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ダンゲロスSS上海
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ダンゲロスSS上海

ペインフル・メモリーズ

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dangerousss_shanghai

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ピンポーン

「はーい、どちらさまで……うえっ、警察!? うっ、ウチノオ店、健全ヨ。変ナマッサジ、無イネ?」

「……本名不詳、通称『恋辻(こひつじ)メーメー』だな? 上海蟹ランド放火の容疑で逮捕する」

「えええーっ!? そんなの知りません!」

「当日、持ち場を離れてどこに行っていたのかについては署で詳しく聞かせてもらう」

「あわわわわ……」

奇妙な依頼

 地下大放水路の爆弾騒ぎから一夜明けて。
 槌歌(つちうた)トラブルバスターズ上海支所の扉を開けた塔也(とうや)たちは、一通の手紙に気付いた。

我在监狱里(カンゴクにいます)请帮帮我(たすけて)
恋辻咩咩(こひつじメーメー)

 簡潔な依頼文と待ち合わせ場所の指定だけが書かれた便箋が、そのまま机の上に置かれている。

「こどもが書いたみたいな字だね」
 育美(いくみ)が率直な感想を呟いた。
 彼女自身は、10歳にしては整った綺麗な字を書く。

「ニュースになってた蟹ランド放火の件ね。でも、監獄からこんな手紙は出せるわけない。無視したほうがいいんじゃない?」
 七歌(ななか)は懐疑的な姿勢だ。
 その意見は尤もで、この手紙にはあまりにも不審な点が多い。

「協力者がいるんじゃないかな。いや、そもそも戸締まりした事務所の中に手紙を置いてるわけだから、魔人能力かもしれない。それに……監獄に行くなら今がいいタイミングだ」
 塔也はこの手紙を、天啓のようなものだと捉えている様子だ。 

「……いよいよ動く時、ってこと?」
 緊張した様子で、七歌が確認する。

「カジノのダイヤ争奪戦。屋台街の乱闘。貧民街の建築物暴走。鞍馬山の異変。映画発表会のアマゾン騒ぎ……百年節に合わせるように、上海各地で事件が起きてる。魔幇の指揮系統が混乱した今がチャンスだ」

 既に塔也は作戦決行の決意を固めている様子であった。
 こうなった時の彼を止めても無駄だと知っている七歌は、黙って頷き、準備に取りかかった。
 育美は2人の真剣な様子を、不思議そうにきょとんと見つめていた。

鱗語交流(リンゴトーク)

 ぼやけた視界の先に、見えたのは一匹の小さなトカゲ。

 身体中が軋むように痛い。でも、心の痛みに比べれば全然大したことなかった。
 パパとママは、たぶん殺されてしまった。
 下水に流された小さなスパイクも、もう死んでしまっただろう。
 私の身体も隅々まで汚されてしまった。

「このまま、死んじゃいたいな」

 そう呟いた。

(死んじゃったら、美味しいもの食べらんないよ)

 驚いたことに、トカゲが返事をした。
 ああ、そうか。私は魔人として目覚めたんだ。

 ――トカゲと会話する能力。
 なんて可愛らしく、ささやかな能力だろう。

 魔人能力は、認識を世界に押し付ける能力。
 すべてを奪い尽くされたのに。すべてを破壊できると思い込むには、私の頭は常識にとらわれすぎていた。

 どうせなら、憎い魔幇の連中を皆殺しにできるような能力が欲しかったな。
 その願いは虚しく、上海の闇の中に飲み込まれていった。
 私が恋辻(こひつじ)メーメーと名乗り、魔幇の懐へと潜り込む数年前の出来事だ。

提籃橋監獄(ティーランチャオ)

 上海市虹口(ホンコウ)区の一角。無機質な赤煉瓦の壁に囲まれた提籃橋監獄は、清王朝時代の1903年に開設された巨大監獄である。その長い運用期間で脱獄に成功した者は数えるほどしかいない。『東洋のアルカトラズ』の異名を持つ堅牢な施設だ。

 監獄管理エリアの奥、豪華な革椅子にふんぞり返るように座った男の前に、メーメーは連行された。
 男の髪には派手な金色のメッシュが入り、黒のスーツにも金色の雷紋が刺繍されている。丸いサングラスの奥の目が、値踏みするようにメーメーの身体を見ていた。
 魔幇電子部門の幹部であり、監獄システム統括の管理監を務める落雷(らくらい)磊落(らいらく)である。

「まあ座れ。アンタは容疑者ってことになってるが、犯人にするつもりはねえ。蟹ランド放火は、例の海賊と黒人の仕業ってことになる」

「あの火事は魔幇の仕業ってこと? 王龍蝦(ロブスター)の勢力を削ぐのが狙い? 表向き、彼女たちとは協力関係だったはずだけど」
 メーメーは勧められるままに椅子に腰掛けた。
 そもそもメーメー自身が放った火は消し止めたはずだし、蟹ランドを全焼させうるような規模のものでもなかった。

「ダイヤの件で、ボスは疑心暗鬼になってんだ。だから、ダイヤの秘密を知る血族のアンタも逮捕って口実で確保しておきたかったってわけだ。模範囚扱いの待遇にしてやるから、ゆっくり過ごすといい」
 磊落は、溜め息をついた。提籃橋監獄はその特性から、単に囚人を収監する以外の目的にも利用されている。ダイヤ盗難以前から、彼の所管する業務は増加する一方であった。

 磊落に連れられて、メーメーは監獄地下の魔人収容エリアに向かった。薄暗い通路を歩いているうちに、メーメーは身体から力が抜けるような不快感を覚えた。

(声が消えた……)
 近くにいるはずのトカゲやヤモリの声が、聞こえなくなった。以前、囚人は魔人能力を封じられていると聞いたことがあるメーメーは、その仕組みを体験してみて妙に感心した。

