アダスタの構えは特異なものだ。
腕組みをした両腕を拘束する古聖紐。
古聖紐に連動した義腕型AF。
やせ衰えた聖者の腕にも似た義腕を、両肩より僅かに上へ振り上げる。
それが、構えだ。
無防備で、無造作な構え。
頭部。
脇腹。
腰。
全てがガラ空き。
古聖紐に連動した義腕型AF。
やせ衰えた聖者の腕にも似た義腕を、両肩より僅かに上へ振り上げる。
それが、構えだ。
無防備で、無造作な構え。
頭部。
脇腹。
腰。
全てがガラ空き。
「しかし・・・」
イルドルフが呻く。
打ち込めない。
がら空きではあるものの、隙は無い。
頭部も胴も腰も、アダスタの拳の後方に位置している。
一撃を与えるには、拳をくぐり抜けなければならない。
無造作で自然体でありながら、圧倒的存在感を放つ拳を。
イルドルフはアダスタの拳が何倍にも巨大化し、巨大な盾であるかのような錯覚すら覚えた。
イルドルフが呻く。
打ち込めない。
がら空きではあるものの、隙は無い。
頭部も胴も腰も、アダスタの拳の後方に位置している。
一撃を与えるには、拳をくぐり抜けなければならない。
無造作で自然体でありながら、圧倒的存在感を放つ拳を。
イルドルフはアダスタの拳が何倍にも巨大化し、巨大な盾であるかのような錯覚すら覚えた。
「来ぬのか?」
アダスタが問いかける。
「その首を黙って差し出す貴公でもあるまい?」
アダスタが問いかける。
「その首を黙って差し出す貴公でもあるまい?」
「・・・確かに」
おかしな話だ。
アダスタの問いかけは、臆する自分が叱咤しているかのようだ。
徹頭徹尾、異端者を弾圧する強固な信仰原理主義者であるアダスタが、だ
・・・或いは。
アダスタの目的は、単なる異端者の討伐ではなく、
戦闘において、異端者の有する最大戦力を出させる事。 その上で、アダスタは圧倒的な力で異端者を叩き潰す。
異端により手に入れた力が、信仰の前には無力であった事を死の直前まで理解させるために。
それがアダスタの流儀であり、信仰なのではないか。
無慈悲と言われていたアダスタの与える、唯一の慈悲。
おかしな話だ。
アダスタの問いかけは、臆する自分が叱咤しているかのようだ。
徹頭徹尾、異端者を弾圧する強固な信仰原理主義者であるアダスタが、だ
・・・或いは。
アダスタの目的は、単なる異端者の討伐ではなく、
戦闘において、異端者の有する最大戦力を出させる事。 その上で、アダスタは圧倒的な力で異端者を叩き潰す。
異端により手に入れた力が、信仰の前には無力であった事を死の直前まで理解させるために。
それがアダスタの流儀であり、信仰なのではないか。
無慈悲と言われていたアダスタの与える、唯一の慈悲。
「ですが、僕に出来るのは、これだけです」
右腕の紋章が輝き、手にした小剣の柄が震えた。
右腕の紋章が輝き、手にした小剣の柄が震えた。
構えるは、銘も無き小剣型C級アーティファクト。
柄底より空気中の微粒子を取り込み、高速振動させ、刀身より放出。
振動した微粒子は光を乱反射させるため、`光の刃’が出現したかのように見える。
単純な構造の初期型にして、初歩的なAFだ。
形成させる`光の刃’も、`斬る’というよりは、振動により対象を`破壊’するものだが、その威力は、通常であれば、鉄鍋の底を小穴を穿つ程度がせいぜいだ。
柄底より空気中の微粒子を取り込み、高速振動させ、刀身より放出。
振動した微粒子は光を乱反射させるため、`光の刃’が出現したかのように見える。
単純な構造の初期型にして、初歩的なAFだ。
形成させる`光の刃’も、`斬る’というよりは、振動により対象を`破壊’するものだが、その威力は、通常であれば、鉄鍋の底を小穴を穿つ程度がせいぜいだ。
だが、使用者はイルドルフだ。
構造は単純。
だからこそ、マトレイヤの紋章の最大出力に耐えられる。
機能は簡潔。
だからこそ、アダスタ相手の武器として選択した。
構造は単純。
だからこそ、マトレイヤの紋章の最大出力に耐えられる。
機能は簡潔。
だからこそ、アダスタ相手の武器として選択した。
大きく息を吸う。
「はぁぁっ!」
吐き出す気合の声と共に、`マトレイヤの紋章’が、AFを機能強化。
刀身より放出される振動微粒子の密度増加により、輝きはいっそう強くなる。
放出距離も延長させ、`光の刃’の長さはイルドルフの身長にも匹敵する。
「はぁぁっ!」
吐き出す気合の声と共に、`マトレイヤの紋章’が、AFを機能強化。
刀身より放出される振動微粒子の密度増加により、輝きはいっそう強くなる。
放出距離も延長させ、`光の刃’の長さはイルドルフの身長にも匹敵する。
「お待たせしました。・・・参ります」
光剣を構え、厳粛に一礼。
「・・来い」
アダスタが鷹揚に頷く。
光剣を構え、厳粛に一礼。
「・・来い」
アダスタが鷹揚に頷く。
そして突貫。
裂帛の気声と共に、一直線に駆け抜け、光剣を振りかぶる。
そして、刀身が分裂した。
