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イベントシナリオ:「ウルライヒの空中要塞」1

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
イベント:ウルライヒの空中要塞

「お恥ずかしい話になりますが、聞いて頂けますか?」
「心配するな。お前の話はくだらないか、恥ずかしいのどちらかだ」
「それなら、安心して聞いて頂けますね」
蒼い月光を避けるように、身を潜めた貨物置き場の倉庫の陰でキールベインは微笑んだ。
「審問官見習い時代に、氷結海を拠点とする異端者討伐に同行したことがあったんです。
まあ、簡単に言うと『海賊退治』みたいなものですが、相手は何分海を拠点にしていますので、こちらからは追い込みが掛けられません。
ですから、我々は海賊船の補給地の荷物、木箱や酒樽に紛れ込む事にしました。
ですが、荷揚げされて海に出た日はは大い湿気まして、僕は釘うちされた酒樽の中で、嘔吐物まみれになりました」
「・・・恥ずかしい話ではないさ」
耳まで覆う毛皮の帽子に長髪を覆ったジグ・ブライトは、コートの内側から金属製のボトルを取り出した。
「つまらない話だがな」
右手に威力を絞った瞬間燃焼の『炎熱』を発動、ボトルの蓋を捻ると、白い湯気と共に紅茶の香りが広がる。
「だから、荷物に紛れての浸入は二度とやりたくない、という話だろう?」
「逆です。もう一度やってみようという提案です。」
キールベインは冷たさを増す夜風の先にある『城』を見つめた。

堅実にして強固な造り。
それが、キールベインがその『城』を見たときの第一印象だった。
切り出した含錻岩を幾枚も重ねた丈高い城壁。
その上端はノコギリ状の胸壁となり、城門の両脇から伸び、四方にそびえる物見の塔を結んでいる。
組み上げられた石壁の感覚に所々には狭い小窓-矢坐間が開いている。
一回り大きな窓は、バリスタか投石器用か。


だが、この程度の『城』であれば、アフガルド中にいくつも存在する。
浸入に悩むのは、その『城』が、『浮遊する岩盤』の上に構築されている事だった。

「地上に降りても、岩盤の厚みがあるので、補給は城壁から張り出した船積滑車で行うため、時間が掛かる。・・・弱点と言えば、弱点ですか」
「補給と言うより搾取だな。この街の機能はあの浮き石への食糧、資材、火薬、家畜の搬入を最優先させている。」
「家畜も運び込むっと言うことは、随分世話好きの人がいるのでしょうか。動物の飼育は手間がかかりますが」
「さあな、大型魔獣の餌かもしれん」

『ウルライヒの空中要塞』。
三年前に、調停者ベルザインより、洗礼者ウルライヒに下賜された『自在に飛行する大地』の上に築城された無敵の空中要塞。
アフガルド西部の混乱を制定した後、北上、即ち「北の教会」に向かっているとの情報を受け、キールベインはジグ・ブライトと共に、空中要塞が停留している街にで情報収集を図っていた。
「ゲロまみれになりたいのか?」
「内部に浸入するなら、地上に接原している今しかありません」
「・・・時々だが、お前を尊敬するよ。だから・・・」
飲み終えると、ジグ・ブライトはキールベインにボトルを伸ばす。
ごく、自然に。
「ありがとうございます」
受け取ろう手を伸ばしたキールベインの腹部に、左手の宿した灼熱の一撃を叩き込む。
「ごふッ」
倒れこむキールベインの首もとを締め上げる。
「だから招待してやるよ、ウルライヒの空中要塞に。・・・返吐は吐いてもらうがな」


続く

 


105: 拾郎:2016/02/14 23:04 No.357
続木

いつの頃だったか。
『相棒』に訪ねた事がある。
『そりゃ暇だぜ、牢の中はな』
両手を拘束する鎖をジャラジャラと鳴らし、顎髭を掻きながら答える。
『だから俺はいつもしている事がある。それはな・・・』


「おい、勝手に寝るんじゃねえぞ、クソ神父」
頭のから浴びせられた冷水が、傷だらけの全身に指すような痛みを与え、キールベインの意識を現実に引き戻す。
張りつけにされた両手に食い込む縄が、水を吸い鬱血した手首をさらに締め上げる。
武器は当然として、衣服まで剥ぎ取られ、地下牢に吊るされて三日、いや四日か。
朦朧とする意識は常に現実と白昼夢の間をさ迷い、現状の認識が日を増すごとに困難になっていく。