「さあ、ここがアンタの部屋だ。相部屋のこいつらは『五徳囚』。素行のいい模範的な奴らだからな、褒美をやってもいいんじゃねえかと考えてたんだ」

 重い鉄の扉を開いた中の部屋には、五人の男がいた。

拙僧(せっそう)は『仁』の布袋和尚(ほていおしょう)。ブヒョヒョヒョ……久しぶりの女体じゃあ……」

「僕は『義』の立旗(リーチー)。ひゃー! たまらねー! むしゃぶりつきたい!」

「俺は『礼』のシャカパチマン! たっぷりシャカパチしてやるぜーっ!」

「『智』ノ……マイティドラゴン・プレデター。ロリ巨乳ハ・好物ダ」

「私は『信』のレイズアクメマン。永遠に続くイキ地獄を味わうがいい」

 鉄の扉が閉まる。

「それじゃあ模範囚同士、仲良く交流を深めたまえ」
 磊落はそう言って、下品に笑いながら立ち去った。

あと二人の囚人

 メーメーが囚われた部屋から、さらに一階層下の収容区画に二人の虜囚がいた。

「ブリキュアの力が封じられてるわ。これはピンチ……いえ、ヒロインピンチ。略してヒロピンね」

「言い直す意味ある? でも困ったなあ。姉さんを探すどころじゃなくなっちゃった」

 茶山明日歩と、斎藤和夫だ。
 明日歩の変身は解除され、和夫と同じ地味な茶色の囚人服を着ている。うんこの妖精シニョ~の姿も見当たらない。

「新作映画発表会場をうんこまみれにしただけなのに……血も涙もない!」

「普通に犯罪だよ! ホテルが魔幇傘下だったのが不運でしたね。ところで、今回もBルート三人だから、また僕は合体するのかなぁ」

「バカーッ!」

 明日歩は罵声と共に、メモ用紙のようなものを和夫の顔面に叩きつけた。

「痛い!?」

「君まで平然とメタ発言始めたらツッコミがいなくなっちゃうでしょ! それに、合体できないのは和夫のせいなんだからね! それを見て」

「えーと、なになに……」
 和夫はメモを広げて読む。

メーメーは源氏名で、日常的に使う偽名は浅村育美。
在籍してるお店の名前が『ティア・ゲイザー』。
抱きついてる相手を癒やす仕事をしてる。
外見は10歳くらい。
ぽやぽやしてるように見えるのは演技。
張一族の能力でダイヤを修復できるという噂を信じてる者たちに、身柄を狙われている。

「……なんですかこれ?」

「これは作者がメーメーと育美ちゃんを合体させようと思って考えてたメモよ」

「Wikiよりもっと見ちゃダメな奴だ!?」

「これに和夫を混ぜようとしたけど無理だったので挫折したってわけ」

「それって僕のせいじゃなくて明日歩さんが乱入したせいだよね!?」

大好きな魔法少女

あなたが、こどもの頃に好きだったものはなんですか?

カッコいいヒーロー?
かわいい魔法少女?
強いカブトムシ?
無慈悲なニンジャ?
大きくて早い電車?

それとも……うんこ?

美味しいカレーライスに、美味しいトンカツを乗せたらもっと美味しくなるように。
好きなものと、好きなもの、一緒にくっつけたら最高だよね。

幼いこどもの、無邪気なきもち。
時にそれは、魔人能力として目覚めて世界を書き換える。
あなたにも、うんこの魔法少女になれる可能性を秘めていた時代があったんです。

そうでしたね。
これは、苦しみの記憶(ペインフル・メモリーズ)のお話でしたね。

誰が苦しんだ話なのかって?
それは、自分のこどもが、うんこを撒き散らす魔法少女になってしまった御両親ですね。
ほんともう、御愁傷様です。

作戦開始

 メーメーが監獄に囚われて2日後。落雷磊落の居室に、来客が訪れていた。磊落よりも、ふた回りほど大きい体格の良い男。槌歌トラブルバスターズの代表、槌唄塔也である。
 いかなるマフィアとも深く関わらず「中立」の立場を維持しているトラブルバスターズは、それ故に複数の利害関係が込み入った案件で重宝される解決屋である。魔幇が地下大放水路の爆弾解除を秘密裏に依頼したのも、その特性を評価してのことだ。

 放水路に潜伏しているのは没落した敵対マフィア『蘇一家(スーイージャ)』の残党。既に壊滅状態とは言え、蘇一家を密かに支持していた者たちは市中に紛れていて迂闊に刺激すべきではない。
 爆弾を仕掛けた組織は不明。蘇一家への怨恨の線が強いものの、爆破で重要インフラが破壊される以上は支配者である魔幇への敵対行為であり看過はできない。
 そのような事情からトラブルバスターズに依頼が行われ、見事依頼を達成したことを磊落は把握している。トラブルバスターズによる囚人リストの調査希望は、無碍に断るべきではないと判断された。

「しかし壮観な顔ぶれだな。蘇一家関連の囚人だけでも恐ろしい連中ばかりだ。これだけの能力者をどうやって捕らえておけるんだ?」
 塔也はリストを眺めて驚いた。魔幇への反逆を企てた危険人物ばかりである。

「『賢者の水』は知ってるな?」
 磊落は、なんとなく塔也に対して親近感のようなものを覚えていた。慈善団体のように雑多な人材を抱え込み、運営に苦労しているという噂を聞いていたからだ。

「魔人能力に反応する特殊な液体、だよな? 魔人鑑定に使ったりする奴」

提籃橋(ティーランチャオ)の風水的条件が特殊でな。ここの地下では、『賢者の水』は魔人のエネルギーを激しく吸収する」

「……つまり監獄内に『賢者の水』を循環させれば?」

「そう。壁や床に埋め込まれた配管内の『賢者の水』が魔人能力を無効化して安全に収容できるってわけだ。特に危険な連中は二重三重の封印をしてるがな」
 得意気に自慢の封印システムについて語る磊落。もっとも、これは秘密の漏洩ではなく、何故この監獄が脱獄困難なのかを丹念に調べれば辿り着ける情報である。

 ……塔也と磊落の談話が和やかに進む陰で、監獄は二人の侵入者を許していた。「われらのすがた ひとにみえざる」の言葉で姿を隠した倉森七歌と浅村育美である。
 二人は管理エリアの奥へと進み、予備発電機室に到達する。室内には2台の巨大なガスタービンエンジンが設置されていた。この発電機は、停電時に監獄の機能喪失を防ぐ安全装置である。

「あらゆるせんよ ちぎれとだえよ」

 七歌が第二の言葉を紡ぐ。半径10m以内の、あらゆる配管・配線に超常の力が作用して引き裂かれようとする。
 彼女の能力『深く昏き森(ダーケストフォレスト)』は、大規模な破壊をもたらすような無茶はできない。そのため太い主要管や強いケーブルは断裂に耐えた。だが、細く弱い配管と配線は耐えられずに千切れ、結果として発電機は機能停止に至る。監獄は停電への備えを失ったのだ。

 その間、育美は発電機制御盤に抱きつき『泪をみるひと(ティア・ゲイザー)』による癒しを発動していた。
 彼女の修復能力によって制御盤は、七歌の言葉による配線断裂から保護されるのみならず。発電機各部位からの異常を伝える信号もまた癒され、正常化していた。人体において神経伝達をブロックして痛みを和らげるのと同様の作用である。
 結果として、発電機室の異常は中央監視室には届くことなく、監獄に迫る危機に気付く者はいなかった。

下水鱷魚(シーワーゲーター)

 飼い主の少女から「スパイク」と名付けられた、小さなワニの赤ちゃんは、暖かくて綺麗な水槽の中にいたはずだった。
 突然、トイレの中に投げ込まれて流され、狭い下水配管の中を為す術もなく流れに身を任せるしかなかったスパイクは、まだ世界がどんなものかよくわかっていなかった。だから、これが普通の世界なんだろうと認識した。

 狭く、苦しく、臭くて汚い下水道。
 しかし、スパイクは自分にはそんな環境で生きていける力があると、当然のように考えた。

 その胸の中に刻まれた映像がひとつ。
 水槽を覗き込む少女の、嬉しそうで可愛らしい笑顔。

 遠くから、その少女の声が聞こえた。

(憎い魔幇の連中を皆殺しにできるような能力が欲しかったな)

 それは、あの暖かい笑顔とは全然繋がらない、憎しみと悲しみに満ちた言葉だった。
 スパイクは、返事をできるような言葉をまだ持っていなかったし、言葉の意味もよく理解できなかったが、その気持ちだけはしっかりと受け取った。
 そして、強くなろうと、そう思った。

 魔人化した動物は、時として人間の魔人を遥かに超える能力を獲得することがある。認識を制限する常識に縛られないからだ。
 この構造にはトレードオフがある。強力な能力を持つものは、それを運用する知能に劣っている。
 だが、もし魔人能力として目覚めた後に高い知能を獲得したとすれば……?