いや、刀身は一つ。
放たれたのは、最速かつ、最高の連撃。
裂帛の気声と共に、一直線に駆け抜け、光剣を振りかぶる。
そして、刀身が分裂した。
いや、刀身は一つ。
放たれたのは、最速かつ、最高の連撃。
残光を残し、アダスタへと迫る無数の軌跡。
「緩い!!」
アダスタの偽腕が動いた。
二本の腕が、瞬間、その何倍に増えて見えるほど高速でふるわれた。
連続して繰り出される剣戟を捌く。
偽腕の掌を構成する聖ナタリア鋼。
高度に錬成された抗AF金属とはいえ、実体を伴わない鋼出力の`光の刃’を防ぎきる事は不可能だ。
アダスタの偽腕が動いた。
二本の腕が、瞬間、その何倍に増えて見えるほど高速でふるわれた。
連続して繰り出される剣戟を捌く。
偽腕の掌を構成する聖ナタリア鋼。
高度に錬成された抗AF金属とはいえ、実体を伴わない鋼出力の`光の刃’を防ぎきる事は不可能だ。
掌底で`光の刃’の側面を叩き、軌道を逸らす。
体術の達人にも匹敵する神業。
最速の動き。
最高の技。
そして最速・最高を可能にするのは、AFを操作するアダスタの技量であり精神力。
体術の達人にも匹敵する神業。
最速の動き。
最高の技。
そして最速・最高を可能にするのは、AFを操作するアダスタの技量であり精神力。
「さすがは!」
事実、戦いの中でありながら見とれるほどの流麗な動きであった。
賞賛の声を残し、イルドルフはアダスタの側面に回り込む。
アダスタの防御は完璧だ。
だが、反撃も許していない。
アダスタ相手に、攻勢を保っている。
このまま、押し込む。
事実、戦いの中でありながら見とれるほどの流麗な動きであった。
賞賛の声を残し、イルドルフはアダスタの側面に回り込む。
アダスタの防御は完璧だ。
だが、反撃も許していない。
アダスタ相手に、攻勢を保っている。
このまま、押し込む。
「ぬっ!」
イルドルフの動きに対応し、振り向いたアダスタが呻いた。
突如連撃は収まり、一瞬の虚が生まれる。
ごく僅かな時間差で、再度`光の刃’がアダスタの喉元に突き出される。
直前で裏拳で弾き、バランスを崩したイルドルフは深く踏み込むことはせず、後方へ距離をとった。
「・・・はっ!」
アダスタは息を吐いた。
いや、笑ったのか。
イルドルフの刃は、アダスタの彫りの深い頬を僅かに掠っていた。
つうっ、と流れて出す血と共に、初めてアダスタが感情の欠片を見せた。
イルドルフの動きに対応し、振り向いたアダスタが呻いた。
突如連撃は収まり、一瞬の虚が生まれる。
ごく僅かな時間差で、再度`光の刃’がアダスタの喉元に突き出される。
直前で裏拳で弾き、バランスを崩したイルドルフは深く踏み込むことはせず、後方へ距離をとった。
「・・・はっ!」
アダスタは息を吐いた。
いや、笑ったのか。
イルドルフの刃は、アダスタの彫りの深い頬を僅かに掠っていた。
つうっ、と流れて出す血と共に、初めてアダスタが感情の欠片を見せた。
「まだです!」
再度、イルドルフが踏み込む。
アダスタの拳は、防御の構えをとらず、振りあげられる。
「無駄だ、異端者!」
アダスタは叫ぶ。
振りおろされた`光の刃’はアダスタの両掌により受け止められていた。
聖ナタリア鋼を`光の刃’の振動と同調させる事により可能な超絶技術。
一瞬でイルドルフはアダスタの間合いに拘束された。
「貴公の剣筋、既に見切った」
「それを待っていました」
真顔でイルドルフは言った。
同時に、マトレイヤの紋章の発動を停止。
直後、`光の刃’は消滅した。
再度、イルドルフが踏み込む。
アダスタの拳は、防御の構えをとらず、振りあげられる。
「無駄だ、異端者!」
アダスタは叫ぶ。
振りおろされた`光の刃’はアダスタの両掌により受け止められていた。
聖ナタリア鋼を`光の刃’の振動と同調させる事により可能な超絶技術。
一瞬でイルドルフはアダスタの間合いに拘束された。
「貴公の剣筋、既に見切った」
「それを待っていました」
真顔でイルドルフは言った。
同時に、マトレイヤの紋章の発動を停止。
直後、`光の刃’は消滅した。
「無駄だと言ったぞ!」
アダスタは、叫ぶ。
突如消滅した`光の刃’に、白刃取りの姿勢のまま僅かにバランスを崩したが、すぐに両拳を振り上げた。
これだけで、アダスタの間合いは復元される。
マトレイヤの紋章を再発動し、`光の刃’を再形成したイルドルフを迎え撃つ。
アダスタは、叫ぶ。
突如消滅した`光の刃’に、白刃取りの姿勢のまま僅かにバランスを崩したが、すぐに両拳を振り上げた。
これだけで、アダスタの間合いは復元される。
マトレイヤの紋章を再発動し、`光の刃’を再形成したイルドルフを迎え撃つ。
「ぬっ!」
初めて、アダスタが感情を乱した。
`光の刃’が短い。
ナイフの様な短さで、しかし光の密度はさらなる輝きをましている。
突き出されたアダスタの拳をかい潜り、脇腹を凪ぐ。
直後、刃を長さを増す。
