ダンゲロスSS上海
ガチャってナンボの就職だ!!!(下)
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dangerousss_shanghai
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13,真実
桜色の長いストレートの髪。シンプルな黒のピアス。桜色と黒色を基調とした魔法少女のフリフリのドレス。豊満な胸。
その姿は和夫が失くした写真にあった魔法少女の姿だった。
その姿は和夫が失くした写真にあった魔法少女の姿だった。
「姉ちゃん! 今まで何処に行ってたのさ!」
「和夫ごめんね~。なんか変な人達に捕まっちゃって。地下牢獄? 研究室? みたいな場所に監禁されちゃってさ」
「姉ちゃんよく無事だったね……」
「まあちょうど体も限界来てたから換装しようと思って。コア状態で抜け出して、清王朝のダイヤに憑りついてたらさ、こんな感じになっちゃった」
「か、体が限界? 大丈夫なのそれは?」
「大丈夫大丈夫。百年単位でダメになっちゃうんだよね。だから定期的に交換しないといけないの。その度に体が少し大きくなるから、交換、っていうか脱皮?」
「魔法少女ってそんな爬虫類みたいなものだったの……? というか、え、何、百年!?」
和夫はその言葉に聞き捨てならない情報があった。
「姉ちゃん今何歳なわけ!?」
「女の子に歳を尋ねちゃいけないんだぞ~! でも答えちゃう♡17歳女の子です♡」
「本気でお願い」
「514歳です」
「ババアじゃん!」
「必殺、ミルクダイナマイトォォ!!」
「ぐあああああああっっ!!」
ステッキから噴出された白い液体の大奔流に和夫は溺れた。
「私は、母なる海が吹き出す、二輪の花! キュアニプル!」
「倒してから名乗りを挙げるの、魔法少女共通なのヨニ……?」
女陰黄泉は首を傾げずにはいられなかった。
斎藤あやめの傍で、膝をついて首を垂れる騎士の姿があった。
クラム・ハードシェルである。
クラム・ハードシェルである。
「……貴婦人」
「え、もしかしてクラムくん!?」
「ようやく……ようやく、あなた様に拝謁叶いましたこと、身に余る光栄に存じます……」
斎藤あやめは、ぽりぽりと頬をかく。
「あー。やっちゃった? 百年ぐらい放浪してた?」
「はっ。我が務めの始まりにございます。願わくば我が忠誠、陛下の御名のもとに差し出す許しを。どうか……」
クラム・ハードシェルは恭しく自身の剣と、長年持ち続けていた小さなダイヤを差し出す。
「ごめん。私のミスだ。あなたに百年の放浪をさせた不出来な主人でよければ、喜んでその忠誠。受け取るよ」
斎藤あやめはクラム・ハードシェルに差し出された剣とダイヤを受け取った。ダイヤは斎藤あやめの体に吸収された。コアの一部だったのだ。
両肩に剣先が触れる。現代ではあまり見ない儀礼だった。
両肩に剣先が触れる。現代ではあまり見ない儀礼だった。
「これよりクラム・ハードシェル。汝を我が騎士と認めます。正義、栄誉を持って仕えよ」
「はっ。この身尽きても我が剣は陛下と共に」
「前々から言ってるけど陛下はナシで。今は尚更、もう守るべき民もいないし。これまで通り貴婦人……もナシで。あやめって呼んで」
「はっ。あやめ様」
こうしてクラム・ハードシェルは百年の空白を経て、職を得た。
「なぁ、話は終わったか? あのデカブツとデカ鷹をどうにかしたいんだが」
「デカブツとデカ鷹……?」
首を傾げる斎藤あやめに、塔也は窓の外を指す。
半透明な巨人とその周りを飛ぶ半透明な鷹の姿である。
半透明な巨人とその周りを飛ぶ半透明な鷹の姿である。
「わお。ありゃすごいね~」
「あれを止める方法を教えてくれないか?」
「うーん。あれ、魔法少女勤続百年ボーナスを使ってるみたいだね」
「なんだそりゃ」
「エーテル体換装の段階で、願いがなんでもひとつだけ叶うってアレ。もうほんっと、使い勝手最悪で。私は一回しか使ったことないんだけど。他の魔人能力と組み合わさると、あんな感じになっちゃうんだね~」
「なるほど、で、止める方法はあるのか?」
「うーんこれから考える。多分、24時から動き始めるよね。その前に」
斎藤あやめはお腹をさすった。
「そのご飯食べていい? 体作ったらエネルギー足りなくなっちゃって。もうスカスカなんだよね」
「イイィ~!」
目の前のテーブルに置かれた大量の料理をみて、斎藤あやめとアマゾンの男はよだれが止まらなかった。
「遠慮は要らないよ! たーんとお食べ!」
マーメイドうんこの母親が追加料理をテーブルにどかっと乗せた。
「おいしそう~! ……えっと、ごめん。なんでうんこが料理してるの?」
「俺にもわからん」
「料理屋の妻を舐めるんじゃないよ!」
「衛生法、大丈夫そ?」
和夫と同じツッコミをしていて、その場にいる人達は、彼女らは姉弟なのだと改めて知った。
和夫と明日歩は白い液体と共に、しばらく床で倒れていた。
14,アナルカナリ・タカの過去
アナルカナリタカは日本育ちである。
小学校の頃。うんこを漏らした。
何故漏らしたのかは覚えていない。覚えているのはその後のことだ。
小学校の頃。うんこを漏らした。
何故漏らしたのかは覚えていない。覚えているのはその後のことだ。
うんこを漏らした僕に対して、クラスのみんなは嘲笑した。
うんこを漏らした。ただそれだけなのに、恐ろしいまでに噂は学校中に広まった。
瞬く間に僕は「うんこマン」になった。
瞬く間に僕は「うんこマン」になった。
うんこならみんなしているはずだ。でも僕だけがうんこマンになった。
みんなはうんこマンだからと僕に触れることを避け、僕が触れたものを不浄なものとして扱った。
昨日までは普通の子供だった僕は、たった一日で触れてはいけないものになった。
みんなを不快にさせるものとなった。
退治されるべき悪になった。
昨日までは普通の子供だった僕は、たった一日で触れてはいけないものになった。
みんなを不快にさせるものとなった。
退治されるべき悪になった。
僕は何も変わっていない。でも変身していた。
うんこマン参上! うんこマン参上! うんこマン参上!