倒壊

 ずしん。ずしん。
 大質量が叩きつけられる音が響く。
 高くそびえ立つ鉄塔が、みしみしときしむ音を立てながら揺れる。

 鉄塔の麓には、10mはあろうかと思われる巨大な乳白色のワニ。「透明ワニ」の名で知られる怪異の正体である。無二の友であるメーメーは、彼のことをスパイクと呼んでいる。
 これまでのスパイクは、食糧庫を荒らしたり、チンピラを下水道に引きずり込んだり、地味な活動に努めてきた。今回の彼は違う。その力を存分に活かした大規模破壊を引き起こそうとしているのだ。

 度重なる体当たりに、鉄塔の頑丈な鉄骨が限界を超えて折れ曲がった。
 ゆっくりと、鉄塔が傾く。鉄塔に架線された超高圧電線が、バチリと眩いアーク放電の光を放って千切れた。
 鉄塔は、千切れずに耐えた数本の電線を支えとして、もたれ掛かるように傾いた姿勢で止まった。そして、提籃橋(ティーランチャオ)を含む虹口(ホンコウ)区の広いエリアへの給電が停止する。

 これが、メーメーとの精神感応によって高い知性を得たスパイクに可能な破壊規模である。
 彼は槌歌トラブルバスターズの面々と筆談により意志疎通し、監獄攻略のための電源遮断を買って出たのだ。

 提籃橋監獄は電源遮断を検知した10秒後、予備発電装置の自動起動シーケンスを発動する。しかし2台の発電機は、七歌たちによる破壊で動かない。
 監視室に非常事態を告げるアラート音が鳴り響く。無停電電源装置のバッテリーが切れるまで、猶予時間はおよそ10分。10分後には監獄は闇に落ち、『賢者の水』循環システム停止により地下の魔人囚たちを抑える枷が失われることになる。

痛みの塔(ペイン・タワー)』と『深く昏き森(ダーケストフォレスト)

 積み上げられたブロックの中で、倉森七歌は言葉を紡いだ。

「ここはふたりの ひみつのおしろ」

 無機質だった壁が、絵本の挿し絵みたいにきらびやかな装飾で彩られ、どこからともなく優雅なメロディが流れ出す。
 気品あふれる衣装に身を包んだ塔也が、王子様のように手を差し出す。七歌はその手を取り、ドレスの裾をつまんで淑やかに一礼する。舞踏会の始まりだ。

 大量のブロックを生成する『痛みの塔(ペイン・タワー)』。
 様々に現実を改変する『深く昏き森(ダーケストフォレスト)』。
 幼い頃に魔人となった者ならではの、すさまじい出力を誇る能力である。
 塔也の能力は、積み木遊び。七歌の能力は、ごっこ遊び。
 二人の能力を合わせれば、何にでもなれたし、どんな遊びでもできた。

「世の中はね、獣で一杯の暗い森なのよ」

 それが、七歌の母親の口癖だった。
 七歌は父親のことを見たことがない。それどころか、母親以外の人間を見たことがほとんどなかった。
 母親の行き過ぎた過保護は、七歌を家の中に閉じ込めて誰にも会わせようとしなかった。

 『集会』の時間だけが、七歌が塔也と遊べる時間だった。
 塔也は育児放棄により親からまともな教育を受けておらず、最初に会った時はまるで野生児のような様子だった。だが、七歌の母親はそれを世俗に染まっていない好ましいものだと考え、遊ぶのを許可してくれたのだ。

 ある日、気が付くと七歌と塔也は大きな船に乗っていた。それは『楽園』に行くための船だそうだ。日本を離れ、船は大陸へと向かってゆく。
 七歌は『楽園』という言葉を聞いて、言いようのない不安に胸がざわついた。
 塔也にそのことを話すと、彼は笑顔で答えた。

「それじゃあ、二人で逃げようか?」

 七歌は差し出された塔也の手を強く握り締めた。二人なら、どこにだって行けるし、何だってできる。そう思った。
 船が真っ暗な港に到着する。小さな二人の逃避行が始まった。

ブラックアウト

 顔を青くした職員が駆け回り、騒然とする監獄管理エリア。監獄崩壊までのタイムリミットは残り5分を切った。
 発電機の状態を確認に向かった職員は、ズタズタになった配管・配線を見て天を仰いだ。電力会社に問い合わせた職員は鉄塔崩壊の報を聞き絶望した。

「管理監はどこに行ってるんだ!? 磊落さんならなんとかしてくれるはずなのに!」

「駄目です! 管理監への連絡が繋がりません! 来客対応中のはずですが部屋にもいません!」

 事実、落雷磊落の能力『電気人形(エレディスコ)』であれば『賢者の水』循環システムの電動ポンプを強制的に駆動させて電源復旧まで耐えることが可能なはずだった。だが、時間は無情にも過ぎ去り、無停電電源装置が限界を迎える。

 監獄内の全てのエリアが暗転した。

「馬鹿な!? 停電だと!?」

 ここに至って、ようやく磊落は異変に気付いた。
 資料室に移動し、塔也と共に求める囚人の情報を探しているところだった。

 あり得ないことだった。設備に異常があれば、すぐに彼の元に情報が来るはずだ。そして、磊落はサイバーサングラスの端に、恐ろしい三文字を見た。『无信号(NO SIGNAL)』。通信不能。

「槌唄ァ! テメェ、やりやがったな!」

 資料室の周囲を、無数のブロックが覆い尽くして電波を遮断していた。『痛みの塔(ペイン・タワー)』による妨害工作だ。
 資料室も闇に包まれ、バッテリー点灯した非常照明の弱い光だけが室内を照らす。

「悪いな! 槌歌トラブルバスターズは、今から魔幇に敵対させてもらうぜ!」

 塔也は生成したブロックを砕き、中から巨大なハンマーを取り出した。特殊材質のハンマーでのみ可能な異空間収納術だ。
 間髪を入れずに三個のブロックを磊落めがけてハンマーで射出する。

「そうかい! だったら早速死にやがれ!」

 磊落は電動書架を『電気人形(エレディスコ)』で操って飛来するブロックを防御。そのまま書架の群れで塔也を押し潰しにかかる。

「連れを待たせてるんでね、今は死ねないな!」

 生成したブロックでバリケードを築き、押し寄せる書架を食い止めた塔也は、素早く扉から脱出する。扉周辺もブロックで封印し、磊落への足止めとする。
 無数の電動書架がある資料室内で戦うのは不利だと判断し、離脱したのだ。
 そもそも、磊落を撃破する必要もない。今回の目的は、監獄内からの救出である。救出すべき対象は、依頼者である恋辻メーメーと、それから……

