―B Part 2024―
◇都内某所・地下闘技場 PM10:30
ベコッ! バキッ!
美咲紀「……ッ!」
静まり返った場内に、骨を打つ鈍い打撃音が響き渡る。
全員が言葉を失い、暴行の行方を無言で見届けた。
阿部MTB『ハハハハハハハハ』
未来「……」
ドゴッ! ベキッ!
うずくまって身を守る未来の体を、阿部が釘バットで滅多打ちにしていたのだった。
未来「……」
攻撃を耐えているのか、それともとっくに死んでいるのか、判断のつかない状況だった。
普通にしていても死ぬレベルの暴行。それを『マーラ・ザ・ビッグボス』の“痛覚過敏”の状態で受けているのだから、
後者の線でほぼ確定である。
幹部4「こりゃあ……」
幹部5「決まりですな」
幹部6「さぁお嬢ちゃん。次はお前だ」
美咲紀「……」
釘バットによる殴打の音が止んだ。ハァハァと息を切らした阿部が、バットを放り捨ててその場に座り込んだ。
阿部MTB『おい! さっさと死亡判定しろッ!』
阿部がそう叫んだときだった。
阿部MTB『!!』
幹部7「なにッ!?」
未来が立ち上がって、阿部に駆け寄り、そして――
阿部MTB『!!??』
未来「……」
ズキュゥゥゥーーーーン!!
キスをした。
美咲紀「……なるほど」ニヤリ
未来「ホモなんだろ? 嬉しいか?」
そう言って、未来が唇を離し、阿部を蹴って倒す。
阿部は立ち上がらなかった。『マーラ・ザ・ビッグボス』は解除され、口から泡をぶくぶくと吐き、びくびくと体をうねらせた。
阿部「かは……かぁ………かっ……」ビクビク
「なんだ!? 阿部の様子が……!」
「泡吹いてるぞ!! なにが……」
幹部8「何事だ!? 一体……小僧は、何をしたッ!?」
美咲紀「やかましいわよ、ジジイ……黙ってみてなさいな」
未来「俺がガキみたいに丸まってたのは、身を守るためだと思ってたのか?」
阿部に近寄り、未来はそう言って、“空の小瓶”を阿部の眼前で振った。
未来「この瓶には“青酸カリ”が入ってた……猛毒だ。
俺がうずくまってたのは、『青酸カリのベルト』を作ってるのを、お前に悟られたくなかったからさ」
阿部「……」
未来「今付けてたのは『剣のベルト』じゃない、『青酸カリのベルト』だ。
人生最期のキスは、どんな味がした? アーモンドの香りか?」
ぺっとツバを吐き捨て、未来は外したベルトを阿部の死体に乗せた。
未来「死亡判定しろ」
美咲紀(“青酸カリ王子”にキスなんてされたら、女の子でなくてもノックアウトね……)
幹部9「だが、おかしい! ヤツは確かに阿部の能力で……」
美咲紀「演技でしょう。この一瞬を生み出すための、ね」
幹部9「!!」
美咲紀「全て計算していたのよ。青酸カリなんか持ち込むような男が、敵の能力対策を怠るわけがない。
おそらく、彼は事前に、“自分で自分の嗅覚を破壊”していた。もう彼の鼻は使い物にならないはず」
幹部10「バカな……こんなことが……」
美咲紀「安いものよ。鼻一つの犠牲で、『組織』が手に入るなら」
<<地下闘技場 阿部vs倉井 未来戦 決着!>>
×『マーラ・ザ・ビッグボス』阿部・・・・・・青酸カリの摂取により、死亡
○『ウエスタン・ヒーロー』倉井未来・・・・・・勝利
電光掲示板に勝敗の結果が表示されると、観客席から一斉に歓声が湧き上がった。
特等席では、幹部の一人が立ち上がり、美咲紀に銃口を突きつけた。
幹部11「悪いな、小娘」カチャリ
美咲紀「なんのつもり?」
幹部11「こんなゲームは無効だってこったよ。お前も倉井 未来も、死んでもらうしかねえ」
美咲紀「観客は大勢いるわよ。彼らの前で、私たちとの“賭け”を無視するの?」
幹部11「誰もお前らの台頭なんか望んじゃいねえのさ。わかっ……」
メコッ
言いかけて、男は次の瞬間、首から上が一人でに潰れた。
頭が陥没する音が響いて、男の頭に不自然な凹凸が生まれた。イビツな形状に変わったそれは、
耳から鼻から目から、ピューピューと血を噴き出して男はその場に倒れた。
美咲紀は指一本動かしていなかった。
幹部4「ひいいいいいいいい!!」
美咲紀「負けをなかったことにしたい人、ほかにいるかしら? いるなら手を上げなさい」
美咲紀の言葉に、幹部たちが一歩退いたときだった。
突然、場内にジリジリジリ、と凄まじい音がけたたましく鳴り響いた。
それに続くように、誰かの叫び声が上がる。
「火事だぁーーーーーーーッ!! 逃げろぉぉぉーーーっ!!!」
美咲紀「!?」
幹部たち「火事!?」
未来「なんだ!?」
ワー! ワー!
キャー!
試合前のそれとは、違う種類の怒声が飛び交い、場内は瞬く間に混乱の炎に包まれた。
すると、逃げる観客たちとは逆に、二人の青年が、未来のいるフィールドへ降りてきた。
カズ「那由多のやつ、やりすぎじゃねえ? 俺達まで閉じ込められて死んだら……」
琢磨「いたぞ」
未来「……なんだ? お前ら」
カズ「おーおーグレちまって。俺は悲しいよ」
首をぽきぽきと鳴らして、カズが言った。
カズ「俺がやる」
琢磨「油断するなよ、そいつの強さは普通じゃない……!」
未来「……」
逃げ惑ったバカな観客が、フィールドにまぎれこんだわけではないらしい。
直感的に危険を読み取った未来が、『ウエスタン・ヒーロー』を出現させる。
カズ「頭殴って気絶させて、連れて帰る。以上!」
そう言って、カズは未来に向かい、駆けだした。
特等席の幹部連中が、専用通路を使って地上に脱出していく中、美咲紀がふとフィールドを見やると、
未来のほかに二人の男がいた。そのうちの一人が、未来の体を肩に抱え、フィールドを出て行くところだった。
美咲紀「!? なんだ、あいつらは……!」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!
追いかけようとしたところで、火の手が回り込み行く手を阻む。
舌打ちをして、仕方なく美咲紀も専用口から地上へと向かう。
地上に出て、すぐさま美咲紀はケータイを取り出し、通話を始めた。
相手は、宮原 彩だ。
美咲紀「彩! 今すぐ未来のGPSを追いなさい! 闘技場から消えた!」
彩<了解しました。美咲紀様、城嶋 丈二の行方が判明しました>
美咲紀「あんなヤツはどうだっていい! それより、未来を……賭けが台無しに……!」
彩<それが……ミシェル・ブランチと一緒なのです>
美咲紀「!!」
その名を聞いた瞬間に、美咲紀は悟った。
美咲紀「そういうこと……ミシェル・ブランチ……!
未来は、あの外人女に連れてかれたのね……!」
美咲紀「丈二とミシェルはどこに!?」
彩「渋谷区の『東京織星シンフォニーホール』です」
美咲紀「柚子季を連れて行きなさい! 私もすぐに向かうッ!」
通話をブチぎって、美咲紀はケータイ電話を握りつぶした。
怒りを露わにしたその顔は、まさに鬼の形相と呼ぶのにふさわしいシロモノだった。
美咲紀「ミシェル・ブランチ……! やはりあのとき殺しておくべきだった……!」
―A Part 2025―
丈二が由佳里にスタンドを与えてから、一週間が経った。
子犬はすっかり回復し、現在は由佳里のアパートで彼女に飼われている。
その日、丈二が由佳里の家に行くと、玄関に出た彼女のまぶたの上が、腫れていた。
貼ってある絆創膏に気づいて、丈二が問い詰めると、由佳里は力なく笑って話はじめた。
由佳里は、ある事件を追っていた。ある衆議院議員が、飲酒運転で主婦をひき殺したという事件だった。
金でもみ消されたその一件を記事にするため、それを目撃したという唯一の証人の家を訪ねると、彼はすでに金で買収されていた。
門前払いされ、それでも根気強く、由佳里は何度も何度も繰り返し家に通った。
ある日見慣れないスーツを着た男たちが彼女を家に招き入れた。証人の男は引っ越していた。
そして……
「なんで」と丈二が口を開いた。
丈二「なんで、そこまでして、取材するんだ。そんな目にあってまで……」
由佳里「……ライターだから」
丈二「君はわかってない。世の中には、関わっちゃいけないやつがたくさんいるんだ。
正義なんか、道徳なんか、通用しないやつが……!」
由佳里「……」
丈二「もうやめてくれ、由佳里。お願いだ」
手を握り、懇願する丈二。由佳里は彼の眼をみて、逸らした。
そして、部屋の隅で遊ぶ子犬を見て、話し始めた。
由佳里「その子ね、散歩に行きたがらないの」
丈二「え?」
由佳里「車道に出ようとすると、すごく怯えて……動かなくなっちゃうの。
車が怖いのね。あの事故のこと、この子は今でも忘れられないで、苦しんでる」
由佳里「人は残酷よ。知らず知らずのうちに、周りの誰かを傷つけてる。みんなね。