――――乳首ってこう触れば気持ちよくなるんですよ?
――――誰だ、俺の記憶に介入してくる奴は!
――――誰だ、俺の記憶に介入してくる奴は!
それからは自身の役割に徹した。
殴り、蹴られ、唾を吐かれ続けた。机に落書きをされ、便所で弁当を食べるとき水を掛けられ、靴の中にがびょうを入れられた。
何もされていない間は空気扱いだった。
殴り、蹴られ、唾を吐かれ続けた。机に落書きをされ、便所で弁当を食べるとき水を掛けられ、靴の中にがびょうを入れられた。
何もされていない間は空気扱いだった。
――――私を使ってガチャ引いたくせに、話しかけただけで嫌がれるの?
――――俺の記憶を汚染するな!
――――してないよ。というか、既にうんこマンじゃん。汚れてんじゃん。強情だね。ははーん。乳首弱いくせに。
――――ああっ、やめろ。乳首をいじるのはやめてくれ!
――――俺の記憶を汚染するな!
――――してないよ。というか、既にうんこマンじゃん。汚れてんじゃん。強情だね。ははーん。乳首弱いくせに。
――――ああっ、やめろ。乳首をいじるのはやめてくれ!
放課後は無事で帰ることができない。体格の大きい他の児童に襲われるからだ。
それでも僕は笑い続けた。
「ぐあああっ!」と大袈裟に言ってやられてみせた。
すると少しだけ、ほんの少しだけ殴る力が弱まるのだ。
それでも僕は笑い続けた。
「ぐあああっ!」と大袈裟に言ってやられてみせた。
すると少しだけ、ほんの少しだけ殴る力が弱まるのだ。
そんなある日。
その日も役割を演じていた。
その日も役割を演じていた。
力強い鷹がやってきた。
鷹はアナルカナリ・タカが敵わない児童を襲っていた。
悪を守る異質な存在だった。
悪を守る異質な存在だった。
――――ほれほれほれほれ。ちくちくちくちく。ちくよわ可愛い~!
――――あああああああああっっ!!!
――――あああああああああっっ!!!
遅れてやってきたヒーロー。
美しく汚れのない孤高のヒーロー。
悪を守るヒーロー。
その時から、僕はうんこをしなくなった。
アナルがかなりタカになったのだ。
美しく汚れのない孤高のヒーロー。
悪を守るヒーロー。
その時から、僕はうんこをしなくなった。
アナルがかなりタカになったのだ。
15,作戦開始
料理を片付けた後のテーブルにマーメイドうんこは大きな紙を敷いた。
紙には上海の地図が描かれている。
紙には上海の地図が描かれている。
「現在、確認されている巨人の現在位置ですわ。そしてこれが予想される進路ですわ」
マーメイドうんこは足で赤いペンをつかみ、ぐいっと進路描く。
「行き先は、魔幇本拠地ですか?」
「うーん、そうみたい」
和夫の言葉にあやめが返す。
まずは勝利条件の確認だ。
まずは勝利条件の確認だ。
「魔幇本拠地に明日歩ちゃん、和夫とかPC組が行ったら、世界が崩壊しちゃうから、もし魔幇本拠地に入られたら私達の負けね。入られる前に倒したら私達の勝ち」
「え、姉ちゃん。その世界が崩壊するっていうの、常識なんですか?」
「常識よ~。レギュレーション違反には厳しいんだから」
「七歌さんが言ってました。創造主、でしたっけ。いろいろ大変なんですね」
「そうなの~。ディスコで上位者 が何か喋ったらサンキューGKのスタンプを逃さず押さないといけないし。いろいろ大変なの」
「そんな同調圧力、別にないよ!? ゆるい環境だよ!? それに絶対ここで言って良い内容じゃないよ!」
マーメイドうんこは部屋のモニターに映像を映し出す。
戦闘機がミサイルで巨人を攻撃したときの映像だ。
戦闘機がミサイルで巨人を攻撃したときの映像だ。
「厄介なのはその防御力ですわ。巨人の皮膚にあたる部分には障壁があり、これを突破するのは困難を極めますわ」
斎藤あやめは質問する。
「あの鷹に攻撃したときの映像はある?」
「一応、ありますが……軍の攻撃を鷹はすべてかわしていますわ。非常に鋭い観察力を持っていると思われますわ」
「じゃあ、鷹が弱点かもね」
「どういうことですか?」
「わざわざ避けるなんて怪しいじゃない。それに、アナルカナリ・タカはアナルがかなり鷹になる能力なんでしょ?」
「そうか……!」
塔也は、その言葉であやめの発言を理解した。
「なるほど。あの鷹はもともとアナルなんだ。だからうんこを入れて、アナルであることを思い出させればいいのか!」
「いや塔也さん。思いついた!みたいな感じで言いますけど、意味不明ですからね」
「お~さすがは元上海で有名な解決屋。理解が早くて助かるぅ~!」
「え、姉ちゃん、本当にそれでいくの? ……じゃあ明日歩さんに」
「この作戦で明日歩ちゃんのうんこは使えないよ? あの鷹は魔法少女産だし、同じ魔法少女のうんこは相性最悪」
「うんこぶりぶり~ぶりぶりざえもん~。ぶりぶりぽ~!ぶりぶりぽ~!」
明日歩は構わず踊っていた。何してるんだろうこの魔法少女と和夫は思った。
「え、じゃあ誰のうんこを使うんですか?」
高度一万キロメートル、上空。
ちょうど飛行機が飛ぶぐらいの高度だ。
航行する剝き出しの便器。そこに座る一人の男がいた。和夫である。
ちょうど飛行機が飛ぶぐらいの高度だ。
航行する剝き出しの便器。そこに座る一人の男がいた。和夫である。
「僕のうんこを使うのかよおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおぉぉぉっ!!!!!!!」
激しい強風に身を晒しながら、下半身を丸出しにして便器に座る和夫の勇姿がそこにあった。
和夫の目の前に立つのは女陰黄泉。
現実改変の基本なんでもできる彼女の能力、律令(Rule)により作られた空飛ぶ便器。
この便器を通ったうんこは何百倍、何千倍の質量と威力に増幅され持って眼下の敵を襲う。
現実改変の基本なんでもできる彼女の能力、律令(Rule)により作られた空飛ぶ便器。
この便器を通ったうんこは何百倍、何千倍の質量と威力に増幅され持って眼下の敵を襲う。
『ごめんね~。魔法少女は相性最悪だけど、私の血縁関係にある和夫のうんこはかなり相性良いんだ。うんこの記憶を思い出させるには充分すぎるほどだよ~』
