クライマックスフェイズ①
空中要塞・庭園
城壁内部、規則正しく整列された彫像と石段の合間を、高速で`湖畔の英霊'が駆け抜ける。
右手と一体化したクロスボウを排除。
右手首より右肘にかけて内蔵した鋭利な刃物を開放。
駆け抜け際に切断した彫像の頭部や腕を、鋭利な切断面を向け、後方に蹴り飛ばす。
「手持ちの武器の不足は現場における応用で補う。・・・相変わらずの現実主義ですね」
飛来する鋭利な石欠片にも、サーシャはにこやかな微笑を絶やす事はなく、右手をかざす。
「でも、私の`聖壁'が、この程度では破れない事を、忘れてしまったなら、悲しいです。」
右手前方に展開した'不可視の障壁`に、石欠片は激突。
四散した石欠片が飛び散る前に、'湖畔の英霊`は最寄りの窓を突き破り、城内へと侵入していた。
「突破出来ないなら別のルートから、ですか?合理主義な所もお代わりないですね。でも・・・私は追いかけっこも得意なんですよ」
サーシャは、羽織った外套の留め具を外すと、白詰襟
の軍服姿となる。
「天より来たりてその身に纏え、‘羽衣’!」
ケステ・ジャイムが設計し、ルナン・クライトスが破損部位を'再組成`させた、新たな'湖畔の英霊`。
打ち上げによる空中要塞への突入を前提にしているため、過去最軽量の擬体であるため、防御は劣るが、速度は従来型の二倍に匹敵する。
言わば、速度に特化した設計だが、
振りきれない。
'羽衣`により、己の重量を限りなくゼロに近づけたサーシャは、高速で城内を駆ける'湖畔の英霊`にぴったりとついていく。
しかも。
「その階段は、展望室には通じていませんよ」
「左に曲がると行き止まりなので、注意して下さいね」
軽口とも、本心ともとれる助言を送る余裕。
城内の至る所を駆け巡る'湖畔の英霊`を、'聖壁`を駆使し、展望室へは決して近づけない。
「あっ、そっちに行っても、元の場所ですよ」
外壁へと通じる階段を駆け上っていた'湖畔の英霊`が、振り向き様に、左手のより'光の槍`を放つ。
「きゃぁ!」
初めてサーシャが纏った'聖壁`を突破するが、右肩をかすめたのみで、床板を貫き、階下へと消えていった。
「惜しかったですねぇ、それとも外してくれたんですか?少し、気になりますけど、このお人形さんは、喋れないんですよね」
外壁の上に立った'湖畔の英霊`に、破れた軍服の右肩より白い肌を露出させたサーシャは、少しだけ思案顔を浮かべた後、微笑んだ。
「今、お姉様が邪視(グラムサイト)で見た結果を私に`転写'してくれました。ふふっ、見えますよ、ライナスさんとお人形さんを繋ぐ、精神接続の『糸』が。だから・・・」
かざした右手から`聖壁
'を拡張。
`湖畔の英霊'は、外壁から空中へと押し出される。
「直接聞きに行きますね、ライナスさん」
呟くと同時に、微笑みを浮かべたまま、自身も空中へと跳んだ。
続く
空中要塞・庭園
城壁内部、規則正しく整列された彫像と石段の合間を、高速で`湖畔の英霊'が駆け抜ける。
右手と一体化したクロスボウを排除。
右手首より右肘にかけて内蔵した鋭利な刃物を開放。
駆け抜け際に切断した彫像の頭部や腕を、鋭利な切断面を向け、後方に蹴り飛ばす。
「手持ちの武器の不足は現場における応用で補う。・・・相変わらずの現実主義ですね」
飛来する鋭利な石欠片にも、サーシャはにこやかな微笑を絶やす事はなく、右手をかざす。
「でも、私の`聖壁'が、この程度では破れない事を、忘れてしまったなら、悲しいです。」
右手前方に展開した'不可視の障壁`に、石欠片は激突。
四散した石欠片が飛び散る前に、'湖畔の英霊`は最寄りの窓を突き破り、城内へと侵入していた。
