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小話「白き腕」

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【小話】アズにゃん編『白き腕』

故郷の村では、力自慢。
修練生時代は、豪腕。
異端審問官となってからは、双傑と呼ばれた。
生まれもった怪力という才能。
その先に行き着いた『異端審問官アズール・バール』という生き方。
単純故の大出力を誇る『エイバムの柱』というAFとの会合。
強力な力を秘めながら、超重量級ゆえ誰にも扱えなかったという斧槍を握った時より、戦闘で遅れを取ることはあっても、純粋な『力比べ』で負けたことは無かった。

それが今。

渾身の力を込め、全身を躍動させながら降り下ろした『エイバムの柱』
「ぬうっ!?」
冷たい金属音の火花を散らし、構えた『槍』に受け止められる。
更に。
二撃目を放つより速く『槍』の圧力に『押し負ける』

「・・・これほどか、『白き腕』!」
撥ね飛ばされ、雪原を転がりながらアズールは呻く。
「これほどか、『カナン・ヨハナン』!」
身の丈を優に越える『槍』を自在に操る黒衣の尼僧は、アズールの地鳴りのような咆哮を受けても、いかなる感情を示す事は無かった。
虚ろな表情に浮かぶくすんだガラス玉のような瞳は、膝立ちの姿勢となったアズールを捉え、空気を切り裂きながら『槍』を繰り出した。

カナン・ヨハナン。
かつて法王庁異端審問局第七課に所属していた異端審問官。
『白き腕』と呼ばれた天賦のAFを取り扱う才能により、若輩ながら多くの聖務にて活躍した。
たが、七課の審問官達は、カナンの才能よりも人柄を愛した。
アズールも例外ではない。
よく笑い、泣き、怒り、そのこぼれ溢れる陽光のような感情表現が、多くの人を惹き付けた。
ある事件以降、その精神は崩壊するまでは。

ザォン!
アズールの眼前に迫った『槍』は、AF同士の交差なよる火花と供に、『大鎌』にて受け止められる。
「・・・助力は無用、と言ったはずだ」
「・・・下がっていて」
大鎌の使い手は、アズールが『もう一人の白き腕』と認定した少女。
簡素な皮服に身を包まれた小柄な肢体と不釣り合いな大型AF、封印指定AF:テスティレンス・サイズの刃を波状に変化させる。

無表情のカナン・ヨハナンが繰り出した槍型AF:第三世代手榴式グングニルは、つばぜり合いから力点がずれ、波状の刃の上を滑る。
前のめりの姿勢と為ったカナンを、大鎌の石突部より二枚目の光の刃を出現させ、下段より斬り上げる。
こめかみを狙った正確な一撃を、強引に機動を変化させたグングニルの槍先で捌こうとする寸前に、『光の刃』を射出。
たまらず後退するカナンに対し、テスティレンスを回転すせながら、先端と石突に形成した『光の刃』を速射ほうに射出した。
グングニルにより『刃』を弾くが、それでも呼吸する間もなく打ち出されては、距離をとるしかない。
槍を地面に突き立てると、カナンは後方に大きく跳躍し、間合いを仕切り直す。

「・・・無様の貴方の姿が堪えられなかったのよ」
『光の刃』の射出を中断させると、少女は正面を向いたまま呟いた。
「何?」
「手を出した理由。・・・『覚悟を決めた』と言っておきながら、貴方の攻撃には迷いがある。かつての仲間が目を覚ます、最後の奇跡を期待している。・・・そんな攻撃が当たるはずがない」
少女の視線の先で、カナンがグングニルを構え直す。
大きく一閃すると手にした槍は、三倍以上の長さに形状変化した。
「それに私は貴方を助けた訳ではない。・・・興味が出たの。ベルザインが蘇生させた『白き腕』には、喰らうべき魂があるのかが」
最大出力で展開された光の刃が照らし、少女の横顔に微かに浮かんだ感情を浮かび上がらせ、
アズールは抗議の言葉を飲み込んだ。
かつてのテスティレンス・サイズの所有者と同様に、獲物を前にした『狂犬』の笑みであった。

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