ガス灯が薄明かりで照らす、静寂に包まれた街路に、ぴちゃぴちゃと音が響いた。
なんの音だろう。
リューイ・ボルカは単純な疑問を抱いた。
‘疑問を抱き、原因を探り、真実を手繰る’
神跡記録官を志す神学生のリューイにとっては、幾度となく繰り返してきた作業だ。
そしてリューイが抱いた疑問は、自分の胸を見ることで解決した。
大きな傷が開いた胸から、大量の血が滴り落ち、石畳を真っ赤に染めている。
ぴちゃぴちゃ。
赤黒く開いた‘傷’は、‘穴’と形容したほうがよさそうだ。
(なんだ。夢か・・・)
夢でなければ、もっと痛いはずだし、ただの神学生である自分が、こんな不可解な目に遭うはずがない。
(どういう状況で僕が死ぬ夢なんだ?)
目覚めれば忘れているかもしれないが、‘疑問’は解決しておくにこした事は無い。
くすんだ石畳。
初期型のガス灯。
一区間に渡って続く赤レンガの壁。
場所は学校裏の倉庫街みたいだ。
なるほど、ここなら夜になれば人通りはまずないから、僕が死んでも不思議ではない。
ガス灯の明かりが、レンガの壁に二つの影を引き伸ばしている。
石畳に、二つの人影が立っている。
一人は黒い服を着て、白い手袋をはめた女の人だ。
青掛かった金髪に、目鼻立ちのはっきりした顔立ち。
すごい美人だけど、どこか怖い印象がある。
この人、たしか二日前に会ったな。
校門にたって、校舎のほうを見ていたっけ。
窓から外を見た僕と眼が合った。
瞬きしたら消えていたから、あれも夢だったのかな。
もう一人は、‘赤い眼の悪魔’だ。
異形の体に、漆黒の翼、白刃の爪と牙。
そして、‘赤い眼’。
自分で夢を見ていて言うのもどうかと思うけど、随分とクラシックな‘悪魔’だなあ。
悪魔の鍵爪の先端が赤黒く染まり、ねっとりとした肉片まで付着している。
そうか、あれが僕の腹を貫いたんだな。
あれなら致命傷だ、僕が死んでも不思議ではない。
黒服の女の人と悪魔が、戦っている。
女の人が‘光の礫’を放ったり、‘悪魔’が翼を翻せば赤レンガが崩れたりと結構派手だ。
悪魔が哂い、女の人が何か言っている。
何、僕に対して言っているの?
真剣な表情で言ってくれているけど、ごめん、夢だからよく聞こえないや。
(まいったな。明日は大事な‘’の中間試験があるのに、自分が死ぬ夢を見るなんて)
担当のリデック教官は、普段は手抜きの授業をするが、試験問題だけはしっかり作り、その結果を成績に反映させる。
明日は起床の鐘を合図に登校して、サミルが追試にならないように、『30分で分かる‘’対策講座』を実施する予定だ。
中間試験が終われば、サミルとベイト、そしてフォーリーとサエスの五人で、海を見に行くことになっている。
神学校に進級して出来た友達との、初めての旅行だ。
一人でも欠かすわけには行かない。
流血で真っ赤に染まった胸から腹に掛けて、やけに生暖かい。
きっと寮に住み着いた猫が自分の部屋に潜り込み、腹の上で寝ているのだろう。
それに引き換え、痛みは全く無かった。
(そうだよな、こんな大怪我したことないから、痛さなんて分からないよな)
意識がぼんやりとし、視界がぼやける。
多分、目覚めが近いのだろう。
納得がいくと、リューイは眼を閉じる。
相変わらず、胸からは流血が続いている。
これが現実ならとっくに死んでいるだろう。
(あれ、変だな)
(この感覚、前にも経験があるぞ)
(ああ、そうか。馬車事故の時に・・・)
十年前、トワイダル渓谷の崖崩れに僕と父さんと母さんを乗せた馬車が巻き込まれた。
(父さんと母さんは即死、僕は大怪我で三日間生死の境をさまよったものの奇跡的に助かった)
その時、負った傷も今と同じ大きさだった。
(いや、全く同じ傷だった)
解決したはずの疑問が、逆に大きくなる。
リューイの全身に鼓動が走る。
(あれは、‘事故’なんかじゃなかった)
消去されたはずの記憶が、急速に結びつく。
鼓動は震えへと変わる。
(あれは、確か・・・)
襲撃だった。
(僕はその時)
父さんと母さんと一緒に殺された。
誰に。
(‘悪魔’に)
誰に。
(‘赤い眼の悪魔’に)
誰に。
(目の前のコイツに)
誰に。
「このクソ野郎にだ!!」
リューイの意識が弾けた。
>やっぱり続かないので骨組み構想をアレしとく
◆コンセプト
伝奇ものにありがちなシーン連発で‘猟犬’の話を構成する
1.「一般人主人公巻き込まれオープニング」
→うpした小話。
異形に変化したリューイ(主人公)が‘赤い眼の悪魔’をボコる
2.「‘自分の力を認識しろ’‘今までの日常を切り離せ’と言ってくるパートナーの出現」
→黒服の女(異端審問官)
数日前から、‘悪魔’の動きを監視していた。
元の姿に戻ったリューイの疑問に対しては「知りたければついて来い」
リューイ、‘日常’を切り離すことを拒否
3.「パートナーと信頼関係を築く前に‘敵’の出現により共闘」
→学園イベントが進むと、‘赤い眼の悪魔’が再登場。
大変なことに。
女異端審問官苦戦。
リューイ、頑張る。
「武装錬金」とか「ベトコニア」風味で。
◆余談
・鷹安さんの『魔王の分断された身から生まれた、6匹の力ある悪魔』を元にアレしました。
・リューイの中の人(悪魔)もその内の一体。
・悪魔同士が喰らい合って、最後の一匹が‘魔王’の力を得る。
・女異端審問官は、『13人の聖者』の関係者。
・リューイの中に‘悪魔’がいた理由は、法王庁が封印の触媒として利用し(ry
・↑の事を女異端審問官は知っている、が、ときめきゲージが上がると心苦しくなる。
・ムシャクシャしてやった。
学園モノ風味ならなんでも良かった。
今は反省している。