「突破出来ないなら別のルートから、ですか?合理主義な所もお代わりないですね。でも・・・私は追いかけっこも得意なんですよ」
サーシャは、羽織った外套の留め具を外すと、白詰襟
の軍服姿となる。
「天より来たりてその身に纏え、‘羽衣’!」
ケステ・ジャイムが設計し、ルナン・クライトスが破損部位を'再組成`させた、新たな'湖畔の英霊`。
打ち上げによる空中要塞への突入を前提にしているため、過去最軽量の擬体であるため、防御は劣るが、速度は従来型の二倍に匹敵する。
言わば、速度に特化した設計だが、
振りきれない。
'羽衣`により、己の重量を限りなくゼロに近づけたサーシャは、高速で城内を駆ける'湖畔の英霊`にぴったりとついていく。
しかも。
「その階段は、展望室には通じていませんよ」
「左に曲がると行き止まりなので、注意して下さいね」
軽口とも、本心ともとれる助言を送る余裕。
城内の至る所を駆け巡る'湖畔の英霊`を、'聖壁`を駆使し、展望室へは決して近づけない。
「あっ、そっちに行っても、元の場所ですよ」
外壁へと通じる階段を駆け上っていた'湖畔の英霊`が、振り向き様に、左手のより'光の槍`を放つ。
「きゃぁ!」
初めてサーシャが纏った'聖壁`を突破するが、右肩をかすめたのみで、床板を貫き、階下へと消えていった。
「惜しかったですねぇ、それとも外してくれたんですか?少し、気になりますけど、このお人形さんは、喋れないんですよね」
外壁の上に立った'湖畔の英霊`に、破れた軍服の右肩より白い肌を露出させたサーシャは、少しだけ思案顔を浮かべた後、微笑んだ。
「今、お姉様が邪視(グラムサイト)で見た結果を私に`転写'してくれました。ふふっ、見えますよ、ライナスさんとお人形さんを繋ぐ、精神接続の『糸』が。だから・・・」
かざした右手から`聖壁
'を拡張。
`湖畔の英霊'は、外壁から空中へと押し出される。
「直接聞きに行きますね、ライナスさん」
呟くと同時に、微笑みを浮かべたまま、自身も空中へと跳んだ。
続く
- 375: 拾郎:2016/03/30 00:22 No.836
-
続き
「申し訳ありませんね~、『北の教会』の皆さん」
既に三匹まで数を減らしたグリフォンと、尚も死闘が続いていた中庭に落下したサーシャは、一礼する。
「皆さんが必死に計画して、全力で努力して、一丸で打ち上げた'湖畔の英霊`は、私と一緒に落下してしまいました」
地上接触直前で'羽衣`を発動させたサーシャより遅れる事、数秒。
マントを展開した簡易飛行形体となった'湖畔の英霊`が、サーシャの背後より斬りかかるが、'聖壁`により弾かれる
「ご覧の通りです」
「サ、サーシャさん?」
「あっ、お久しぶりです、ルナンさん。私達はライナスさんにご用があるので、終わったら後でお茶でもしましょうね」
「な、何を?」
「あ、でも逃げといた方がいいかも知れないです。私の'癒し`は、強力ですから」
祈るように手を合わせると、強烈な発光。
手負いの三匹のみならず、瀕死の重症で地に伏せていたグリフォンまでもが起き上がる。
「では、忠告はしましたからね~」
魔獣の咆哮が重なる中、再度'羽衣`を発動。
混乱に陥った中庭を後にした。
「ふふっ、今度は追いかけっこは逆ですね」
'羽衣`を発動させたサーシャに追いつけるのは、'湖畔の英霊`しかいない。
背後に迫る'`湖畔の英霊'に、サーシャは余裕の笑顔を送る。
「でも、『糸』はここからは出てますね」
開け放った扉は、北の教会の執務室。
その中央の黒檀の机の前に、ライナス・バルグは立っていた。
銀フレームの眼鏡に鉄の杖。
「痩せましたか、ライナスさん?私は最近食べてばかりいるから、中々体重が落ちなくて困っているんです」
