2-8 「自動人形(オートマター)」
【背景】
君の胸にあるものは、二つだけだ。
生まれた日の記憶はない。
生まれた日の記録もない。
幼き日の記憶はない。
ただ、遠い昔から、君は君、-自動人形(オートマタ―)-だった。
人としての喜びも悲しみも、経験も財産も、目標も生甲斐も、君にとっては無価値なものだ。
悠久の時を『生き続ける』君は、どれほど美しい花でもやがては朽ち、どれほど澄んだ水でもやがては濁る事をしっている。
喜びも悲しみも、時とともに風化し、目標も時間さえかければ達成してしまう。
だから、君の胸にあるものは二つだけだ。
すなわち、-従順ー と -従属-
君の価値は、君以外の他人が決める。
君の最もそばにいる人に従順/従属であれば、その人は満足する。
君の価値を高めてくれる。
ある時は、愛妾として。
ある時は、亡き娘の代役として。
ある時は、民を導く聖女として。
君が従順にして従属であればあるほど、皆満足した。
皆が幸せになった、
時代に応じて、君は人々を満足させ、そして最後はいつも。
一人残された。
今も、新たにであった人の望みにも応えている。
今までと同じように、従順に、従属に。
だけど、なぜこの人は、こんなにも『困った顔』をするのだろう。
君の胸の内に、従順と従属以外の何かが灯ろうとしている。
【解説】
北欧風天羅版の傀儡(くぐつ)です。
星間航行時代に作られた、『自我を持つ人工生命体』で基本寿命はありませんが、メンテナンス設備がない北欧風天羅の世界では、ゆっくりと整備不良による機能停止に向かっています。
超長期間に及ぶ星間航行における「艦内機能の維持」を目的に作られているため、「主(管理者)の命令には従順」「与えられた目的を実行する」事を優先します(従順と従属)。
艦内での目的に応じて多種の機能を持つ自動人形が製造され、戦闘目的で製造された個体もあるようです。
北欧風天羅の世界では、自動人形を新たに製造する技術は失われていますが、二王国王家には『疑似的な生命を与える神の技』についての伝承があります。
また、稀に古代遺跡にて『睡眠(コールドスリープ)中の自動人形』が発掘される事もあるようです。
強い個性に導かれた新たな経験は、人工生命体に夢をみさせる事はあるのでしょうか?