カラスノエンドウについて

名称 カラスノエンドウ(烏野豌豆)
正式 ヤハズエンドウ(矢筈-)
由来 熟した豆が黒いところからカラスの名を借りたとも、カラスが食べる実だからともいう。役に立たない植物にカラスの名を冠することもある。
分類 マメ目マメ科ソラマメ属
季節
食  若芽、実(豆)、花が可食。熟した豆も炒って食べられる。
花  紫色
葉  対生で楕円形。

©wikipedia






名称   ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)
通名   カラスノエンドウ(烏野豌豆)
由来   ヤハズエンドウ:小葉の先がくぼんでいて矢筈(矢の手元、弓の弦にはめる部分)に似ているから。カラスノエンドウ:熟したサヤやマメが黒くなることから。カラスが食べるからともいい、また有用な種に似た無用な植物にカラスとつけることもある。
学名   Vicia sativa subsp. nigra
分類   マメ科ソラマメ属
年生   越年(秋に発芽、越冬(耐寒性)し翌年に枯れる)
場所   日本:本州以南。世界:ユーラシア大陸の温暖地 路端や堤防、畑や荒地など日当たりのいい色々な場所
大きさ  50~100cm超
形態   つる性だが直立する
茎    (全体に毛があり四角柱状)
葉    羽状複葉で、狭倒卵形の小葉。4~8対の互生、全縁、網状脈。托葉は深く2裂する。
花    3〜6月に、エンドウに似た小型で蝶型の紅紫色の花。5弁の離弁。
実    5~7月に、果実(サヤ)に5~10個の種子が入っていて、熟すと黒くなって晴天の日に裂け、種子(マメ)をパチンと激しく弾き飛ばす。
原産地  オリエントから地中海にかけての地方(古くから日本に自生していたとの説も)
食    可食。若い芽や豆(サヤ)を天ぷらなどにして食べる。熟した豆も炒って食べられる。
遊び   若いサヤの両端を切って草笛にできる。
近縁種  スズメノエンドウ(Vicia hirsuta)・カスマグサ(Vicia tetrasperma)。

名称   スズメノエンドウ
由来   カラスノエンドウより小さいから。

名称   カスマグサ
由来   カラスノエンドウとスズメノエンドウの間くらいの大きさなので、それぞれの頭文字をとって「カ(ラスと)ス(ズメの)間」でカスマ。

☆個人的見解
雑草に目を向ければ、至るところで目につく草。公園にも群生するし、歩道の側溝脇にも自生している。ただしカラス・カスマ・スズメの違いを同定するのは、知識がないと難しい(ちなみに俺はまだできません><)。排気ガスをものともせず道路にも生えるので、可食ではあるが汚れていない場所のものを食べたほうがいい。
ちょうど植物の同定を再開した春に花がついていて、どこにも自生しているわりにマメ科であるというのに趣を感じて、個人的に好きな植物。花を鑑賞するというより、花・葉・つる、と全体を見渡して、


大阪ではさすがに排気や水の悪さが気になるので、きれいな場所へ行って見つけたらぜひ食べたい。
名の由来にもなった矢筈は、「矢の、弓に番(つが)える部分」と一定の説明は書かれるが、およそGoogle画像検索でもしたほうがずっと理解が早い。wikipediaによれば、矢筈は単に筈(ハズ)とも呼び、この矢筈が弓の弦にはまるのが当然であることから転じて、「~である筈」を「~であるのが当然だ」という意味になったのだとか。真偽のほどは知らない。


(「野豌豆」は中国での名称)。古くは作物として栽培されていたようだが、現在では雑草として自生している。一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。この3種は、いずれも路傍に咲くごく普通な雑草であり、生育の季節も共通するため、往々にして混生する。これら3種は似ているが、カラスノエンドウは大きくて少数の花をつけ、スズメノエンドウはごく小さな花を房状に多数つける。カスマグサは小型の花を少数つける。ヤハズエンドウは托葉(葉の付け根の付属物)に暗紅色の花外蜜腺があり、他2種にはない。また、欧米には近縁種でより大型のオオヤハズエンドウ(Vicia sativa)があり、牧草として利用されている。この種は近年日本にも帰化していることが分かっている。

