アットウィキロゴ
マグノリア@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

マグノリア@Wiki

3-4「‘銀水晶’と‘殲滅軍師’」

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

「・・・もうすぐよ」
 ラニエル・ベルザインは、箱舟の先端へと立っていた。
 永久動力機関`銀水晶を停止させている為、その体は200年以上稼働しているオートマターに過ぎない。
 老朽化した全身の義体。
 劣化した表皮。
 口調は感情は込められず、表情は失われている。
 だが、ラニエル・ベルザインは笑っていた。
 複雑な表情を動かす動力は休止しているにも関わらず、聖母の慈愛を思わせる微笑みを浮かべ、先端部から箱舟全体を見下ろしている。

「あなたは見ているのかしら、アニエス?」

 箱舟、正式名称はアララトの空船(そらぶね)。  
 法王庁では、墓所の箱舟とも呼ばれている。
 聖典に記述がある創世期。
 `大洪水により滅んだ世界から、あらゆる種族・技術・文化を集めてこの地に漂着したとされる、`始まりの舟
 その材質は、一体成形の合金だが、表面には木目のような模様が浮かび上がっている。
 全長150メルテ・全幅80メルテ、全高50メルテ。
 確かに並外れた巨大さを誇る建造物ではあるが、「全ての種族・技術・文化を積み込んだ」にしては、小さい。
 箱舟の積み荷の殆どは、「設計図」として収納している。
 保存が目的であれば、現物は必要としない。



「きっと見ているのでしょう。私の完全な勝利を」

 今、箱舟全体は、赤く点滅する巨大な触手に覆われている。
 活動停止状態であった地母神フィオーラが、33の聖石を極限まで活性化させた`義神腕アダスタを吸収する事で、再生機能を復活。
 箱舟全体に導管を張り巡らせ、動力源として機能している。
 さながら、成虫へと羽化する直前の巨大な繭。
 あるいは、茨に覆われた古の聖像。

「この美しさ、私だけのもの」」
 箱舟全体を包む赤い点滅を前に、ラニエルはぎこちなく歩く。
 実際は劣化した脚部が速やかな歩行を困難にしているだけだが、まるで奉納の踊りを舞っているかのようだ。
 かつて、ラニエルはいくつもの`赤い光景を観てきた。
 `黄昏の時代、王都陥落の大炎上。
 `全てを知る者時代、砦線滅に伴う大虐殺。
 その全てが、視界の隅々まで赤く染め上げた。
 だが、この瞬間程美しい光景を見たことはない。

 ぎこちない足取りでラニエルは、船内へと進入する。
 陶酔にも似た感覚が、ラニエルの全身を包んでいる。
 遺失技術の固まりでもある箱舟。
 法王庁の最高機密であり、伝承、口伝で様々な呼び名をもっているが、いずれも正しくはない。
 正しい呼び名を。この舟の真の主を、ラニエルだけが知っている。 
 

 箱舟の中心部付近の一室。
 部屋の中央には、巨大な半透明の棺桶。
 満たされる生命の水。
 中では、人影が揺れている。
 骨、臓器、血管。
 潮が満ちる程の速度で、人体が再生している。
 両腕を大きく伸ばしたその姿勢は、十字架に欠けられた聖人を思わせる。
 



 箱舟の中心部付近の一室。
 部屋の中央には、巨大な半透明の棺桶。
 満たされる生命の水。
 中では、人影が揺れている。
 骨、臓器、血管。
 潮が満ちる程の速度で、人体が再生している。
 両腕を大きく伸ばしたその姿勢は、十字架に欠けられた聖人を思わせる。
 
 箱舟の遺失技術の一つ、`トライの棺桶
 効力は、人体の再生。
 骨の一片、灰の一摘みさえあれば、「失われた当時の肉体」を、完璧に再生する。
 `生命に関する多くの遺失技術に精通したラニエルでさえ、これ程の超技術は見たことがない。
 もはや、`再生などと生やさしいレベルではない。
 これは`死者の復活だ。
 異端に落ちても決してたどり着けない、神の領域。
 ただし、`棺桶の軌道には前提条件がある。
 `復活の対象者が、この箱舟の生まれであること。
 箱舟に「設計図」が収納さえていれば、不足した生体情報を復元し、復活が可能となる。
 箱舟が、「大洪水」を逃れ、この地に漂着したのは数万年前まで遡る。
 純粋な「箱舟人」など存在しない。
 するはずがない。
 ただ二人を除いて。
 そのうちの一人が・・・

 時が満ちた。
`
棺桶の扉が内側から開く。
 棺桶を満たしていた生命の水が溢れるが、空気に触れると直ぐに気化し、水蒸気となり消えていく。
 立ちこめる水蒸気の中、男が足を踏み出した。
 年齢は30前後だが、若くも見え、年かさにも見える。
 肩まで伸びた黒髪
 目鼻立ちのはっきりとした顔立ちだが、中肉中背の体格と相まって、不思議と印象に残らない。。
  



「ご気分はいかがですか?」
 深く平服し、ラニエルは真の主を迎え入れる。
「悪くない」
 短い返事の後、即座に訂正。
「いや、最高だ」
 穏やかな微笑み。 
「ご苦労だったな。我が娘、ラニエル」
 全てはこの瞬間の為。
 ラニエルの人生と、逆十時団はこの瞬間の為にあった。
「ご帰還をお待ちしておりました。`纖滅軍師ベルザイン様」
 塗れた髪をかき揚げ、ベルザインは鷹揚に頷く。
「信じていた。
 ラニエルなら、
 箱舟を起動させ、必ず僕の`真の肉体を目覚めさせてくれると信じていた」
「さあ、行こう。
 この舟は、僕の舟であり、君の舟だ。
 供に世界を再生しよう。
 この世界を、真の姿に戻すんだ」
 
>新生逆十次団完結編・第24章へと続く

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー