1-1・小話「選ばれた者」
例示:
アーキタイプ:復讐の銃手
間違いは無い。
そう、僕は正しい。
今までの行動が間違っているとするならば、僕の全てが間違いになるから。
だから、僕は正しい。
それは手元のそれもそう言っているから。
だから、僕は正しい。
最初にそれと出会ったのは、3年前の雪の降る夜だった。
帰る場所を法王庁に奪われ、当てもなく彷徨っていた時、僕は声を聞いた気がした。
体を突き刺すような寒さから逃れる為の幻聴かもしれなかったが、とにかく穴があった。
白い吹雪のカーテンが一瞬だけ開けて、洞窟に開いた穴が見えた。
その後の事をはっきりとは覚えていない。
だけど暖かかった事を覚えている。
・・・いや、暖かかったどころじゃない。
熱かった。
体中が活性化するというのか、とにかく力が沸いていた。
そして、あの声を聞いた。
『私と同調出来る素質ある者よ。君は選ばれたのだ』
最初は幻聴だと思った。
次に事実だと知り、怖くなった。
だけどまるで心を読んだかのように、それは言った。
『全てを失った君が何を恐れる事があるというのです?』
どくん。
自分の鼓動が大きく聞こえた。
つい少し前の記憶が甦った。
焼かれた村を
焼かれた友達を
焼かれた家族を
焼かれた思い出を
「あっ・・ああっ・・・・」
嗚咽と悲鳴を混じり合わせた声が勝手に漏れた。
なぜ?
どうして、僕たちの村が?
声はまた響いた。
『全ては濡れ衣だったのだよ。法王庁の勝手な理由だ』
「ああっ・・あああああっ・・・。」
呼吸がうまく出来ない。
悲しみよりも憎しみが心を塗りつぶしていった。
『選ばれた者よ。復讐するのだ。君の大切なものを奪った奴らに正当な裁きを与えるのだ』
「けっ・・・けど・・・法王庁は・・・救い・・で・・・」
信じていた。
法王庁は救いであると。
『法王庁は救いなどではない。もしそうだとすれば、君の村は救われない邪悪な存在になる。そうなのか?』
「違う!!」
僕たちは邪悪な存在なんかじゃない。
殺されなくちゃならないほど悪い事なんてしちゃいない。
『そうだろう、そうだろうとも。ならば真に邪悪な存在は何だ?』
「・・・ほぅ・・・・ぅ。」
『君たちの幸せを奪った、裁かれるべきものは一体何だ?』
「ほう・・おうちょう」
『真に神に選ばれし君が裁くべき存在は何だ?』
「法王庁」
頭の中に霞がかっているみたいだった。
それの言っている事は正しくて、なのに僕は苦しかった。
見えるはずのないそれの笑みが見えた気がした。
『さぁ、裁きをくだそう。選ばれたものよ』
驚くほど簡単だった。
引き金を引くのも、人を殺すのも。
何の苦労もいらない。
なぜなら、僕は正しいから。
邪悪なものは裁かれなければならないから。
正しくないものは全て裁こう。
僕は「選ばれたもの」なんだから。
およそ3年がたった
手元の‘それ’は今日も頭に語りかける。
『さぁ、裁きを下そう。邪悪な存在は目の前に居ますよ!』
間違いは無い。
そう、僕は正しい。
目の前で銃を構える法王庁の女性は、裁かれるべきだから。
「あなたを異端と認識します。罪状は・・・」
女性は何かを言っている。
けれど関係ない。
邪悪な者の言うことなど聞いてはいけない。
今までの行動が間違っているとするならば、僕の全てが間違いになるから。
僕は正しい。
相棒となった‘それ’もそう言っている。
だから、僕は正しい。
いつも通り僕は引き金を引いた。