・・・それで、言いたいことはもう終わりかしら?」
最高速に近い速度で走る列車の窓から乗り込んできた二人の非常識な来訪者に向けて、カノンは赤と緑の宝玉が埋め込まれた二連の指輪を嵌めた右手をかざす。
指輪から放たれた真冬の稲妻のような青白い閃光と轟音が、さらに速度を上げ続ける先頭車両に牽引される貨物車両を支配した。残った窓のいくつかは爆風の衝撃で砕け、焦げた床材からの煙が、白雪の舞う銀世界へと吸い出されていく。
「悪いわね。あいにく‘神父様のありがたいお話’って嫌いなの。」
指輪を見せ付けるように、肩まで伸びた髪をかきあげると、カノンは、悠然と微笑む。
「チッ、アーティファクトか。それも、けっこう上位のやつだな。どうする、キールベイン?」
貨物用の木箱の陰に、その巨躯を何とか滑り込ませると、ザックは右肩に担いでいた酒樽ほどの木箱を下ろしながら、神父服の若者に問い掛けた。
「後方車両に出現した異形の獣は、‘灼熱公’率いる鉄道騎士団が引き受けてくれています。時間がありません。押し切ります。援護を。」
負傷した左腕に包帯を縛るように巻きつけると、キールベインは毅然と答えた。ザックはやれやれ、といった風に頭を振る。
「・・・先ほどの質問に、まだ答えてもらっていませんよ。」
白煙を掻き分けるように立ち上ったキールベインが、カノンに対し、右腕に構えた銃を向ける。だが、銃を突きつけられても、カノンは操縦車両へと続く扉の前に悠然と立ったまま微動だにしなかった。
「あら、法王庁の異端審問官様ならご存知だと思ったけれど。‘異形と化した『悪魔』は超越した力を得る代わり、元に戻る術は無い’。‘灼熱公’のお相手として用意していたけれど、あなた達が乗り込んでくると知っていたら、もう二、三体は用意してあげたのに。あの手の連中なら、ちょっと餌をちらつかせれば尻尾を振っていくらでも集まってくるわ。」
悠然と語るカノンの言葉に、キールベインは叫ばずにはいられなかった。
「他者の願いに付け込んで道具とする、お前たちの目的は何だ!」
「フフッ、無知で無力なの願いを神に代わって、我ら‘パナケアの矢’が望みを叶えてあげたのよ。・・・さあ、おしゃべりは終わりにしましょう。これから先は、私に勝ったら教えてあげるわ。」
水晶色の瞳を細めながら、カノンは右手をかざす。
「させない!」
キールベインが間合いを詰めると同時に、カノンの指輪から紫電光、が放たれた。右側に飛び込むようにかわすが、頭部を狙って放たれた紫電光は、キールベインの頬を刺すような刺激を与え、金髪を逆立てた。
「懐に入り込めば、勝機があるとでも!」
「よそ見するな!」
ザックの怒号ともとれる叫びと供に、放たれた弾丸が、貨物車両のカーク材製の壁を吹き飛ばした。
「クっ!」
爆風に弾き飛ばされたカノンが床から身を起こすより早く、キールベインの銃身から放たれた弾丸が、二連の指輪の宝玉を破壊する。
「助かりましたよ、ザックさん。」
油断無く倒れたままのカノンに銃をむけながら、キールベインはザックに声をかける。
「へっ、本当はお前を狙ったんだけどよ。審問官がくたばった後、トンズラしちまえば、残りの刑期とは関係ないからな。」
おどけたように笑うザックの左腕上腕部に固定された、巨大なハンドガンの銃身からはまだ硝煙が燻っていた。
強化弾を打ち出すための図太い六連の回転弾層と銃身は、鈍い黒色の輝きを放ち、底部には折りたたみ式の銃剣が備え付けられていた。その規格外の重量と強力な反動を、ザックの強靭な肉体で押さえ込む。その破壊力は、‘罪人’が異端審問官の‘同伴者’として選ばれる基準の一つである戦闘能力を、ザックが十分以上に所有していることを証明していた。