暴動

 循環システムの停止からさらに数分。『賢者の水』による魔人能力の無効化が飽和状態に至った。
 暗い地下牢獄の各所で破壊音が響きはじめる。固く施錠された鋼鉄の扉すらも簡単にぶち破ることができる凶暴な戦闘破壊魔人が、提籃橋(ティーランチャオ)には何人も収容されていた。

 囚人たちのほとんどは、魔幇の秩序を乱した者であり、その点において同志とも言える存在である。牢を脱した者は、多重封印が施されたより危険な囚人を解放していき、全員が地上を目指して侵攻を始めた。

 武装した獄吏たちと、テクノロジーに包まれた警備ロボットの群れが囚人たちに立ち塞がる。囚人たちはかつて悪名を馳せたつわもの揃いだが、長年の獄中生活で弱っている者も多い。
 獄吏たちは魔幇に名を連ねる魔人であり、丸腰の囚人たちと違って武器も持っている。獄吏と囚人の戦力は拮抗していた。

「必殺、プープダイナマイトォォ!!」

 茶色の魔法少女がステッキの先端から大量のうんこを噴出する。

「ぐああーーっ!」

 獄吏たちの姿がうんこに埋もれて消える。魔力を取り戻したキュアアースホール・茶山明日歩の魔法が戦場の均衡を破った。

「さあ、この調子で一気に脱出するわよ!」

「脱獄する気満点だ!? なんで犯罪に躊躇がないの!?」
 反射的にツッコミを入れたものの、他に良い案もないので和夫は彼女と共に監獄の中を出口を目指して駆け出した。

『楽園』なんてなかった

「とざされしもの ときはなたれよ」

 七歌が紡いだ言葉で、固く施錠された扉が開く。
 部屋の中には、さまざまな年齢の少年少女が詰め込まれており、入ってきた七歌たちに怯えた目を向けた。中国人だけでなく、日本や東南アジア出身のこどもも混じっているようだ。

「七歌さん……この子たちは?」
 育美が訊ねる。10歳の育美よりも、遥かに幼いこどもまで捕えられている監獄などあるはずもない。

「ここは、魔幇の殺手(ころしや)養成所……もしかしたら、私や塔也がいたかもしれない場所。ここで訓練を受けて、見込みがあれば『蟲』を植え付けられてデビューするの」

「もし、見込みがなかったら……?」

「育美ちゃんは知らない方がいい。そんなことにならないように、助けに来た。みんな! 付いてきて! ここから逃げるよ!」

依頼完了

 非常照明のLEDが照らす薄暗い地下通路。獄吏と囚人が争い騒然とする中を駆ける塔也は、前方に小柄な女性の姿を発見した。
 低い身長に似つかわしくないほど大きな胸。囚人服を纏っていてもなお失われていない華やかな雰囲気。依頼者のメーメーだ。

「槌歌塔也さんですね! スパイクから聞いてます! 助けてくれてありがとうございます!」
 鱷形拳(ウォウゼンチュアン)の地を這う動作でメーメーは獄吏の刺股を潜り抜ける。

「恋辻メーメーさんだな! 地上まで援護する!」
 塔也は生成したブロックを足場にして跳び、メーメーを襲った獄吏をハンマーで殴り倒す。

「スパイクがいるから私は大丈夫! こどもたちの方に行ってあげて!」
 三人の獄吏が塔也とメーメーに襲い掛かる。だが、その瞬間に通路脇の側溝から巨大な白いワニが飛び出して獄吏たちを薙ぎ倒し、再び側溝に消えた。

「もう戻って来てたのか。それならわかった! お互い無事に脱出しような!」
 鉄塔から監獄までの距離は、車も一時間はかかるはずだった。『下水鱷魚(シーワーゲーター)』による下水中の高速移動が成せる業だ。塔也はその早さに驚きつつも、メーメーのことはスパイクに任せて殺手養成所の七歌と育美の元に向かうことにした。

恐るべしメカ妊娠願望マン1号

「ぬあーっ………必殺ッ! プープダイナマイトォォォォ!!」

「――回し受け」

 右腕のメカハサミと、左腕のロボットアームを円の形で旋回させて大量のうんこを淀みなく捌く。鉄壁の防御で弾かれたうんこは周囲に飛び散り、敵の身体に一片たりとも到達できない。

「回し受け! 日本拳法の基礎技術だが、なんたる精度! 異形のメカ拳法家でありながら、その技は本物だ! ……うんこには右巻きと左巻きがある。その回転方向には個人差があり、不規則に変化するプープダイナマイトの回転方向を見誤れば被弾は必至だと言うのに全くぶれずに迎撃している……恐るべしメカ妊娠願望マン1号!!」

 あまりの絶技にテンションがおかしくなった和夫が早口で解説する。拳法解説より、うんこ解説の成分が多い気もするが大丈夫か和夫?

「――ジェット正拳」

「ぐうっ……!」

 背中のジェットパックで急加速し、メカハサミを真っ直ぐに突き出す。基本に忠実な日本拳法の動き。だが、速い。
 キュアアースホールは防御すら間に合わず、メカハサミの直撃を受けて吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。

「明日歩さん!」

 倒れたアースホールに、和夫が駆け寄り支え起こす。

「――奇妙な手応えだ。生身とも機械とも違う。これが魔法少女のエーテル体か。しなやかで、頑丈だな」

 妊娠願望マンは、メカハサミをパカパカ開け閉めしながら感触を反芻する。

 地下体育館の開けた空間に、多数の囚人が倒れている。妊娠願望マンの機械の拳によって打ち倒された者たちだ。
 育児・親子健康部門統括、メカ妊娠願望マン1号。その個人戦闘力は、魔幇でも最強に近いと言われている。

「――さて」

 突然、妊娠願望マンは異形の三脚下半身による華麗に滑るようなフットワークであらぬ方向に高速移動し、虚空に向かってロボットアームを振るった。
 ボキリ、と鈍い音が響き、何者かが床に倒れる。

「――うちの子たちを返してもらおう」

 痛みで精神集中が乱れ、透明化が解除される。
 床に倒れた女性と、数十名の少年少女の姿が徐々に現れてきた。倉森七歌と浅村育美、そして殺手養成所のこども達だ。
 七歌の左腕は、今の一撃でへし折られて肩の下であり得ない方向に曲がっている。育美が慌てて抱き付き、癒しの力を発動した。こども達は妊娠願望マンに怯え、身動きひとつすることができない。

「――あちらのお嬢さんが、うんこを撒き散らしてたのが不運だったな。足跡が見えていたよ」

 機械化された左半分の顔の、機械の目が七歌を冷徹に見つめる。

「――心配しなくていい。命は奪わぬ。若者は、国の宝だからな」

管理監急襲

『遊ぶなメカ妊娠! さっさとそいつらを殺して次に回れ!』

『――できない相談だ。オラは常に未来を見ている』

提籃橋(ティーランチャオ)が今ヤバいんだよ! チッ、勝手にしろ!』

 磊落は苛立たしげに通話を切断した。現場に行けばメカ妊娠願望マンを『電気人形(エレディスコ)』で完全支配することも可能だが、それでは機体能力の1割も発揮できない。癪だが、自由にさせるのがベストだ。
 自家発の復旧には数日かかる。おそらく電力会社の応急復旧のほうが早い。目下の課題は、暴動を起こした囚人どもの鎮圧だ。各フロア、戦況は均衡状態。囚人どもの顔触れを考えれば獄吏たちは善戦していると言えるが、人員が圧倒的に足りない。
 魔幇本部からの増援はまだか? 他の場所でも同時にテロが起きてるのか? 連絡員はどうなった? 槌歌トラブルバスターズの他のメンバーはどんな動きをしている? 追加の連絡員を送るべきか?

