純正5度を積み重ねることだけを利用した音律。
純正5度は周波数比2:3を意味し、この音程12個分の積み重ねは、オクターブ(周波数比1:2)7個分の積み重ねと僅差である。
(3/2)^12 ≒ (2/1)^7
仮に、Cを出発点として下方に3音を、上方に8音を積み重ねると、次の音列を得る。
Eb - Bb - F - C - G - D - A - E - B - F# - C# - G# (-D#)
この時、上方の9音目のD#が下方のEbと(3/2)^12をなし、これがほぼ7オクターブに達する。
上の音列を1オクターブに収めれば、ピタゴラス音律による半音階が得られたことになる。
C - C# - D -Eb - E - F - F# - G - G# - A - Bb - B (- C)
ピタゴラス音律によって規定された半音階は、ピタゴラス音階と呼ばれる。
積み重ねを途中で止めて得られた長音階も、ピタゴラス音階と呼ばれる。
C - D - E - F - G - A - B (- C)
純正5度の積み重ねによって12個の音を得るというアイデアは、比較的単純である。
西洋以外の文化圏でも同様のアイデアにもとづく音列が見られる。
西洋の理論の立場から、音律や音階に相当するものとみなすことができる。古代中国で生まれた三分損益法はその一例である。
ピタゴラス音律では、5度が純正になり美しく響き、旋律(メロディー)を美しく表現できるとされているが、
5度を4回積み重ねて得られる長3度の音程は、純正な響き(音程比4:5)に対して1/5半音ほど広くなり、濁った響きとなること。
5度の積み重ね12個分とオクターブの7個分の積み重ねの差(半音の1/4程度)による誤差のこと。
Aを出発点として上方に積み重ねると、次の音列を得る。
A - E - B - F# - C# - G# - D#(Eb) - Bb - F - C - G - D
最後のDと最初のAでは、前述の誤差により純正5度よりも狭い間隔になっている。
狭い5度D-Aを挟んだF-A、C-E、G-Bなどの長3度は、他の長3度よりも1/4半音ほど狭くなり、ハ長調の主要3和音の長3度は純正な響きに対する誤差が僅か1/50半音となる。
これらの主要3和音の5度F-C、C-G、G-Dは純正なので、これらの主要3和音F-A-C、C-E-G、G-B-Dは美しく響くことができる。
最終更新:2009年08月17日 20:32