派手な音を立て、後部車両と貨物車両を結ぶ黒樫製の扉が開くと、赤銅に輝く鎧を身に着けた男を先頭に、鉄道騎士達が姿を見せた。
「予定より少し早かったじゃないか、‘灼熱公’。こちらのパーティーは予定より早く終わっちまったからよ、今から迎えに行こうと思っていたところさ。」
弾層を回転させ、空になった強化弾の薬莢を排出させながら振り向き、ザックは‘聖ナタリアの鎧’を纏ったキンラーセンを確認する。ザックと比較しても引けを取らない巨漢が纏ったその鎧は、大量の返り血を浴びて半身が黒く染まっていたが、キンラーセン自身に目立った外傷はないようだ。
「第5教区鉄道騎士団長キンラーセン以下、正騎士6名後部車両侵入者二名の排除完了につき参上した。・・・鉄道騎士たるもの、時間には正確でないとな。」
ニコリともせず応えると、キンラーセンは食い散らかされたお菓子のような惨状の貨物車両を一望すると、歩みを進めた。
「だが、早めに来て正解だったようだ。‘ヘルメス機関’を搭載した先頭車両の真後ろで、重火器をする馬鹿者達が交戦していたと思うと肝が冷える。クレスリーの奴、雪上船まで使ってとんでもない奴等を運び込んでくれたものだ。」
「そうかい?だが、文句はあちらの審問官にいってくれ。‘迅速を最優先’と命令されたもんでね。・・・これでも丁寧にやったんだぜ?クレスリーのおっさんが、秘蔵の酒瓶を振舞ってくれるらしいからな。」
「言いたい事は山ほどあるが、後回しだ。」
おどけたように笑うザックに対し、キンラーセンは憮然とした表情を一瞬浮かべたが、すぐに騎士達に指示を出した。
「列車の確保は完了した。まず、暴走状態にあるこの列車を、通常運行速度に戻すぞ。」
背後を鉄道騎士達が先頭車両へ向かって駆けていくのを確認しながら、キールベインは床にうつ伏せに倒れたままのカノンに、銃身を向け、静かに問い詰める。
「これであなたの手札は全て無くなりました。この列車は無事にヘルデ山脈を通過して、第六教区へと抜けるでしょう。・・・僕たちの勝ちです。」
微動だにしないカノンの緩やかな曲線を描く背中に、キールベインの声が降り注ぐ。
「さあ、約束どおりしゃべってもらいます。強奪した、ゲルモニーク研究書の行方、‘悪魔の目’の製造・入手経路、・・・そして、‘パナケアの矢’の、指導者バルドルの目的を。」
「勝ち?お前たちの・・・勝ちだと?」
笑いとも、震えとも取れるさざ波が、カノンの全身を揺らした。巨大地震直前の余震を感じさせる動きだった。
「それは、この私の、この姿を見ても言えるのかぁ!異端審問官!」
絶叫にも似た咆哮がカノンの口から漏れると同時に、その全身がいびつに歪む。刺繍の施された服が引き差れ、光沢を放つ灰色の肌が現われる。
「‘悪魔化’!?」
「遅い!」
異変に気付いたキールベインが引き金を引くよりもはやく、カノン両腕が枯れ木の枝のように干からびると、直後に爆発的な勢いで伸び、体全体を床に叩きつけた。
さらに乾燥した質感の腕は、先頭車両へ続く扉を開けようとしていた鉄道騎士を吹き飛ばした。そのまま、床に倒れた騎士の喉下にのびる鉤爪の生えた手を、倒れながらもキールベインの連続で放った銃弾が打ち抜いた。
「コイツ自分で‘悪魔の目’を!」
「撃て!」
突如出現した‘最後の門番’を前にして、配下の騎士達に動揺が広がる前に、キンラーセンの剛然とした命令が飛んだ。
鉄道騎士達は反射的にライフルを構える。訓練に裏撃ちされた動きから放たれた弾丸が、なおも膨張を続けるカノンの体を断続的に揺らした。だが、それだけだ。