シャカパチ。シャカパチ。

 苛立つ心をさらに掻き乱す音が聞こえる。

シャカパチ。シャカパチ。

 不快な音は徐々に近付き、磊落の居室の前までやって来た。
 そして、扉を蹴破り室内に躍り込んできたのは、メーメーと同房だった五徳囚。

「ブヒョヒョ! お命頂戴!」
 巨大な肥満体を揺らす『仁』の布袋和尚(ほていおしょう)

「やってやるぜー!」
 手頃な棒を棍にした『義』の立旗(リーチー)

\シャカパチ、シャカパチ/
 即席のカードで威圧する『礼』のシャカパチマン!

「狩リノ・時間ダ!」
 闘争本能を剥き出しにした異星人、『智』のマイティドラゴン・プレデター!

「男だろうと容赦せぬ」
 ボディペイントで全身白塗りにした『信』のレイズアクメマン!

「テメェら! 裏切りやがったか!」
 磊落は怒りに満ちて立ち上がり、迎撃体勢を執る。

 魔人化する際、多くの者は特殊能力と共に高い身体能力を獲得する。だが、メーメーの身体能力向上幅は非常に小さなものだった。それでは、メーメーが得たステータスボーナスはどこに注ぎ込まれたのか。それは、彼女のスキル『商才(タラン・アフェール)』である。
 相手の欲するものを看破し、商談を有利に進めるこのスキルを活用し、彼女は夜の町で『魔幇最強』の名を手にしている。その最強の『商品』を扱える状況ならば。5人の男を籠絡するのに2晩あれば十分だった。

 一斉に襲い掛かる五徳囚。いずれも腕の立つ魔人だ。しかし、ここは磊落の居室である。
 磊落は、室内の電気製品を一斉に起動する。冷蔵庫。電熱ヒーター。熱湯ポット。アイロン。ドリル。チェーンソー。グラインダー。パイルバンカー。ドローン兵器。
 それらが『電気人形(エレディスコ)』で宙に浮かび、磊落の意のままに飛び回る。それは武器であり盾である。能力対象を無数に用意したこの部屋ならば、5対1であろうと数敵有利は磊落にある。

ヒーローあらわる

 汚物にまみれた広い空間に何人もの囚人が倒れている。肩を押さえて呻く七歌と、それを抱き締める育美。怯えた顔で立ち尽くすこども達。
 身体の半分以上を機械化した、異形の格闘家がいた。塔也も噂は聞いたことがある。魔幇幹部、メカ妊娠願望マン1号。ふざけた名前と見た目だが、その実力は本物だ。
 そして、機械の怪物に対峙する茶色い少女がいた。派手な形状と地味な色合いの、チグハグな印象を受ける衣装を纏っているが、いわゆる魔法少女、というものなのだろう。魔法少女から少し離れて、少年が1人。少年の立ち姿から判断するなら、戦闘経験はほとんど無さそうだ。

 状況から、七歌、育美と養成所のこども達をメカ妊娠願望マンから守って戦っていたのは、茶色の魔法少女であることは明らかだった。こんな可憐な少女が、汚物にまみれた場所で、恐るべき魔幇幹部と戦っている。

(もっと早く来るべきだった。――後は俺に任せろ!)

 塔也は心の中でそう呟き、ハンマーを握り締めた。

 妊娠願望マンの拳が振るわれようとする瞬間、塔也はキュアアースホールの足元にブロックを連続生成。魔法少女の立ち位置を、高く押し上げる。
 機械の拳がブロックを砕く。目標を失った妊娠願望マンの体勢が崩れた隙に塔也は踏み込み、ハンマーを振るった。命中。機械の怪物がよろめき、後ずさる。
 崩れた塔の上から降ってくるアースホールを、塔也は優しくキャッチして地面におろした。抱き留めた魔法少女の身体は、見た目よりもかなり軽く感じた。

「メカ妊娠願望マンだな? 槌歌トラブルバスターズの、槌唄塔也が相手になってやる!」

「――骨のありそうな奴だ。果たしてお前は、オラを満足させられるかな?」
 機械の目を赤く光らせ、異形の武道家は貪婪(どんらん)な笑みを浮かべた。

「――ジェット正拳」
 燃料噴射で加速したメカハサミが塔也を襲う。

「速えぇな!」
 塔也は体勢を崩すように倒れ込みながらハンマーの柄でメカハサミを弾く。そして、地面から生成したブロックを支えにして体勢を捻りながら反撃のハンマーを振るう。

「――回し受け」
 正拳を放った直後でありながら、メカ妊娠は素早く両手を円く回転させ重いハンマーの一撃を受け止める。そのままハンマーの軌道を往なして塔也の体勢を崩そうとするが、塔也は素早くハンマーを引いて逃れる。

 斎藤和夫は、息を飲んで2人の攻防を見守った。目で追いきれない程の速度域。速さならばメカ妊娠が上だ。純粋な格闘技術もメカ妊娠が高いだろう。だが、ハンマーの男はブロック生成を活用した独自の立ち回りによってその技に肉薄している。

「わたしのとうや かならずかって!」
 七歌の唱える(ことば)は、能力発動フレーズよりもむしろ、祈りに近かった。腕の痛みも忘れ、一心に祈る七歌のことを、育美は強く抱き締めた。

 あの恐ろしい妊娠願望マンと互角に打ち合っている者がいる。その事実が養成所のこども達の心に希望の火を灯した。絶望に怯えるばかりだったその瞳が、今は塔也の勝利を期待して微かな輝きを帯び始めていた。

「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
「ぐああーっ!」
「ぎゃーっ!?」
 不意打ちで噴射された大量のうんこに、メカ妊娠願望マンと塔也は埋め尽くされた。完全に虚を突かれたので対応しようがなかった。

 うんこの山から先に這い出したのは、メカ妊娠願望マンである。

「――横槍を入れられるのも面倒だ。先に消すか」

 三本の脚を曲げて腰を低く落とす。体内の電磁発勁エンジンにカンフー・エレクトリック・パワーが(みなぎ)り、電磁パルスが増幅してゆく。

「――破ァッ!」

 メカ妊娠願望マンは腰を突き出し、股間からアースホール目掛けて白く輝くショックウェーブを解き放った。破壊の波動がアースホールに迫る!