この子を轢いた、あのドライバーだってそう。あのドライバーは、この子が怯えて外に出れないことなんか、知らない」
由佳里「この子の一生が狂ったことなんか、知らない」
丈二「……」
由佳里「一番残酷なのは、自分の行いを本人が知らないことよ。だから私は、彼らの行いを記事にする。
自分がなにをしたのか、してしまったのか、教えてあげるの。彼らに」
由佳里「立場が逆だったら、きっと丈二に私も同じこと言うと思う。
でも、私は頑固だから……ごめんね」
返す言葉がなかった。丈二は彼女の肩を抱いて、二人は何時間も沈黙の中で互いを想い合った。
―B Part 2024―
◇東京織星シンフォニーホール・Bホール PM11:40
広いホールの中心に、楽団が演奏するステージがある。
そこに、一人の女性が立っていた。ステージに上がった丈二は、女性の顔を見て、絶句した。
丈二「……由佳里……」
由佳里「……丈二」
追いかけ続けた、三島 由佳里の姿が、そこにあった。
ステージの上で再会した二人。ミシェルは、再会した瞬間に、二人は抱き合うものだと思ったが、そんなことはなくて残念がった。
丈二は、ひどく混乱していた。言葉を必死に搾り出して、丈二は由佳里に問う。
丈二「なんでここに? 君は・・・殺されただろう?」
由佳里「そうだね……」
丈二「・・・・・・どういうことなんだ、どうして……」
由佳里「丈二は?」
丈二「え?」
彼女の質問に、記憶の眠っていた部分が、揺さぶられる。
ドクン
丈二「俺は・・・」
ドクン
そして、思い出した。
丈二「・・・俺も、殺されたのか・・・」
涙が溢れ、丈二はその場に崩れ落ちるようにへたり込んだ。
全て、思い出した。あの日、あの雨の日、曇天の空、血まみれの体、そして顔を覗き込む……神宮寺 美咲紀。
丈二「俺、殺された……あいつに……」ポロポロ
泣きじゃくる丈二を、由佳里が優しく、胸に抱きとめる。
由佳里「大丈夫だよ。もう大丈夫……」
彼女の顔を見上げて、丈二が質問を重ねる。
丈二「みんな…みんな死んだのか? 全員、殺されたのか?」
由佳里「人はみんな、いつかは死ぬでしょう? 殺された人もいるけど、みんなじゃないよ。
殺される人、事故で死ぬ人、寿命で死ぬ人……みんなそれぞれ違うの」
丈二「ここはどこなんだ? 死んだ人たちが……集まってる」
由佳里「そうだね。でも、ここにいる人たちは“今は”ちゃんと生きてるよ。
死ぬ前を“前世”とするなら……」
由佳里「ここは“来世”というのかな。死んだ後に訪れる、私たちの新しい人生」
丈二「“来世”・・・」
由佳里「生命は廻る。ここではみんなが、“前世”とは違う人生を歩んでる」
丈二「覚えてるのか、“前世”のこと……」
由佳里「ミシェルさんが、思い出させてくれたの。あなたのことも」
ミシェルが近づき、スタンドを出現させる。彼女のそばに、初めて見るスタンドヴィジョンが佇んでいた。
下半身が霧状と化した、金色の箱を持つ、人型のスタンドだ。
ミシェル「『エヴリシング・カムズ・アンド・ゴーズ』……失われたものを、甦らせるスタンドよ。
命は戻らないけど、記憶なら……」
丈二「君の……スタンドか……」
ECAG『………』スッ
『エヴリシング・カムズ・アンド・ゴーズ』が、金色の箱を丈二に差し出した。
蓋に、“your...”と刻印された美しい光沢を放つ箱だった。
ミシェル「このスタンドで、あなたの『ハムバグ』を再生するわ。さあ、箱を開けて」
手を伸ばし、丈二が蓋を開くと、『アークティック・モンキーズ:ハムバグ』のデフォルメされた小さな人形が
一つ、箱の中に入っていた。それを手に取ると、人形は丈二の体内に入り、消えた。
丈二「……」
ミシェル「これで、『ハムバグ』がまた使えるはずよ」
美咲紀「それは困るわね」
突然聞こえた声に、ステージの三人が座席の方向へ視線をやると、そこに三人、女が座っていた。
神宮寺 美咲紀と、宮原 彩、後藤 柚子季の三人だ。
三人は立ち上がり、ステージへと歩み寄る。丈二は由佳里を自分の後ろに隠し、美咲紀を睨んだ。
美咲紀「そんな目で見ないで。ゾクゾクしちゃうわ」