しかし、細い。
突細剣並みの`光の刃’がアダスタの喉元に向け、突き出される。
防御が遅れる。
左肩の表皮が削られる。
初めて、アダスタが感情を乱した。
`光の刃’が短い。
ナイフの様な短さで、しかし光の密度はさらなる輝きをましている。
突き出されたアダスタの拳をかい潜り、脇腹を凪ぐ。
直後、刃を長さを増す。
しかし、細い。
突細剣並みの`光の刃’がアダスタの喉元に向け、突き出される。
防御が遅れる。
左肩の表皮が削られる。
なおもイルドルフは追撃する。
同じ相手から繰り出される不規則な刃に、アダスタは躊躇する。
短剣。
重剣。
長刃剣。
斬撃の最中に、防御の瞬間に、刃は変化する。
初手で最速を見せたのはこの為だ。
見切ったからこそ、戸惑いを生む。
イルドルフの光の刃がアダスタの拳をくぐり抜け、肩に、額に、脇腹に、切り傷を与えていく。
同じ相手から繰り出される不規則な刃に、アダスタは躊躇する。
短剣。
重剣。
長刃剣。
斬撃の最中に、防御の瞬間に、刃は変化する。
初手で最速を見せたのはこの為だ。
見切ったからこそ、戸惑いを生む。
イルドルフの光の刃がアダスタの拳をくぐり抜け、肩に、額に、脇腹に、切り傷を与えていく。
「・・・この程度など!」
剣撃の嵐の中、アダスタが叫ぶ。
突如として防御から攻撃に転じる。
左義腕を切り落とされながら、右拳でイルドルフの顔面を殴りつける。
イルドルフは後方に跳躍し、拳拿を避ける。
掠っただけで、頬の皮膚が捲れていた。
剣撃の嵐の中、アダスタが叫ぶ。
突如として防御から攻撃に転じる。
左義腕を切り落とされながら、右拳でイルドルフの顔面を殴りつける。
イルドルフは後方に跳躍し、拳拿を避ける。
掠っただけで、頬の皮膚が捲れていた。
「次の一撃が、僕の最大の攻撃です」
静かな宣言。
その意味をアダスタは理解する。
双眸に灯った異様な光は、怒りか、歓喜か。
そして、長い沈黙。
静かな宣言。
その意味をアダスタは理解する。
双眸に灯った異様な光は、怒りか、歓喜か。
そして、長い沈黙。
「・・・良く分かった」
ピシリ。
アダスタの義腕が、軋んだ音をたてる。
「汝の望みを叶えよう、異端者イルドルフ」
絶対のはずの拘束用古聖紐。
古の巨神さえ縛り上げたその拘束具が、内側からの内圧に耐えかね、悲鳴を上げている。
「敬い、畏れよ。そして、滅びよ」
不吉な音をたて、古聖紐は引きちぎられ、残された右腕の義腕がボトリと落ちた。
今、腕組みが解かれた。
`偽’神腕が落ち、`義’神腕が出現する。
ピシリ。
アダスタの義腕が、軋んだ音をたてる。
「汝の望みを叶えよう、異端者イルドルフ」
絶対のはずの拘束用古聖紐。
古の巨神さえ縛り上げたその拘束具が、内側からの内圧に耐えかね、悲鳴を上げている。
「敬い、畏れよ。そして、滅びよ」
不吉な音をたて、古聖紐は引きちぎられ、残された右腕の義腕がボトリと落ちた。
今、腕組みが解かれた。
`偽’神腕が落ち、`義’神腕が出現する。
両腕の解放と共に、切り刻まれた黒衣が吹き飛び、銅(あかがね)の様な上半身が露出する。。
その肌のあちこちから、親指の先ほどの真紅の宝玉がのぞいている。
アダスタの聖別の証。
竜殺しの聖人、聖アストエルが宿していたと言われる宝玉。
ーすなわち聖石。
聖石は肉体の一部と同化する事で、該当部位の機能を強化する他、多種に渡る超常の力を授ける。
一つ埋め込むだけで、多大な苦痛を代償とする聖石を、アダスタは全身に埋め込んでいる。
その数、33。
その肌のあちこちから、親指の先ほどの真紅の宝玉がのぞいている。
アダスタの聖別の証。
竜殺しの聖人、聖アストエルが宿していたと言われる宝玉。
ーすなわち聖石。
聖石は肉体の一部と同化する事で、該当部位の機能を強化する他、多種に渡る超常の力を授ける。
一つ埋め込むだけで、多大な苦痛を代償とする聖石を、アダスタは全身に埋め込んでいる。
その数、33。
アダスタが一歩を踏み出す。
周囲の空気がむっと熱を帯び、聖石は炉から取り出されたガラスの様に更なる赤い輝きを放つ。
活性化した聖石は、互い共鳴し、アダスタの体表を赤く光る線が走る。
肩。
踝、膝、腰。
そして体幹を司る中央線。
それらの全てが明滅し、アダスタの全身を光の波が走る。
点と線で構成された、生きる星座だ。
イルドルフに負わされた切り傷が塞がり、流血が蒸発する。
周囲の空気がむっと熱を帯び、聖石は炉から取り出されたガラスの様に更なる赤い輝きを放つ。
活性化した聖石は、互い共鳴し、アダスタの体表を赤く光る線が走る。
肩。
踝、膝、腰。
そして体幹を司る中央線。
それらの全てが明滅し、アダスタの全身を光の波が走る。
点と線で構成された、生きる星座だ。
イルドルフに負わされた切り傷が塞がり、流血が蒸発する。
ふわり。
まるで重さを感じさせず、跳躍する。
悠然と、イルドルフの眼前に着地する。
ドンっ!