イヤホンで出力される斎藤あやめの声。
『あ、私514歳だけど、ちゃんと和夫の姉ってことになってるから、そこは安心してね~♡』
「おばあちゃんよりずっと年上なんですけどォォ!?」
『シュコォォォ……。ソレガシ、巨乳姉が実は義理の姉だったという展開がすこすこだいすき侍なのだ……』
「血は繋がってる義理の姉ェェェ!?」
『なんと素晴らしい……! さすがあやめ様。我が忠誠に一片の悔いなし』
通信先でクラム・ハードシェルは感動していた。
「……もう24時になるヨニね」
女陰黄泉は腕時計を見る。
カチ、カチ、カチ。
上海に鐘が鳴り響く。建物の屋上に取り付けられていた。
カチ、カチ、カチ。
上海に鐘が鳴り響く。建物の屋上に取り付けられていた。
「え、あんな鐘ありました?」
「私が用意したヨニ。わかりやすいヨニ」
「夜中なのに近所迷惑だなあ」
「上海の危機なのに、何を言ってるヨニ」
それもそうかと和夫は頷いた。
『目標、動きましたの!』
和夫のイヤホンにマーメイドうんこの実況が伝えられる。
和夫は身をよじって下を見る。
半透明な巨人は歩き始め、半透明な鷹はその周りを哨戒しながら追従している。
半透明な巨人は歩き始め、半透明な鷹はその周りを哨戒しながら追従している。
異様な光景が広がっていた。
巨人は右足を踏み出すと地面から草木が生える。
左足を踏み出すと砂漠と化す。
巨人は右足を踏み出すと地面から草木が生える。
左足を踏み出すと砂漠と化す。
「すごいヨニ……なんという光景ヨニか」
「でいだらぼっち。日本の神様で、生と死を司る巨人らしいです」
「アナルカナリ・タカは日本生まれとマーメイドうんこが言ってたヨニな」
『よし、こっちはいつでも準備OKだ。鷹の動きを止めるぞ!』
塔也からの通信が届く。
塔也は現在、巨人の目線と同じ程度の高い場所にいた。
能力痛みの塔で地面を盛り上げて高さを上げているのだ。
能力痛みの塔で地面を盛り上げて高さを上げているのだ。
塔也の背後にはいくつもの巨大な屋外用スピーカー。
彼はマイクを前にギターを構える。
彼はマイクを前にギターを構える。
『ミュージック、スタート……!』
下っ腹を圧する壁ドラムとギター。合わせたボイスパーカッションとリズミカルな笑い声。
いきなり始まった音の集中砲火が、鷹に集中する。
いきなり始まった音の集中砲火が、鷹に集中する。
『セックスしよう! 緊縛プレイで!♪』
「やっぱりなんて馬鹿みたいな歌い出しなんだろう」
先日結成された上海の伝説バンド『UNKO』。
そのボーカルによる全力の歌い出しは、あの暴力の権化とも言えるメカ妊娠願望マンですら動きを止めた。
ただの鷹では、この曲を前に対抗することができない。
そのボーカルによる全力の歌い出しは、あの暴力の権化とも言えるメカ妊娠願望マンですら動きを止めた。
ただの鷹では、この曲を前に対抗することができない。
「キ、キー!」
鷹は鳴く。
それでもアナルカナリ・タカによって生み出された生物だ。
諦めの悪さだけは一級品。
通常では墜落するところ、根性でその場に滞空し続けていた。
それでもアナルカナリ・タカによって生み出された生物だ。
諦めの悪さだけは一級品。
通常では墜落するところ、根性でその場に滞空し続けていた。
『和夫さん、今ですわ! 脱糞してください!』
「いや、やれって言われて出来るもんじゃないでしょ……!」
和夫は困った。
確かに料理は食したが、こればかりは、出せと言われて出せるものではないのだ。
確かに料理は食したが、こればかりは、出せと言われて出せるものではないのだ。
『この鷹、マジで抵抗すげえぞ! 動き出すのも時間の問題だ、和夫くん、早くしろ!』
「和夫くん。聞いてヨニ」
「女陰黄泉さん……?」
和夫の目の前にいるキョンシーは神妙な面持ちで和夫を見る。
和夫はあまり下半身に視線を向けないで欲しいと思った。
和夫はあまり下半身に視線を向けないで欲しいと思った。
「私の能力、律令(Rule)は私の思いつくことを言葉にすることで現実にする能力ヨニ」
「はい……」
何が言いたいのだろう。和夫はその真意を探ろうとして、自身の下半身が気になって集中できなかった。
「でも、心の底からそうだと思うほど、この力は強くなるヨニ。和夫くんは間違いなく、アナルカナリ・タカを倒せる人だと思うし、助けられる人だと思うヨニ」
「どうしてですか?」
和夫は自身のことをそこまで大きい人間だとは思っていない。
能力なんて何もない。ただの中学一年生だ。
能力なんて何もない。ただの中学一年生だ。
「だって私臭いヨニ。でも和夫くん。こんなに近くにいるのに、嫌な顔ひとつしないヨニ」
「まあ、臭いのには慣れてますから」
「そういうところヨニ。私達のような現実を改変しちゃう能力者には、持つことができない強さヨニ」
「女陰黄泉さん……」
「だから、ちゃんとうんこができるヨニ」
女陰黄泉の指が和夫の腹に触れられる。
「え、ちょっと、待ってあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
和夫は脱糞した。
和夫のうんこは何千倍もの質量となって半透明の鷹に襲い掛かった。
「キィィィーーッ!」
鷹はうんこの大奔流によって地面に叩き付けられ、埋まった。
『すごいわ和夫。これだけのうんこを一度に出した人間は世界であなたが初めてよ! うんこギネス記録更新おめでとう!』
「明日歩さん……僕はそんな不名誉な記録要りません……」
『巨人の進行が止まりましたわ!』
マーメイドうんこから通信が入る。
ほ。と和夫は一息ついた。
これで一仕事終わった。そう思った。
でもまだ終わっていなかった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
巨人が叫び出した。
「な、なんですか!」
和夫はあまりの大音量に耳を塞ぐ。
空気が震える。和夫の座っている便器まで揺れ始めた。
空気が震える。和夫の座っている便器まで揺れ始めた。
下で建物を崩す音が激しくなった。
『巨人が暴れていますわ!』
