黒白のアヴェスターの最終章における
ワルフラーンの台詞。
突如として瀕死のワルフラーンとアフラマズダの前に現れた若き日の完全体
スィリオス。
既に亡くなったはずの彼が、寸分違わない在りし日の姿で佇んでいた。
なぜ一度も相談をしなかった。そんなに頼りないのか、俺は!
おまけにおまえ、俺のアイオーンを使わなかったな。徹底的に役立たずの扱いか!
いや、別に……
聞こえんぞ、はっきり言え!
アイオーンの再現度が高まるほどスィリオスは戦闘力が落ちていくため、実際に
マグサリオンとの戦いでは役立たずだったのは違いない。
だが、ワルフラーンはそれが理由でスィリオスを喚ばなかった訳ではなかった。
おまえに、嫌われると思ったから
知らず漏らした呟きに、他ならぬワルフラーンが呆気に取られた。助け起こそうと傍に寄っていたアフラマズダも目を丸くしており、驚いていないのはスィリオスだけ。
大方そんなところだと、見当はついていた
よし、俺を殴れ
はあ?
おまえの信頼を勝ち得なかった俺の不甲斐なさに罪がある。一度や二度の裏切りくらいで関係は変わらんと伝えきれず、分かってやれなかった俺が悪い
……なんだと
違うぞスィリオス、全部俺が――
いいや違わん。文句があるなら掛かってこい
煽られ、衝き動かされるようにワルフラーンは立ち上がった。心配げな顔のアフラマズダを手で制し、血の混じった唾を乱暴に吐き捨てる。
おまえのそういう、何かと格好つけるとこ……最高に鬱陶しいと思ってたんだよ
気が合うな。俺もおまえの馬鹿で勝手なところが、いつも不愉快で堪らなかった
睨み合い、対峙する男と男。どちらもおまえが気に喰わないと言いながら、そこに恨みや憎しみは皆無と分かる。
事の起こりは、人並みになりたいというワルフラーンの願いにある。ワルフラーンにとってのスィリオスは、最初期に仰いだ教師であり、誰よりも愚直な凡人だからこそ理想の存在だった。
であればこのとき、胸に湧き上がる想いの正体は親友からの贈り物。たとえ息子に遺伝させても、消え去ってなどはいないのだ。
愛がどんな形で、どんな色で、どれほど熱く燃えていたかを知っている。覚えている。ああ俺は、きっとこうするために生まれてきたのだと自然に悟って――
ちくしょう、滅茶苦茶恥ずかしいぞ!
拳を振り上げ泣きながら、ワルフラーンは殴りかかった。迎え撃つスィリオスも苦笑の中に涙を紛らせ、アフラマズダもまた泣いている。
妻と息子と親友を得て、今こそ
最後に己が己を認めること。
それがワルフラーンの――誰からもかけ離れていた男が手にした、輝くほどに凡庸な結末だった。
備考
関連項目
- 尊い -- 名無しさん (2021-07-25 08:11:22)
- これが一応転墜した際の天罰に当たるのかな?ミトラが采配した天罰じゃなくてコウハの采配になるんだろうけど -- 名無しさん (2021-07-25 08:12:22)
- 備考で吹いてしまったわ -- 名無しさん (2021-07-25 08:35:27)
- 備考の一言が全てだわw -- 名無しさん (2021-07-25 08:45:33)
- (≖‿ゝ○)「尊い」( `-_ゝ-´)「尊い」( 🔵‿ゝ🔴)「尊い」 -- 名無しさん (2021-07-25 08:51:20)
- ブラコン妹「よくもォッ! わたしのお兄様に、手をあげたなぁぁぁァァッ!!」 -- 名無しさん (2021-07-25 09:00:06)
- だいぶ離れたところで妹様が尊い…しながら旗振ってそう -- 名無しさん (2021-07-25 09:23:12)
- パンテオンに再登場したら、割りと常識人寄りになってそうだな兄者 -- 名無しさん (2021-07-25 10:50:17)
- このシーンの萌えポイントはワルフラーンが殴れれて悲鳴をあげるアフラマズダだと思う -- 名無しさん (2021-07-25 11:12:54)
- スィリオスもワルフラーンの考えに見当ついてたとちゃんと理解してたのがわかるし、ワルフラーンはスィリオスを憧れ且つ格好つけだと思ってたの尊い -- 名無しさん (2021-07-25 13:15:36)
- 司狼「わかるぜ、何かと格好つけようとするのマジ鬱陶しいよな」 -- 名無しさん (2021-07-25 13:19:23)
- みんなが -- 名無しさん (2021-07-25 14:13:41)
- ↑あれほど気持ち悪いと嫌悪してたちくわが、真にキャラとして認められたマジ尊いシーンだわ -- 名無しさん (2021-07-25 14:14:50)
- 恥が分からなかった男が心底恥じてるんだからしょうがない、認めるしかない -- 名無しさん (2021-07-25 15:58:49)
- 正直このシーンの兄者もお兄様もアフラマズダも超微笑ましい -- 名無しさん (2021-07-25 16:24:01)
- ハリボテの無慙無愧だった男が恥を知って人間になって親友と殴り愛している。尊い!!! -- 名無しさん (2021-07-25 16:55:26)
- オタサー(三英傑)の姫スィリオス -- 名無しさん (2021-07-25 17:57:35)
- 正直このシーン好きすぎて泣きながら読んでた -- 名無しさん (2021-07-25 19:41:16)
- 奪われた程度で尽きるものでは無いというスィリオスが言った通り、それが奪って得たものだとしても、息子に与え手放す程度で消える火種じゃなかったって事なんだな。ほんとスィリオス偉大すぎる…。 -- 名無しさん (2021-07-25 19:53:10)
- 零も勇者も関係なく、ただ親友と殴り合って他人と分かり合う為に生まれた、特別なんかじゃなくてもそれだけでいいと悟った瞬間だからなぁ -- 名無しさん (2021-07-27 07:48:10)
- このスィリオスがアイオーンであることで輝くものがあれば偽物でも本物でも関係ないという兄者の自論も証明されてて非常に良い -- 名無しさん (2021-07-27 10:35:50)
- スィリオスをナーキッドとワルフラーンで支える体制が1番で幸せで手堅いんだよなぁ。ワルフラーンがスィリオスに勝ってしまったのが、やっぱ分岐点よね -- 名無しさん (2021-07-27 18:29:28)
- そもそもナーキッドが白痴だったの自体がスィリオスの覇道を大成させないための真我の差し金なんで、ワルフラーンが脚本外のことしなければナーキッドはずっと兄の脚を引くだけで、スィリオスには真我からの横槍が入ってで上手くはいかなかった気がする。分岐というか最初から詰んでたし、寧ろワルフラーンが台本ぶち壊したお陰で3人とも最期に笑って死ねたとも言えるかなと -- 名無しさん (2021-07-28 19:25:25)
- 覇道が戦闘向きじゃない上に次元が違う武才の兄者にスィリオスが勝つなんて不可能だしそこで分岐はないと思う -- 名無しさん (2021-07-28 19:37:31)
- 零の根源の前ではこんな尊いやりとりですら無価値になっちゃうんだろうな。心の力全否定してるそうだし -- 名無しさん (2021-09-26 11:27:07)
- ワルフラーンのズレのもとだからな だからこそ心の力で勝つという決意はわかる、だからって第一神座はねーだろとも思うが -- 名無しさん (2021-09-26 18:48:13)
- 輝く程に凡庸な結末って表現本当に好き。如何にもスィリオス関係者が得た幸福って感じがする -- 名無しさん (2022-03-16 16:49:21)
- ズレてはいるんだけど、こういう部分あるから人間臭いよねワルフラーン -- 名無しさん (2022-03-16 20:01:05)
- ズレてるなりに勇者として感じた感情は本当に笑ったり泣いたりしているからな、未来のためにあれこれするだけで。で、最後の最後に恥を知って心の底から反省するから全編見終われば嫌いになれるキャラじゃない -- 名無しさん (2022-03-16 20:13:40)
- 何かしら運命が少しでもスライドしてたら、本当に勇者になっていたかもなのにね、兄者 席はないとか言われていたけど、彼もまた生まれるときが早すぎた&活躍できる舞台ではなかったのが惜しすぎる -- 名無しさん (2022-03-16 21:47:14)
- ↑真実、第一天でなければ席があったと思うと惜しいよね。繋がりを絶った後の兄者ならPantheonで出番があってほしいなぁ…… -- 名無しさん (2022-12-11 09:03:00)
最終更新:2022年12月11日 09:03