「明日歩さんっ!」

 その攻撃に反応できたのは、斎藤和夫だけだった。和夫は反射的に飛び出し、アースホールの前に立ちはだかる。

「和夫! やめて!」

 それは、自殺行為に等しかった。閃光が和夫を包む。爆発音が轟き、粉塵が舞い上がる。

 ……粉塵が晴れると、奇妙な光景がそこにあった。青紫の流体が、和夫のことをバリアのように包んでいた。和夫は無傷である。

「正体を明かすべき時が来たようですね」

 和夫の身体から、バツン、バツンと何かが弾ける音がする。全身を覆っていたワイヤー機構が破断する音だ。それは、おっさんが女装する時によく使う体型変換ワイヤーである。
 ワイヤーの拘束が解け、和夫の体型が変化してゆく。背が高校生の女子ぐらいまで伸び、おっぱいやおしりが膨らんで女性的なスタイルになる。カツラも外れ、中から青紫色の長い髪が現れた。

「ヒーローは遅れてやってくる……早すぎても遅すぎてもいけない」

 もはや斎藤和夫ではなくなった少女が語る。その全身をエーテルの光が包み込み、青紫色の華やかなドレスを形成してゆく。

「だから私は自分自身に催眠をかけて、無辜の中学生男子になりすましていたの。本当のピンチの時に現れるために!」

 青紫の魔法少女がステッキを構え、ポーズを取る。

「私は斎藤あやめ。またの名を、キュアダイアリア!!」

伏撃(アンブッシュ)

 磊落の『電気人形(エレディスコ)』が操る機器が、五徳囚を迎え撃つ。
 チェーンソーが布袋和尚の分厚い肉の壁を切り裂く。
 ポットから熱々の熱湯が立旗(リーチー)の頭上に注がれる。
 電熱ヒーターがシャカパチマンのカードを焼き焦がす。
 打ち出されたパイルバンカーがマイティドラゴン・プレデターの頑強な肉体を貫く。
 自爆ドローン兵器の爆風がレイズアクメマンを包み込む。

 敵に攻撃のターンすら与えない一方的な蹂躙であった。飛び回る無数の機器が五徳囚を阻み、磊落はゆっくりと移動するだけで攻撃範囲から悠然と逃れることができた。
 しかし、五徳囚には狙いがあった。もとより敵地。不利は承知の上の襲撃である。五徳囚の目的は攻撃ではなく、磊落の立ち位置を誘導することだった。

 磊落の背後にあるのは洗面台。
 洗面台の中央の小さな排水口から、巨大な白いワニが出現し、真っ赤な口を開いて磊落へと飛び掛かった。

「ワニだと!?」

 磊落は意外な襲撃者に驚愕して目を見開くが、対応は早かった。スパイクとの間に冷蔵庫を差し入れて防御する。強靭な顎が冷蔵庫を真っ二つに噛み砕く。

「危ねえ! ワニが隠れてるとは思わねえよ!?」

 赤外線視(インフラビジョン)。磊落が装着しているサイバーサングラスの機能のひとつだ。洗面台の配水管に不審な熱源があることを磊落は察知して警戒していた。

 五徳囚が力尽きて崩れ落ちる。スパイクは長く太い尾で床をズシンと叩いて再び襲い掛かる。
 磊落は総攻撃を仕掛ける。チェーンソー、グラインダー、自爆ドローン。だが、それらは硬い鱗に弾かれ浅いダメージしか与えられない。鱗の防御を貫通しうるパイルバンカーはエアチャージ中だ。
 死の顎が、磊落の目前まで迫る。

「チイイッ! ならコイツはどうだッ!」

 床を突き破り、電極を備えた金属の機器が飛び出して来た。下のフロアの受電設備に設置されていた、大型コンデンサである。

「喰らえッ! 33万ボルト特高圧スタンガンッッッ!!」

 コンデンサの電極がスパイクの脇腹に押し当てられ、電撃が走る。空気が破裂する音。鱗が高熱で焼ける。巨大なワニの全身が硬直する。電撃は心臓まで達し、心拍を停止させる。
 スパイクの見開いた眼の瞳孔が収縮し、瞬膜が力を失って下がり瞳が白く濁る。酸素を求めて、大きな顎が弱々しく開く。

 その顎の中から、飛び出す影があった。
 スパイクの体内に潜伏していた、恋辻メーメーである。

 至近距離からの伏撃に、磊落の反応が遅れた。地を這うメーメーの手が、敵の右足首を捉える。
 素早くメーメーは磊落の脚に絡み付く。金的に蹴りを一撃して磊落の動きを止めた次の瞬間、メーメーは右足を捉えたまま全身を回転させる。鱷形拳(ウォウゼンチュアン)断脚回殺(デュァンジャオフェイシャー)

 鈍い音を響かせて、磊落の右大腿骨と骨盤を繋ぐ関節が破壊される。磊落の叫びは声にならない。

 磊落は最後の力を振り絞り、室内の電灯全てを1ヵ所に集めて自壊的発光させた。即席のフラッシュバンが、メーメーの視覚を麻痺させる。
 メーメーの視界が元に戻った時には、磊落の姿は消え失せていた。

内練武功(メカそうぞうにんしん)

「やっぱり! あやめさんがダイヤでうんこだって私、信じてたんです!」
 アースホールが嬉しそうに和夫=あやめ=ダイアリアに駆け寄る。

「え、違います。名前はちょっとダイヤっぽいけど別にダイヤじゃないです」
 ダイアリアは少し困惑しながら否定した。

「――茶番は終わりだ」
 メカ妊娠願望マンが再びショックウェーブ発射体勢に入ろうとする。カンフー・エレクトリック・パワーが高まる。

「必殺、プープストリィィィム!!」

 青紫色の魔法少女がステッキの先端から青紫色のの液状うんこを大量噴出する。ダイヤではなかったが、うんこではあった。ダイアリア――それは下痢便を意味する言葉。

「――回し受ぐばばばばば!?」
 メカ妊娠願望マンは日本拳法でプープストリームを受けようとしたが、できなかった。回転方向を持たない液状攻撃は捌けない!

「――だがぐばばば、威力はがぼぼぼぼ、茶色の程ではがぶぶぶ無いごべべべべべべ」
 しかし、メカ妊娠願望マンの強靭な装甲を青紫の奔流は突破することができなかった。プープストリームの直撃を浴びながらも、メカ妊娠願望マンは悠然とこちらに向かって歩いてくる。

「でも!」「私たちは!」「「負けない!!」」

 アースホールとダイアリアが、声を合わせて叫ぶ。

「大地に産み落とされた、ひとつなぎのうんこ。キュアアースホール!」
「海原にたゆたう、ゆるやかなうんこ。キュアダイアリア!」
「「プープキャッチブリキュア!!」」

「うんこの種を使うプ!」
 妖精シニョ~が尻からジュエルを産み出した。

「ミラクルエチケットポーチ!」
 アースホールの手の中に、光輝くポーチが出現する。ポーチを開き、シニョ~から受け取ったジュエルをセットする。ポーチから放たれる眩い輝きがアースホールとダイアリアを包み、ドレスが虹色の光を帯びる。2人がそれぞれの手に持ったステッキを近付けると、合体して1本のステッキに変わった。