『うーん、あれなんだろう。願い事が届く前に消しちゃったから、暴れてるのかな~。なんだか拒絶反応っぽいけど。ほんっと使い勝手最悪なんだよね。百年勤続ボーナスって』
あやめは頭をひねっても答えが出ない。
巨人が大きく腕を広げた。
――――私が両手をひろげても、
――――お空はちっとも飛べないが、
――――お空はちっとも飛べないが、
『きょ、巨人は羽ばたこうとしていますわ!』
巨人は子供の絵のような出来の悪い手を振り回す。周辺の建物はいとも簡単に吹き飛ばされた。
――――飛べる小鳥は私のように、
――――地面(じべた)を速くは走れない。
――――地面(じべた)を速くは走れない。
巨人が走り出した。
一歩一歩進むたびに地面は大きく揺れて、建物は崩壊。
大地から木々が育まれ、次には砂漠となり死んだ。
方向は魔幇本拠地ではない。女陰黄泉が作った鐘の方向だ。
一歩一歩進むたびに地面は大きく揺れて、建物は崩壊。
大地から木々が育まれ、次には砂漠となり死んだ。
方向は魔幇本拠地ではない。女陰黄泉が作った鐘の方向だ。
「引き寄せられているのか……?」
――――私がからだをゆすっても、
――――きれいな音は出ないけど、
――――きれいな音は出ないけど、
巨人は体を動かした。
まるで意味のない行動だった。
破壊することを目的としたわけではなく、攻撃することを目的としたわけでもない。
踊っているような。そんな動きだった。
まるで意味のない行動だった。
破壊することを目的としたわけではなく、攻撃することを目的としたわけでもない。
踊っているような。そんな動きだった。
――――あの鳴る鈴は私のように、
――――たくさんな唄は知らないよ。
――――たくさんな唄は知らないよ。
地面が揺れ、鐘も揺れる。
カンカンと音が鳴り響く。
カンカンと音が鳴り響く。
――――鈴と、小鳥と、それから私、
――――みんなちがって、みんないい。
――――みんなちがって、みんないい。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオ」
巨人は獣のように叫んでいた。
何故叫んでいるのか。誰のために叫んでいるのか。
わからなかった。でも、妙に胸が締め付けられる叫びだった。
何故叫んでいるのか。誰のために叫んでいるのか。
わからなかった。でも、妙に胸が締め付けられる叫びだった。
――――だから、傷つかないで欲しい。
「女陰黄泉さん。この浮かぶ便器って、一応、巨人に追従してますよね」
「そうヨニ。もうすぐで眼下は巨人の真上ヨニ」
「ありがとうございます。僕が成功すること、祈っておいてください」
和夫は飛び降りた。
「ヨニィ!?」
16,降下
和夫は落ちている間、尻ぐらい拭いておけばよかったと頭が過る。
あと、ズボンぐらい履いておけばよかったと心から思った。下半身丸出しで何故飛び降りたのだろう。
あと、ズボンぐらい履いておけばよかったと心から思った。下半身丸出しで何故飛び降りたのだろう。
「明日歩さん、クラムさん。塔也さん、巨人に飛び乗ります。カバーお願いします!」
『尻ぬぐいは私にさせるっていうの?』
「そうです明日歩さん。うんこ属性のあなたに尻ぬぐいをさせるんです」
『シュコォォォ……。ソレガシ、巨乳姉の背に乗ることが夢だった侍』
「侍さんは暴れる巨人をどうにか止めてください!」
『位置が良くねえ。滑り台を作る。キュアアースホールに捕まって、滑って、再び跳べ!』
「塔也さん、ありがとうございます!」
視界の端では明日歩が塔也の能力により、1平方センチメートルの床が盛り上がり、カタパルトのように跳んだ。
明日歩は落下しながら、やがて和夫のすぐそばまで近づいてくる。
「ここで一句。空を飛び、脱糞だいすき、うんこかな」
「下手すぎる」
「初心者は愛すべき雛鳥よ」
和夫のイヤホンにあやめの声が入る。
何処か責めるような口調だった。
何処か責めるような口調だった。
『和夫、どうするつもり?』
「なんとかして、アナルカナリ・タカを引っ張り出す! 巨人の中に入る方法とかないの、姉ちゃん!」
『それ飛び降りてから聞くかな普通? ……まぁ、なくはないけど』
「早く教えて!」
『いや、あるけど。戻って来られないかもしれないんだよ? もうアレは私の体から離れちゃったから私がなんとかできるわけじゃないし』
「絶対に戻ってくるから、安心して!」
少しの沈黙。
『……かーっ。和夫、成長しすぎ。お姉ちゃんができることないじゃん。乳首を噛めば中に入れるから、あの暴れる巨人を抑えて、なんとか乳首噛んで』
「変な入り方だなあ」
『乳首属性の魔法少女なんだから、今更でしょ』
「ありがとう。絶対に戻ってくるから!」
『はぁ。待ってるよ。もう……』
音声は切り替わり、和夫のイヤホンにマーメイドうんこの声が入る。
『和夫様……。タカさんは、飢えもしませんし、排泄もしません。ですが身体的には、一応食べることはできたようですの』
「それが、どうかしましたか?」
『それでも、タカさんは頑なに物を食べませんでしたの。水しか飲まなかったですのよ。理由を聞くと、かわいそうだから。傷ついてほしくないから。と……』
なんとなく。彼のことが、少しわかった気がする。
試験会場でも、脱落した人の心のケアのため『おっかあ』という能力者を使っていたらしい。
アナルカナリ・タカが指示したことなのだろう。
試験会場でも、脱落した人の心のケアのため『おっかあ』という能力者を使っていたらしい。
アナルカナリ・タカが指示したことなのだろう。
『本当に優しい方なのですわ。だから……よろしくお願い致します』
「任せてください」
『滑り台着地、準備お願いしますわ!』
マーメイドうんこの号令により、明日歩が和夫を抱える。
眼下では、塔也の能力による滑り台が出来上がっていた。
眼下では、塔也の能力による滑り台が出来上がっていた。
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
滑り台を明日歩がうんこで滑りやすくする。これで摩擦の問題も軽減された。
『着地の衝撃に備えてくださいですわ。3、2、1』