踏み込んだ足が敷き詰められた石版をめくり上げ、大小の石版を八方に打ち放った。
脈動する全身の聖石が唸りを上げ、太陽の如く輝きと熱を放つ。
逆立った髪。
爛々と輝く双眸。
顔面に浮き出た赤線は、憤怒の表情にも、値の涙を流しているようにも見える。
まるで重さを感じさせず、跳躍する。
悠然と、イルドルフの眼前に着地する。
ドンっ!
踏み込んだ足が敷き詰められた石版をめくり上げ、大小の石版を八方に打ち放った。
脈動する全身の聖石が唸りを上げ、太陽の如く輝きと熱を放つ。
逆立った髪。
爛々と輝く双眸。
顔面に浮き出た赤線は、憤怒の表情にも、値の涙を流しているようにも見える。
抵抗と呼べるか。
イルドルフは、紋章に全精神力を集中させる。
同時に柄底に装着されたリミッターも解除。
光の奔流となり、吹き出す刀身。
`マトレイヤの紋章’にただ一人適合したイルドルフが、逆十字団へと身を堕とし手にいれた全盛期の肉体を盛ってして放つ、最高最大の一撃。
全てが込められた一撃は、相手が古竜だろうと、上位巨神だろうと、両断する。
イルドルフは、紋章に全精神力を集中させる。
同時に柄底に装着されたリミッターも解除。
光の奔流となり、吹き出す刀身。
`マトレイヤの紋章’にただ一人適合したイルドルフが、逆十字団へと身を堕とし手にいれた全盛期の肉体を盛ってして放つ、最高最大の一撃。
全てが込められた一撃は、相手が古竜だろうと、上位巨神だろうと、両断する。
ー否、相手はアダスタ。
ー`法王庁最強の男。
ー`法王庁最強の男。
「おおお!!」
獣の遠吠えにも似た絶叫と共に、アダスタは両拳を突き出した。
全身の赤光がアダスタの体内で練り上げられ、聖石を結ぶ赤線を経由し、拳へと集約される。
凝集された赤光を収集した拳が、巨大なうねりを伴い、イルドルフの光の奔流を迎え打つ。
全身の赤光がアダスタの体内で練り上げられ、聖石を結ぶ赤線を経由し、拳へと集約される。
凝集された赤光を収集した拳が、巨大なうねりを伴い、イルドルフの光の奔流を迎え打つ。
赤と白の激突。
その衝撃の余波で石板がめくれ、暴風が荒れ狂う。
さらには、石柱、天井の一部が崩落する。
威力は互角。
だが。
全身の聖石が、再び脈動し、赤光を充填させるアダスタに対し、イルドルフの聖剣は柄から砕けた。
その衝撃の余波で石板がめくれ、暴風が荒れ狂う。
さらには、石柱、天井の一部が崩落する。
威力は互角。
だが。
全身の聖石が、再び脈動し、赤光を充填させるアダスタに対し、イルドルフの聖剣は柄から砕けた。
「告解の刻だ、異端者イルドルフ」
アダスタの右拳が、イルドルフの腹部へ叩き込まれる。
「くっ!」
左手を構え、辛うじて防御。
だが、無意味だ。
振り卸された鉈の前にへし折られる小枝かの如く、勢いを削ぐ事は出来ない。
衝撃。
筋肉、内蔵器官、そして脊髄。
神腕の一撃は、全てに致命的なダメージを与える。
「ごっ・・・っふ」
石壁に叩きつけられ、血塊を吐き出すのが精一杯だった。
即座に損傷した肉体の超回復が始まるが、アダスタはその時間を与えない。
アダスタの右拳が、イルドルフの腹部へ叩き込まれる。
「くっ!」
左手を構え、辛うじて防御。
だが、無意味だ。
振り卸された鉈の前にへし折られる小枝かの如く、勢いを削ぐ事は出来ない。
衝撃。
筋肉、内蔵器官、そして脊髄。
神腕の一撃は、全てに致命的なダメージを与える。
「ごっ・・・っふ」
石壁に叩きつけられ、血塊を吐き出すのが精一杯だった。
即座に損傷した肉体の超回復が始まるが、アダスタはその時間を与えない。
「慈悲深き、神の御名の元へ」
聖句と共に、イルドルフの頭部を掴み、持ち上げる。
掴まれた頭部が軋む。
訪れる、確実な死。
聖句と共に、イルドルフの頭部を掴み、持ち上げる。
掴まれた頭部が軋む。
訪れる、確実な死。
ーだが、その瞬間こそ。
イルドルフが待っていた瞬間だ。
イルドルフが待っていた瞬間だ。
右手をするりと伸ばし、頭部を掴むアダスタの腕に添える。
抵抗の意志に肉体がついていかず、弛緩したかのような弱々しい動き。
アダスタは眼中に納めず、イルドルフの頭を砕こうと掌に力を込める。
「・・・受け取って下さい」
頭蓋骨が砕ける音が響く中、イルドルフが呟いた。
「僕の最後の抵抗です」
抵抗の意志に肉体がついていかず、弛緩したかのような弱々しい動き。
アダスタは眼中に納めず、イルドルフの頭を砕こうと掌に力を込める。
「・・・受け取って下さい」
頭蓋骨が砕ける音が響く中、イルドルフが呟いた。
「僕の最後の抵抗です」
紋章の力を全解放。
紋章はAFを強化するAF。
すなわち、この場合は。
ーアダスタの全身に埋め込まれた聖石の強化。
紋章はAFを強化するAF。
すなわち、この場合は。
ーアダスタの全身に埋め込まれた聖石の強化。
「ぐおおおお!」
絶叫だった。
アダスタの全身を激痛が走る。
灼熱を鉄棒で抉られる様な痛み。
そう、聖石を融合した際の代償としての痛みだ。
全身の聖石が、痛みを発している。
アダスタが更なる光に包まれる。
全身の点と線は、赤い光に飲み込まれ、炉心のような輝きと熱を放つ。
絶叫だった。
アダスタの全身を激痛が走る。
灼熱を鉄棒で抉られる様な痛み。
そう、聖石を融合した際の代償としての痛みだ。
全身の聖石が、痛みを発している。
アダスタが更なる光に包まれる。
全身の点と線は、赤い光に飲み込まれ、炉心のような輝きと熱を放つ。
「保ってくれ!!