「・・・世間話をしに来たのではあるまい、サーシャ・アトワイデ・リーデンバーグ」
執務室に脚を踏み入れたサーシャを、ライナスと`湖畔の英霊が挟み込む。
「そうそう、用事がありました。でも、その前に」
覗き込むように、ライナスに顔を近づける。
「『目が見えなくなった』のはいつからですか、ライナスさん?」
「お人形さんの異常な遠距離操作は、視力の代償だったんですね。その鉄の杖も、歩行障害のためなんかじゃない。音による反響で、状況を確認するためですよね?」
「・・・誰にも気づかれては居なかったのだがな」
「思い出して下さいよ、ライナスさん。私は『治癒』を司る第四課の課長ですよ」
「さて、どうします?私と一緒に来て貰えれば、ライナスさんの目、直ぐにでも直せますよ?」
「断る」
「そう仰ると、思ってました。なら、少し痛い思いをしていただく事になります。・・・でも、ライナスさんの策略を出し抜かせて貰っていい気持ちなので、出来るだけ痛く無いようにしますね」
「要らぬ気遣いだ。・・・私の計画は予定通り進んでいる。お前を、空中要塞から引き剥がす事が出来てる以上はな」
「負け惜しみなんて、ライナスさんらしく・・・」
その時、サーシャは机の上に置かれた『追憶の杯』に気づく。
「・・・使ったのですか、その杯を?」
「だとしたら?」
「五年前に、私も見ています。確か、その杯は『自分の能力を他人に限定委譲する』能力」
「その通りだ」
「貴方に、その杯を託した方は、貴方の副官であった・・・」
「ジュノイ・アーク。先天的な`思考共有'の使い手だ。ただし、ジュノイの能力を委譲したのは、私ではない」
サーシャは、ライナスの意図に気づき、僅かに声を荒げた。
「まさか、空中要塞で`光の槍'を外したのも、最初から`彼'の開放が狙いだったの?」
無言でライナスは眼鏡に右手を当て、呼び掛ける。
「いつまでに遊んでいる、異端審問は始まっているぞ、キールベイン」
直後、『空中要塞』の西側に、内部からの巨大な爆発。
「人使いが荒い、とかそんな言葉で片付けられる話じゃありませんね」
両耳を塞いだ手を話すと、キールベインは本音を呟く。
空中要塞に潜入した`湖畔の英霊'が放った`光の槍'は、三層下の牢獄の扉を破壊していた。
「だけど、残されているのは僕一人」
火薬庫に火種を放り込んだがら事による混乱は予想より、小さい。
それは、単純にこの空中要塞に、動ける人間が残っていないという事を意味している。
半年前に、『北の教会』を旅たつ際の目的は、『空中要塞の偵察』
二週間前に、『空中要塞』の捕虜となる事で潜入して以来、定期的にライナスへ空中要塞の情報を思考共有により、送り続けていた。
城の戦力、進路、進行予定時刻。
そして、今、ライナスより最後の使命が託された。
空中伯ウルライヒの討伐
すなわち、異端審問。
牢獄より脱出した直後、手袋型AFシャランサの右手は、回収する事が出来た。
無人の監視室に無造作に置かれていた所をみると、恐らく武器とは思われていなかったのだろう。
「もう一度、君の力を貸してもらうよ、ジャンルイジ」
手袋をはめた右手を握りしめ、キールベインは走り出す。
空中要塞・展覧の間 階下
走り続けていたキールベインが立ち止まる。
踊り場にて、キールベインを待ち受けていた人影。
爆発により、城壁に穴が開いたことにより、城内は風が吹き荒れている。
その風に長髪をかき乱しながら、複数の`炎の矢'が点った。
「お久しぶりですね、ジグさん。早速ですが、そこを退いてもらえますか?」
「お前の首は、私がもらう約束だったよな、キールベイン」
クライトスフェイズ②に続く