和夫は明日歩の腕の中で身構えた。
『0、0、0、ゼロ~! ですわ!』
「だからそれタイミング分かりづらいってェェ!」
明日歩が滑り台に接地。うんこだらけの滑り台をズルズルと滑った。
減速している感覚はしない。落下の速度がそのまま横方向にベクトルを変え、斜め上に跳んだ。
減速している感覚はしない。落下の速度がそのまま横方向にベクトルを変え、斜め上に跳んだ。
和夫達は着地地点に目を向ける。
巨人の背が見えた。
クラム・ハードシェルが巨人を引き付けているが、圧倒的な質量差を前に苦戦していた。
巨人の背が見えた。
クラム・ハードシェルが巨人を引き付けているが、圧倒的な質量差を前に苦戦していた。
『ぬぅ……!』
クラム・ハードシェルの剣技は一流だ。迫りくる巨大な拳を剣で見事に受け流している。およそ人間技とは思えない。
それでも防戦を強要されている。剣は巨人の皮膚に傷一つ付かないのだ。
最も厄介なのは風圧だ。
クラム・ハードシェルは軽い。
百年間無職をしていた中身のない男である。
巨乳と姉であれば誰にでも目移りしてしまう男なのである。
それでも防戦を強要されている。剣は巨人の皮膚に傷一つ付かないのだ。
最も厄介なのは風圧だ。
クラム・ハードシェルは軽い。
百年間無職をしていた中身のない男である。
巨乳と姉であれば誰にでも目移りしてしまう男なのである。
それに巨人も気づいたのか、両腕を大きく広げた。
猫だましの予兆。両手を合わせて強風を作り出そうとしていた。
猫だましの予兆。両手を合わせて強風を作り出そうとしていた。
『チャンスだ! クラム、合わせろよ!』
『シュコォォォ……!』
塔也とクラムと息を合わせる。
巨人の両手が合わさる。バン!と鈍い音が辺りに響く。
クラムはそこで起こる強風に耐えることができない。
だからその風に身を任せた。直前、真上に跳ぶ。吹き飛ばされ、巨人の上空へ。
クラムはそこで起こる強風に耐えることができない。
だからその風に身を任せた。直前、真上に跳ぶ。吹き飛ばされ、巨人の上空へ。
『痛みの塔……!』
塔也は巨人の両手を挟み込むようにブロックを形成する。
これで巨人は両腕を開くことができない。しかしまだ拘束は、完璧ではない。
これで巨人は両腕を開くことができない。しかしまだ拘束は、完璧ではない。
『クラム・ハードシェル、重くなっちゃえヨニ!』
クラム・ハードシェルの更に上。空飛ぶ便器の傍で立っている女陰黄泉が、律令(Rule)でクラム・ハードシェルの鎧と剣に質量を付与する。
『ぬおおおっ!』
巨人の両手に、質量を持ったクラム・ハードシェルが剣を叩き付ける。
建物内に巨人の両手がめり込んだ。
相変わらず傷は入らない。しかし少しの間、拘束するには充分だった。
建物内に巨人の両手がめり込んだ。
相変わらず傷は入らない。しかし少しの間、拘束するには充分だった。
「ありがとうございます!」
明日歩と和夫が巨人の背中に飛びつく。
胸の方に回るのは少し難儀したが、巨人の両手が塞がっているので怪我することなく移動できた。
和夫と明日歩は胸にしがみつく。
胸は二つ。中に入れる人間も二人だ。
胸は二つ。中に入れる人間も二人だ。
「じゃあ、行きますよ明日歩さん」
「ええ。3、2、1」
「それはもういいですって」
「ゼロ~!」
今度は一回目のゼロだった。
「わかりにくいんだってば~!」
遅れて和夫も巨人の中に入った。
17,次は全力で
和夫が目を覚ましたのは、真っ白な空間だった。
誰もいない。
和夫だけがポツりと立っている。
誰もいない。
和夫だけがポツりと立っている。
「え……」
足を踏み出すと墨汁がこぼれたかのように、そこだけ真っ黒になった。
墨汁は広がっていく。和紙に染みたような、広がり方だった。
墨汁は広がっていく。和紙に染みたような、広がり方だった。
もう一歩踏み出した。
墨汁はどんどん広がっていき、やがて線となり、世界に輪郭を形作っていく。
墨汁はどんどん広がっていき、やがて線となり、世界に輪郭を形作っていく。
和夫は歩き出す。
白黒だけの世界は、歩を進めるごとにやがて色づいてきた。
白黒だけの世界は、歩を進めるごとにやがて色づいてきた。
そこは公園だった。
子供達が遊んでいる。
子供達が遊んでいる。
その隅っこ。
ヒーローごっこをやっている子供達がいた。
ヒーローごっこをやっている子供達がいた。
「ぐあああっ。やられたー!」
一人の男の子が、やられ役をやっている。
体格の大きい子供三人がヒーロー役をやっていた。
和夫には、いじめているように見えた。
体格の大きい子供三人がヒーロー役をやっていた。
和夫には、いじめているように見えた。
「まだやられてないぞこいつ」
「とどめだ、とどめだ」
「おれたちにかなうとおもうなよ」
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
明日歩も三人組と一緒に、やられ役の男の子をいじめていた。
「何してんのォォ!! 明日歩さぁぁん!!」
「ここで一句。ラスボスか、アナルはかなり、クソになる」
「下手すぎる!」
和夫と明日歩がそんな会話をしていると和夫の隣に一人の男が現れた。
アナルカナリ・タカだ。
アナルカナリ・タカだ。
「君たちは……」
「あ、どうも。こんにちは」
「……斉藤和夫。何故下半身丸出しなのか?」
和夫は自分の服装をみる。そういえばズボンは上空の空飛ぶ便器へ置き去りにしていた。
「そういうタカさんだって、裸じゃないですか」
アナルカナリ・タカの乳首は赤くなっていた。
「ここは私の場所だ」
「郷に入っては郷に従え、ですか? わかりましたよ」
和夫は上の服を脱いだ。
「裸の付き合いとしゃれこみましょう」
「……好きにしろ」
アナルカナリ・タカは子供を見ていた。
和夫はなんとなくこのいじめられている子供が、彼の昔の姿なのだと思った。
過去の自分をタカは見ているのだ。
和夫はなんとなくこのいじめられている子供が、彼の昔の姿なのだと思った。
過去の自分をタカは見ているのだ。
「人には役割がある。本人の気持ちがどうであれ、役割を演じなければならない。社会がそう決めたからだ」
