だが、バスに巻き付けられた巨大蔓をも弾く強さがある。
どれほど大きい威力で押し付けられていても、一回だけそれ以上の力を持って弾く。
本来は防御に使う能力だが、バスに巻き付けられた巨大蔓をも弾く強さがある。
どれほど大きい威力で押し付けられていても、一回だけそれ以上の力を持って弾く。
「まずいっ、回復を……!」
背後にある千を超える巨大ひまわりの種。その生命エネルギーを吸い取り、何とか回復を試みる。
「プープダイナマイト・フォルテウェイブリィィ!!」
「まだ出力が上がるのか!?」
地中の明日歩はかつてない集中力を発揮したおかげで、自身の限界を超えた。この土壇場でプープダイナマイトは威力が向上したプープダイナマイト・フォルテウェイブリに進化する。
回復量を優に超えるうんこの出力に、運転手は戦慄を覚える。
回復量を優に超えるうんこの出力に、運転手は戦慄を覚える。
「行け——【玄武印】」
頑丈な葉を突き破った威力の二倍以上の力が、人体の弱点である鳩尾に注ぎ込まれる。それは太陽のように輝きを放ち始めた。
「可愛くてごめん♡」
「ぐあああああっ!」
合体技は運転手の体に炸裂した。
⚪︎
「終わった、か」
崩れゆく巨大ひまわりを見て、和夫は安堵する。
宙に打ち上げられていた和夫は、足を負傷しながらも、何とか着地に成功した。
「立てるか?」
グイェンが近寄ってきて、和夫に手を差し出す。和夫はその手を借りて立ち上がる。
「ありがとうございます」
「しかし、よく見てるな。玄武印が攻撃に使えると和夫くんから言われるとは。隠し玉だったのによ」
グイェンは快活に笑う。
「明日歩さん、大丈夫ですかね」
「まあ、うんこだらけにはなってるだろうな」
「確かにそうですね」
グイェンと和夫は笑い合う。お互いに友情が芽生えていた。歳の差はあるけれど、戦友となったのだ。
「それにしても、まだ元に戻らないんですね」
アマゾンの能力者を倒せば、この世界は元に戻るはずだ。急にも戻るとはいかなくとも、何かしらの異変があってもおかしくはないはず。
ドンと鈍い音が響いた。
何かが投げられたのだ。
何かが投げられたのだ。
「明日歩さん!?」
地面に隠れていたはずの明日歩本体が、投げられた。まだ息はある。だが一体誰が投げたのか。決まっている。
「生きていたのか」
崩れたひまわりの側に、震える足で運転手は立っていた。満身創痍。
隣には蔓で拘束された芽芽が吊るされている。
隣には蔓で拘束された芽芽が吊るされている。
明日歩はむくりと起き上がる。
「うぅ……」
「明日歩さん……!」
「あの運転手、ダメージが入る直前にコマネチをやったんだわ」
「え、何でコマネチ?」
「コマネチは通常、一日五回まで。だけど奴はあの一瞬で十回もコマネチることであの一撃を耐えたの」
「なんでコマネチで耐えられるの!?」
運転手の傷が治っていく。神の如き力によって体の治癒力を引き上げているのだ。
「私は確かに間違っていた」
彼女の後方に現れたのは、数十にも及ぶ巨大ひまわり群。
一輪ですら合体技でようやく倒せるほどの脅威度。加えて、芽芽は囚われている。明日歩は満身創痍。グイェンは10分の間能力が使えない。弾も残り少ない。勝利は絶望的だ。
「私に足りないのは刺激だった。より大きな刺激を求め、このアマゾンを拡張し、元の世界までも全て飲み込もう」
奴は根本的に間違えている。
こいつはここで止めなければ、上海のみならず、世界が終わる。その場にいる三人全員確信した。
こいつはここで止めなければ、上海のみならず、世界が終わる。その場にいる三人全員確信した。
「どうすれば……」
和夫はいくら考えても答えが出ない。万策が尽きている。もう打てる手はない。