「ブラウンうんこ!!」
 アースホールが手を掲げ大地のパワーを吸収し、体内魔法回路に火をつける。

「パープルうんこ!!」
 ダイアリアが手を掲げ海原のパワーを吸収し、体内魔法回路に火をつける。

「今こそ!」「必殺の!」
「「ブリキュア・マルチフェイズ・サァァァァジ!!!」」

 2人で手を取り合うように構えたステッキから、茶色と青紫色の混ざったうんこの奔流が大噴射した。

「ぐぼぶべばーーーっ!?」

 とてつもないうんこの流れを喰らって吹き飛ぶメカ妊娠願望マン1号。それは土石流の如く。液体と固体が複合した懸濁流は、防御不能かつ高威力の攻撃である。
 メカ妊娠願望マンは、マルチフェイズ・サージによって壁面に押し付けられ身動きが取れない。

「さあ、今です塔也さん!」
 アースホールが促す。

「お、おう。えーと、『痛みの塔(ペイン・タワー)』オーバーロード!」
 うんこの山の中からようやく這い出した塔也が、能力を全開発動する。それは、空間すべて充填して圧殺する塔也の最終必殺技である。

 無数のブロックが出現し、メカ妊娠願望マンを包み込む。ブロックが機械の装甲に負けて砕ける。間髪を入れず次のブロックを生成して物量でメカ妊娠願望マンの装甲を突破してゆく。

「ぐ……ぐうう……」

 塔也が苦しげな呻き声をあげる。顔面蒼白で、滝のような汗を流している。

「塔也……!!」

 七歌が、治りきっていない折れた腕の痛みに構わず駆け寄り、塔也を後ろから抱き締めた。七歌は知っている。彼の能力が何の代償もなく無制限にブロック生成できるわけでは無いことを。
 ブロックをひとつ生成する度に、塔也の脳内に過去の辛かった出来事がひとつ鮮烈に思い起こされるのだ。ゆえに、その能力の名は『痛みの塔(ペイン・タワー)』。

「あなたのいたみ わたしもともに」
 『深く昏き森(ダーケストフォレスト)』発動。七歌が塔也の苦しみの半分を引き受ける。そして、『泪をみるひと(ティア・ゲイザー)』。いつの間にか2人の側に来ていた育美が、塔也と七歌のことを抱き締め、傷ついた心に癒しを与える。

 ブロックが次々に生成され、メカ妊娠願望マン1号を押し潰して行く。

「――ああ、なんと力強い」

 その圧力に、メカ妊娠願望マンは恍惚とした。そして思った。『この力強い雄の子を、孕みたい』と。
 メカ妊娠願望マン1号が持つ、最も恐るべき魔人能力『内練武功(メカそうぞうにんしん)』が発動する。

 『内練武功(メカそうぞうにんしん)』により、メカ妊娠願望マン1号が槌唄塔也の子を孕み、出産し、育児するという存在しない未来のイメージが形成される。そして、その認識は世界を歪め、時間すらも歪め、メカ妊娠願望マン1号と槌唄塔也の血を引いた存在が今ここに出現するのだ。
 雷が落ちたような激しい閃光が周囲を包み、無数のブロックが一瞬で消滅する。うんことブロックによる拘束から解き放たれ、どさりと床に落ちるスクラップ状態のメカ妊娠願望マン1号。そして、その横にもう一体のメカが立っていた。

 三本の脚。人工皮膚のような無駄な装飾を廃した全身マシンボディ。右腕はメカハサミ。そして左腕は巨大なマシンハンマーであった。ハンマーの所だけが塔也に似ている。

「――鉄槌」

 新たなメカは、無感情にハンマーを振り下ろしてメカ妊娠願望マン1号を叩き潰した。電磁発勁エンジンがエネルギー暴走し、メカ妊娠願望マン1号は爆発四散する。

「――自分のことしか考えてない最低の親だったよ。そんな親、殺すべきだよね。そうでしょ?」

 その言葉は、塔也や七歌にも共感できる部分があるはずの言葉だった。だが、2人はその言葉に同意できる部分を一切感じなかった。
 それは空虚な、まったく感情の無い言葉であった。塔也たちは直感した。これは、存在してはいけない生命なのだと。

「――僕の名前はメカ妊娠願望マンJr.。メカジュニアと呼んでくれてもいいよ」

無敵の怪物

 メカ妊娠願望マンの日本拳法技術とマシンボディフィジカル。槌唄塔也のブロック生成。単体の魔人が合わせ持ってはいけない次元の戦闘能力である。最悪なことに、心を持たないメカジュニアは、『痛みの塔(ペイン・タワー)』のデメリットである精神ダメージを完全に踏み倒している。

 磊落からは「遊ぶな」と言われていたが、メカ妊娠願望マン1号は彼なりの理念で真剣に戦っていた。だが、メカジュニアは違った。いつでも殺せる、別に殺しても構わない命を、何の目的もなくいたぶって遊んでいた。
 対峙している塔也やアースホールたちから見ると死をもたらす恐怖の存在そのものであったが、それはAIが文字列や画素をそれっぽく並べてみせる行為と本質的には何も変わらなかった。

「――うふふ。楽しいね。もっと足掻いてみせてよ」

 メカジュニアは全く楽しんでいなかった。ただ、この状況ではそんな台詞が相応しいと推論して発言しているだけだった。
 メカハサミが、マシンハンマーが、ショックウェーブが、生成ブロックが、嵐のように荒れ狂う。塔也も、七歌も、育美も、アースホールも、ダイアリアも、育成所のこども達も全員傷だらけだ。反撃は全く通らない。死者が出ていないのは、メカジュニアが「今は殺さなくても良いかな」と加減しているからに過ぎない。

 メカジュニアの脅威が吹き荒れる地下体育館。その隅にある排水口から巨大な白いワニが姿を現した。ワニの口の中には、小柄な女性。スパイクとメーメーである。
 メーメーたちは、猛威を振るうメカジュニアを数秒観察しただけで理解した。これは倒せるはずもない絶望的な敵であると。

(どうするメーメー? 逃げる……わけないよね?)

(ううん、逃げる。勝てない相手からは逃げなきゃ。監獄まで助けに来てくれた塔也さんたちを見捨てるわけにはいかないから……なんとかして一緒に逃げる!)

 メーメーは、スパイクの口の中から飛び降りた。
 そして、床に撒き散らされた大量のうんこで脚を滑らせて、顔面からうんこの中に突っ伏すように転倒した。

(うええ……汚い……。でも。汚れるのには慣れている!)

 復讐のためなら。自分がどれだけ汚れても構わないとメーメーは誓った。
 だから、スパイクだけに汚い仕事を押し付けるつもりはなかった。人を噛み殺す感触も、下水の匂いも、可能な限りスパイクと共有してきた。

(下水の……匂い!)

 メーメーは立ち上がり、スパイクと共に嵐の中へと飛び込んだ。
 最初に接触するべきは、倉森七歌!