「……あのとき、苦しかったですか?」
和夫は、子供を指した。
ここではお互い、取り繕ったりすることはない。
ここではお互い、取り繕ったりすることはない。
「まあ、それなりにな」
いじめられていた子供。
そのズボンの中から、鷹が出てきた。
鷹は三人組の子供を襲い始める。子供を守っていた。
そのズボンの中から、鷹が出てきた。
鷹は三人組の子供を襲い始める。子供を守っていた。
「このとき魔人覚醒したんですね」
「昨日のことのように思い出せる」
「キー!」
「うわあああっ!」
明日歩も鷹に襲われていた。
「なんで明日歩さんが襲われているんですかね」
「知らん」
場面が切り替わる。
景色が丸ごとすべて変わった。
ごみ処理施設だ。
景色が丸ごとすべて変わった。
ごみ処理施設だ。
「役割で決められているにも関わらず、近くにあってほしくないものがある。これはその典型例だ」
「そうですね。七歌さんも言ってました。家の近くにごみ処理施設が立つの、嫌だって」
「……受益者は自分自身だというのにな」
施設の近くで明日歩は苦い顔をしていた。
「うげぇ~! なんて臭いなのかしら!」
「明日歩さんも臭いですよー!」
「女の子に臭いって言うんじゃありません!」
「うんこの魔法少女やっておいて、そりゃ無理がありますよ?」
場面が切り替わる。
再び景色が丸ごと変わる。
今度は軍事施設だ。
再び景色が丸ごと変わる。
今度は軍事施設だ。
「ここは……?」
「沖縄の軍事施設だ。これがなければお前の住む日本など、既に侵略されている」
「そうなんだ……凄くうるさいですね。音が」
ヘリコプターや戦闘機。航空するものは特に音が激しい。
「ウマーッ! ウマーッ!」
「あ、こんなところに馬が」
「必殺、プープダイナマイトォォ!!」
「ウマアアアアアアーーーッ!!」
馬は明日歩により、うんこに埋もれてしまった。
「ふぅ。これでボスNPCは倒したわ」
「あの女は何を言っているのだ?」
「うるさいですよね。わかります」
場面が切り替わる。
景色が変わる。
今度は葬儀屋だ。
景色が変わる。
今度は葬儀屋だ。
「精神的に近くにあって欲しくないものもある」
「確かにちょっと怖いですね」
「ここもまた、人である限り世話になる場所だがな」
遺影が飾ってある。
馬が写っていた。
明日歩が坊主になって両手を合わせている。
馬が写っていた。
明日歩が坊主になって両手を合わせている。
「南無南無南無……」
「馬を殺したの明日歩さんでは?」
「はて?」
「記憶飛ぶ芸、これから常用していく感じですか?」
場面が切り替わる。
公園に戻ってきた。
公園に戻ってきた。
アナルカナリ・タカはブランコに乗っている。
和夫は彼の正面、柵に座っている。
和夫は彼の正面、柵に座っている。
「人は知らず知らずのうちに、恩恵を被っている」
「なんで気づかないんですかね?」
「想像力が不足しているからだ……まあ、俺も言えたことではないが」
「で、迷惑だけど必要なものをどうして排除しようとしたんですか」
「最初から生まれなければ、対立も生まれず、悲劇も生まない」
「だから失くしちゃえ?」
「そうだ」
社会に必要なもの。だが迷惑なものを失くしてしまえば、確かに助かるのだろうか。
公園を見ると、明日歩が子供達を追いかけ回していた。
「誰がうんこババアですってー!」
「じじつだろばーか!」
「必殺、目潰しの術!」
明日歩は服を脱いだ。全裸になったのだ。
見せられないよ!小僧が明日歩の体を隠す。
見せられないよ!小僧が明日歩の体を隠す。
「め、めがー! Rしていをつかうのはズルだぞ!」
「これが大人の力だ! ふはははは」
「大人気なさすぎでしょォォ!?」
目を潰された子供は明日歩に追いつかれて捕まった。
公園の外側で母親と子供がいる。子供が明日歩を指を指す。
「ママーあれなに?」
「私はあなたのママじゃないわ。何度言えばわかるの……。いえ、ごめんなさい。あなたは私をママと認めてくれるのね。……決めたわ。ママになる! 亡くなったあいつの代わりに私がママになるわ!」
「なんで複雑な家庭がこの場所で再現されてるのォ!?」
「知らん……あれも役割、か」
アナルカナリ・タカはため息をついた。
「……人は、人を、他のものも傷つけるべきじゃない」
「それは、自分が傷ついたからですか?」
「そうだ。あれは……苦しい。言葉ではとても表現することができない」
「無理がありませんか?」
「ふん」
「知らず知らずのうちに恩恵を受けているのと同じで、知らず知らずのうちに傷つけているんだと思います。それって、生きていればどうしようもない部分でしょ?」
「中学生のくせに、大人びたことを言う。そのどうしようもない部分を改変できるところだったのだ。まぁ……俺の夢は破れたがな」
「楽しかったですか?」
「は?」
「夢に挑戦してるときですよ。楽しかったですか?」
タカは自分の人生を振り返る。
どうだっただろうか。ここまでの道のりは。
どうだっただろうか。ここまでの道のりは。
「……いや、あまり楽しくはなかったな。無駄だった」
「じゃあ、次は全力でやりませんか?」
「……俺が全力じゃなかったとでも?」
「そうですよ。他人を傷つけずに全力を出すなんて不可能だと思いませんか? 萎縮して終わりです。他人に迷惑をかけるなーなんて糞くらえです」
「私うんこは食べないわ!」
「明日歩さん、便当用意してましたよね? いっぽちゃんに食べさせてましたよね?」
和夫は柵から立ち上がり、ブランコに座っているタカに手を差し出した。
「次は僕も手を貸します。あと、友達になってください」
「俺の夢を止めたくせに、次は力を貸すだと? 何を言っている。俺は、もう操られるのはごめんだ」
「ははは。確かにそうですね。ごめんなさい。でも僕はタカさんを必要だと言っているんです。想像力だって、二人なら二倍です」
和夫はタカの手を強引に取った。
「なっ……」
タカは和夫に手を引かれていく。
タカはこのとき、自身に湧き上がる気持ちがわからなかった。
何故だ。
今、俺は嬉しいのか。
役割を与えられたからか?