「俺達はお前ら法王庁には、散々いびられてきたんだぜ」
衝撃。
頭部に何かが当たった
地下牢を訪れる、鎧姿の男達の誰かが投げつけた酒瓶が砕け、石床に飛散する。
「もうちょい慈悲を示して下さってもバチはあたらねえよなぁ、神父様よぉ」
「搾取するだけしといて、神様のもとへドンズラするのは、ちょっと甘すぎやしませんかねぇ」
粗野な言葉でキールベインをなぶり、様々な物を投げつけた。
石。
金属片。
陶器。
熱湯。
鶏の血袋。
鼠の死体。
致命傷には至らない。
当初は戦力把握のため、人数を数えていたが、今の混濁した意識では、男達が何人いるのかすら把握できない
加えて絶え間なく浴びせられる罵声。
法王庁や異端審問官の否定や、キールベイン個人の容姿、裸に剥かれた身体的特徴を詰るとのを浴びせられた。
拘束状態での張りつけと相乗効果で、着実にキールベインの体力を、それ以上に精神力を追い詰める。

「そこまでにしておけ」
毅然とした、それでいて透き通った声が日響いた。
他人に命令する事に慣れた声。
男達が、動きを止める。
軍靴の音が近づくにつれて、男達が身を固くするのが、キールベインの朦朧とした意識でもはっきりと判った。
「せ、洗礼長殿。げ、現在は我々が捕虜の監視を任命されております」
「一級捕虜への脹杓や殴打はウルライヒ閣下により、固く禁じられている」
足音はキールベインの目の前で止まったが、顔をあげる気力もない。
だが、明瞭で聴きやすい声だと思った。
「貴兄らもウルライヒ閣下に支える兵卒であれば・・・分かっているな」
「はっ、ですから我々は一切手を出すことはなく、」
「もう一度だけ、言う」
声が、刃物の鋭さを帯びた。
「分かっているな」
「失礼致しました!」

「酷い顔だ」
優しく伸ばされた白い手が、キールベインの腫れ上がった頬に添えられる。
寝不足と腫れ上がった瞼のため視線が定まらない中、そな繊細な手から視線を這わせる。
金糸で刺繍の施された袖口。
機能性とデザインを同居させた白い軍用服。
詰襟には、『浮遊する城』を意匠化した金ボタン。
涼しげな目元と長い睫毛。
赤みがかった栗色の髪は、動きやすように後頭部で束ねられている。
-誰だ。
靄ががかった頭で記憶を反芻する。
面識はない。
だが、非常に良く似た容姿の人物に会った事はある。
思い出せない。
誰に似ているんだ?

続く



 
116: 拾郎:2016/02/15 00:13 No.368
続記

「辛い思いをさせて申し訳なかったね」
水に濡らした清潔な布が、汚れた体を拭っていく。
「調停者様の新時代のための選抜軍と謳えど、ひときわ剥けばご覧の通り、ならず者の集まりだ」
私自信も含めてね、と自嘲気味に続ける。
「だが、私なりの戦いでもある。君のような未来ある若者を『法王庁残党狩り』から救う戦いだ。理解してくれるか、異端審問官キールベイン」
突如名前を呼ばれて、思わず顔をあげる。
翡翠色の瞳が、真っ直ぐに向けられていた。
「私の妹も、かつて法王庁に世話になっていた。その恩に報いたい。君たち法王庁が、かつてこのアスガルドの秩序をどれだけ心血を注いで守っていたかを知っている。私は、一人でも多くの者を守りたい。だから・・・」
白い手が、キールベインの頬に添えられる。
「率直に言おう、協力してほしい。旧時代と新時代を繋ぐ存在になるのは、君たちが必要だ。このウルライヒ空中要塞は、『北の教会』を徹底的に破壊するだろう。一人でも多くの尊厳ある魂を救うために、キールベイン、君の力を貸して欲しい」
ああ、そうか。
キールベインの思考が明瞭となり、静かに納得する。
同時に安心感が広がった。
「貴方の言葉、。届きました・・・僕の返事は一つです。」
口の内側も負傷し、言葉は不明瞭であったが、キールベインはしっかりと答えた。
「お断りします」