小葉は2~3cmの狭倒卵形で先端が少し凹む。羽状複葉の中軸の先は分枝したつるとなり、他の物に巻きつく。花は葉腋に1~3個つき、紅紫色。葉の基部にある3角形の托葉には、暗紫色の花外蜜腺がある。豆果は斜上し、長さ3~5cmで熟すと黒くなる。別名カラスノエンドウ(烏野豌豆)。花期は3~6月。
学名は、Vicia sativa subsp. nigra
マメ科ソラマメ属
よく似たものにホソバヤハズエンドウがある。小葉が細く先端が凹にならないが、下葉は凹になるものがある。



花はふつう紅紫色、長さ12~18mm、、小花柄があり、葉腋に1~3花づつつく。
萼は長さ8~15mm、萼裂片は広線形、鋭先頭、萼筒よりも短く、長さ3~7mm。
豆果は広線形、長さ3~5cm、、幅5~6mmで、無毛、5~10個の種子を入れ、黒熟して裂開する。
種子はほぼ球形、径2.5~3mm、濃茶褐色で黒班がある。

外来種で似たものにに以下の2種がある。
オオヤハズエンドウ(オオカラスノエンドウ)(V. sativa)が良く似るが、全体的に大型。
萼は長さ10~15mm、萼裂片は同長または上側の2裂片がやや長く、萼筒と同長または長く、花弁は長さ1.8~3cm。豆果は長楕円形~広線形で長さ3~8cm、幅4~10mm。
オニカラスノエンドウ(V. lutea)も良く似る。小葉は狭卵形~卵状長楕円形、長さ1~2.5cm、幅2~5mm。
托葉は小型で狭卵形、全縁ときに裂片がある。萼は長さ10~12mm、萼裂片は不同長で、最下の裂片は他よりも長く、萼筒と同長または長い。
花弁は桃紫色のものはオニカラスノエンドウ、淡黄色のものはキバナカラスノエンドウというが、海外のサイトを当たると桃紫色というより淡紅色のものがヒットする。
近似種 : オオヤハズエンドウ(オオカラスノエンドウ)、 オニカラスノエンドウ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ ユーラシアの暖温帯
■生育環境:畑地、畦、道端、野原など。
■果実期:3~6月
■西宮市内での分布:市内全域にひろく見られる。


花冠。(西宮市・棚田の畦 2009.4/6)
花弁は直立する旗弁、竜骨弁(舟弁)、竜骨弁をはさむ2個の翼弁の計4個からなる。
竜骨弁は2個の翼弁に両側から包まれて見えない。旗弁の上端は凹み、基部中央はふつう白味を帯びる。

萼筒と萼裂片。(西宮市・棚田の畦 2009.4/6)
萼裂片は鋭尖頭で、ほぼ同長、萼筒よりも短い。

葉は偶数羽状複葉。(西宮市・棚田の畦 2009.4/6)
小葉は4~8対あり、先はやはず状または切形で、中央脈の先端が針状に突出する。
羽状複葉の中軸の先は分枝したつるとなり、他の物に巻きつき植物体を固定する。

托葉の表(左)と裏(右)。(西宮市・棚田の畦 2009.4/6)
托葉は2深裂して、さらに幾つかに鋸歯状に裂け、裏面の上部の裂片は窪んで、中に茶褐色の腺点がある。

ヤハズエンドウの越冬態。(西宮市・休耕田 2009.2/14)
冬期は茎を地表に這わせながら生育する。冬期の茎葉の先にはつるはなく、小さな2小葉からなり、春先になると小葉は4枚に増える。
冬期の小葉は倒卵形で、円頭であることが多い。周囲に見られる披針形で鋭頭の葉はスズメノエンドウ。

花の色のさまざまな変異。(西宮市・棚田の畦 2009.4/6)
白花と青みを強く帯びた花。個体数が多いだけに変異が見られることも多い。

西宮市内での生育環境と生態

Fig.8 土手に群生するヤハズエンドウ。(西宮市・畑地の土手 2009.4/6)
日当たりのよい里山の畑地の土手に群生している。
このような場所ではスズメノヤリ、シロツメクサ、ハコベ類、ヤエムグラ、ヤブカンゾウ、アオスゲ、イワニガナなどとともに見られることが多い。



