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「聖務受託」

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8-2 小話「聖務受託」
登場人物


イルドルフ:司祭(NPC)
カナン=ヨハナン:異端審問官(PC)

法王庁敷地内の中庭は、いくつもの敷地に区切られている。
薬草を栽培する菜園を抜けると、尼僧服の女性の前に広がる光景は、色鮮やかな草木が茂る、落ち着いた庭園へと姿を変えた。
石畳の道の両側には、法王庁の礎を築いた聖人たちの奇跡を象徴的に示した石像や石碑が配置されている。 生まれ故郷に似たその光景を、尼僧は懐かしむような顔を見せたが、すぐに自分の使命を思い出した『聖なる愚者 ジェファード』の像を見上げる師、司祭服の男を確認する。
中年に差し掛かった年齢だが、鍛えられた肩幅は見間違いはない。

「お待たせしました。イルドルフ司祭」
「『冥府解放区』に関する報告書は読んだか?」
前置きはない。いきなりの本題であった。
「はい。ドヴァーリン商会所有のセックヴァベック炭田での蜂起事件ですね。商会から聖騎士団の派遣要請が来ていましたが。」
「今日、『審議会』は今回の事件に対する不介入を決議した。午後には正式に発表があるだろう。」
「それは・・・確かに、既に騒動は治まっています。商会の劣悪な労働環境の噂は流れていましたし。鉱山が今の人たちの手で、運営できるなら・・・。」
「今回、君には解放区に向かってもらいたい。それも法王庁の聖務としてではなく、私の独断による命令で、だ。」
イルドルフの低音の声に変化はなかった。尼僧は二度、瞬きをした後、師を見つめ返す。

「どういうことです?『異端審議会』は彼らを不問としたのでしょう、司祭様?」
「『審議会』では、一部の審議員から強硬に不問とする証拠が出されたらしい。だが、私が報告書から判断した範囲では、少なくとも再度『審問』の必要がある」
 黒髪の尼僧は反射的に、中庭から見える『審議会』が開催されていた白壁の大聖堂を見上げた。
「確かに。‘解放軍’の指導者的立場のシグリッド、ゲラルド両名は、少なくとも錬金術使用の嫌疑がかかっています。」
「それに加えて、だ。解放区では、『眠れる地竜』の伝承がある。『竜』を彼らが発掘していた場合は・・・」
「法王庁は、後手を踏む。それも最悪の形で。」
イルドルフは深く首を縦に動かした。
「『審議会』内部で、『審議官』同士で、どのような駆け引きがあり、今回の決議にいたったかは分らん。しかし、可能性がある以上、それを野放しには出来ん」
「『我々は、異端審問官であるから』ですか?」
「・・・そうだ。」
僅かに憮然とした声でイルドルフは、親娘ほど年のはなれた尼僧の言葉を肯定した。
「私が管轄するなかでは、レグス=バルバレイ審問官とベルン審問官は、第四教区での聖遺物強奪事件の探索。キールベイン審問官は、第五教区の鉄道騎士団と供に、アスガルド鉄道襲撃事件を追っている。今動けるのは君に頼むしかない。」
「君しかいない。頼んだ!、って言ってくれればいいんですよ。」
「・・・繰り返すが、これは私の独断だぞ。最低限の援助しか出来ない。」

尼僧の言葉に含まれた、肯定の意思を確認するように、イルドルフは再度問う。
「もう少し、弟子を信頼してください。『巨神アドセレス』の時だって、無事にやり遂げたでしょう。」
「・・・そうだな。」
弟子の言葉には迷いはなかった。こうなると、逆に泊めるほうが難しい事は、師である自分の方がよく知っている。尼僧は頭を下げると言葉を続ける。
「一つだけお願いします。今回のパートナーには『彼女』をお願いします。」
「・・・許可しよう。」
イルドルフの言葉に、尼僧はニッコリと笑った。
「カナン=ヨハナン、これより「解放区」へと向かいます。

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