一方のイルドルフも右腕が加熱し、吹き飛びそうになる衝撃を押さえ込んでいる。
アダスタの全身から巨大な反動が、右腕を介して流れ込む。
かつて如何なるAFを強化した時も、ここまでの反動はなかった。
焼けた蛇が、右腕から駆け上がるような激痛。
全身の毛が逆立ち、再生の速度も追いつかず、手から肘にかけての毛細血管が破裂する。
一方のイルドルフも右腕が加熱し、吹き飛びそうになる衝撃を押さえ込んでいる。
アダスタの全身から巨大な反動が、右腕を介して流れ込む。
かつて如何なるAFを強化した時も、ここまでの反動はなかった。
焼けた蛇が、右腕から駆け上がるような激痛。
全身の毛が逆立ち、再生の速度も追いつかず、手から肘にかけての毛細血管が破裂する。
「おおおおお!」
アダスタはイルドルフの意図を察し、呻いた。
限界を越えて聖石を強制的に発動させ、宿主の肉体を崩壊させようというのか。
最強を越えた、最強。
さらにそれを越えた最強。
進化の彼方の超存在を宿せる肉体など、この世に存在しない。
最強であるアダスタを、最強を越えたアダスタに超越させる事により、消滅させる。
「愚かなり!我はアダスタ!聖アストラエルのアダスタなり!」
灼熱とかした肉体で、叫んだ。
激痛の中、全身の聖石の制御に全神経を集中させる。
聖石の放つ赤光が僅かに落ち着きを取り戻す。
アダスタとイルドルフ。
聖石を巡っての一進一退、一身一大の攻防が始まった。
アダスタはイルドルフの意図を察し、呻いた。
限界を越えて聖石を強制的に発動させ、宿主の肉体を崩壊させようというのか。
最強を越えた、最強。
さらにそれを越えた最強。
進化の彼方の超存在を宿せる肉体など、この世に存在しない。
最強であるアダスタを、最強を越えたアダスタに超越させる事により、消滅させる。
「愚かなり!我はアダスタ!聖アストラエルのアダスタなり!」
灼熱とかした肉体で、叫んだ。
激痛の中、全身の聖石の制御に全神経を集中させる。
聖石の放つ赤光が僅かに落ち着きを取り戻す。
アダスタとイルドルフ。
聖石を巡っての一進一退、一身一大の攻防が始まった。
例えるならば、アダスタは、超高熱の燃焼物。
イルドルフはその燃焼を加速させ、燃焼物そのものを消滅させる。
文字通り、捨て身の一手。
活性化するアダスタの聖石が放つ赤光が、イルドルフの体表をちりちりと焼き焦がす。
それでもイルドルフは右手を離さない。
イルドルフはその燃焼を加速させ、燃焼物そのものを消滅させる。
文字通り、捨て身の一手。
活性化するアダスタの聖石が放つ赤光が、イルドルフの体表をちりちりと焼き焦がす。
それでもイルドルフは右手を離さない。
相手は`伝説。
法王庁最強の男。
法王庁第一課課長`義神腕’
又の名を`聖のアダスタ。
「おお!」
だが、それがどうした。
自分はなんだ。
異端となり、逆十字を背負い、生き足掻く自分はなんだ。
「イルドルフ、紋章官イルドルフだ!!」
絶叫と共に、右腕を振り抜く。
肘。
右腕。
手首。
指。
あらゆる血管を破裂させ、神経を焼ききりながら、紋章を限界まで発動させる。
法王庁最強の男。
法王庁第一課課長`義神腕’
又の名を`聖のアダスタ。
「おお!」
だが、それがどうした。
自分はなんだ。
異端となり、逆十字を背負い、生き足掻く自分はなんだ。
「イルドルフ、紋章官イルドルフだ!!」
絶叫と共に、右腕を振り抜く。
肘。
右腕。
手首。
指。
あらゆる血管を破裂させ、神経を焼ききりながら、紋章を限界まで発動させる。
「イルドルフ!!」
信仰に生き、罪を裁き、信仰に全てを捧げた男が吼える。
信仰に生き、罪を裁き、信仰に全てを捧げた男が吼える。
「アダスタ!!」
信仰を捨て、罪を背負い、ただ一つを求める男が叫ぶ。
信仰を捨て、罪を背負い、ただ一つを求める男が叫ぶ。
―そして全てが収束し、静寂が訪れた。
イルドルフは、ゆっくりと目を開けた。
爆発の衝撃と閃光で、機能を失っていた視覚がようやく戻ってきた。
そして、我が身の`惨状’を確認する。
アダスタの初撃により受けた致命傷は、胸に刻まれた`逆十字’を中心に大穴を開けている。
超回復を以てして、ようやく骨格を再生した所だ。
その超回復ですら、地上でロイドリッツと対峙した時と比べると、半分以下の速度になっている。
内蔵系は回復途中にあり、過呼吸となった肺が動く度に、血の霧を吐く。
筋肉系は靱帯断絶が回復しておらず、四肢を動かす事すらままならない。
紋章の力を過剰使用した右手は炭化している。
ー死闘の果ての成れの果て。
全ての力を出し尽くした結果だ。
最早余力は残っていない。