原産国:北アメリカ
自然開花期:3月~6月
花言葉:小さな恋人達

秋に芽生えて冬を越し、春になると急激に伸び、葉の先端は巻きひげとなって付け根からは蜜を分泌する。
草丈は大きいものは1.5m程になり、葉は8から16枚、先端は三つに分かれた巻きひげ状になる。

道路わきの空き地や畑の端などの草原、山麓などの日当たりのよい場所に育つ越年生のつる草。




カラスノエンドウは本州、四国、九州では道端や野原に普通に見られる植物です。千葉市では2月から4月にピンクまれに白色の花をつけます(写真1)。漢字では烏野豌豆と書きます。実がカラスのように黒く(写真2)、野にあってマメがなる草というような意味です。カラスノエンドウに比べて、全体に小さいのはスズメノエンドウ(雀野豌豆)、カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間の大きさのものはカスマグサ(カラスのカとスズメのスの間の意味)と呼ばれています。スズメノエンドウとカスマグサは白色に近い花をつけます。カラスノエンドウほど多くはありませんが、時々、カラスノエンドウと一緒に生えているのをみることができます。カラスノエンドウは別名をヤハズエンドウと言い、葉の先が少し、くぼんでいることからつけられたものです。

世界的に温帯地域の穀物畑、牧草地、樹園地における雑草となっていますが、飼料や緑肥として、栽培されている系統もあります。根を掘り起こしてみるとマメ科の特徴である根粒(写真3)もみられます。雑草として農耕地では嫌われる植物ですが、4月に蝶形花といわれるマメ科独特のピンクの花をつけた様子は、雑草であることを忘れてしまいます。また、2月の梅祭りのころに、梅林の林床をカラスノエンドウが覆っている(写真4)ことが多いようです。ウメの花の白とカラスノエンドウの緑のコントラストが印象に残っている方も多いことと思います。

写真3:根粒(千葉市4月) 写真4:梅の花の下のカラスノエンドウ(熱海市2月)
カラスノエンドウの葉は細かい葉がたくさんついているようにみえますが、1枚1枚は小葉という複葉で、5、6対が普通の1枚の葉にあたります。先のほうの小葉は巻きひげになっています。

千葉市では、9月から10月に発芽し、幼植物で冬を越し、2月から4月に開花、6月にさやをつけ、7月には種子を落とし、枯死します。落下した種子は高温では発芽しないので、種子のまま、夏を越します。6月から7月の晴れた日に、黒いさやをつけたカラスノエンドウの群落の近くを通ると、ピチピチとさやの弾ける音を聞くことができます。近寄ってみると、さやがねじれて丸い種子がとんでいるのがみられます(写真2)。農耕地や空き地では大きな群落をつくることがありますが、1年で激減してしまうようです。

カラスノエンドウは非選択性除草剤のグリホサート剤、ジクワット・パラコート剤、グルホシネート剤に感受性が高く、いずれの除草剤でも防除が可能です。また、これらの除草剤に対する抵抗性バイオタイプの出現もみられません。



カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサ                   ホーム

 春の道ばたで、どこでも見られるマメ科の雑草です。
 3種類とも、同じ場所に生えていることがあります。
 比較しながら観察すると、おもしろいことがわかります。

カラスノエンドウ
(烏野豌豆/別名:ヤハズエンドウ)
豆果が黒く熟すことから、カラスの黒色にたとえました。
ヤハズエンドウは小葉の先がへこむので矢筈にたとえました。
赤紫色の花は葉の付け根に1または2個つきます。
直接つくので、枝がありません。
豆果(種子の入ったさや)は斜め上に伸びています。
毛はなく、中には種子が10個前後入っています。
写真には丸い粒が10数個見えています。

スズメノエンドウ(雀野豌豆)
カラスノエンドウより小型であることから、
カラスに対してスズメとして名付けられました。
白色の花は葉腋から伸びた枝の先に4個きます。
豆果は下向きにつきます。
短毛がたくさん生えています。
中には種子が2個入っています。

カスマグサ(かす間草)
カラスノエンドウとスズメノエンドウとの中間的な
性質を示すことから、カラスとスズメの間という意味で
「カとスの間」とつけられました。
紫から赤紫色の筋がある白っぽい花を
葉腋から伸びた枝の先に2個つけます。
カラスノエンドウが1個、スズメノエンドウが4個である
のに対して、中間の2個となっています。
枝先につくのはスズメノエンドウと似ています。
豆果は毛はなく、種子が4個入っています。
カラスノエンドウが10数個、
スズメノエンドウが2個であるのに対して、
中間の4個(5個の場合もある)となっています。



