3-4.4 設定「青銅の盾」
「錬金術とは、黄金を作り出す術ではない。全ての金属は、本質的にはみな黄金なのである。黄金が霊的に病み、不完全になったものが、我々が卑金属と呼ぶものの正体なのである。
この病を癒し、完全な金属を作り出すことを通じて、万物……人間や、さらには世界そのものの病をも癒し、全きものにする術を見つけることこそ、錬金術の目的なのである」
(ある錬金術師の書簡)
「……それゆえ、我々が成そうとしているのは変革ではない。鉛を『癒して』黄金にする如く、人間を癒すことで、より完全な人間、真の人間になろうとするものなのだ」
(若木結社幹部)
「『黄金の鑿』という昔話があります。妖精から元の自分の青銅のノミを取り返した石工は、賢明だったのかもしれません。黄金のノミなど、もはやノミとしては使い物にならないのですから。……黄金の鑿が、『癒された』鑿なのでしょうか?」
(青銅の魔女)
「青銅の魔女」セフィローテは、かつては聖女と呼ばれ、癒しの力によって第三教区の民衆の崇敬を集めた人物である。
だが、彼女はやがて数百人の武装集団を率い、教会や貴族の屋敷を襲撃。
最終的には、法王庁に派遣された異端審問官に倒されたとされる。
その後、法王庁は、彼女の聖人認定に誤りがあったとし、彼女を、聖人を騙った罪で破門。
聖人認定の制度を厳しく見直すとともに、彼女の聖人認定に関わった司祭までが重い処分を下した。
しかしながら、彼女に癒された人々が存在するのも事実であり、民衆の間では、「セフィローテ様にもいろいろ事情があったのだろう」「金持ちから金を取って貧民に分け与えるつもりだったのだ」といった、同情的な風潮が根強い。
伝説では、死んだセフィローテの体は(癒しの力によって)傷一つなく、死んだ後も温かいままだったという。
こういった素朴な信仰とは別に、今なおひそかに彼女を崇拝し続けている集団もいる。
彼らの考えによれば、セフィローテは、一部の貴族・教会の間で、全ての人間を怪物に作り変えようとする悪魔の企みが進行しているのを察知し、それを阻止するために一連の事件を引き起こしたのだという。
そして、彼らは、敵(若木結社、と呼ばれる)の当面の計画を打ち砕くことには成功したものの、敵を全て滅ぼす前に、無理解な法王庁の介入によって力尽きてしまったのだ、とされる。
それゆえ、敵の計画はいまだ進行中であり、自分たち(「青銅の盾」を名乗る)は、それを見つけ、打ち滅ぼさねばならない、と主張する。
彼らは錬金術師を敵視しており、襲撃事件をたびたび起こし、法王庁からも追われている。
セフィローテは、「青銅の盾」メンバーの体を通じ、いつか再臨するのだという。
これは異端思想だが、彼らの中には、セフィローテと同様の(ただしはるかに弱く、使うと本人も激しく消耗する)力を具えた者がまれにおり、「セフィローテの弟子」として、民衆の支持を集めるのに一役買っている。
一方で、癒しの力ではない奇怪な力を用いる者がいるとか、メンバーが突然おぞましい怪物に変じて暴れだしたとかいう噂もあるが、彼らを異端とする教会が流した流言である可能性もある。
そういった噂の中で特に悪質なのは、彼らが人肉嗜食をする、というもので、「異端」関係のデマとしては珍しくないものである。
もっとも、「青銅の盾」の入団儀礼で、「何か」の生肉を食べることになっているのは事実らしいのだが、それが何なのか、明らかではない。
解説:
「始祖は間違ってなかったんだけど」というパターンで。
でも、彼らの場合、いつか「始祖」が再臨する可能性を秘めています。
彼らが食べているのは、セフィローテ・・・だったもの、の一部です。
ソレ系のネタを出すと実はやばいのかもしれませんが、でも、基督教だって、聖餐のワインとパンはただの食い物ではなくて、「基督の血と肉」という意味が・・・だめですか?
今も完全な姿をとどめているセフィローテの肉体は、傷ついてもすぐに元通り。何人に分け与えても減ることはありません。
「青銅の盾」は、その肉が、体質的に近い人間の体の中でなら、同化して成長を続け、いつか元の人間とセフィローテ本人とが入れ替わるのではないか、と期待していますが……。
……しかし、なにゆえ神は、今なおかの聖女に癒しの力を与え続けているのでしょうか?