「ちっ!パーティーはもう終わりだって言っただろうが!」
銃声が鳴り止むのと同時に飛び出した巨漢が、腰にさげた大剣を鞘から無造作に抜く。大筋の銀光が、既に人の形を留めていない‘悪魔’へと振り下ろされた。
「・・・あんた、さっき自分で言っていた言葉を忘れた訳じゃねえよなあ。‘一度異形化すると、元に戻す方法は存在しない’」
豪腕に任せ振り下ろした大剣を、既に自分より巨大なシルエットを持つ‘悪魔’が片手で止める姿を見上げながら、ザックがうめき声を漏らした。
「その通り。・・・そして、こうも言ったわ。‘異形になれば、常識を超越した力を手に入れる。’」
声だけは、異形になる前と同様の涼やかなものだった。同時に凶暴な勢いで、‘悪魔’の片手が跳ね上げられ、大剣もろともザックの巨躯を吹き飛ばす。
「‘そして悪魔となった者の能力は、母体となった人間の能力に比例する’。・・・さあ、もう一度言ってくれないかしら。・・・誰が誰に勝ったんですって、異端審問官!
パーティーはこれからだ!」
「キンラーセン団長。時間がありません。これからは僕の指示に従って動いてもらいます。」
立ち上がったキールベインは、右手に持った銃の弾装へ黒色の弾丸を装填しながら、傍らで長剣を構えた赤銅色の鎧の騎士に呼びかけた。
「これは‘異端審問官‘としての協力要請です。」
‘灼熱公’から質問も反論が出る前に、キールベインの硬質な声が封じた。
「・・・承知した。」
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、キンラーセンは頷いた。
‘異端審問印’を下げたこの若者の横顔に浮かんだ表情が、怒りによるものであると理解したからだ。
カノンは酔っていた。
酒を飲むのは好きだった。酔う感覚も好きだった。
だが、今までの感覚を遥かに超越した‘酔い’がカノンの脳天から爪先まで支配していた。
自分の放つ無造作な一撃で、物が、人が、容易く吹き飛ぶ。先ほどからあの黒衣の巨漢や、鉄道騎士達が何度も攻撃を仕掛けている。衝撃は感じるが、それだけだ。
楽しい。単純に楽しかった。
だから、あの異端審問官が‘灼熱公’に何かを告げた後、銃を構えるのを見ても何もしなかった。いや、あえて無視した。
全身を支配する強力な‘酔い’がその足掻く様を見たがったからだ。予想通り、キールベインが片手銃から放った弾丸は、自分にかすり傷一つつけることはできなかった。その代わり、視界を閃光が塞いだ。
「照明弾か!」
「‘灼熱公’キンラーセン、参る!」
‘灼熱公’の裂帛の声と供に右わき腹に衝撃を受けた。一瞬、体が浮き上がり、次の瞬間には、氷雪の暴風が支配する雪原の上に投げ出されていた。さらには、遠ざかっていく、悲鳴にも似た列車の駆動音。
「このような子供だましで、逃げ出せるとでも思っているのか!?」
通常の数倍の速度で、白色に覆われた視界が回復していく。すぐに‘白の渓谷’は、より烈しさをました吹雪に包まれていたが、‘人間時’とは比較にならないほど研ぎ澄まされたカノンの視覚は、谷の中腹の斜面に沿って轟然と走り去る列車の上げる黒煙を捉える。あの速度では、当初の計画通りに、‘渓谷’の側面に続くうねりを曲がりきる事が出来ずに、乗り込んだもの共々谷底への落下は確実だろう。
「だが・・・そのような楽な死に方は、私が望むところではない」
追おうとした足を動かしかけ、止めた。
ヘルデ山脈の白に覆われた景色の中に、短く祈りを捧げる黒い神父服と、左腕にハンドガンを固定したまま大剣を担いだ巨漢を確認したからだ。