爆発の衝撃と閃光で、機能を失っていた視覚がようやく戻ってきた。
そして、我が身の`惨状’を確認する。
アダスタの初撃により受けた致命傷は、胸に刻まれた`逆十字’を中心に大穴を開けている。
超回復を以てして、ようやく骨格を再生した所だ。
その超回復ですら、地上でロイドリッツと対峙した時と比べると、半分以下の速度になっている。
内蔵系は回復途中にあり、過呼吸となった肺が動く度に、血の霧を吐く。
筋肉系は靱帯断絶が回復しておらず、四肢を動かす事すらままならない。
紋章の力を過剰使用した右手は炭化している。
ー死闘の果ての成れの果て。
全ての力を出し尽くした結果だ。
最早余力は残っていない。
「・・・アダスタ?」
ならば、相手はどうだ。
ならば、相手はどうだ。
「これほどまでは・・・」
イルドルフは息を飲む。
審判の門を前にし、アダスタは直立不動の姿勢で立ち尽くしていた。
瞑想するかのように眼を閉じ、大気の振動のような深い呼吸を繰り返している。
驚くべき事に、活性化した全身33カ所の聖石を、完全に制御下に納めていた。
過剰供給される赤光が、聖石から聖石へ、行き場を求めて脈動している。
アダスタは、身を焼く尽くす程の赤光を、全身に循環させる事で制御していた。
体表では、赤光のうねりが常に意匠を変化させる紋様の様に蠢いている。
6つの聖石が埋め込まれた背面からは、赤光が体外に向け放出され巨大な日輪を背負っているかの様だ。
その様は、荒れ狂う竜の巣。
あるいは、プロミネンスを吹き上げる太陽。
イルドルフは息を飲む。
審判の門を前にし、アダスタは直立不動の姿勢で立ち尽くしていた。
瞑想するかのように眼を閉じ、大気の振動のような深い呼吸を繰り返している。
驚くべき事に、活性化した全身33カ所の聖石を、完全に制御下に納めていた。
過剰供給される赤光が、聖石から聖石へ、行き場を求めて脈動している。
アダスタは、身を焼く尽くす程の赤光を、全身に循環させる事で制御していた。
体表では、赤光のうねりが常に意匠を変化させる紋様の様に蠢いている。
6つの聖石が埋め込まれた背面からは、赤光が体外に向け放出され巨大な日輪を背負っているかの様だ。
その様は、荒れ狂う竜の巣。
あるいは、プロミネンスを吹き上げる太陽。
「・・・凄いなぁ」
子供の憧憬の様な呟きが、率直な感想だ。
桁が違う。
才能、素質、精神力。
そして、信仰心。
力及ばず、敗れるべきして敗れる。
アダスタは、聖アストラエルすら成し得なかった`聖石の完全支配’という極致にたどり着いている。
最強を越えた最強。
すなわち、「最も神に近い存在」。
子供の憧憬の様な呟きが、率直な感想だ。
桁が違う。
才能、素質、精神力。
そして、信仰心。
力及ばず、敗れるべきして敗れる。
アダスタは、聖アストラエルすら成し得なかった`聖石の完全支配’という極致にたどり着いている。
最強を越えた最強。
すなわち、「最も神に近い存在」。
「ここまでの健闘は見事であった、異端者イルドルフ」
両目を閉じたまま、アダスタは言った。
「だが、無意味だ。貴公の戦いは、誰にも語り継がれる事はなく、なにも残す事はなく、ただここで朽ち果てる」
そして眼を開く。
深い眼光でイ居抜かれたイルドルフに震えが走った。
両目を閉じたまま、アダスタは言った。
「だが、無意味だ。貴公の戦いは、誰にも語り継がれる事はなく、なにも残す事はなく、ただここで朽ち果てる」
そして眼を開く。
深い眼光でイ居抜かれたイルドルフに震えが走った。
「今こそ断罪の刻なり」
アダスタの全身から赤光が外部に放出される。
うねりを帯びた赤光が、アダスタの体外に渦巻き、赤光の鎧が形成される。
排出される光と熱で、広大な地下空間全体が照らされた。
イルドルフの四肢の再生は間に合わない。
反撃、防御、逃走。
その全ての選択は残されていない。
地面に這うその姿は、一枚の宗教画を連想させる。
「断罪の天使を前に、平服するしか出来ない罪人」そのものだ。
あと数秒で、イルドルフに確実な、そして完全な死が訪れる。
アダスタの全身から赤光が外部に放出される。
うねりを帯びた赤光が、アダスタの体外に渦巻き、赤光の鎧が形成される。
排出される光と熱で、広大な地下空間全体が照らされた。
イルドルフの四肢の再生は間に合わない。
反撃、防御、逃走。
その全ての選択は残されていない。
地面に這うその姿は、一枚の宗教画を連想させる。
「断罪の天使を前に、平服するしか出来ない罪人」そのものだ。
あと数秒で、イルドルフに確実な、そして完全な死が訪れる。
ーこの結果を誰が予想していたか?
イルドルフは覚悟していた。
法王庁最強であるアダスタを相手にする以上、よくて引き分け、死は確実であることを。
アダスタは確信していた。相手が紋章官であろうと、自分が、`異端者’相手に敗北する事などないと。
そして両者の予想通りとなった。
イルドルフは覚悟していた。
法王庁最強であるアダスタを相手にする以上、よくて引き分け、死は確実であることを。
アダスタは確信していた。相手が紋章官であろうと、自分が、`異端者’相手に敗北する事などないと。
そして両者の予想通りとなった。
ーでは、この僅かに先の未来を予想したものは?
「イルドルフがアダスタに裁かれる」以外の未来を予想するものは、いたか。
ただ一人、いた。
「イルドルフがアダスタに裁かれる」以外の未来を予想するものは、いたか。
ただ一人、いた。
「フフっ、フフフフッ」
女性の笑い声が、地下空間に漏れた。
イルドルフもアダスタさえも、まだその存在に気づいていない。
女性の笑い声が、地下空間に漏れた。
イルドルフもアダスタさえも、まだその存在に気づいていない。
「フフッフフッ、アハハハハハハッ」
哄笑が、地下空間全体に響いた。
歓喜、
アダスタとイルドルフが、笑い声に気づいた時には、それが始まっていた。
哄笑が、地下空間全体に響いた。
歓喜、
アダスタとイルドルフが、笑い声に気づいた時には、それが始まっていた。
「待て、アダスタ!」
前進するアダスタに対し、イルドルフが叫んだ。
死を恐れた訳ではない。
強烈な違和感。
何かが始まる。
死などよりもっと恐ろしい、禁忌すべき何かが。
「・・・この感覚は」
かつても、体験した。
皮膚からゆっくりと差し込まれ、骨まで響くような寒気。
あれは、25年前の・・・。
前進するアダスタに対し、イルドルフが叫んだ。
死を恐れた訳ではない。
強烈な違和感。
何かが始まる。
死などよりもっと恐ろしい、禁忌すべき何かが。
「・・・この感覚は」
かつても、体験した。
皮膚からゆっくりと差し込まれ、骨まで響くような寒気。
あれは、25年前の・・・。
「・・・何だ」
同じく異変を感じたアダスタが足を止めた。
それが始まりだった。
同じく異変を感じたアダスタが足を止めた。
それが始まりだった。
ードクン。
地の底から響くような振動が、地下空間全体に共震する。
地鳴りと共に審判の門が、内側から穴が穿かれた。
異界物質を材質とする審判の門を紙のように突き破り、
目の無い`大蛇’が飛び出してくる。
金属チューブが無数に絡み合った胴回りは、標準的な人間と同じくらいの太さだが、恐ろしく長い。
十数メトルー程飛び出して、なおもその胴は扉の穴の奥へと続いている。
地の底から響くような振動が、地下空間全体に共震する。
地鳴りと共に審判の門が、内側から穴が穿かれた。
異界物質を材質とする審判の門を紙のように突き破り、
目の無い`大蛇’が飛び出してくる。
金属チューブが無数に絡み合った胴回りは、標準的な人間と同じくらいの太さだが、恐ろしく長い。
十数メトルー程飛び出して、なおもその胴は扉の穴の奥へと続いている。
守るべき審判の門からの、すなわち背後からの攻撃。
アダスタの反応は僅かに遅れる。
だが、それも一瞬。
「フッ!」
気合とも失笑とも受け取れる吐息をアダスタが吐き出す。
直後、アダスタが纏った真紅の光鎧が一層深みを増した。
大顎を広げ巻き付いた蛇は、火にくべた飴のように瞬時に溶解、蒸発する。
アダスタの反応は僅かに遅れる。
だが、それも一瞬。
「フッ!」
気合とも失笑とも受け取れる吐息をアダスタが吐き出す。
直後、アダスタが纏った真紅の光鎧が一層深みを増した。
大顎を広げ巻き付いた蛇は、火にくべた飴のように瞬時に溶解、蒸発する。
「聖石の力を・・・体外に対して使用した?」
イルドルフは、驚愕すべき事実に呻いた。
ー聖石の力。
一言でいえば、「対象の強化」の力だ。
異端審問局第一課の審問官達は、この聖石を聖別の儀式により、体内に取り込む事で、あらゆる機能を強化し超人的な強さを発揮する。
筋力、敏捷、耐久力、五感、そして潜在能力。
潜在能力の強化により、異能力を発揮する審問官も多いが、アダスタは33もの聖石の力を、ただ己の肉体の強化へ当てていた。
今、アダスタは聖石の力ー「強化」の力ーを、大蛇に対して使用した。
聖別の儀式に臨む審問官ですら、聖石が与える負荷に耐えきれず肉体、あるいは精神を崩壊させる者はいる。
第一課に認められ、肉体・精神を極限の鍛錬で研磨された異端審問官が、だ。
イルドルフは、驚愕すべき事実に呻いた。
ー聖石の力。
一言でいえば、「対象の強化」の力だ。
異端審問局第一課の審問官達は、この聖石を聖別の儀式により、体内に取り込む事で、あらゆる機能を強化し超人的な強さを発揮する。
筋力、敏捷、耐久力、五感、そして潜在能力。
潜在能力の強化により、異能力を発揮する審問官も多いが、アダスタは33もの聖石の力を、ただ己の肉体の強化へ当てていた。
今、アダスタは聖石の力ー「強化」の力ーを、大蛇に対して使用した。
聖別の儀式に臨む審問官ですら、聖石が与える負荷に耐えきれず肉体、あるいは精神を崩壊させる者はいる。
第一課に認められ、肉体・精神を極限の鍛錬で研磨された異端審問官が、だ。
その力を外部に放出すればどうなるか?