それでも何かないかと捻り出そうと考えるが、ないものはない。
「私は諦めないわ」
「俺も、諦めるわけにはいかねえな」
グイェンと明日歩は立ち上がる。
「でも、どうやって!」
「方法なんて、なくたっていいんだ。ただ俺達は諦めねえ。桃猫と一緒に暮らしてえしな」
最期に桃猫の顔が見れてよかったとグイェンは思う。共に戦うのがうんこの魔法少女なのは気に食わなかったが、贅沢は言ってられない。
「私も、元の世界だけじゃない。このアマゾンだって守ってみせる」
運転手は世界を拡張しようとしている。けれどそれは破滅への一歩だと明日歩は感じていた。
「それいいな。同感だぜ。桃猫だけじゃねえ。二つの世界を守る。これ以上おもしろい仕事もないな」
二人は歩き始める。恐怖も、絶望も、二人を止めることはできない。
和夫は叫びたかった。
行かないでくれ。死ぬなんてダメだ。
行かないでくれ。死ぬなんてダメだ。
けれどこの世界で逃げ場なんてない。相手はこの世界の神だ。どう考えても逃げ切れる手段なんかない。ここで戦うしかないのだ。涙を流して見送るしかできなかった。
「さあ、最期の戦いだ!」
「二つの世界を守るわ!」
宣言したその時、世界が揺れ始めた。
「な、何だ!?」
三人は警戒した。運転手の仕業だと思ったからだ。しかし、彼女も困惑している。
彼女が何か起こしたわけではないのだ。
彼女が何か起こしたわけではないのだ。
「あ」
明日歩はスマホを取り出した。
「6、護衛対象について。BルートPCを二人以上含むマッチングが成立した場合、複数の護衛対象を同一人物として描写して良いこととします。と書いてあるわね」
「あ? キュアアースホール。それってどういうことだ?」
明日歩とグイェンは今、二つの世界を守ると宣言した。つまり、二つの世界を一つの世界として描写して良いということだ。
「いや、同一人物って書いてありますよ。世界は人物ではないですよね?」
合体ッ!!
「え、嘘ぉ!?」
和夫は驚いた。
運転手は焦っていた。
自身の力で世界が制御できなくなったのだ。原因は不明。今までこんなことはなかった。
自身の力で世界が制御できなくなったのだ。原因は不明。今までこんなことはなかった。
「何故だ、何が起こっている!?」
ガシャガシャガシャーーーン!!
空間にヒビとゆらぎのようなものが出始めた。それは瞬く間に広がっていき、全てを包む。
⚪︎
テレビの画面。
ヘリコプターの中で女性キャスターが、今の状況をリポートする。
ヘリコプターの中で女性キャスターが、今の状況をリポートする。
「見てください、上海に突如現れた巨大なひまわりです。他にも不思議な植物や、動物がこの上海に現れたと報告を受けています!」
「他にも、アマゾンの部族が突如現れて、上海を震撼させています。見つけたら、上海人民警察にご連絡ください」
街の大型テレビが放送する下で、芽芽はようやく会うことができた護衛対象の金髪イギリス人女性、カルミアに熱弁する。
「だからー、本当にダイヤ見たんだって!」
「それはあなたの妄想なのではなくて?」
「うっ……」
カルミアの指摘は間違っていなかった。桃猫の能力を継いだ和夫が確かにダイヤを見せたが、それは自身が一番欲しいものの想像としてをみせるのであって、本物ではない。
「もーっ。カルミアちゃんのいじわる。肩組んであげないよ!」
「それは困りますわ。私、何故か足をやってしまったみたいで。そんな記憶ないのですけど、心当たりありませんか?」
「あるけど、ないわ。ダイヤの情報言ったら教えてあげる」
「では結構ですわ」
「いけず〜」
彼女達はダイヤの情報を求めて、混沌の上海を練り歩く。