カラスノエンドウ(烏野豌豆)  マメ科  Last modified: Apr 07, 2007
 学名:Vicia sepium
 別名:ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)
 花期:春

 スズメノエンドウ(雀野豌豆)というのもあります。当然,雀野豌豆の方が小さいです。
 群馬県では子供達はこれを「しびび」と呼ぶようですが,その意味は私にはわかりません(私の生まれは香川県ですが,そこでは何と呼んでいたか記憶はありません)。小さな子達が,ままごとの食器にしびびの豌豆を一杯いれて遊んでいました。

 追記:Jul 22, 2003
 「しびび」という呼び名について,以下のようなお便りをいただきました。
 『地元の子供たちが,なぜカラスノエンドウのことを《シビビ》と呼ぶのか』というところを読んでいたとき,三十数年前群馬の子どもだったうちの母が,「詳しい吹き方は忘れたけど,さやから豆を取り除き,笛のようにして吹くと空気が振動して,変な音が出て,それを《シッ・ビ・ビー・ビー》というリズムで吹いていた。」と言いました。そのあたりから,《シビビ》と呼ばれるのではないでしょうか?



烏野豌豆 (からすのえんどう)
(矢筈豌豆(やはずえんどう))

  • 豆(まめ)科。
  • 学名 Vicia angustifolia var. segetalis
         Vicia        : ソラマメ属         
         angustifolia : 幅の狭い葉をもつ   
         segetalis    : 穀作地生の         
 Vicia(ビシア)は、ラテン語の             
 「vincire(巻き付く)」が語源。           
 この属の植物に蔓性のものが多いことから。  
学名 V へ

  • 開花時期は、 2/10頃~ 5/10頃。
  • 春、いかにも豆科っぽいピンク色の花が咲く。
  • 春、若芽を天ぷらにするとおいしいらしい。

  • これより小さいものに、
 「雀野豌豆」(すずめのえんどう)がある。  
 大きめのものに「烏」と名づけることが多い。
 また、実は熟すと黒くなることから          
 黒→カラス、との連想で「烏」の名がついた、
 との説もある。                            
  • 黒く熟した実は、
 時期が来ると自然に爆(は)ぜて、            
 中のタネを外にはじき飛ばす。              
 飛ばすときは実がねじれるように爆(は)ぜて、
 タネを遠心力で遠くに飛ばす仕組みを        
 もっているようだ。                        
 (爆(は)ぜるところは、カタバミに似ている)
 1つの実に5個ぐらいのタネが入っている。  
 爆(は)ぜる時季に、群生しているところで    
 耳をすましていると、「パン、パン」と      
 爆(は)ぜる音が聞こえる。                  

  • 別名 「矢筈豌豆」(やはずえんどう)。
         葉の先端がくぼみ、                
         矢筈形になることから。            

Copyright(C) Since 1997, Atsushi Yamamoto. All rights reserved.


http://www.plantsindex.com/plantsindex/html/group/gp_vicia_angustifolia.htm
(画像組みのテーブルのため、引用不可)





名の由来は莢(さや)が黒いので「黒い野エンドウ」の意味です。読み方は、(カラス)+(野エンドウ)であって、(カラスの)+(エンドウ)ではありません。

 葉の付け根に蜜腺を持った2つの黒い斑点があり、ここから甘い蜜を出し、アリを呼び寄せ、葉を食べる虫たちを追い払う用心棒役にしています。持ちつ持たれつの関係ですが、この用心棒を寝返らせる「アリマキ」が現れました。アリマキはカラスノエンドウの茎から糖分を吸い、体内に貯め、その余りを体外へ排出しています。そこでアリは、葉よりも多く蜜を出すアリマキの虜になってしまいました。カラスノエンドウは、アリには裏切られ、アリマキには糖分を横取りされ、踏んだり蹴ったりです。まさに報酬が物を言うビジネスライクの関係になってしまいました。

 カラスノエンドウより小型の「スズメノエンドウ」は、自分の体内に抗菌や抗酸化作用のある物質を持ち、病原菌や害虫から身を守っています。こうして見ると、カラスとスズメの自衛策に対する知恵比べは、どうやらスズメに軍配が上がりそうですね。

