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小話「ジルボルトの演説」

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時代設定:アズにゃんが、少女と出会う一年くらい前、「西の教会=洞窟教会」に所属していた頃の話

小話「ジルボルトの演説」

第八教区の北西部。
アスガルド半島の中でも最も信仰の厚い地区と言われている。
その源は、硬質岩盤の断崖絶壁に掘られた、通称‘カサルヴァの洞窟教会’。
硬い岩を刳り貫いたトンネルは、大聖堂を中心におよそ40もの教会群、修道房、礼拝堂を結んでいる。
およそ100年前に‘聖カサルヴァ’が蚤一本で掘り始め、その生涯を掛け彫りぬいたと伝えられる、荘厳な天然構造建築物だ。
創世暦004年現在、この洞窟教会は、信仰厚き者たちの加護を与える地となっていた。
複雑な洞窟建築は、強固要塞であり、『法王庁残党狩り』から逃れた者たちが、数多く身を寄せている。
散発的にな‘洗礼者’の襲撃が続く中、大規模な‘洞窟教会’の襲撃が噂が広がっていた。

「だが、我々は‘聖カサルヴァ’の加護がある!」
ジルボルトは礼拝堂に集まった人々の前で、声を張り上げる。
騎士、農夫、職人、そして様々な人々。
信仰を捨てなかったため、近隣、そして教区外の街から迫害を逃れて集まってきた人々だ。
「かの聖人が、風雪に耐え、硬き岩を穿ち続けた理由はなにか!?それは信仰に基づく信念のほかならない!」
ジルボルトの両脇には、数名の黒衣の人影が控える。
その胸元に輝くは異端審問印(マグノリア)
すなわち、異端審問官。
「我々も、貫こう!『我々の未来への扉へと通じる岩盤を』!」
ジルボルトの力強い言葉が、壁画を、聖印を、そして聴衆の耳を振るわせながら、洞窟の内壁に共鳴する。
そして、沈黙。

「・・・それでは、我々の現状、‘残党狩り’の動向、今後の方針をお繋ぎします。質問・意見は後ほど、時間をとりまとめて受け付けます」
沈黙を破ったのはジルボルトの右端に控えていた、僧侶服姿の尼僧であった。
戦闘用自動人形(オートマター)、ジェーンドゥ。
精密器械である彼女は、予定時間になると同時に淡々と与えられた使命を実行する。
集まった人々は、手にした報告書を読み上げるその声に耳を傾け、静聴する。

「分かりにくいんだよ、お前の話は」
演説終了後から微動だにしないジルボルトの左端で、アズール・バールは短く呟いた。

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