アットウィキロゴ
マグノリア@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

マグノリア@Wiki

承フェイズ③

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
承③
「なるほど、見事だ。」
巨躯の魔獣と灰色の戦闘人形が繰り広げる死闘を、専用の望遠鏡で眺めながら、ウルライヒは鷹揚に頷く。
‘湖畔の英霊’の動きは流石のものだ。
雪原をものともせず、俊敏に、そして獰猛に襲いかかるイエティの動きに合わせ、飛跳ね、滑りながら回り込み、左手の槍で反撃する。
華麗にして流暢。
一流の歌劇のような完成された動き。
「だが、それだけだ」
反撃は、浅い。
分厚い毛皮と皮下脂肪に阻まれ、致命傷どころか、有効打すら与えていない。
「‘時間稼ぎ’をしたいのか、それとも腰が引けているのか」
‘湖畔の英霊’は精神連動により超高速起動を実現しているが、補助的に目視による確認が必要なはずだ。
つまり、ライナス・バルグは‘湖畔の英霊’の付近に潜んでいる。
無防備な本体を晒す事を恐れ、姑息に身を隠しながら。
「賢明とも言えるが、‘穴櫓’に篭っているようでは・・・」
古流チェスの戦術に例えて笑う。
「こちらは‘囲い四手刺し’で打たせてもらおう」
それは、棋士に実力者がある場合に取られる、王道の一手。

「鳥?」
『空中要塞』から放たれた影を見て、ジェームスは呟いた。
バリスタは上空に向けられたままだ。
城外に落下した魔獣も気になるが、上空への牽制を維持するためには、防壁班に任せるしかない。
「・・・いや」
背後でリーベンが彫の深い顔立ちをしかめた。
日々において冷静を要求される狩人出身のこの男が、ここまで感情を表すことは珍しい。
「中央山脈で、何度も狩場を荒らされた」
すぐにジェームスも鳥ではない事に気付いた。
全幅四メトルーに及ぶ翼。
猛禽の頭部。
しなやかな胴体と鋭い爪を生やした力強い四肢。
「グリフォン!」
その数二十頭近く。
数頭の背には鞍が取り付けられ、軽装鎧で身を包んだ騎手が乗っていた。
『空中要塞』に最もふさわしい、騎兵。
「ご自慢の空戦隊でお出ましか!ご迎撃用意!」
落ち着け。
ジェームスは自分を叱咤しながら、バリスタ隊に指示を出す。
『空中要塞』が有翼の魔獣を使役する事は分かっていた。
改良されたバリスタが牽制以上の真価を発揮するのは、これからだ。
「滑空姿勢時は捉えられない速度ではない!引き付けてから撃て!」
背後でリーベンも声を張る。
実績を持つ‘達人’の頼もしい一言に、ジェームスは感謝する。
‘新鮮な血肉’の匂いをその鋭敏な嗅覚で嗅ぎ取ったグリフォンが地上へと距離を詰める。
その距離は百メトルーをきった。
-撃て
指示を出す直前に、ジェームスの体は‘硬い風’により吹き飛ばされ、城壁の外へと舞った。

吹き飛ばされたのはジェームスだけではない。
大人十人掛かりで動かすバリスタが、‘強風’で煽られ次々と横転し、その一部は城壁から落下し、地面に叩きつけられ四散した。
「綺麗に揃えてくれていると・・・」
ゆっくりと降下してくる、毛皮のコートを纏った女。
白粉と紅による、派手目の化粧。
「蹴散らすのが、楽でいいわ」
シュッ
横転したバリスタを遮蔽にしたレーベンが、愛用の弓より放った矢は、女の周囲に纏わりついた風により軌道をそらされる。

「‘暴風’の洗礼者か」
鉄道整備の高所作業で使用する安全帯を城壁にフックしていたのが幸いした。
安全帯のワイヤーで城壁に宙吊りとなったジェームスは姿勢を制御しながらも、城壁の上数メトルーの位置に浮かぶ毛皮の女を見上げる
「うれしいわ。‘暴風の女王(ストーム・プリンセス)’って、呼んで欲しいのに、誰も呼んでくれないの」
女は、ジェームスの‘真上に’移動する。
「貴方が隊長さん?近くで見ると頼りなさそうね。
でも、私は貴方の対場が分かるわ。
私もやりたくもない空戦隊の隊長をウルライヒ閣下から無理やり押し付けられて、大変なのよ。だから・・・」
右腕をかざす。
指先から放たれた‘圧縮された風’が、再び矢を射ようとしていたリーベンを吹き飛ばす。
「お仕事はさっさと終わらせたいのよねぇ」
そして、轟音と振動。
なんとか姿勢を制御していたジェームスの体が、再び空中で踊る。
ワイヤーを支点に回転しながらも、城壁の北東に当たる頂点が崩れているのが視界に映る。
鉄道騎士団の技術を持ってしても加工が困難な甲武岩製の城壁が、積み木のように崩れている。
「その点、‘硬岩(ロック)’はいいわよねぇ」
‘暴風の女王)’は、城壁の瓦礫を掻き分け現れた、岩のような表皮で覆われた大男を見て、大仰にため息をつく。
「‘暴れる事’しかできないから、それ以上の事は命令されないんですもの」

続く


 

339: 拾郎:2016/03/17 17:01 No.768
続き

-城内に洗礼者の侵入を許す
-城壁を破壊される
この二点が発生した際、ルナン・クライトスが前線に出る取り決めだった。
だから、轟音と振動が礼拝堂を襲った際、ルナンはそのどちらかが起こったと直感する。
礼拝堂に張り巡らせた電声管が状況を伝えるより早く、胸ポケットを二度叩くと、ルナンは礼拝堂より外廊へと通じる扉へと向かう。
『ルナン司祭!』
‘物見の塔’へ詰めている訓練生からの伝声管が最初に震えた。
太目の体系ながら、悪くはない戦闘センスを持ち、何より‘目がいい’
本人は前線を志願したが、ルナンの指示により最重要となる‘物見の塔’へと配置していた。
『敵です!『空中要塞』の陸戦部隊が、教会後方より接近しています!』
「何だと!」

「‘空中’に目がいくばかりに‘地上’が疎かになる。・・・‘振り騎士’はお気に召したかな・」
陸戦部隊は、傭兵を取り立てて採用した、ウルライヒの‘歩兵’だ。
荒れくれ者の集まりだが、C級AFを使いこなす百人により構成される‘制圧部隊’は、追い込みをかけるのは有効だ。
事前に地上へと降ろし進軍させる事で、‘視覚による威圧感’を与える事を期待していたが、
‘硬岩’が単純落下により城壁を破壊した今、その任務は‘進軍’から‘制圧’へと変わる。
「さて・・・」
窓の外を眺めるウルライヒの視線の先は、城壁の外に張り出した搬出滑車が、巨大な鉄檻を二対、吊り下げていた。
「最後の一手を打つとしようか」
ウルライヒが呟くと同時に、固定具が解除され、鉄檻は地上へと落下する。
‘湖畔の英霊’と戦闘を継続するガザルドの真横に落下した鉄檻より、さらに二体のイエティが這い出していく。
「これにて、我が‘囲み四手刺し’の完成」
『空中要塞』より眼下を見下ろすウルライヒには、地上の戦局が良く分かる。
西側には、‘感染’により支配された三体のイエティ。
上空には二十体のグリフォン。
城内には‘暴風’と‘硬岩’の洗礼者。
そして背後からはC級AFで武装した陸戦隊。
「次の一手はどうでる、ライナス・バルグ?


転フェイズに続く

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー