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『「異端者」と「異端審問官」』

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第2章・『「異端者」と「異端審問官」(仮)』


2-1・「異端者」と「異端審問官」

登場人物
ザッシュ:異端審問官・PCポジション
シスリア:異端(悪魔?)・NPC



教会は赤黒い死の色に彩られた。
最近広がっているシスリア教団の本部は、法王庁をあざ笑うかのように教会にあったのだ。
そして『異端審問官』と兵士たちが派遣された。
巨大な迷路のような教会の中のあちこちで戦いが始まった。
死を恐れない狂信者たちは技量で兵士に劣るが、士気で勝っていた。
少なくない犠牲を払いながらも、法王庁の兵士たちは進んだ。

一際豪奢な扉が開け放たれている。
不用意に飛び込んだ兵士は首と胴を切り離されるという代償を払わされた。
頭に遅れて、体が倒れ込んだ。
場所から考えれば首謀者が居るべき場所だった。
そしてその首謀者はおそらく『悪魔化』していた。
鍛えられた兵士たちといえども、躊躇するのは仕方がなかった。
「お前たちは引き返して、他の人たちに加勢してくれ。・・・ここは俺がやる。」
暗く沈んだ声で異端審問官、ザッシュが言った。

部屋に足を踏み入れたザッシュを迎えたのは、一人の女だった。
「・・・久しぶりだな。」
血の匂いが充満するその部屋で女が笑っている。
「遅かったじゃないの。デートに女を待たせるなんて男として失格よ。」
以前の彼女の優しい微笑みはない。
おどけたように言うその顔は狂気に歪んでいる。
純白だったドレスは返り血による朱の斑点に染め上げられていた。
「・・・すまない。今まで決心がつかなかった。」
ザッシュは戸惑いながら、それでも着実に歩みを進める。
「今まで、ということは、今はついているということね?」
「・・・ああ。これ以上、『悪魔』として人を殺すのはつらいだろ。」
ザッシュが懐から異端審問印を取り出す。
「俺がこの手で・・・君を止める」
異端審問印がまばゆい光を放つと同時に、光り輝く小剣へと姿を変える。
「くっ・・・くすくすくす。止める? あたしを?」
シスリアの亜麻色の髪がざわめく。


(俺の間合いまで、あと4歩)
ザッシュが床を蹴る。
「くすくすっ・・・久しぶりのダンスというわけね?いいわ!つき合ってあげる!」
シスリアの髪の束が硬質化し、金色の刃となり襲いかかる。
体を屈めて攻撃をやり過ごす。
一瞬前、ザッシュの頭があった場所を金色の刃が通過する。
轟音と共に後ろの机が砕ける音がする。

もう一度、床を蹴る。
今度は左右から金色の刃が降りかかってくる。
上下段違いに、しかも時間差をかけて。
右からの刃を自らの小剣で叩き落とす。
「それで左からは、どうするつもり!?」「・・・。」
冷静に、ザッシュは懐から取り出したものを投げつける。
宝石が砕け、淡いエメラルド色の壁が金色の刃と白い光を散らす。
「くすっ、使い切りのクラッカーかしら? なかなか綺麗な演出ね!」

もう一度、床を蹴る。
(あと一歩!)
あと少しでザッシュの小剣が届くというのに、シスリアの表情は変わらない。
「さぁ、最高に盛り上がる所よ! 華麗に舞って頂戴!」
上下左右からの金色の刃。
止まるわけにはいかない。
間合いを離すわけにはいかない。
右からの金色の刃を小剣で切り上げ弾く。
弾かれた金色の刃と上からの刃が互いに当たり、否、意図的に当てられ軌道をずらす。
ザッシュに左と下からの金色の刃を受ける刃は無い。
「なっ!?」
ザッシュの素手の左手が刃を叩き落とす。
その反動で、スピードを殺さぬまま僅かに右に移動し、下からの刃をやり過ごす。
ザッシュの左手の指が、血とともに落ちた。

(届いた!)
着地と同時に、右腕を突き出す。
シスリアの笑みは変わらない。
彼女は両手を広げて、彼を迎える。
(なぜ?)
ザッシュの脳裏に一瞬疑問がよぎる。
なぜ、防御しないのか。
なぜ、攻撃しないのか。
スピードと全体重が乗った一撃は止まらない。
光る小剣はシスリアの胸を貫き、そのままシスリアごと飛んでいって刺さった。

「なぜ?」
ザッシュはシスリアに近づき尋ねる。
「・・・くすっ・・・・おめでとう・・・ほんとに・・異端審問官に・・・なったんだね。」
なぜ、そんなに嬉しそうな顔をしてるんだ?
ならばなぜ、あの時喜んでくれなかったんだ?
「・・ごめんなさい・・・私・・・弱かったから・・・待てなかった・・・。」
「・・・。」
致命傷だった。
彼女はもう助からない。
「あなたが・・審問官に・・なって・・・心配・・だったし・・・会う機会も・・減って・・・。」
「・・・。」
「悪魔に捧げちゃったの・・・けど・・あなたに・・止めて貰いたくて・・・。」
気が付かなかった。
自分の出世を何よりも喜んでくれていると思ってた。
「あなたが・・どんどん離れて行っちゃうみたいで・・・不安だったの・・私を見て・・・もらい・・・たかっ・・たの。」
「・・・馬鹿な事を。」
ザッシュの口から呟きが漏れる。
「・・へへ・・・やっぱり馬鹿・・やっちゃっ・・た・・・かな。」
「ああ。俺も一緒に逝く為に来たってのに・・・一人だけ逝こうとするなんて。」
シスリアの口の端から血が流れる。
「それは駄目。・・・最後のわがまま・・・あなた・・は・・・・生き・・て。」
「勝手な事言うな!お前も生きて見せろ!・・・聞いてるのか!おい!」
最後に彼女が笑った気がした。
だが、もう彼女の言葉は聞けない。
「なんで今頃になって・・・最後になってかよ!!馬鹿野郎!!」
ザッシュの叫びに答える声はない。
ただ兵士たちの歓声が遠くで聞こえていた。

恭しく、この世で一番大切なものを抱え上げる。
次第に温度を失っていく、その体のぬくもりを少しでも持続させたくて。
「村へ戻ろう。・・・俺たちが過ごした、あの村へ・・・。」
男は恋人を抱え、その場を後にした。





>感想レス
狂気に歪む彼女及び、自我を取り戻す彼女のCVをグリン君NPC女性異端審問官のCVを拾郎君青年キャラにすると場面の想像がしやすいかと思います(笑)

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