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蟹
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徳田秋声
徳田秋声
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)竹《たけ》
(例)竹《たけ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)省|線《せん》
(例)省|線《せん》
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(例)[#「たゞ」に傍点]
(例)[#「たゞ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)飽《あ》き/\
(例)飽《あ》き/\
濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
或る日も竹《たけ》岡は会社を退《ひ》けると、省|線《せん》のT―駅《えき》で待《まち》合せてゐるX―子に逢《あ》ふべく電《でん》車に乗《の》つた。彼は面《おも》長の、隆《たか》い鼻《はな》をもつた、額《ひたひ》の削《そ》げたやうな、骨張《ほねば》つた顔《かほ》の持《もち》主であつたが、身体《からだ》も武|術《じゆつ》でゝも錬《きた》へたやうにがつちりしてゐた。彼はどこに旨味《うまみ》もない男であつたが、普通《ふつう》にいつて先づ押《おし》出しは好《い》い方といつて差閊《さしつか》へはなかつた。
竹《たけ》岡は現在《げんざい》のところ細《さい》君と別《わか》れてゐた。兎角《とかく》離《り》合|集散《しうさん》の安|価《か》に行はれる世のなかであつたが大した理由《りゆう》もないのに、二人の子|供《ども》をおいて細《さい》君が実《じつ》家へ帰《かへ》つて行つたには彼もひどく面喰《めんくら》つてしまつた。二十四時間も汽車に乗《の》らなければならない、彼女の田舎《ゐなか》の生家の暮《くら》しが好《い》いのと、我|儘《まゝ》に育《そだ》つてゐるのとで、男のしみつたれなのと、意《い》気地のないのに飽《あ》き/\してゐたところへ、ちよつとした彼の浮《うわ》気|沙汰《さた》から家|庭争議《ていそうぎ》が始《はじ》まつて、高|慢《まん》で我まゝな彼女は、思切《おもひき》りよく田舎《ゐなか》へ帰《かへ》つてしまつた。
竹《たけ》岡は久しぶりで美晴《みは》らしの好《い》い山へでも登《のぼ》つたやうな気|持《もち》にかつたが、さうかといつて悔《く》いがない訳《わけ》でもなかつた。もと/\細《さい》君の親達《おやたち》が感《かん》心しない結婚《けつこん》であつたので、竹《たけ》岡にも多少の意《い》地はあつたけれど、まさか今が今|破裂《はれつ》が来ようとはおもはなかつた。家を出てから友|達《たち》の家を宿《やど》にして、二三日|遊《あそ》んでゐたやうな形跡《けいせき》のあるところを見《み》ると、始《はじ》めから田舎《ゐなか》へ帰《かへ》るつもりでもなかつたやうに思《おも》はれるのであつた。見《み》え坊《ぼう》の竹《たけ》岡はその友|達《たち》の家を訪《たづ》ねようともしなかつた。今になつて考《かんが》へると、訪《たづ》ねた方かよかつたのであつたが、『いゝえ、入らつしやいませんよ』といはれさうな気がして、つい臆劫《おくくう》になつた。そのうちずん/\日がたつてしまつた。彼を取|戻《もど》さない方が好《よ》いといふ気もしてゐた。
それにしても子|供《ども》は何うなるのだらう。多分そのうち細《さい》君の母|親《おや》が迎《むか》ひに来るのだらうと想像《そうぞう》されたが、その場《ば》合彼は渡《わた》さないことに腹《はら》をきめて、頑張《がんば》つてみようなどと独《ひと》りで力んでゐた。
市|電《でん》でT―駅《えき》へ来てみると、X―子は入口のところに立つて見迎《みむか》へてゐた。ちよつと小|柄《から》の痩《や》せぎすな女であつたが、見《み》かけよりは年を取つてゐた。美《び》人といふやうな種類《しゆるい》ではないにしてもスタイルはちよつと酒落《しや》れてゐた。彼女も最近《さいきん》恋《こひ》人と別《わか》れたとかで、会社へ来ても何時も顔《かほ》が冴《さ》えなかつた。
