アルトゥール・ショーペンハウアー(1788~1860)は、ドイツの哲学者。実存主義の先駆者とされる。主著は「意志と表象としての世界(1819)」。インド哲学を取り入れたが、深刻なペシミスト(悲観主義者)だった。
「人間にとって生きることは非合理的であり、苦痛に満ちたものとならざるをえない。この苦悩に満ちた生から救われるにはどうしたらよいだろうか。それは結局、意志を否定することによってしかない」と考えた。
ショーペンハウアーの考えは、作曲家リヒャルト・ワーグナーや哲学者フリードリヒ・ニーチェに影響を与えた。
生涯
幼いころからヨーロッパ各国を旅行したため不規則な教育を受けたが、ゲッティンゲン大学やベルリン大学で研究し、1819年に主著「意志と表象としての世界」を執筆。ショーペンハウアーは名声と印税収入を手にできると考えたが、期待は裏切られることになる。
主著を執筆後にベルリン大学で講義を始めるが、彼がするヘーゲル批判に共感する者がおらず、これも失敗する。
1831年にフランクフルト・アム・マインに移住する。
1851年に「付録と補遺」を刊行し、ようやくショーペンハウアーの名声が知られる始める。
やがて学界の枠を超えて急速に広がるが、1860年9月21日にフランクフルトで死去した。
哲学
ショーペンハウアーに最も深い哲学的影響を与えたのはカントだった。カントの偉大さを疑ったことはなかったが、「意思と表象としての世界」に長いカント哲学批判が書かれている。
またプラトンからイデア論を、シェリングから物自体を継承し、盲目的な生存意志が一切の根底であるとした。
人間もこの意志がすべての欲望の元となり、それが満たされないところに苦痛がある。ショーペンハウアーはこの苦痛からの解脱をウパニシャッドや仏教に求めた。またヨーロッパの思想的伝統よりも、インドの思想のほうが厭世的・汎神論的だから優れていると述べている。
最終更新:2012年03月22日 11:37