「何!?」
「せめて騙すのであれば、言葉と同時に術を使うべき出なかった。
見事な術ですね。貴方達は『奇跡』と読んでいるでさたっけ?
申し訳ありませんが、精神支配に抵抗するのは、苦手ではありませんので」
キールベインの口許が表情を作ろうとするが、ひきつった頬が上手く動かず、不適な笑みを形成する。
「呆れたわ、`邪視(グラムサイト)'に抵抗したのは、貴方が初めてよ」
はっきりと、口調が変わった。
高潔な騎士から、蛇の舌を持つ淑女のものへと。
「北の教会の戦力でも聞き出そうとしましたか?
そんな事をすらば、僕はライナス課長に異端審問にかけられてしまいますよ」
「素敵ね、キールベイン。」
顔を寄せ、耳に絡ませるように囁く。
「貴方みたいな子、好きよ。堕としがいがあるんですもの」
「ぐっ!」
意識が酩酊する。
先ほどよりも協力な精神支配。
視界が急速に暗転する。
何か明かりが欲しい。
抵抗への道標となる明かりが。

キールベインの願いに答えるように、赤い炎が灯った。

「誰に断り入れて、そいつで遊んでいるんだ?お答え頂きたいな、洗礼長殿?」
地下牢の扉の開放と共に、長身の人影が足を踏み入れる。
『洗礼長』と良く似た、詰襟の軍用服。
揺れる長髪。
「そいつの首は私のものだ。合流した初日にウルライヒ陛下も認めて下さった事実だ。手柄の横取りとは、名門中の名門貴族の出身の名が泣くぞ、エルロイド・リンデンバーグ殿」
洗礼長エルロイドの詰襟には、指一本分の隙間を空け、細くそして赤く燃焼する『炎の首輪』が浮いていた。
今度こそ、キールベインは腫れ上がった頬に笑みを浮かべた
「・・・元気そうですね、・・・ジグさん」

 


 
119: 拾郎:2016/02/15 00:59 No.371
「・・・随分とご執着のようね、そんなに'具合が良かった`のかしら?」
織手で口許を隠し、『炎の首輪』にも動じる様子はない。
「まだ分かってないのか」
ジグ・ブライトの目が細め、一歩足を踏み出した。
「そいつは私から調停者への献上物だ。ウルライヒ陛下もその意味が分かるからこそ、空中要塞に向かえ入れた。その事実を踏まえて、もう一度聞く」
更に一歩、顔を寄せ会う程、近づける。
「誰にことわり入れて、こいつと遊んでいるんだ?」

至近距離での視線の交錯。
先に動いたのは、エルロイドであった。
「借りにしておくわ、ジグ・ブライト」
「分ければいいんだよ」
『炎の首輪』を霧散させ、ジグ・ブライトは長髪を掻きあげる。
「仕事熱心も結構だが、『北の教会』攻略まで、あと47時間だ。少し気晴らしでもしたらいい」
「ご忠告、感謝するわ」
琥珀色な瞳を伏せ、静かに礼をする。
「西側での戦場介入も、上空制圧からの砲撃で片付けたんだろう?陸戦部隊の連中も、暴れ足りなくて憂さ晴らしを探してる。空挺団も自慢の速錐翼で羽ばたけない。・・・勝ちすぎるのも、考えてものだな」
「そうでもないわ。面白い新兵器も拾ったもの、貴方には不向きかも知れないけど」
同僚同士の近況報告。
だが、そこには言葉の裏に牽制が含まれている。
-調子にのるな
-誰に口を利いている

「ここにいましたか、ジグ・ブライト戦務長、エルロイドがリンデンバーグ鮮烈長」
開け放たれた扉からの二人を呼ぶ声で、張り詰めた糸は緩和された。
「招集がかかりました。直ちに戦議室にお集まりください」
「・・・わかった」
一瞥すら残さず、二人の詰襟姿が去る一瞬、キールベインは呼び出しの人影を見た
精巧な造りの自動人形(オートマター)。
要塞に囚われて以来初めて、身が震えた。
戦慄といってもいい。
見間違える筈はない。
あれは確かに。
「・・・'銀水晶`」
呆然と呟くキールベインの視線を遮るように、地下牢の扉が閉まった。

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