「出口で安田と一|緒《しよ》になつて、ちよつと諷刺《あてこすり》をいはれたが、何んでもないさ。僕《ぼく》もいつまでも彼処《あしこ》にゐようとは思《おも》はないんだ。」
「さう。」X―子は答《こた》えたが、社長の耳《みゝ》へでも入ると、ちよつと面倒《めんどう》だと思《おも》つて、顔《かほ》を曇《くも》らせた。
竹《たけ》岡はX―子が社長と親《した》しいらしいので、始《はじ》めは警戒《けいかい》してゐたが、一度二度と逢《あ》ふ度|数《かず》が重なるにつれて、その方の気|持《もち》は釈《ほぐ》れて来たが、それかといつて、全然《ぜんぜん》その警戒《けいかい》を解《と》く訳《わけ》に行かなかつた。それに逢《あ》つてゐるうちに、何うかすると甚《ひど》く惰《だ》気を生ずることがあつた。X―子の方もさうであつたが、女が直《す》ぐに時間を見《み》たりしたからといつて、彼は別《べつ》に不|愉快《ゆかい》を感《かん》じなかつた。その点《てん》で二人は気分が一|致《ち》した。
「これきり逢《あ》ふことは止さう!」
彼は別《わか》れぎはに何か淡《あは》い幻滅《げんめつ》を感《かん》ずることがあつたが、X―子の方からも熱《ねつ》して来るやうなことはなかつた。もしまた間|違《ちが》つて男女の一方の熱《ねつ》度が高まつて来たら、他《た》の一方がきつと迷惑《めいわく》するだらうと思《おも》はれた。
そんな状態《ぜうたい》で三月を経過《けいか》した。今日も竹《たけ》岡は会社が退《ひ》けたら、このごろ安田や木村や三、四人で二度ばかり行つたことのある銀|座《ざ》裏《うら》のカフヱでも寄《よ》つて、あの思《おも》ひ切《き》り短《みじか》いスカートの脚《あし》のひどくヱロチツクな茂《しげ》子でも見《み》ようかなぞと思《おも》つてゐた。和|服《ふく》を着てゐる彼女はちつとも彼の注意《ちうい》を引かなかつたが、あの簡短《かんたん》な小ぢんまりした、近《きん》代|劇《げき》の舞台《ぶたい》にでも出て来さうな洋服《ようふく》を着出してから、そのしやくれた顔《かほ》や、凹《へこ》んだ目などか、莫迦《ばか》に愛《あい》らしいものに見《み》え出して、壁《かべ》ぎはの硬《かた》い椅《い》子に腰《こし》かけながら、溜息《ためいき》でも吐《つ》いてゐるやうに、寂《さび》しい表情《へうぜう》をしてゐるのが、何だかひどく彼を惹《ひき》付けたのであつた。いつも無口で、その癖《くせ》無|愛想《あいそう》ではない、何|処《こ》か知識的《ちしきてき》な表情《へうぜう》と態《たい》度をもつてゐる茂《しげ》子の影像《えいぞう》が、浮《うは》気な淋《さび》しい彼の気|持《もち》に、時々|遣瀬《やるせ》ないやうな淡《あは》い気分を与《あた》へるのであつたが、しかしそれはそんな種類《しゆるい》の女かも知《し》れなかつた。手|元《もと》に引|寄《よ》せて見《み》れば、何の面《おも》白|味《み》もないたゞ[#「たゞ」に傍点]の乙《をと》女かも知《し》れなかつた。いや、それよりもあの悧巧《りこう》さうな主婦《おかみ》が、どこかの裏店《うらだな》の隅《すみ》から拾《ひろ》つて来た、日|陰《かげ》の萎《しな》びた花かも知《し》れないのであつたが、兎角《とかく》竹《たけ》岡はその女のことを思《おも》ひ出しながら、六|階《かい》の事務室《じむしつ》の窓《まど》から、豆《まめ》人|形《げう》を撒《ま》きちらしたやうな多くの人間の頭《あたま》や足《あし》や、翫具《がんぐ》のやうな自|動《どう》車やオートバイを見《み》下ろしてゐた。
そこへX―子が寄《よ》つて来たのであつた。
「今日あしこへ行きませうね。蟹《かに》がたべたいの。」
「さう!」
「それに貴方《あなた》に是非《ぜひ》話《はな》さなけあならないこともあるのよ。」
「さう!、心|配《ぱい》なこと?」
「うゝん」X―子は首《くび》を心|持《もち》振《ふる》つて、
「さうぢやないけれど……まあ安心してゐらつしやい。」
「変《へん》だな。」
「大丈夫よ。」
さうしてT―駅《えき》で二人は待《まち》合せることになつた。
竹《たけ》岡は現在《げんざい》のところ細《さい》君と別《わか》れてゐた。兎角《とかく》離《り》合|集散《しうさん》の安|価《か》に行はれる世のなかであつたが大した理由《りゆう》もないのに、二人の子|供《ども》をおいて細《さい》君が実《じつ》家へ帰《かへ》つて行つたには彼もひどく面喰《めんくら》つてしまつた。二十四時間も汽車に乗《の》らなければならない、彼女の田舎《ゐなか》の生家の暮《くら》しが好《い》いのと、我|儘《まゝ》に育《そだ》つてゐるのとで、男のしみつたれなのと、意《い》気地のないのに飽《あ》き/\してゐたところへ、ちよつとした彼の浮《うわ》気|沙汰《さた》から家|庭争議《ていそうぎ》が始《はじ》まつて、高|慢《まん》で我まゝな彼女は、思切《おもひき》りよく田舎《ゐなか》へ帰《かへ》つてしまつた。
竹《たけ》岡は久しぶりで美晴《みは》らしの好《い》い山へでも登《のぼ》つたやうな気|持《もち》にかつたが、さうかといつて悔《く》いがない訳《わけ》でもなかつた。もと/\細《さい》君の親達《おやたち》が感《かん》心しない結婚《けつこん》であつたので、竹《たけ》岡にも多少の意《い》地はあつたけれど、まさか今が今|破裂《はれつ》が来ようとはおもはなかつた。家を出てから友|達《たち》の家を宿《やど》にして、二三日|遊《あそ》んでゐたやうな形跡《けいせき》のあるところを見《み》ると、始《はじ》めから田舎《ゐなか》へ帰《かへ》るつもりでもなかつたやうに思《おも》はれるのであつた。見《み》え坊《ぼう》の竹《たけ》岡はその友|達《たち》の家を訪《たづ》ねようともしなかつた。今になつて考《かんが》へると、訪《たづ》ねた方かよかつたのであつたが、『いゝえ、入らつしやいませんよ』といはれさうな気がして、つい臆劫《おくくう》になつた。そのうちずん/\日がたつてしまつた。彼を取|戻《もど》さない方が好《よ》いといふ気もしてゐた。
それにしても子|供《ども》は何うなるのだらう。多分そのうち細《さい》君の母|親《おや》が迎《むか》ひに来るのだらうと想像《そうぞう》されたが、その場《ば》合彼は渡《わた》さないことに腹《はら》をきめて、頑張《がんば》つてみようなどと独《ひと》りで力んでゐた。
市|電《でん》でT―駅《えき》へ来てみると、X―子は入口のところに立つて見迎《みむか》へてゐた。ちよつと小|柄《から》の痩《や》せぎすな女であつたが、見《み》かけよりは年を取つてゐた。美《び》人といふやうな種類《しゆるい》ではないにしてもスタイルはちよつと酒落《しや》れてゐた。彼女も最近《さいきん》恋《こひ》人と別《わか》れたとかで、会社へ来ても何時も顔《かほ》が冴《さ》えなかつた。
「出口で安田と一|緒《しよ》になつて、ちよつと諷刺《あてこすり》をいはれたが、何んでもないさ。僕《ぼく》もいつまでも彼処《あしこ》にゐようとは思《おも》はないんだ。」
「さう。」X―子は答《こた》えたが、社長の耳《みゝ》へでも入ると、ちよつと面倒《めんどう》だと思《おも》つて、顔《かほ》を曇《くも》らせた。
竹《たけ》岡はX―子が社長と親《した》しいらしいので、始《はじ》めは警戒《けいかい》してゐたが、一度二度と逢《あ》ふ度|数《かず》が重なるにつれて、その方の気|持《もち》は釈《ほぐ》れて来たが、それかといつて、全然《ぜんぜん》その警戒《けいかい》を解《と》く訳《わけ》に行かなかつた。それに逢《あ》つてゐるうちに、何うかすると甚《ひど》く惰《だ》気を生ずることがあつた。X―子の方もさうであつたが、女が直《す》ぐに時間を見《み》たりしたからといつて、彼は別《べつ》に不|愉快《ゆかい》を感《かん》じなかつた。その点《てん》で二人は気分が一|致《ち》した。
「これきり逢《あ》ふことは止さう!」
彼は別《わか》れぎはに何か淡《あは》い幻滅《げんめつ》を感《かん》ずることがあつたが、X―子の方からも熱《ねつ》して来るやうなことはなかつた。もしまた間|違《ちが》つて男女の一方の熱《ねつ》度が高まつて来たら、他《た》の一方がきつと迷惑《めいわく》するだらうと思《おも》はれた。