必要だと言ってくれたからか?
違う。そうじゃない。
何故だ。
今、俺は嬉しいのか。
役割を与えられたからか?
必要だと言ってくれたからか?
違う。そうじゃない。
初めて、友達になってくれと言われたからだ。
「キーッ!」
鷹が鳴く。
あの日から、時間が止まっていた。
ヒーローは遅れてやってくる。
遅れてやってきたら、死ぬだけだと思っていた。特に、この上海では。
遅れてやってきたら、死ぬだけだと思っていた。特に、この上海では。
まったく、遅すぎる。
ヒーローは本当に、遅くやってくるのだ。
ヒーローは本当に、遅くやってくるのだ。
18,朝日
上海。
魔幇本拠地前。
魔幇本拠地前。
「あと何メートルだ!?」
塔也が掠れた声で通信先に問う。
巨人が迫っていた。
一行はその歩みを止めようとしていた。
一行はその歩みを止めようとしていた。
『魔幇本拠地まであと10メートルですの!』
マーメイドうんこの声が全作戦員に伝えられる。状況は緊迫していた。
「早くしろ、和夫……! こっちはギリギリだぞ!」
塔也は能力で幾重にも壁を作り、巨人の進路を妨げていた。しかし作る度に壊されている。
巨人の目の前にあるのは最後の壁だ。これが破られてたら、魔幇本拠地にたどり着いてしまう。
巨人の目の前にあるのは最後の壁だ。これが破られてたら、魔幇本拠地にたどり着いてしまう。
巨人が歩いてきた道は、落とし穴や地雷。
火薬類、投擲物などの破片、ミルクが散らばっている。
素人でも凄惨な戦い様が想像できる。
火薬類、投擲物などの破片、ミルクが散らばっている。
素人でも凄惨な戦い様が想像できる。
『巨人の中に和夫と明日歩ちゃんがいる、あの状態で魔幇本拠地に入ればレギュレーション違反になって世界が崩壊する!』
「わかってるよ!」
あやめの言葉に塔也は掠れた声で叫ぶ。
塔也はもう能力を何度も使っている。動きを止める歌ももう発揮できない。
塔也はもう能力を何度も使っている。動きを止める歌ももう発揮できない。
『大丈夫、その壁は絶対に破れないヨニ!』
「ああ、そうかい!」
女陰黄泉の能力律令(Rule)は反論をしてしまえば、効力を失う。
だから反論しなかったのだが、女陰黄泉の能力はもう何度も破られている。
だから反論しなかったのだが、女陰黄泉の能力はもう何度も破られている。
巨人が右足を引き上げ、構える。
蹴りの予兆だ。
蹴りの予兆だ。
「クラム!」
『ぬぅ……!』
巨人の足元でクラム・ハードシェルは剣を構える。
巨人の右足がトップスピードを迎える前に突っ込んだ。
巨人の右足がトップスピードを迎える前に突っ込んだ。
「クラム・ハードシェルの剣、重くなっちゃえ!」
クラム・ハードシェルが剣を振る瞬間、女陰黄泉の能力によって剣は質量を持つ。
ガン!と甲高い音が響く。
ぶつかり合った瞬間から、クラム・ハードシェルの鎧の中に草木が生え始める。
ガン!と甲高い音が響く。
ぶつかり合った瞬間から、クラム・ハードシェルの鎧の中に草木が生え始める。
『はあっ!』
クラム・ハードシェルが剣を振りぬく。
巨人の足は蹴りの方向を変えて、壁の中心部を外す。
それでも威力が大きい。被害は甚大になっていた。
クラム・ハードシェルも鎧の中にある草木が絡まり、身動きが取りづらい状況となる。
巨人の足は蹴りの方向を変えて、壁の中心部を外す。
それでも威力が大きい。被害は甚大になっていた。
クラム・ハードシェルも鎧の中にある草木が絡まり、身動きが取りづらい状況となる。
「もう次は耐えられねえぞ……!」
巨人は無慈悲に蹴りの予兆を見せる。
「もうだめか……!」
今度は左足。
左足に触れた地面は砂漠と化す。それは壁を簡単に破壊する威力を持つ。
それが今、振りかぶろうとして――――。
左足に触れた地面は砂漠と化す。それは壁を簡単に破壊する威力を持つ。
それが今、振りかぶろうとして――――。
止まった。
『きょ、巨人の動きが止まりましたわ……』
巨人の体が解体されていく。
光の粒となって、顔から徐々に消えていった。
光の粒となって、顔から徐々に消えていった。
「和夫……やったんだな……!」
朝日が昇り、夜が明け始めた。
光の粒は日光に反射して、塔也、黄泉、クラムに雪のように降った。
光の粒は日光に反射して、塔也、黄泉、クラムに雪のように降った。
そして。
巨人の消えた跡地より、大きく外れた場所。
馬がいた。
巨人の消えた跡地より、大きく外れた場所。
馬がいた。
「ウマーッ!(あぶない、アースホールに殺されるところだった)」
馬はブルルと息を吐く。
「ウマー、ウマー(あやめのエーテル体を操作する技術を、おしりかじり虫の頭に魔法で流し込んでやったのに、あと少しのところで失敗しやがった)」
馬は地面に生えた雑草を食べる。
「ウマ、ウマ、ウマ!(タカ男が使えるかと思ったが、やっぱり大人になってもガキのままな奴はダメだな。なーにが傷つけたくないだ。この社会は弱肉強食。それがわかってないからイマドキの草食男はダメなんだよなァー! ああ、あいつは無食なんだっけ。無食男も、無職男もやっぱりダメねー! 私は草食だけど)」