 なお、カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間型に「カスマグサ」という種類があり、「カ」と「ス」の間(ま)から、「カスマグサ」と名付けられました。カラスノエンドウは後の2種に比べ、極めてポピュラーな種です。





スズメノエンドウ
(雀野豌豆)
マメ科/ソラマメ属

Vicia hirsuta

Vicia→ラテン古名 vincire(巻きつく)が語源か
hirsuta→粗毛のある

花期・・・・4~6月

【スズメノエンドウ】
平地で普通に見かける、つる性越年草。カラスノエンドウより小さい事による名前。茎は葉軸の先端にある巻き髭で他の物に絡まりながら20~50cmほどに伸びる。葉は小葉が6~8対ある偶数羽状複葉。小葉は2cm弱の狭卵形で先は平切状、葉脈の先端が針のように突き出る。花はごくわずか紫色を帯びる5mmほどの蝶形花で、葉の付け根から伸びた総状花序に3~7個付く。豆果は約1cmで毛があり、通常2個の豆が入る。

【カスマグサ】
平地で普通に見かける、つる性越年草。カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間ぐらいの大きさによる名前。茎は60cmほどに伸びる。葉は4~6対の小葉があり、スズメノエンドウより少なく、先は少し丸みがある。花は6mm前後の淡青紫色の蝶形で旗弁に紫色のすじがある。通常2個が花柄の先にやや下向きに咲く。豆果は1.5cm前後で毛が無く、普通4個の豆が入る。スズメノエンドウと同様、カラスノエンドウほど目立たず弱々しくて、引き抜くのが可哀想な気になる。




 カスマグサ Vicia tetrasperma (マメ科 ソラマメ属)
 カスマグサは本州から琉球、ユーラシア大陸の暖温帯に広く分布する一年草。スズメノエンドウとよく似ており、やや乾燥した路傍などに生育する点も同様で、混生していることも多い。小葉は8~12枚あり、スズメノエンドウよりも少ない。小葉の先端が円頭でやや尖ることはよい区別点である。花弁には紫色の紋様があり、花は1~3つで、少し離れてつく。果実がなっていれば、無毛であるので、簡単にスズメノエンドウと区別できる。和名はカラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)とスズメノエンドウの中間的であるとの意味。



 カスマグサ・・・、私はこの名前の響きが好きです。 ところで、この「カスマ」とは何だと思いますか? 韓国歌謡に「カスマプゲ」(「胸がせつない」といった意味)がありますが、その「カスマ」? 人の名前? 

 じつは、よく知られている野草のカラスノエンドウに関係があるのです。 そして、カラスノエンドウに似て、花も葉もずっと小さな野草があります。 花の色も白っぽくて目立ちにくく、カラスノエンドウほどよく知られていませんが、カラスより小さいというので、スズメノエンドウと名付けられています。 下の写真は、この2種が隣同士に生えている写真で、左がカラスノエンドウ、右がスズメノエンドウです。 大きさを比較してください。

 さらに、この2種の中間のような野草があります。 じつは、カスマグサとは、その野草の名前なのです。カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間、つまり、カラスの「カ」とスズメの「ス」の間(この漢字は「マ」とも読みます)で、カスマグサなのです。
 では、カスマグサが、ほんとうにカラスノエンドウとスズメノエンドウの間であるのか、この3種類を、もう少し詳しく比較していきましょう。

【花】
  カラスノエンドウ カスマグサ スズメノエンドウ
花柄 ほとんど無い 長い 長い
一カ所につく
花の数 1~2、場合によっては3 1~3、2の場合が多い 3~7
花の色 紅紫色~淡紅色 淡紅紫色 ごく淡い紫色
スズメノ
エンドウ
の花は、
最初の
写真を
見てく
ださい。
 カラスノエンドウ 花柄はほとんど無い  カスマグサ

【托葉】
 葉の付け根の両側に「托葉」と呼ばれる小さな葉のようなものがあります。
カラスノエンドウ カスマグサ スズメノエンドウ
大きく、複雑な形。黒紫色のはん紋が
あり、ここから蜜が出る(花外蜜腺)。   小さな葉のよう。   深く切れ込み、裂片は線状。
      └> この蜜をアリがなめているスクープ写真は、 から別ウインドウで開きます。