「付き合わなくても良かったんですよ、ザックさん。」
「冗談じゃないぜ、キールベイン。この俺が殴られたままで、黙っておとなしく留守番できるか。」
吹き荒れる雪風を全身に浴びながらも、二人の会話はひどく落ち着いたものだった。
「・・・たった二人で、この私の相手が勤まると思っているのか?」
口調こそ押し殺したものだったが、驚愕と怒りが‘悪魔’の全身から発散されていた。だが、それに答えるキールベインには、迷いも怯えも無かった。
「思っているから残ったんです、異端者カノン。・・・お望みどおりおパーティーの続きを始めましょう。」
「なめるな!神に祈り、すがるだけしかできないの負け犬が!」
祈りの姿勢を解き、静かに銃を構えるキールベインの言葉に反応するかの様に、‘悪魔’のかざした両腕から炎と紫電の渦が、ほとばしった。
後方より断続的な爆音が、断崖に反響して響いた。
なおも速度を上げる列車に残ったキンラーセンは、キールベインが残した言葉を反芻する。
・・あなた達の誇りを、信じています。
あの場所に自分も残りたい気持ちは強かった。だが、鉄道騎士としての名誉は、敵を討ち取る事よりも、列車が無事に目的地に着くことだ。
顔を上げると、キンラーセンは部下たちを見回し、腹の底から声をだした。
「聞け!この列車は暴走を続けてから三十分近く経過している。後5分ほどで‘白の渓谷’の谷底へ落下するだろう。そうなれば、積み込まれた物資を待っていた辺境の生活は、五十年前に逆戻りだ。」
鉄道騎士達は声も無く見守る。
「だが、この列車は必ずこの‘白の渓谷’を抜ける!我ら鉄道騎士のがいる限りな!」
「おおっ!」
全員の顔を見回しながら、キンラーセンは進軍笛の様な声を上げた。
「これより全員をもって修復にあたる! ジェラードとシンクレアは駆動系の再調整だ。操縦桿が効かない場合は、1番シャフトに直接つなげ!」
「ハッ!」
敬礼と供に、二人の騎士が先頭車両へと駆け込んでいく。
「アダムス副長はヘルメス機関の二段冷却を担当!・・・難しい作業ですがお願いできますね?」
「なに、初孫の夜泣きをあやすのに比べれば楽なものじゃ。」
最年長である白髪頭の副長は、顔に刻まれた皺をさらに深くして笑った。
「マーティン、ジェームス!お前たちは全車両の3番から7番バルブを開放しろ!先頭車両への負担を減らす!最後尾まで終了したらその場で補助ブレーキを確認!先頭車両より合図があるまで待機だ!」
「了解!」
「それから、ルーニー。お前はここに残って警備を担当だ。敵はやつらだけではないぞ。雪崩の予兆にも十分注意しろ。・・・大事な任務だ、できるな?」
「は、はい!」
まだ幼さが一番若い騎士は緊張した面持ちながら、力強く敬礼をする。
「いい返事だ。・・・それと信号弾の準備だ。クレスリーもあそばせている訳にはいかんからな。」
部下たちの小気味の良い反応に自分たち鉄道騎士団の‘戦’の勝利を確信した。
‘白の渓谷’はヘルデ山脈中腹にある難所であり、アスガルド鉄道建設の際の、三大難所として知られている。
‘谷’というよりは、‘亀裂’に近く、その断崖はヘルデ山脈の尾根より吹き付けられる氷雪によって、何千年にも渡って形成されてきた銀光の氷解で覆われていた。
その‘白の渓谷’に突き出た岩盤は、まるで名匠によって作られたバルコニーのように、風雪と年月が築き上げた谷の全景を一望できた。
だが、キールベインもザックも景色を見ることは適わなかった。‘悪魔’が放った無数の火弾と紫電の洗礼を受け、雪面に叩きつけられていたからだ。
「法王庁が、なぜこのアスガルド半島を支配できているのか、あなた達に分かるかしら?」
