⑥
隔離病棟の入り口で、フランク・ラパードは預けていた荷物を受け取る。
強靭な肩幅に合わせた特注の肩当。
分厚い胸板を覆う鎖帷子。
通常の二倍の重量で製鉄された槍。
鋼糸の弦が張られた弓と矢筒。
そして、銀の聖印。
一度だけ振り返ると、白煉瓦の壁で囲まれた治療院から退出する。
法王庁崩壊以降、キスリングは「北の教会」に身を寄せ、失われた‘アニエスの遺産’の研究に取り組んでいた。
既存のあらゆる錬金術の流派と異なる時空錬成‘時間遡航’。
法王庁残党が絶望的な戦力差を覆し、ベルザインを討つための最後の切り札。
ライナス・バルグが用意したかつての異端錬金術師の地下研究所に籠り、助手の自動人形(オートマター)と共に、キスリングはひたすら‘師’の遺産の研究を続けた。
断片的な資料を重ね合わせ‘時間遡航’の発動した際には、‘智賢人’と言われたケステ・ジャイムをも驚嘆させた。
だが、理論上「法王庁崩壊前夜」までの‘時間遡航’が可能とされた直後、あの‘ベルザインの襲撃’により多くが失われた。
隔離病棟の入り口で、フランク・ラパードは預けていた荷物を受け取る。
強靭な肩幅に合わせた特注の肩当。
分厚い胸板を覆う鎖帷子。
通常の二倍の重量で製鉄された槍。
鋼糸の弦が張られた弓と矢筒。
そして、銀の聖印。
一度だけ振り返ると、白煉瓦の壁で囲まれた治療院から退出する。
法王庁崩壊以降、キスリングは「北の教会」に身を寄せ、失われた‘アニエスの遺産’の研究に取り組んでいた。
既存のあらゆる錬金術の流派と異なる時空錬成‘時間遡航’。
法王庁残党が絶望的な戦力差を覆し、ベルザインを討つための最後の切り札。
ライナス・バルグが用意したかつての異端錬金術師の地下研究所に籠り、助手の自動人形(オートマター)と共に、キスリングはひたすら‘師’の遺産の研究を続けた。
断片的な資料を重ね合わせ‘時間遡航’の発動した際には、‘智賢人’と言われたケステ・ジャイムをも驚嘆させた。
だが、理論上「法王庁崩壊前夜」までの‘時間遡航’が可能とされた直後、あの‘ベルザインの襲撃’により多くが失われた。
その一つが、キスリングの‘時間遡航’に関する全ての記憶
「そんなもんさ」
フランク・ラパードは呟く。
自身も大敗を喫し、再生に多くの時間を費やした。
最大限の努力を長年続けても、最後は紙一重で全てを失うかもしれない。
だが、絶望的な状況でも命は助かったのだ。
「それで、十分なんだよ」
‘時間遡航’の喪失は、唯一にして最大の‘切り札’を失った事を意味する。
それでも、ライナス・バルグの死亡により指導者を引き継いだ、新たな第八課課長は‘大聖伐’を発令する。
フランク・ラパードはそれを無謀とは思わない。
フランク自身が経験したかつての‘大聖伐’も、紙一重の連続だった。
「そうだろう、なあ、アニエス」
かつての同僚に、同意を求めるように呼びかける。
キスリングはアニエスの思い出をたくさん語ってくれた。
長い年月をかけて、アニエスの思いを知る事ができた。
だからこそ、恩は返さなければならない。
「そんなもんさ」
フランク・ラパードは呟く。
自身も大敗を喫し、再生に多くの時間を費やした。
最大限の努力を長年続けても、最後は紙一重で全てを失うかもしれない。
だが、絶望的な状況でも命は助かったのだ。
「それで、十分なんだよ」
‘時間遡航’の喪失は、唯一にして最大の‘切り札’を失った事を意味する。
それでも、ライナス・バルグの死亡により指導者を引き継いだ、新たな第八課課長は‘大聖伐’を発令する。
フランク・ラパードはそれを無謀とは思わない。
フランク自身が経験したかつての‘大聖伐’も、紙一重の連続だった。
「そうだろう、なあ、アニエス」
かつての同僚に、同意を求めるように呼びかける。
キスリングはアニエスの思い出をたくさん語ってくれた。
長い年月をかけて、アニエスの思いを知る事ができた。
だからこそ、恩は返さなければならない。
‘第三次大聖伐’への発令に備えて、「北の教会」集合地に向かう。
「いい顔しているナ、色男」
「何かいい事あったのかイ?」
集合地の手前で異形の影がフランク・ラパードを迎えた。
「旦那方には適わないさ」
森の中で待ち受けていた双頭の蜥蜴人、ボリエ・ディコンとパディー・ディコンに、フランク・ラパードは大仰に肩を竦めてみせた。