【果実(豆果)】
  カラスノエンドウ カスマグサ スズメノエンドウ
果実の様子 熟すと、真っ黒
になる。
「カラス」の名の
いわれは、ここ
から。

当たり前のことですが、3種とも、1ヶ所につく果実の数は、花の数以下。
1果実の中の
種子の数 多数 4
学名 Vicia tetrasperma の種名は「4種子の」の意味 2
その他     葉面にも毛があるが、果実も毛むくじゃら。
学名 Vicia hirsuta の種名は「多毛の」の意味

 どうです? カスマグサが「カラスノエンドウとスズメノエンドウの間」だということを、納得していただいたでしょうか。 「カスマグサ」の名を考えた人のセンスの良さに感心します。



カスマグサ

Vicia tetrasperma
マメ科 ソラマメ属

カスマグサは,人里の草地に生える小さな一年生の蔓植物。カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間的な大きさなので「カ」と「ス」の間をとって,カスマグサの名がある。
大きさだけでもだいたい識別できるが,花のつき方や豆果の様子もほかの2種とはずいぶん違う。
花には長い柄があり,その先にふたつの花がぶらさがる。花色は濃い青紫色。スズメノエンドウは花数がより多く,花色はごく淡い淡紫色。ほとんど白に近いものも多い。

いがりまさし野草ハイキング
参加者募集

カスマグサ 1998年4月21日 愛知県旭町

【漢字名】かす間草
【花期】4~5月 【分布】本州・四国・九州 【草丈】足首~ひざ
【環境】人里・田畑,原野・草原

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カスマグサは、本州、四国、九州、沖縄に分布し、道ばたなどの日当たりのよい草地に生えるつる性の越年草です。マメ科ソラマメ属(スズメノエンドウ属)の植物で、学名の「Vicia」は「vincire:巻きつく」からきているといいます。実際に、カスマグサにも巻きひげがあってそれで他につかまって伸びます。

「カスマグサ」という名前は変わっていますが、これは、同じ属の「カラスノエンドウ (Vicia sativa subsp. nigra)」と「スズメノエンドウ (Vicia hirsuta)」の中間的な形をしているところから、両者の頭文字をとって、「カ+ス+間+草」とつけられたといいます。全体的な大きさや花の大きさは、確かに2種の中間に入る大きさではありますが、花は小さくどちらかといえば、目立たないし「スズメノエンドウ」よりかな。


葉はたくさんの小さい葉(小葉)からなる羽状複葉で、てっぺんの小葉(頂小葉)がなく、巻きひげ状になっています。これで、そこらじゅう巻きついて、どこからどこまでが1個体なんだろうかと思ってしまうくらいです。小葉は8枚~14枚くらい。

カラスノエンドウは、3種の中では、特別に大きく目立つ花なので見分けるのは簡単です。では、スズメノエンドウと比べるとどうなのかと。これも、花の色や実の形がちがうので意外に簡単に見分けられます。カスマグサは赤紫色の花を1個~3個のつけるのですが、スズメノエンドウの方はより小さくて、白っぽいような青紫っぽいような色の花を3個~7個つけます。したがってできる果実(豆果)の数も違ってきます。


カスマグサは花が2つずつ咲くことが多いので、豆果も長い柄の先に2つついていることが多いですが1個のこともよくあります。豆果は下向きにぶら下がるようにつき、毛はなく、長さは1cm~1.5cm。中にはふつう4個の種子が入っています。スズメノエンドウの豆果は、長さ1cmあるかどうかで、短い毛がたくさん生えています。中の種子は2個です。

ちなみに、カスマグサの種小名「tetrasperma」は、「4つの種子の」という意味です。

3種の違い(数のみに注目した場合)*


小葉の数花数(果実数)種子数カラスノエンドウ8個~16個葉腋に1個~3個3個~6個カスマグサ8個~12個長い柄の先に1個~3個4個スズメノエンドウ12個~14個長い柄の先に3個~7個2個

特に小葉の数などは、変異の幅が大きいもので、種間で重なり合うので、これだけでは区別しかねるかもしれません。そういうときは、ほかの形質と合わせて、総合的に見てみてみます。一度わかってしまえば、この3種、比較的簡単に見分けがつくようになるでしょう。
最終更新:2012年04月20日 21:22
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