「シュコォォォ……。ソレガシ、巨乳姉の手ブラは好みだが、自身が手ぶらで帰ることを良しとしていない」
「ウ、ウマ……!?(い、いつの間に!?)」
いつの間にか背後に現れた鎧の騎士。
中から雑草が生えていて、動きにくそうにしている。
それでも、馬に気取られないほどの速さ。
中から雑草が生えていて、動きにくそうにしている。
それでも、馬に気取られないほどの速さ。
「胸囲のない雌を生かす理由はない……」
「ウ、ウマアアアアアア! ウマアアアアアア!!(い、嫌だああああ、痛いのは嫌だああああああ!!)」
19,エピローグ
「さぁ、お祝いよ! たーんとお食べ!」
一行は作戦会議を行った場所に戻って、マーメイドうんこの母親の料理をご馳走になっていた。
ありとあらゆる中華料理、日本の料理まで大きなテーブルに並んでいた。
席には和夫、明日歩、あやめ、塔也、クラム、黄泉、マーメイドうんこ、アマゾンの男、アナルカナリ・タカがいる。
ありとあらゆる中華料理、日本の料理まで大きなテーブルに並んでいた。
席には和夫、明日歩、あやめ、塔也、クラム、黄泉、マーメイドうんこ、アマゾンの男、アナルカナリ・タカがいる。
「もぐもぐ、いや本当においしいなあ。この馬刺しも最高です! 最初は姉ちゃんを探しに来ただけだったけど、上海に来てよかったなあ」
和夫は料理をこれでもかと頬張る。
魔幇は結局倒産した。
魔幇本拠地にいるダイヤ所持者が暴れた結果、魔幇は壊滅的被害を受けて維持できなくなったらしい。
魔幇本拠地にいるダイヤ所持者が暴れた結果、魔幇は壊滅的被害を受けて維持できなくなったらしい。
「本当にそうね。私は拉致監禁されたけど、上海に来てよかったあ~」
「姉ちゃんが勤続百年ボーナスのエーテル体を処分しておけば、今回のようなことにはならなかったのでは?」
「ええ~。私のせい? あれ使える人がいるとは思わなかったんだも~ん。しょうがないじゃん。それに監禁されてたんだよ私」
「確かにそうか。ごめんね姉ちゃん」
「いいのよ和夫、戻ってきてくれたんだから~!」
あやめは和夫に抱きついて頬ずりする。
和夫はされるがままになっていた。何処か照れくさい様子。
和夫はされるがままになっていた。何処か照れくさい様子。
あやめは魔法少女の変身を解いている。和夫はいつもの顔がようやく見れて、安心していた。
「シュコォォォ……。ソレガシ、巨乳姉が弟に抱きつく展開がすこすこだいすき侍なのだ……」
「イィー!」
クラム・ハードシェルは和夫達を見て興奮していた。
彼はこのまま和夫とあやめと共に日本へ向かうようだ。
彼はこのまま和夫とあやめと共に日本へ向かうようだ。
アマゾンの男は、まあ何処か勝手に生きていくだろう。
「今回はカレーもあるよ、たーんとお食べ!」
マーメイドうんこの母親がカレーを出す。
マーメイドうんこは大いに喜んだ。
マーメイドうんこは大いに喜んだ。
「わぁ。お母さんのカレー、私大好物なのですわ。いただきますわ!」
「あれうんこですよね……?」
和夫はあやめに小声で聞く。
あやめは小さく首を振った。
あやめは小さく首を振った。
「なんでうんこがうんこを食べてるんですか。倫理的に大丈夫なんですか?」
和夫は自分のセリフが違和感だらけなことに気づく。
うんこが物を食べるのすら意味不明なのに、うんこがうんこを食べることに倫理を問うのは、更に意味が分からない。
うんこが物を食べるのすら意味不明なのに、うんこがうんこを食べることに倫理を問うのは、更に意味が分からない。
「この世の中には、一般人が踏み込んではいけない領域があるのよ和夫」
「気を付けます……」
明日歩は和夫の隣でソシャゲをやっていた。
「もぐもぐ……うおおおおおお! RとSRキャラだけで三桁行ってやるうぅぅ!!」
『うんデレ』の限定ガチャで200連回すも、SSRが一つも出なかったらしい。
今はご飯を食べながら必死にランキングを走っていた。
魔幇の幹部になるとの宣言は、一体どこへ行ってしまったのか。
今はご飯を食べながら必死にランキングを走っていた。
魔幇の幹部になるとの宣言は、一体どこへ行ってしまったのか。
その隣で女陰黄泉は同じくソシャゲを周回していた。
「申し訳ございませんヨニ! シリアルコード、律令(Rule)を入力するだけで今なら『うんデレ』50000連ガチャが無料ですなんですヨニ!」
「チートよ!」
「始めたばかりなのに、もうランキング一桁に到達したヨニ」
「ずるいわ、チートよ!」
女陰黄泉は上海に残り続けるようだ。彼女なら、どんなことだって出来ると和夫は思う。
「もぐもぐ……ここで食ったらまた七歌に言われちまうな。でもまぁ、今日ぐらいはいいだろ!」
塔也は食事にありついていた。
この後、何処で食べてきたのかと彼の妻、七歌に小一時間問い詰められたらしい。
この後、何処で食べてきたのかと彼の妻、七歌に小一時間問い詰められたらしい。
「うむ……」
アナルカナリ・タカは小籠包を前に食べることを迷っていた。
和夫とマーメイドうんこはそれを静かに見守る。
和夫とマーメイドうんこはそれを静かに見守る。
やがて、一口で一気に口に入れた。
「熱っ!!」
~こ完~