そんな状態《ぜうたい》で三月を経過《けいか》した。今日も竹《たけ》岡は会社が退《ひ》けたら、このごろ安田や木村や三、四人で二度ばかり行つたことのある銀|座《ざ》裏《うら》のカフヱでも寄《よ》つて、あの思《おも》ひ切《き》り短《みじか》いスカートの脚《あし》のひどくヱロチツクな茂《しげ》子でも見《み》ようかなぞと思《おも》つてゐた。和|服《ふく》を着てゐる彼女はちつとも彼の注意《ちうい》を引かなかつたが、あの簡短《かんたん》な小ぢんまりした、近《きん》代|劇《げき》の舞台《ぶたい》にでも出て来さうな洋服《ようふく》を着出してから、そのしやくれた顔《かほ》や、凹《へこ》んだ目などか、莫迦《ばか》に愛《あい》らしいものに見《み》え出して、壁《かべ》ぎはの硬《かた》い椅《い》子に腰《こし》かけながら、溜息《ためいき》でも吐《つ》いてゐるやうに、寂《さび》しい表情《へうぜう》をしてゐるのが、何だかひどく彼を惹《ひき》付けたのであつた。いつも無口で、その癖《くせ》無|愛想《あいそう》ではない、何|処《こ》か知識的《ちしきてき》な表情《へうぜう》と態《たい》度をもつてゐる茂《しげ》子の影像《えいぞう》が、浮《うは》気な淋《さび》しい彼の気|持《もち》に、時々|遣瀬《やるせ》ないやうな淡《あは》い気分を与《あた》へるのであつたが、しかしそれはそんな種類《しゆるい》の女かも知《し》れなかつた。手|元《もと》に引|寄《よ》せて見《み》れば、何の面《おも》白|味《み》もないたゞ[#「たゞ」に傍点]の乙《をと》女かも知《し》れなかつた。いや、それよりもあの悧巧《りこう》さうな主婦《おかみ》が、どこかの裏店《うらだな》の隅《すみ》から拾《ひろ》つて来た、日|陰《かげ》の萎《しな》びた花かも知《し》れないのであつたが、兎角《とかく》竹《たけ》岡はその女のことを思《おも》ひ出しながら、六|階《かい》の事務室《じむしつ》の窓《まど》から、豆《まめ》人|形《げう》を撒《ま》きちらしたやうな多くの人間の頭《あたま》や足《あし》や、翫具《がんぐ》のやうな自|動《どう》車やオートバイを見《み》下ろしてゐた。
そこへX―子が寄《よ》つて来たのであつた。
「今日あしこへ行きませうね。蟹《かに》がたべたいの。」
「さう!」
「それに貴方《あなた》に是非《ぜひ》話《はな》さなけあならないこともあるのよ。」
「さう!、心|配《ぱい》なこと?」
「うゝん」X―子は首《くび》を心|持《もち》振《ふる》つて、
「さうぢやないけれど……まあ安心してゐらつしやい。」
「変《へん》だな。」
「大丈夫よ。」
さうしてT―駅《えき》で二人は待《まち》合せることになつた。
五月雨《さみだれ》のころのことで、大した降《ふ》りでもなかつたが、T―駅《えき》は何となく鬱陶《うつとう》しかつた。竹《たけ》岡は駅《えき》前のタクシーを呼《よ》んで、脊《せ》中を丸《まる》くして中へ入ると、X―子も続《つゞ》いて紺《こん》の唐傘《からかさ》をすぼめて乗《の》りこんだ。自|動《どう》車は動《うご》き出した。
「これならまあ好《い》いといふものね。フオードか知《し》ら。」彼女は少し陽《よう》気になつた。
「あゝー」と彼は答《こた》へて、ポケツトから敷《しき》島とマツチを取り出した。そのマツチをX―子は取りあげて見《み》てゐたが、
「あなたもカフエへ行くの?、厭《いや》な人ね。」
「そこは何もさう厭《いや》なところぢやないよ。」竹《たけ》岡はヅボンについた泥《どろ》を気にして落《おと》しながら、
「今日あたり一|寸《つと》遠乗《とほの》りもいゝね。」
「あゝ」女は頷いて、「いつか社長さんの自|動《どう》車に乗《の》つてやらうか知《し》ら、ナツシユよ。この間大宮へ行つたとき一|緒《しよ》に乗《の》らないかといつてゐたけれど……。」
大宮へ土地を見《み》に行つたときのことをいふらしかつた。彼等の会社といふのは丸《まる》の内土地株式会社のことであつた。
「行けばよかつたぢやないか。あすこには好いホテルがある。」
「ホテルがあるつて?、ホテルへなんか泊《とま》りやしないことよ。貴方《あなた》はまだ社長さんのことを疑《うたが》つてゐるの?」
「さういふ訳《わけ》ぢやないけれど……それが当《とう》世ぢやないか。」
「別荘《べつそう》へ遊《あそ》びに来いなんていつてゐたけれど……。」
「なぜ行かないの?」
「余計《よけい》なお世|話《わ》といふもの。行かうと行くまいと。あんな禿《はげ》ちやん嫌《きら》ひよ。顔《かほ》はよい顔《かほ》なんだけれど。」
「会社もこゝの処ちよつと不|景《けい》気だね。もう大きな仕|事《ごと》は出来ないらしいぜ。」
「さう。そんな事《こと》何うでもいゝわ。あの人の世話《わ》にならうと思《おも》はないから。」
「おれも何だか厭《いや》になつた。」
蟹《かに》のある家へ来たのは、小一|里《り》も小|雨《さめ》を衝《つ》いて走《はし》りつゞけた後であつた。
二人は一寸した庭《には》のある部《へ》屋へ案《あん》内された。こゝへ来るのは今日で二度目であつた。二人は濡縁《ぬれえん》のところで手を取り合つて立ちながら雨《あめ》を見《み》てゐた。
「こんな日もいゝわね。あしこは隣《となり》か知《し》ら。一|軒《けん》離《はな》れてゐるのね。」
「やつぱり此の家の部《へ》屋だ。」
「好《い》いわね。あんな処で私三日も寝《ね》てゐたい。今度|箱根《はこね》へつれてつて。」
「行つたことがない?」
「前の人と一度行つたわ。だから行つて見《み》たいの。」
「好《い》い面《つら》の皮《かは》だ。」
「あら、さういふ意味《いみ》ぢやないの。あんな人のことなんか、もう思《おも》つてやしない。もつと好《い》男|知《し》つてるの。家の近《きん》所にゐる。」
二人は風呂《ふろ》へ入つた。竹《たけ》岡が上つてビールを飲《の》んでゐる処へ、X―子が顔《かほ》を作つて帰《かへ》つてきた。浴衣《ゆかた》がよく似《に》合つたので、竹《たけ》岡はちよつと見直《みなほ》した。
蟹《かに》は不漁《しけ》で、今日は無《な》かつた。
「蟹《かに》がなくちや詰《つま》んない。」
「詰《つま》んなくても仕方がない。今日は雨《あめ》だから。」
「雨《あめ》だと蟹《かに》がとれないんですか。」
「やつぱり沖《おき》へ出るんだから。」
「貴方《あなた》も詰《つま》んないでせう。蟹《かに》を御|馳走《ちそう》した人のことを思《おも》ひ出すのに、蟹《かに》がなくちや詰《つま》らないでせう。」
X―子も旨《うま》さうにビールを飲《の》んだ。
「よせよ。」
「でも子供《ども》まで出来たといふんぢやないの。今日は雨《あめ》の徒然《つれ/″\》にもつと詳《くわ》しく話《はな》して聞かせて。」
竹《たけ》岡は少し憂鬱《ゆううつ》になつた。有りがちのことで格別《かくべつ》憂鬱《ゆううつ》になるほどの事《こと》でもないとは思《おも》ひながら、思《おも》ひ出すと矢張《やは》り恥《はづ》かしくて気が痛《いた》んだ。何だつて又この女にまで、そんな話《はなし》をしたものかとそれも悔《く》いの一つであつたが、この前来たとき、つい蟹《かに》を食《た》べながらそれを口へ出してしまつたのであつた。
その女はその時一人の子|供《ども》と、この海|岸《がん》の町に住《す》んでゐた。彼はその女が十九のとき好《す》きであつたが、十年たつた今|逢《あ》つてみると、まるで昔《むかし》の面影《おもかげ》がなかつた。彼は彼女の手紙によつて逢《あ》ひに来たことを後|悔《かい》した。それがちやうど彼女を世|話《わ》してゐた男が、一|般経済界《はんけいざいかい》の恐慌《けうこう》から、彼女をも手|放《はな》さなければならない破滅《はめつ》に陥《おちい》つたをりの事《こと》で泡《あわ》よくばその後|釜《かま》に見《み》立てようとして、女が彼を思《おも》ひ出したのであつた。竹《たけ》岡は始《はじ》めから幻滅《げんめつ》を感《かん》じてゐた。感《かん》じながら、彼女の十年間の生|活《かつ》に耳傾《みゝかたむ》けながら、彼女とビールを飲《の》みながら小|蟹《かに》の肉《にく》を突《つ》ついてゐた。
「その女は何うしたのでせう。」
「さあ、どこかにゐるだらう。」
「貴方《あなた》が独《ひと》りになつたことを聞いたら、やつて来やしないか知《し》ら。」
「もし子|供《ども》が生きてゐるとしたらね。」
「子|供《ども》は育《そだ》つてゐるでせうか。」
「育《そだ》つてゐるとは信《しん》じられないね。」
「育《そだ》つてゐるかも知《し》れないことよ。そしたらその人を家へ入れる?」
「ふる/\だよ。その当座《とうざ》ちよつと深刻《しんこく》に考《かんが》へたこともあつたけれど……。」
「薄情《はくぜう》ね。」
「仕方がないもの。女が子|供《ども》を渡《わた》さないんだから。何とかそれを物にしようとしてゐたんだ。」
「それあさうね。」
「それに、その子が己の子か何うかも疑問《ぎもん》だ。」
「似《に》てゐなかつたの?、見《み》なかつた。」
「見《み》た。ぞつとした。似《に》てゐるやうにもあつたが、似《に》てゐないやうにもあつた。そんなことが誰《たれ》にわかるものか。」
「そんなものか知《し》ら。」
「そんなものさ。」
X―子は遽《にはか》に暗《くら》い目を庭《には》先きへやつて黙《だま》りこんでしまつた。
しかし竹《たけ》岡はその女を、さう軽蔑《けいべつ》する訳《わけ》に行かなかつた。一年間の生|活費《かつひ》やお産《さん》の入|費《ひ》や、その他《た》を可なりたつぷりに支|弁《べん》したあとで、子|供《ども》を余《よ》所へくれるについての費《ひ》用といふ名|儀《ぎ》で金の問題《もんだい》を持《もち》出したとき、きつぱり断《ことは》つてしまつた。そしてそれきり姿《すがた》を隠《かく》してしまつた。
「大分お金つかつて?」
「さう、ちよつとね。始《はじ》めはほんの生|活費《かつひ》だけの要求《ようきう》だつたが、段《だん》々|悪化《あくか》して来て、永《えい》久に月月いくらか宛《づゝ》といふ話《はなし》になつたんだ。中へ入つた男はまた、一時にいくらかの纏《まと》まつたものを提供《ていけう》して、すつぱり手を切《き》つてしまはうとしたんだ。勿論《もちろん》己《おれ》の意志《いし》にも本《もと》づいて。またさうして因縁《いんえん》をつけておけるやうな種類《しゆるい》の女でもないんだから。」
「どんな女?」
「まあ、その話《はなし》は止さう。」
竹《たけ》岡は人のことのやうに、それらの過去《かこ》を見《み》てゐた。
「さういへば私も何だか変《へん》よ。」X―子は空虚《くうきよ》な目をして低声《ここゑ》でいつた。
「変《へん》とは?」竹《たけ》岡も暗《くら》い眼《め》を彼女に注《そゝ》いだ。
「人間は同じことを繰返《くりかへ》すものよ。」
竹《たけ》岡は気|味《み》がわるくなつた。
「でも安心してゐらつしやい。私その女のやうに粘著《へばりつ》かうとはしないから。」
「はつきりいつてくれ。」
「でも何だかわからないの。」
竹《たけ》岡は少し憂鬱《ゆううつ》になつた。
「あら蟹《かに》が……。」庭《には》先きを眺《なが》めてゐたX―子が無気|味《み》さうに叫《さけ》んだ。
「蟹《かに》?、どこに?」
「そら彼|処《こ》の垣根《かきね》に。」
竹《たけ》岡はぢつと女の視線《しせん》の先きへ眸を凝《こら》した。雨《あめ》に濡《ぬ》れた竹垣《たけかき》の下から二|段《だん》目のところに蜘蛛《くも》のやうに這《は》つてゐるものが目に入つた。この小さい生物の横這《よこばひ》それ自|身《しん》が、時とすると人に、皮肉《ひにく》に似た或る感《かん》じをおこさせるのであつた。
「あら彼|処《こ》にも……あら、幾匹《いくひき》も/\ゐるわ。」
看《み》ると垣根《かきね》の下や、古|燈籠《とうろう》の台《だい》石のあたりに、剪刀《はさみ》を力まして、五|匹《ひき》も六|匹《ひき》もの小|蟹《かに》がうようよしてゐた。
「こゝは浜《はま》だからね。」
「浜《はま》にゐるもの?」
「見《み》たことない?」
「田舎《めなか》で見《み》たやうな気もするけれど……。」
雨《あめ》か晴《は》れて夕《ゆふ》月が木|槲《こく》や楓《かへで》の濡葉《ぬれは》にちら/\差《さ》してゐたと思《おも》つたが、いつか夕闇《ゆふやみ》が迫《せま》つて来た。[#地付き](昭和3年9月15[#「15」は縦中横]日「週刊朝日」)
「これならまあ好《い》いといふものね。フオードか知《し》ら。」彼女は少し陽《よう》気になつた。
「あゝー」と彼は答《こた》へて、ポケツトから敷《しき》島とマツチを取り出した。そのマツチをX―子は取りあげて見《み》てゐたが、
「あなたもカフエへ行くの?、厭《いや》な人ね。」
「そこは何もさう厭《いや》なところぢやないよ。」竹《たけ》岡はヅボンについた泥《どろ》を気にして落《おと》しながら、
「今日あたり一|寸《つと》遠乗《とほの》りもいゝね。」
「あゝ」女は頷いて、「いつか社長さんの自|動《どう》車に乗《の》つてやらうか知《し》ら、ナツシユよ。この間大宮へ行つたとき一|緒《しよ》に乗《の》らないかといつてゐたけれど……。」
大宮へ土地を見《み》に行つたときのことをいふらしかつた。彼等の会社といふのは丸《まる》の内土地株式会社のことであつた。
「行けばよかつたぢやないか。あすこには好いホテルがある。」
「ホテルがあるつて?、ホテルへなんか泊《とま》りやしないことよ。貴方《あなた》はまだ社長さんのことを疑《うたが》つてゐるの?」
「さういふ訳《わけ》ぢやないけれど……それが当《とう》世ぢやないか。」
「別荘《べつそう》へ遊《あそ》びに来いなんていつてゐたけれど……。」
「なぜ行かないの?」
「余計《よけい》なお世|話《わ》といふもの。行かうと行くまいと。あんな禿《はげ》ちやん嫌《きら》ひよ。顔《かほ》はよい顔《かほ》なんだけれど。」
「会社もこゝの処ちよつと不|景《けい》気だね。もう大きな仕|事《ごと》は出来ないらしいぜ。」
「さう。そんな事《こと》何うでもいゝわ。あの人の世話《わ》にならうと思《おも》はないから。」
「おれも何だか厭《いや》になつた。」
蟹《かに》のある家へ来たのは、小一|里《り》も小|雨《さめ》を衝《つ》いて走《はし》りつゞけた後であつた。
二人は一寸した庭《には》のある部《へ》屋へ案《あん》内された。こゝへ来るのは今日で二度目であつた。二人は濡縁《ぬれえん》のところで手を取り合つて立ちながら雨《あめ》を見《み》てゐた。
「こんな日もいゝわね。あしこは隣《となり》か知《し》ら。一|軒《けん》離《はな》れてゐるのね。」
「やつぱり此の家の部《へ》屋だ。」
「好《い》いわね。あんな処で私三日も寝《ね》てゐたい。今度|箱根《はこね》へつれてつて。」
「行つたことがない?」
「前の人と一度行つたわ。だから行つて見《み》たいの。」
「好《い》い面《つら》の皮《かは》だ。」
「あら、さういふ意味《いみ》ぢやないの。あんな人のことなんか、もう思《おも》つてやしない。もつと好《い》男|知《し》つてるの。家の近《きん》所にゐる。」
二人は風呂《ふろ》へ入つた。竹《たけ》岡が上つてビールを飲《の》んでゐる処へ、X―子が顔《かほ》を作つて帰《かへ》つてきた。浴衣《ゆかた》がよく似《に》合つたので、竹《たけ》岡はちよつと見直《みなほ》した。
蟹《かに》は不漁《しけ》で、今日は無《な》かつた。
「蟹《かに》がなくちや詰《つま》んない。」
「詰《つま》んなくても仕方がない。今日は雨《あめ》だから。」
「雨《あめ》だと蟹《かに》がとれないんですか。」
「やつぱり沖《おき》へ出るんだから。」
「貴方《あなた》も詰《つま》んないでせう。蟹《かに》を御|馳走《ちそう》した人のことを思《おも》ひ出すのに、蟹《かに》がなくちや詰《つま》らないでせう。」
X―子も旨《うま》さうにビールを飲《の》んだ。
「よせよ。」
「でも子供《ども》まで出来たといふんぢやないの。今日は雨《あめ》の徒然《つれ/″\》にもつと詳《くわ》しく話《はな》して聞かせて。」
竹《たけ》岡は少し憂鬱《ゆううつ》になつた。有りがちのことで格別《かくべつ》憂鬱《ゆううつ》になるほどの事《こと》でもないとは思《おも》ひながら、思《おも》ひ出すと矢張《やは》り恥《はづ》かしくて気が痛《いた》んだ。何だつて又この女にまで、そんな話《はなし》をしたものかとそれも悔《く》いの一つであつたが、この前来たとき、つい蟹《かに》を食《た》べながらそれを口へ出してしまつたのであつた。
その女はその時一人の子|供《ども》と、この海|岸《がん》の町に住《す》んでゐた。彼はその女が十九のとき好《す》きであつたが、十年たつた今|逢《あ》つてみると、まるで昔《むかし》の面影《おもかげ》がなかつた。彼は彼女の手紙によつて逢《あ》ひに来たことを後|悔《かい》した。それがちやうど彼女を世|話《わ》してゐた男が、一|般経済界《はんけいざいかい》の恐慌《けうこう》から、彼女をも手|放《はな》さなければならない破滅《はめつ》に陥《おちい》つたをりの事《こと》で泡《あわ》よくばその後|釜《かま》に見《み》立てようとして、女が彼を思《おも》ひ出したのであつた。竹《たけ》岡は始《はじ》めから幻滅《げんめつ》を感《かん》じてゐた。感《かん》じながら、彼女の十年間の生|活《かつ》に耳傾《みゝかたむ》けながら、彼女とビールを飲《の》みながら小|蟹《かに》の肉《にく》を突《つ》ついてゐた。
「その女は何うしたのでせう。」
「さあ、どこかにゐるだらう。」
「貴方《あなた》が独《ひと》りになつたことを聞いたら、やつて来やしないか知《し》ら。」
「もし子|供《ども》が生きてゐるとしたらね。」
「子|供《ども》は育《そだ》つてゐるでせうか。」
「育《そだ》つてゐるとは信《しん》じられないね。」
「育《そだ》つてゐるかも知《し》れないことよ。そしたらその人を家へ入れる?」
「ふる/\だよ。その当座《とうざ》ちよつと深刻《しんこく》に考《かんが》へたこともあつたけれど……。」
「薄情《はくぜう》ね。」
「仕方がないもの。女が子|供《ども》を渡《わた》さないんだから。何とかそれを物にしようとしてゐたんだ。」
「それあさうね。」
「それに、その子が己の子か何うかも疑問《ぎもん》だ。」
「似《に》てゐなかつたの?、見《み》なかつた。」
「見《み》た。ぞつとした。似《に》てゐるやうにもあつたが、似《に》てゐないやうにもあつた。そんなことが誰《たれ》にわかるものか。」
「そんなものか知《し》ら。」
「そんなものさ。」
X―子は遽《にはか》に暗《くら》い目を庭《には》先きへやつて黙《だま》りこんでしまつた。
しかし竹《たけ》岡はその女を、さう軽蔑《けいべつ》する訳《わけ》に行かなかつた。一年間の生|活費《かつひ》やお産《さん》の入|費《ひ》や、その他《た》を可なりたつぷりに支|弁《べん》したあとで、子|供《ども》を余《よ》所へくれるについての費《ひ》用といふ名|儀《ぎ》で金の問題《もんだい》を持《もち》出したとき、きつぱり断《ことは》つてしまつた。そしてそれきり姿《すがた》を隠《かく》してしまつた。
「大分お金つかつて?」
「さう、ちよつとね。始《はじ》めはほんの生|活費《かつひ》だけの要求《ようきう》だつたが、段《だん》々|悪化《あくか》して来て、永《えい》久に月月いくらか宛《づゝ》といふ話《はなし》になつたんだ。中へ入つた男はまた、一時にいくらかの纏《まと》まつたものを提供《ていけう》して、すつぱり手を切《き》つてしまはうとしたんだ。勿論《もちろん》己《おれ》の意志《いし》にも本《もと》づいて。またさうして因縁《いんえん》をつけておけるやうな種類《しゆるい》の女でもないんだから。」
「どんな女?」
「まあ、その話《はなし》は止さう。」
竹《たけ》岡は人のことのやうに、それらの過去《かこ》を見《み》てゐた。
「さういへば私も何だか変《へん》よ。」X―子は空虚《くうきよ》な目をして低声《ここゑ》でいつた。
「変《へん》とは?」竹《たけ》岡も暗《くら》い眼《め》を彼女に注《そゝ》いだ。
「人間は同じことを繰返《くりかへ》すものよ。」
竹《たけ》岡は気|味《み》がわるくなつた。
「でも安心してゐらつしやい。私その女のやうに粘著《へばりつ》かうとはしないから。」
「はつきりいつてくれ。」
「でも何だかわからないの。」
竹《たけ》岡は少し憂鬱《ゆううつ》になつた。
「あら蟹《かに》が……。」庭《には》先きを眺《なが》めてゐたX―子が無気|味《み》さうに叫《さけ》んだ。
「蟹《かに》?、どこに?」
「そら彼|処《こ》の垣根《かきね》に。」
竹《たけ》岡はぢつと女の視線《しせん》の先きへ眸を凝《こら》した。雨《あめ》に濡《ぬ》れた竹垣《たけかき》の下から二|段《だん》目のところに蜘蛛《くも》のやうに這《は》つてゐるものが目に入つた。この小さい生物の横這《よこばひ》それ自|身《しん》が、時とすると人に、皮肉《ひにく》に似た或る感《かん》じをおこさせるのであつた。
「あら彼|処《こ》にも……あら、幾匹《いくひき》も/\ゐるわ。」
看《み》ると垣根《かきね》の下や、古|燈籠《とうろう》の台《だい》石のあたりに、剪刀《はさみ》を力まして、五|匹《ひき》も六|匹《ひき》もの小|蟹《かに》がうようよしてゐた。
「こゝは浜《はま》だからね。」
「浜《はま》にゐるもの?」
「見《み》たことない?」
「田舎《めなか》で見《み》たやうな気もするけれど……。」
雨《あめ》か晴《は》れて夕《ゆふ》月が木|槲《こく》や楓《かへで》の濡葉《ぬれは》にちら/\差《さ》してゐたと思《おも》つたが、いつか夕闇《ゆふやみ》が迫《せま》つて来た。[#地付き](昭和3年9月15[#「15」は縦中横]日「週刊朝日」)
底本:「徳田秋聲全集第16巻」八木書店
1999(平成11)年5月18日初版発行
底本の親本:「週刊朝日」
1928(昭和3)年9月15日
初出:「週刊朝日」
1928(昭和3)年9月15日
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
1999(平成11)年5月18日初版発行
底本の親本:「週刊朝日」
1928(昭和3)年9月15日
初出:「週刊朝日」
1928(昭和3)年9月15日
入力:特定非営利活動法人はるかぜ