美咲紀たちもステージの上に上がり、ステージには六人が揃った。
互いににらみ合い、距離を取る。
美咲紀「彼女と再会できたのね、おめでとう丈二。私もまた会えて嬉しいわ」
丈二「由佳里とミシェルには、指一本触れさせない」
美咲紀「ヒドイわ。まるで私が二人になにかするみたいな言い草ね。まあ、そうなのだけれど」
美咲紀「あなたたちには消えてもらう。目障りだわ」
美咲紀がそう言うと、丈二は前に出て、美咲紀へと近づいた。
そして彼女の目の前まで来ると、美咲紀を睨みつけて言った。
丈二「お前には無理だ。お前は俺が殺す」
美咲紀「あら、どうやるのかしら? “前世”では……勝負にすらならなかったけれど」
丈二「今は違う」
美咲紀「そう」
彩と柚子季が美咲紀の前に出て、丈二は一歩下がり、彼女らと距離を取る。
美咲紀「私にたどり着く前に……その二人に殺されるんじゃない?」
柚子季「ダメダメ丈二、美咲紀様に近づかないでねー♪」
彩「……」
丈二「くっ……」
美咲紀「たった一人で、二人から彼女を守り切れるかしら……? 彩、柚子季。殺って」
美咲紀の指示で、彩の『デッドバイ・サンライズ』、柚子季の『ジグ・ジグ・スパトニック』が同時に出現し、丈二に襲い掛かった。
そのとき。
比奈乃「『ダーケスト・ブルー』!」
忍「『ナイン・インチ・ネイルズ』!」
DB『ウオオオオオオ』
NIN『キシャアアアアアアアアア』
丈二の背後から現れた二体のスタンドが、彩と柚子季の攻撃を弾いた。
彩・柚子季「「!」」
バシィィィッ!!
丈二「な……お前ら……!」
航平「一人ってのは間違いだぜ、お嬢ちゃん」
忍「こっちは4人だ。4対3だバカヤロウ」
比奈乃「私100人分くらいの力あるから、103対3だね」
黒いコートをなびかせて、ステージにあがってきた三人。
彼らは丈二の肩をポンと叩いて、丈二の前に出ると、それぞれ三体のスタンドを出現させた。
忍「おい丈二。お前はあの女子高生とやりてーんだな?」
NIN『キシャアア』
比奈乃「じゃあ私、あのお姉さんやるね」
DB『ウオオオオ』
航平「忍。俺たちはあのパンクちゃんだ」
JF『ゼラァァ』
丈二「お前ら……」
チームメイト達の背中が、とても大きく、頼もしく見えて、丈二は目が潤んだ。
仮にも裏切り者の自分を、なぜ助けてくれるのか? 考えようとして、すぐに無粋だと気づいた。
こいつらは、信頼できる。信頼しよう。
美咲紀「……あなたにも、使える駒がいたのね」
丈二「駒じゃない」
丈二「仲間だ」
仲間だから。
美咲紀「面白い……!」
にやと嗤って、美咲紀が『ザ・ファイナルレクイエム』を出現させる。
無数の眼を持つ禍々しい人型スタンドが登場し、不気味で重苦しい雰囲気が漂う。
美咲紀「彩はAホール、柚子季はCホールへ移りなさい。ここにいると危ない」
FR『……』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
彩「わかりました」
柚子季「移動だって♪ ついてきてお兄さんたち~」
忍「ケッ」
航平「丈二。死ぬなよ」
丈二「ああ。お前らもな」
比奈乃「またあとでね」
そう言って、忍・航平、柚子季の三人はCホールへ、
比奈乃、彩の二人はAホールへと向かい、Bホールを出て行った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
FR『……』
丈二(すげえプレッシャーだ……だが)
丈二「『アークティック・モンキーズ』!」
A・モンキーズ『ムヒーーーー!!』
美咲紀「来なさい……」
FR『……』
丈二(なんでかな……負ける気がしないのは)
丈二「うおおおおおおおおおッ!!」
雄叫びをあげ、美咲紀に向かっていく丈二。
決戦の地は東京織星シンフォニーホール。いま、Aホール、Bホール、Cホール三つのステージで、それぞれの最後の闘いが、幕を上げた。
―A Part 2025―
由佳里「ほんとに行っちゃうのね?」
丈二「ああ」
世界旅行の日。大きなバックパックに荷物に詰め込んで、自分探しの旅に出る丈二を、由佳里が玄関先で見送る。