かすかに体を動かしている二人に近づきながら、谷底に叩きつけられる風音に乗せ、語りかけた。
この二人には確実に死を与える前に、十分な恐怖を与えなければならない。絞首刑になる死刑囚が十三階段を昇る義務があるように。
「法? 信仰? 違う! 他者の追随を許さない圧倒的な‘力’があるからよ!そしてその法王庁を凌駕する力を手に入れれば、新時代を掴む!」
「・・・あれば、の話だろ?」
「・・・へえ、直撃のはずなのに、まだ立てるんだ。」
立ち上がったザックを見て、カノンいびつに貼り出した肩をゆらして笑った。
「ガキの頃から人に褒められた覚えの無い身だが、それでも自慢できる事が二つあってよ。それが、頑健さと・・・」
無造作に大剣を構えると、轟然と間合いをつめる。
「諦めの悪さだ!」
「それがどうした!」
先ほどと同じように、振り下ろされた大剣を、亜竜を思わせる鉤爪が受ける。
「犬の身の甘んじでいるだけあって、理解力に乏しいようね。この力を前にお前たちも、法王庁も、全てがたたき伏せられる!」
「・・・お前こそ勘違いしているようだから、教えてやるぜ。」
満身の力を込めた鍔迫り合いの中、ザックは笑った。
「お前はさっき、キールベインの事を‘神に祈り、すがる事でしか生きられない弱者’と言ったがな、確かに多いぜ、祈るだけで自分からは決して動かない聖職者は・・・祈るだけじゃ何にも変わらないのにな。」
額から流れた血が、無精髭の浮いた頬を伝わり、足元へと落ちる。
「だからこそ、あいつは祈るだけの‘神父’でなく、自分の腕を血に染めて戦う‘異端審問官’を選んだんだよ。最後まで戦いもせずに、安っぽい‘悪魔の力’に頼ることしかできなかった‘弱者’とは違ってな!」
「だ、黙れえ!」
絶叫とともに頭を振ると、鉤爪を大きく振りかぶった。そして、否定をするようにザック目掛けて叩きつける。
だが、その一瞬にザックは左手の上腕部に固定した大型ハンドガンから回転弾層を外しながらと、大きく後方に跳躍した。
「今だ、片付けろ!キールベイン!」
「何だと!」
前方を見上げたカノンの視界に、襤褸布のようになった神父服をヘルデ山脈からの風にはためかせながら銃を構えるキールベインの姿が映った。
「まだ立てるというのか!?」
神父服の右胸部分は焦げ落ち、首から下げた異端審問印が剥き出しになっている。左腕には引きつるような激痛があり、満足に動かなかった。
だが隣接状態にあったザックが離れるのを確認すると、キールベインは聖印の刻まれた弾丸を装填した銃を右腕一本で構える。そして、一度銃身を己の額に当て目を閉じた。
「父よ。友の友情に感謝します。」
そして、目を開くと同時に聖句を紡ぎ、引き金を引く。
「第一種封印弾装填終了!。‘汝の魂に、救済がおとずれんことを!’」
聖句と供に放たれた聖弾は、カノンの中枢に命中すると、その体を覆い尽くすように青白い炎とともに爆発を起こす。
「ガッ!まだだ!・・‘悪魔’の、いや‘私の力’はまだ・・・」
封印弾によってもたらされた業火に包まれながらも、‘悪魔’の生命力はなおもキールベインに向かって火弾を放とうとする。
同時にその体を包む炎が、ザックが落とした五発の強化弾が装填されたままの回転弾層に触れ、さらに誘爆を引き起こした。蒼い炎を紅い火柱が包みこむ。
「い、異端審ん・・か・・・」
「大切なのは痛みを知った上で踏み込む事。あなたは自分の痛み以上に、他人の痛みを知らなすぎた。・・・そして暖かさも。」
炎の中に崩れていく‘悪魔’を前に、キールベインは片膝をつくと、祈りを捧げた。