 降り注ぐブロックの雨。スパイクを盾にしながら、メーメーは七歌の元に到達する。メーメーは知っている。意識共有による連携が、戦場においてどれほど強力な武器であるかを。

「みんなのことば みんなにとどく」
 七歌の『深く昏き森(ダーケストフォレスト)』。真っ暗な闇の森を照らす言葉の光。人と人は、言葉で繋がり生きてゆくものだから。
 そして、メーメーの作戦が全員に共有された。

「『痛みの塔(ペイン・タワー)』ッ!!」
 崩れそうな心を奮い立たせ、塔也がブロックを生成する。メカジュニアを囲み、長方形の細長い通路状の狭い空間を構築する。

「がんばって……!」
 育美は塔也に抱きつき、『泪をみるひと(ティア・ゲイザー)』で彼の苦しみを軽減する。

「プープダイナマイトォォ!!」
「プープストリィィム!!」
 アースホールとダイアリアが、四角い通路の中に大量のうんこを注ぎ込む。茶色と青紫色のうんこが、メカジュニアのいる『痛みの塔(ペイン・タワー)』の中に撒き散らされてゆく。

「――何をしてるんだろうね?」
 メカジュニアは、塔也たちの行動を漫然と見守っていた。攻撃ではない以上、対処する必要もない。どのような意図の行動なのか見極めようと考えていた。観察と学習は、感情を持たないメカジュニアにとって、最も人間らしい重要な行為であるからだ。
 対処するのは危険性が明らかになってからで十分。そのように考えていた。

 ばきり。

 メカジュニアのマシンハンマーが引き千切られた。

「――何が起こった!?」

 背後の気配を察して振り向く。ブロックで構築された、うんこにまみれた通路の奥。白い巨大なワニが、噛み千切ったマシンハンマーを吐き捨てていた。

「――ジェッ……」

 ばきり。

 ジェット正拳を放つよりも速く。メカハサミが噛み千切られた。一瞬で通路の反対側に移動した白い巨大なワニが、メカハサミを吐き捨てた。

 ばきり。ばきり。ばきり。

 ショックウェーブを放つ間も、ブロック生成を行う隙もなく、更に三度噛み千切られた。メカジュニアは何が起きたのか理解できないまま、うんこの中に崩れ落ちた。
 電磁発勁エンジンがエネルギー暴走し、メカ妊娠願望マンJr.が爆発四散する。『痛みの塔(ペイン・タワー)』で構築した即席の下水道が、爆風に煽られてがらがらと音を立てて崩落した。

 『下水鱷魚(シーワーゲーター)』による変形・高速移動を行える下水道の中では、スパイクは無敵の怪物である。意識の速度で襲い来る視認不能の(あぎと)は、透明な死そのものだ。

落雷(らくらい)磊落(らいらく)

「クソがッ……全部台無しだ……不味い。本格的に不味いぞ。このままでは脱獄の全責任を負わされて消される! 逃げなければ」

 激痛を訴える外された右足。ドローンに引き摺られながら、落雷磊落は監獄を離れて逃亡をはかっている。停電で闇に落ちた路地裏。薄汚れたドブネズミが、彼の姿を見て排水溝の中へと逃げ込んだ。
 埋め込まれた『蟲』は『電気人形(エレディスコ)』を使ったナノマシンによるセルフ手術で除去済みである。養成所を出て、殺手として業績を積み、幹部にまで上り詰めた地位を手放すのは惜しいが命の方がもっと惜しい。

「落雷磊落様ですね。お久しゅうございます。蘇一家(スーイージャ)絲織(スーヂィー)……覚えていてくださってますか?」

 純白のドレスを纏った女性が、磊落の前に立ち塞がった。その側には1人のメイド。
 そして、背後には囚人服を着た十数名の男女。脱獄した蘇一家の元構成員たちだ。

 磊落は、もちろん覚えている。蘇一族の者も何人か殺した。その中には、絲織の母親も含まれている。恨まれているのは当然だ。だが、大人しく復讐されるつもりもない。

「『電気人形(エレディスコ)』ッ!!」

 自爆ドローン総攻撃。たとえ撃墜されても、電気回路さえ生きていれば念動力(キネシス)でそのまま叩き込める不可避の爆弾だ。

雅忠(ヤージョン)!」
「はい。お嬢様のお心のままに」

 メイドの両腕から雷の鞭が伸び、ドローンを叩き落とす。電撃によってドローンの電気回路はすべて焼き切られ、『電気人形(エレディスコ)』の操作対象から外れる。

(相性最悪だな……。万事窮す、か……)

 多数の対象を自在に操る『電気人形(エレディスコ)』。
 幼い頃に魔人となった者ならではの、すさまじい出力を誇る能力である。
 磊落の能力は、ロボット遊び。

 運命の歯車が少し違ったら、塔也や七歌のいる場所と、磊落のいる場所は逆だったかもしれない。磊落は、自分のいる場所で、自分にできることを精一杯やってきたはずだった。

 自分は、どうすれば良かったのだろうか。
 電撃に貫かれ消えゆく意識の中で、磊落は何度も自問した。
 最後まで、答えは出なかった。



ダンゲロスSS上海
第二回戦:監獄

『ペインフル・メモリーズ』

槌唄(つちうた)塔也(とうや):軽症、護衛完遂
浅村(あさむら)育美(いくみ):負傷なし
倉森(くらもり)七歌(ななか):重傷(治癒済み)

透明ワニ(スパイク):重傷(治癒済み)、護衛完遂
恋辻(こひつじ)メーメー:軽傷

茶山(ちゃやま)明日歩(あすほ)(キュアアースホール):軽傷、護衛完遂
斎藤(さいとう)和夫(かずお)(あやめ/キュアダイアリア):軽傷

落雷(らくらい)磊落(らいらく):死亡
メカ妊娠願望マン1号:死亡
メカ妊娠願望マンJr.:死亡

蘇絲織(スー・スーヂィー):負傷なし
雷雅忠(レイ・ヤージョン):負傷なし

布袋和尚(ほていおしょう):重傷(治癒済み)
立旗(リーチー):重傷(治癒済み)
シャカパチマン:重傷(治癒済み)
マイティドラゴン・プレデター:重傷(治癒済み)
レイズアクメマン:重傷(治癒済み)

提籃橋(ティーランチャオ)監獄:崩壊









レイズアクメマン

名前:レイズアクメマン(レイズアクメマン)
性別:男性

特殊能力:レイズアクメパワー

触れた相手を絶頂に至らせることによって、快楽を通じてそのまま蘇生あるいは全回復に至らしめる能力。

設定

デスアクメマンの双子の弟。
性的な快楽により、相手を全快状態に至らしめる、所謂「性戯の味方」。
戦闘能力が高く、通常の人間を遥かに超える速度、力、耐久力を持つ。

上海の混乱を憂う単なる不審者の一人であるがその正体は不明だ。
SSで死んだはずのキャラクターが生き返っていたり、前回登場シーンから時間がそんなに経ってないのにキャラが全回復してる時、行間でレイズアクメマンが活躍してるかもしれないぞ。

外見
頭部に生と書かれたブライトな戦隊風のコスチュームを着た屈強な成人男性。
スーツの上からでも彼が性的な魅力に溢れた魅力的な雄であることは否応なしに分からされるであろう。
監獄ではスーツを没収されているので、額に生と書いている。

動機

ダイヤへの動機

彼の信じる正義のため

護衛対象を狙う理由

彼の信じる正義のため

(『ペインフル・メモリーズ』おわり)
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