しばらく会えなくなるのは寂しいが、彼がどんな自分を見つけてくるのか、楽しみでもあった。
由佳里「私もいっしょに行けたらいいんだけど……」
丈二「仕事があるし仕方ないさ。お土産いっぱい買ってくるよ」
由佳里「手紙送ってね。体に気を付けて。なにかあったらすぐ連絡して」
丈二「わかってるって」
彼女の顔を見ていると、どんどん離れたくなくなってきて危なかった。
しばらく会えないのだから、記憶に焼き付くまで彼女を感じていようと思うが、そうすると
旅立ちの決意が揺らいでくるので、一刻も早く話を切り上げ出かける必要があった。
思い出したように、丈二は由佳里にお願いをした。
丈二「あのさ。リリィを連れてっていいかな?」
リリィとは、由佳里が拾ったあの子犬の名前である。
由佳里「えーっ! なんで!?」
丈二「いやぁ……」
丈二「外は悪いことばっかりじゃないよって、教えてあげたいんだよ。
この旅を通じてさ、リリィがまた外の景色と向き合えるようになれたら……って」
由佳里「……」
渋い顔をして、由佳里は熟考する。
そして、はぁと一息吐き出して、部屋からリリィを抱えて戻ってきた。
由佳里「寂しくなるけど……リリィをよろしく」
丈二「了解」
リリィ「ワン!」
リリィを受け取って、丈二は由佳里に手を振り、出て行った。
旅の果てに、どんな自分が待っているのか、一番楽しみにしていたのはほかの誰でもない自分だ。
帰ってきたら、お土産話に花を咲かせて、色んな国のお菓子を食べて、そして、
由佳里とリリィと三人で、散歩に行こう。
あの頃は、由佳里とずっと一緒にいられると、信じていた。
第10話 あなたにまた逢えて(Everything Comes And Goes Pt.2) おわり
使用させていただいたスタンド
No.113 | |
【スタンド名】 | アークティック・モンキーズ |
【本体】 | 城嶋 丈二 |
【能力】 | 赤い色のものに出入りできる |
No.177 | |
【スタンド名】 | ウエスタン・ヒーロー |
【本体】 | 倉井 未来 |
【能力】 | 殴った物質をヒーローベルトに変え、巻いた者はその物質が持っていた性質を取得する |
No.81 | |
【スタンド名】 | シックス・フィート・アンダー |
【本体】 | 桐本 琢磨 |
【能力】 | 死体に6つ穴をあけるとその死体をゾンビにすることができる |
No.2336 | |
【スタンド名】 | ダーケスト・ブルー |
【本体】 | 藍川 比奈乃(ヒナ) |
【能力】 | 掌から青い電撃を発する |
No.1340 | |
【スタンド名】 | ナイン・インチ・ネイルズ |
【本体】 | 吉田 忍 |
【能力】 | 殴ったものをドロドロにする |
No.2552 | |
【スタンド名】 | ジェイミー・フォックス |
【本体】 | 真崎 航平 |
【能力】 | 殴った物体を金属でコーティングする |
No.2322 | |
【スタンド名】 | デッドバイ・サンライズ |
【本体】 | 宮原 彩 |
【能力】 | 触った物や人に『時限爆弾』をとりつける |
No.315 | |
【スタンド名】 | ザ・ファイナルレクイエム |
【本体】 | 神宮寺 美咲紀 |
【能力】 | 触った事のある『スタンド能力』をそのまま自分が使うことが出来る。 |
No.1123 | |
【スタンド名】 | ジグ・ジグ・スパトニック |
【本体】 | 後藤 柚子季 |
【能力】 | 触れたものをハサミにする |
No.395 | |
【スタンド名】 | ワンダリング・リペア |
【本体】 | 立花 杏 |
【能力】 | このスタンドを何か壊れている個所に取り付かせると直してくれる |
No.131 | |
【スタンド名】 | マーラ・ザ・ビックボス |
【本体】 | 阿部 |
【能力】 | 白い液体を射出し付着した相手の生気を奪い取る |
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