アットウィキロゴ
マグノリア@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

マグノリア@Wiki

洗礼長:エルロイド

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
【小話】敵キャラを作って見よう企画

最初の異変は5歳の時であった。
名門と呼ばれる上級貴族の家柄に生まれ、幼い時より乗馬、音楽、作詩等『貴族の嗜み』を一通りこなし、神童と呼ばれた少女に足に痺れが襲った。
痺れは日を重ねる度に強くなり、少女の父は湯水の如く金を使い治療を試みたが、一年後にはベットから起き上がる事が出来なくなった。

それでも少女の才能は輝きを増した。
寝具の上での学習は、数学、文学、歴史だけに及ばず、政治、経済、地学、星層学や智神学にも及び、その学習能力は家庭教師である大学教授や神学者を唸らせたが、
やがて痺れは両手にも及び、十歳になる頃には本を持つのも辛くなった。

『痺れは舌に、呼吸器に、心臓まで到達するだろう』 『不憫な。あれ程の才能を、輝かす事なく終わるのか』

両親や主治医、使用人の哀れみとも同情ともつかない視線に彼らの本心を察したが、少女は悲しくも辛くはなかった。
事実は動かせない事を知っていたからだ。

唯一つ辛いのが、病が進行して以来、三つ年の離れた妹が毎晩少女の部屋に忍び込んで来ることだ。
少女の才能と比較するにも及ばない、年相応の学習能力を持つ‘普通の’妹だ。
そしてその思考も年相応に屈託がない。
『私がお姉さまをお助けします』
幼い妹は懸命に少女の手足を摩り、神の祈り、少女の髪の手入れをした。
姉を思うが故の純粋な行動。
少女は困惑し、父に妹の『夜の訪問』をやめるように頼んだが、『お前を思う幼い気持ちを汲んでやってくれ』と逆に諭された。  

そして、その日がやってきた。
少女の運命を決定ずける、運命の日。
痺れが肺まで届き、息が出来ない。
病室に集まった父が、母が、主治医が、何かを叫んでいるが耳に入らない。
苦しさに喉を掻き毟ろうとするが、既に両手は僅かなぜん動を繰り返すだけであった。
『お姉さま!』
扉が開き、妹が部屋へと駆け込んでくる。
『お約束通り、お助けいたします』
白く小さい両腕を、ベットの上で悶え続ける少女の胸に当てる。
『・・・・神様、お助け下さい』
少女の小さな祈りに答えるように、両手から光が漏れる。 同時に少女の呼吸が楽になる。
大きく咳き込むと、やがて通常の呼吸へと落ち着いていく。
口元から涎をたらし、目元に涙を浮かべながら、少女は妹を見つめる。
『・・・それは』 『毎日お祈りをしているつちに、出来るような気がしていました。今、お姉さまを見て、絶対に出来ると思いました。・・お姉さまの手、とっても綺麗です』
言われて少女は始めて妹に対し、‘手を伸ばしていた’事に気が付いた。
肺だけではなく、手足からも痺れは感じなかった。
『信じられん!なんという事だ!おお、神よ!』
父は妹を抱き上げ、何度も神への感謝を口にする。
『本当に、なんと言えばいいのか・・・』
『奇跡を前にしては、医術は無力なものですな。だが、私はこの場に立ち会えた事を生涯の誇りとします』
『間違いありません‘癒しの奇跡’です。・・・すぐにロンバルディアへ報告し、『聖人認定』を受けるべきです』
『あの・・・』
大騒ぎをする周囲に対し、少女は遠慮がちに声をかけた。
『少し眠らせて頂いてもよろしいでしょうか?』  

・・・ふざけるな
全ての人々が 部屋から出ていった後、少女は再び動くようになった拳を固く握る。
誰も気持ちは分からぬだろう。
感動的な奇跡により、一命を助けられた可哀想な少女の気持ちを。
平凡な妹に宿った奇跡により助けられた、哀れな病に犯された姉。
こんな惨めな気持ちは、手足の自由を失った時にも感じなかった。
いつでも彼女は死に向かう自分の運命を、自分の意思で考え、選択してきた。
命は尊い。
生きようとする意思が尊い。
死の恐怖と向き合いながら、そう理解してきた。
だが、今は、一瞬で彼女は「奇跡の聖女」の付属品となってしまった。
奇跡が、彼女の人生で積み上げたもの全てを否定したのだ。
 
 
90: 拾郎:2016/02/11 00:18 No.305
続き

その後の人生は、惰性のようなものだった。
妹は『聖人認定』を受け、法王庁に『聖女』として引き取られていった事。
聖女を輩出した名門は、更に家名が高まり、少女も『聖女が最初に救った姉』として羨望を浴びた事。
父が病で倒れ、少女の成人と共に家督を引き継いだ事。
いずれも自身の知性と学習能力を以てすれば、難しい事では無かった。
『妹に生かされた』あの日以来、胸に宿った惨めな気持ちを隠し続ける事に比べれば。

変化が生まれたのは、家督を継いで五年目の事だった。
法王庁の消滅。
調停者ベルザインの「全ての返還」宣言。
そして、特殊能力を授かった洗礼者達。
洗礼者による新たな秩序も形成されつつあったが、遠く離れた街では野盗化した洗礼者による略奪も相次いでいるという。
家督を継いだ領主として、自ら洗礼を受ける決断をしたのは当然の事と思った。

『凄いね、君』
『洗礼』を終えた後、一人の男が声をかけてきた。
中性的な容貌に柔和な笑み。
『今まで'邪視(グラムサイト)`を発動させた洗礼者の記録は、例にない。鍛え上げた精神の賜物だよ』
後に、知る。
その男こそが調停者ベルザインであることを。
『これからは、全てが君の`邪視'の先にある。また、出会える事を祈っているよ』
そして、彼女は理解した。
自分はもう、妹の引き立て役では無いことを。
新たな世界の中核にいることを。
だから、まずは探すことにした。
愛しい妹。
聖女に祭られた哀れな妹、アトワイデを。
そして教えなくてはいけない。
‘新たな世界’のルールを。
他の誰でもない、このエルドイド・リベンデールが。
たった一人の妹。
‘サーシャ’・アトワイデ・リーベンデールに。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー