ノイズ

<ノイズ>
  • ノイズとは
 音響ノイズとは、もともとの音声信号には含まれていない、余分な雑音信号のことです。
 ノイズのパターン(種類)は、音の周波数を光の周波数(波長)に置き換えた時の光の色になぞらえて表現します。
 光は周波数(波長)により固有の色スペクトルを持ち、周波数が低い(波長が長い)光は赤く、周波数が高い(波長が短い)光は青く見えます。
 全ての周波数(波長)の光が等量ずつ混ぜ合わされた光は、白色になります。
 音も光も波であり、音声信号を周期関数としてフーリエ変換を行い、周波数を横軸にエネルギーを縦軸にとり、パワースペクトル表示したグラフのパターンで分類できます。
 パワースペクトル表示されたノイズのパワースペクトル密度は「1/f^β」に従い、ノイズの特性を表します。

  • ノイズの色
①ホワイトノイズ(white noise):「1/f^β,β=0」
 ホワイトノイズとは、すべての周波数で同じ強度(スペクトル密度)となるノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光が白色に見えることから、ホワイトノイズと呼ばれます。
 周波数に対する指数減衰・増強はオクターブごとに0dBであり、各周波数でエネルギーは一定値です。(±0dB/octave)
 周波密度(スペクトル密度)が線形空間において一様なため、等幅の周波数帯域(40-60Hzと4000-4020Hz)におけるエネルギーが等しくなります。
 自己相関関数がデルタ関数となることと同じであり、定常独立(非常に不規則)なノイズです。
 厳密には、自己相関関数にデルタ関数といった無限を含むものは実在しないため、理想的なホワイトノイズは実在しません。
 実用上には、有限値の十分に理想ホワイトノイズに近いものをホワイトノイズとして扱います。
 離散信号(デジタル音声)では、0~ナイキスト周波数まで同じ強度となるノイズをホワイトノイズとして扱います。
 「ホワイトノイズ」と「ガウスノイズ(正規分布のノイズ)」は同一ではなく、白色という概念とガウス性という概念は異なりますが、白色とガウス性を同時に満たす場合が多いです。
 「ホワイトガウスノイズ」は実世界のノイズとしてよい近似(中心極限定理)となり、「加法性ホワイトガウスノイズ」と呼ばれます。
 実際には正規乱数をホワイトノイズとして利用するためにガウス性も満たすので「ホワイトガウスノイズ」となります。
 デジタルのホワイトノイズは、サンプルを独立かつランダムに選ぶことによって生成できます。
 ホワイトノイズの波形は、周波数の異なる全ての波が同じ振幅で重なった波形をしています。

 ホワイトノイズの定義:w(t)
  ① μ = E[w(t)] = 0
   → 平均ゼロ
  ② R(t1, t2) = E[w(t1) w(t2)] = σ2δ(t1 - t2)
   → 自己相関はσ2であり、相互相関はゼロ
 (σ2はwの分散,δはディラックのデルタ関数)

 自己相関をフーリエ変換するとホワイトノイズのパワースペクトルが得られる
  |W(ω)|2=σ2
  → パワースペクトルの値はωに依存しないため、全ての周波数で一定の値(白色と呼ばれる) 
 離散化された列としてのホワイトノイズの定義:ベクトルw
  ① μ = E[w] = 0
   → 平均ゼロ
  ② R = E[w wT] = σ2I
   → 相互相関行列が、対角成分がσ2でそれ以外はゼロ
 (Tは転置,Iは単位行列)

②ピンクノイズ(pink noise,1/f):「1/f^β,β=1」
 ピンクノイズとは、強度(スペクトル密度)が周波数に反比例するノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光がピンク色に見えることから、ピンクノイズと呼ばれます。
 ホワイトノイズ (1/f^0)とレッドノイズ (1/f^2,ブラウニアンノイズ)の中間であることに因みます。
 周波密度(スペクトル密度)が周波数の逆数となるような周波スペクトルをもっており、「1/fノイズ,1/fゆらぎ」とも呼ばれます。
 スペクトル密度が「1/f」に比例し、低い周波数ほど強いエネルギーを持ちます。
 広義のピンクノイズは、「1/f^β,0<β≒1<2」となるスペクトル密度を持つ各種ノイズを含みます。
 周波数に対する指数減衰はオクターブごとに3dBです。(-3dB/octave)
 周波密度(スペクトル密度)が対数空間において一様なため、比例した周波数帯域(40-60Hzと4000-6000Hz)におけるエネルギーが等しくなります。
 周波数が高いほどエネルギーが高いため、周波数に反比例して強度が低下するピンクノイズでは、オクターブバンドと呼ばれる帯域ごとのエネルギーが一様になります。
 ピンクノイズの波形は、フラクタル状になっています。