結果は、明白だ。
体内に流れ込んだ膨大な「強化」の力に、大蛇の体組織が耐えきれず、瞬時に崩壊。
無限に供給される聖石の力を、体内循環させる事で完全にコントロールするアダスタは、まさに「最も神に近い男」と言えるだろう。
-だが。
結果は、明白だ。
体内に流れ込んだ膨大な「強化」の力に、大蛇の体組織が耐えきれず、瞬時に崩壊。
無限に供給される聖石の力を、体内循環させる事で完全にコントロールするアダスタは、まさに「最も神に近い男」と言えるだろう。
-だが。
「まだ来ます!」
イルドルフの言葉通り、審判の門からは大蛇が次々と飛び出してくる。
「不遜なり!」
高速で拳を振るう。
「強化」の力を込められた拳は、振れただけで、大蛇を次々と消滅させる。
「ぬっ!」
だが、大蛇の襲来は途切れない。
むしろ潰せば潰す程、乗数的に増えていく。
扉全面から押し寄せる大蛇の群は、全てを飲み込む濁流を思わせた。
そして、イルドルフは気がつく。
アダスタの聖石が放つ赤光を浴び、蒸発する大蛇。
頭部を消滅させながらも、浴びた赤光の百分の一、千分の一が長胴を伝わっていく。
「こいつ等は・・・」
アダスタ当人も理解した
「・・・聖石の力を吸収している」
イルドルフの言葉通り、審判の門からは大蛇が次々と飛び出してくる。
「不遜なり!」
高速で拳を振るう。
「強化」の力を込められた拳は、振れただけで、大蛇を次々と消滅させる。
「ぬっ!」
だが、大蛇の襲来は途切れない。
むしろ潰せば潰す程、乗数的に増えていく。
扉全面から押し寄せる大蛇の群は、全てを飲み込む濁流を思わせた。
そして、イルドルフは気がつく。
アダスタの聖石が放つ赤光を浴び、蒸発する大蛇。
頭部を消滅させながらも、浴びた赤光の百分の一、千分の一が長胴を伝わっていく。
「こいつ等は・・・」
アダスタ当人も理解した
「・・・聖石の力を吸収している」
今や百匹近くに増えた大蛇のうち一匹が、アダスタの拳をかいくぐり、アダスタの全身に巻き付く。
瞬時に蒸発するが、次にまた一匹、そして一匹。
大蛇は次々とアダスタに巻き付いていく。
蒸発する大蛇の上から次の一匹が。
次の一匹が蒸発する前に、その次の一匹。
その上に、二重三重に絡みつく。
瞬時に蒸発するが、次にまた一匹、そして一匹。
大蛇は次々とアダスタに巻き付いていく。
蒸発する大蛇の上から次の一匹が。
次の一匹が蒸発する前に、その次の一匹。
その上に、二重三重に絡みつく。
「アダスタ!応えろ、義神腕アダスタ!」
最強が、いや最強を越えた最強が、窮地に追い込まれている。
信じられないが、目の前で起きている事実だ。
アダスタ救出の為に走り出す。
が、筋組織の再生が始まったばかりの脚はもつれ、転倒する。
這い蹲りながら、イルドルフは絶叫する。
「アダスタ!」
歯噛みするイルドルフの目の前で、アダスタは大蛇に絡みつかれた巨大な球塊となった。
全ての大蛇がアダスタに巻き付き、更に新たな大蛇が飛び出してくる。
いくつもの大蛇が蠢く球塊は、脈打つ巨大な質量を伴った心臓に酷似している。
心臓から延びる無数の血管に引きづられ、地響きを立てながらずるりと扉の奥、漆黒の闇の中へ消えた
最強が、いや最強を越えた最強が、窮地に追い込まれている。
信じられないが、目の前で起きている事実だ。
アダスタ救出の為に走り出す。
が、筋組織の再生が始まったばかりの脚はもつれ、転倒する。
這い蹲りながら、イルドルフは絶叫する。
「アダスタ!」
歯噛みするイルドルフの目の前で、アダスタは大蛇に絡みつかれた巨大な球塊となった。
全ての大蛇がアダスタに巻き付き、更に新たな大蛇が飛び出してくる。
いくつもの大蛇が蠢く球塊は、脈打つ巨大な質量を伴った心臓に酷似している。
心臓から延びる無数の血管に引きづられ、地響きを立てながらずるりと扉の奥、漆黒の闇の中へ消えた