上海の大通り。
グイェンは桃猫と密着した態勢に興奮していた。
グイェンは桃猫と密着した態勢に興奮していた。
「肩を貸してもらってありがとうアル。やっぱりグイェンは優しいアルね」
「いや、そんなことねえよ」
さっきまでの努力はこの一瞬で報われたと感じるグイェン。
あの後、気が付いたら元の新作映画発表会の会場にいたグイェン。いつの間にか和夫の合体状態も解除されていた。
和夫は足の負傷を追っていた。
そして合体が解除された三人共に、負傷が受け継がれたのだ。原理はさっぱりわからないが、とにかく和夫には感謝しないといけねえなと考える。
そして合体が解除された三人共に、負傷が受け継がれたのだ。原理はさっぱりわからないが、とにかく和夫には感謝しないといけねえなと考える。
「……グイェン? どうしたアルか?」
「どうやらお客さんらしい」
上海はまだダイヤ争奪戦の真っ最中だ。一部がアマゾンと合体して、混沌と化している上海でもまだ彼女を狙う輩は絶えない。
こんな大通りでも襲ってくるのだから相当なものだ。
「いいぜ。かかってこいよ!」
ダイヤ争奪戦が終わるまで、桃猫の周りでは銃声が絶えなかった。
バスの中。
明日歩は考えていた。
運転手はあの世界で神の如き力を持っていた。巨大植物も、バスも、原住民も全て彼女が作ったものだ。
明日歩は考えていた。
運転手はあの世界で神の如き力を持っていた。巨大植物も、バスも、原住民も全て彼女が作ったものだ。
しかしウンコーダイヤグラムだけは、彼女が作ったものではなかった。
他人の世界に干渉できる力を持った人物。思い当たるのは一人しかいない。
他人の世界に干渉できる力を持った人物。思い当たるのは一人しかいない。
「斎藤あやめのうんこ、運転手さんの懐からも結局見つからなかったわね」
「見つかるわけないでしょ!?」
バスの自動ドアが開く。
『新アマゾン駅。新アマゾン駅。お降りの際はお忘れ物など、ございませんようお願いいたします』
二人はバスを降りる。足を負傷した和夫は明日歩の手を借りながら降りる。
明日歩の方はピンピンしている。魔法少女は普通とは違うエーテル体だから回復が早いのだ。
「え、目的地と全然違う場所じゃないですか」
「この世で最も複雑なもの。それはバスのウンコーダイヤグラム」
「道に迷っただけでしょ!?」
和夫は明日歩から、観光案内所で入手したバスの時刻表をひったくる。
「ええっと、読めませんね」
「うんこ翻訳使う?」
「使いません」
道行く人からうんこをせびり始める明日歩。和夫はそれを真っ赤な顔で止めるのだった。
飛行機の中。
一人の若い女がコーヒーを飲みながら混沌と化した上海を見下ろしていた。
「お嬢さん、何処か旅行にでも行くのかね?」
老人が話しかける。
女は希望に満ちた目をしていた。眩しいくらいに。
女は希望に満ちた目をしていた。眩しいくらいに。
「はいっ! 世界一周するんです!」
「ほう。そうかそうか」
若い人が希望に満ちているのは良いことだと老人は思う。上海はきな臭い情勢になったが、こういう子が出るのなら、まだ捨てたものではない。
「聞いてください、私、夢があるんです」
「ほう」
「故郷を発展させたいんです。もっと大きく! そして他の国々を飲み込んでいくんです!」
「の、飲み込む……? ほう。お嬢さんの出身はどこなのか?」
「はい、アマゾンです! 今度招待しますね!」
「アマゾンはこの老骨には厳しいのう」
「招待しますね!」
「せっかくじゃが――」
「絶対、招待しますねっ!」
数年後、再会を果たした老人は見事、上海アマゾンの洗礼を受けることとなるが、それはまた別の話。
飛行機内に、新芽が萌え出ていた。