③レッドノイズ(red noise,Brownian noise):「1/f^β,β=2」
 レッドノイズとは、強度(スペクトル密度)が周波数の2乗に反比例するノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光が赤色に見えることから、レッドノイズと呼ばれます。
 レッドノイズは、ブラウン運動によって生成される信号雑音(シグナルノイズ)と類似しており、「ブラウニアンノイズ」とも呼ばれます。
 ブラウニアンノイズの音声信号を図に表すと、ブラウン運動パターンに類似したものになります。
 スペクトル密度が「1/f^2」に比例し、ピンクノイズ以上に低い周波数ほど強いエネルギーを持ちます。
 周波数に対する指数減衰はオクターブごとに6dBです。(-6dB/octave)
 レッドノイズは、ホワイトノイズの積分によっても得られます。
 デジタルのレッドノイズは、サンプル値にランダムな値を加えることによって次の値を得ることができます。

④ブルーノイズ(blue noise,azule noise):「1/f^β,β=-1」
 ブルーノイズとは、強度(スペクトル密度)が周波数に比例するノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光が青色に見えることから、ブルーノイズと呼ばれます。
 スペクトル密度が「f」に比例し、高い周波数ほど強いエネルギーを持ちます。
 周波数に対する指数増強はオクターブごとに3dBです。(+3dB/octave)

⑤パープルノイズ(purple noise,violet noise):「1/f^β,β=-2」
 パープルノイズとは、強度(スペクトル密度)が周波数の2乗に比例するノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光が紫色に見えることから、パープルノイズと呼ばれます。
 スペクトル密度が「f^2」に比例し、ブルーノイズ以上に高い周波数ほど強いエネルギーを持ちます。
 周波数に対する指数増強はオクターブごとに6dBです。(+6dB/octave)
 パープルノイズは、ホワイトノイズの微分によっても得られます。

⑥グレーノイズ(grey noise):
 グレーノイズとは、心理的等ラウドネス曲線(逆A特性曲線)を加味したランダム・ピンクノイズです。
 等ラウドネス曲線(逆A特性曲線)は、全周波数にわたって等しいラウドネス(音の大きさ)と知覚される音圧レベルを表した曲線です。
 同じ周波数成分を持つ光が灰色に見えることから、グレーノイズと呼ばれます。

⑦ブラックノイズ(black noise,silent noise):
 ブラックノイズとは、様々な定義のあるサイレントノイズです。
 完全無音、不完全無音(スパイクスペクトルノイズ)、アクティブノイズ、超音波ノイズ(可聴音域外の超高周波,超低周波)、過減衰スペクトルノイズ(|β|>2)などの定義がある。
 同じ周波数成分を持つ光が黒色(無色)に見えることから、ブラックノイズと呼ばれます。
 ①ブラックノイズとは、無音(silence)です。
 ②ブラックノイズとは、「1/f^β,β>2」のノイズです。
 ③ブラックノイズとは、わずかな狭帯域バンドやスパイクを除いて全周波数域にわたって大部分が0エネルギーの周波数スペクトルを持つノイズです。
 ④ブラックノイズとは、存在するノイズをキャンセルするアクティブノイズです。
 ⑤ブラックノイズとは、見えない紫外線を発光するブラックライトと同様、聞こえない超音波の20kHz以上の周波数帯域におけるホワイトノイズです。

⑧グリーンノイズ(green noise):
 グリーンノイズとは、500Hz周辺に山を持つピンクノイズであり、ホワイトノイズの中周波数成分です。 
 同じ周波数成分を持つ光が緑色に見えることから、グリーンノイズと呼ばれます。

⑨オレンジノイズ(orange noise):
 オレンジノイズとは、連続スペクトルに離散した有限数の0エネルギーの小帯域をもつ有限パワースペクトルにおける、類似固定したノイズです。
 同じ周波数成分を持つ光が橙色に見えることから、オレンジノイズと呼ばれます。 


左上:ピンクノイズ(1/f^1),上:ホワイトノイズ(1/f^0),右上:ブルーノイズ(1/f^(-1)=f^1)
左下:レッドノイズ(1/f^2),下:グレーノイズ(逆A特性曲線),右下:パープルノイズ(1/f^(-2)=f^2)

 パープルノイズ-ブルーノイズ-ホワイトノイズ-ピンクノイズ-レッドノイズ
 グリーンノイズ-ホワイトノイズ-グレーノイズ-ブラックノイズ
 オレンジノイズ


  • 参考サイト


 ノイズ(Noise):http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term2560.html
 ホワイトノイズ(White Noise):http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term3582.html
 ピンクノイズ(Pink Noise):http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term3581.html

 simplynoise:http://simplynoise.com/
最終更新:2009年03月26日 05:56
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