ソウル‐メイト【soul mate】
魂の伴侶、心の友、前世での知り合い
―A Part 2027―
◇都内某所 とあるお屋敷・中庭 AM10:33
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
丈二「うおッ!」
美咲紀「フッ」
振り落とされる『アークティック・モンキーズ』の拳と、それにぶつかる『ザ・ファイナルレクイエム』の拳。
二つの拳が衝突し、大きな衝撃波が二体のスタンドを中心に周囲へ広がっていく。
弾き飛ばされた丈二は、中空で器用に身を反らし、引き抜いた銃を構え、引き金を引いた。
バン! バン!
美咲紀「無駄よ……」
FR『……』チンッ チンッ
その場から一歩も動かずに、『ザ・ファイナルレクイエム』が迫りくる弾丸を指先ひとつで弾いていく。
丈二(眉一つ動かさずか、だが……!)
着地し、同時に中空に投げ出されたナイフをキャッチすると、丈二はその切っ先を左腕に当てた。
鋭利な刃が腕をすーっとなぞり、裂けた皮から血が溢れだす。
スパァッ!
丈二「……ッ」ドクドク
美咲紀「自傷癖があるのかしら?」
丈二「お前を殺すためなら、腕の一本や二本……」スッ
美咲紀「!」
丈二「惜しくねえぜッ!」バッ!
そう言い、丈二は勢い良く左腕を振り払い、血液を振りまいた。
丈二「『アークティック・モンキーズ』!!」
A・モンキーズ『ムヒーーーーーーーッ!!』ヒュンヒュン
飛び散った血液の粒と粒の間を、『アークティック・モンキーズ』が高速で駆け巡る。
一気に相手まで接近した小猿の右手が、敵の喉を抉ろうと飛び出した。
美咲紀「フフフ……」バァァァ……
A・モンキーズ『ムヒッ!?』スカッ
しかし右手が触れる寸前に、美咲紀の体が黒い霧と化して空気に溶けた。
小猿の右手はむなしく空を切り、霧を散らして空ぶりに終わった。
丈二「消えた……!」
きょろきょろと辺りを見回す丈二。
丈二(“霧になる能力”か……! くそ、いくつ能力をもってやがる……!?)
やがて霧が丈二の背後で集まり、『ザ・ファイナルレクイエム』の右手を形成していく。
丈二が察知し振り返ると、出し抜けに突き出されたその右手が、丈二の耳元を掠めた。
チッ
丈二「ぐあッ…!」
ブシュッ!
丈二の耳元から、多量の鮮血が噴き出した。掠めた『ザ・ファイナルレクイエム』の右手には、
剥がされた丈二の“右耳”が握られていた。
丈二「くそッ……!」ドクドク
耳をもぎ取られた顔の右半分を手で押さえ、丈二が『ザ・ファイナルレクイエム』の右手に
『アークティック・モンキーズ』のパンチを突き出す。
だが右手はもぎ取った“右耳”をポイと捨て、拳が命中する前に再び霧と化して消えた。
―ふふふ、次は左耳を頂くわ……
どこからか聞こえる美咲紀の笑みが、丈二の背中を寒くさせた。
丈二は自分が怯んだことを知覚すると、怒りという熱を発生させて恐怖を溶かした。
丈二(遊んでやがるのか……! くそっ、どこだ……!)
シュッ!
丈二「くッ!」バッ
スパァ!
またしても突然現れた“突き”が、丈二の首を後ろから狙った。
超反応で咄嗟に回避したが、指先が首の皮を切り裂く。
首にできた傷は無視して、丈二はナイフを構えなおした。
人は感情的になると冷静な思考を失うが、丈二の怒りは逆は脳の働きを活性化させた。
丈二(他の能力を使ってこないのは……“いくつも能力を同時には使えない”ってことか……?
いまは“霧になる能力”しか使えない……)
丈二(どれくらいその状態が続くのかわからないが、恐らくそんなに長くない……
ヤツが『ハムバグ』を使ってこないこの数十秒間が、チャンスだ……!)
意を決したように、丈二はあふれ出る血液を口に注ぎ、含ませた。
そして再び繰り出された『ザ・ファイナルレクイエム』の“突き”を躱すと、
その右手に向かって口に含んだ血液を噴きかける。
ブーッ!
噴き出された細かい血液の分子が、その中に潜んでいた『アークティック・モンキーズ』の体をも細かくしていた。
霧状の敵に噴きかけられた血液の霧が、小さな分子同士でぶつかり、相手の体を掴んだ。
ガシッ!
FR『!!』
A・モンキーズ『オラオラオラ』
掴んだ右手に、『アークティック・モンキーズ』が勢いよく拳の殴打を浴びせる。
その傍で中空から突然血が噴きだし、霧と化して周囲に溶けていた神宮寺 美咲紀が姿を現した。
彼女の右腕が、スタンドのダメージフィードバックで激しく損傷していた。
美咲紀「くッ……!」ボタボタ
丈二「お前が“霧”になれるなら、こっちも“霧”にして攻撃するだけだ」
丈二「腕の一本や二本惜しくないぜ。ただし、お前の腕だがな」
美咲紀「いい気にならないでね、坊や……!」
骨の砕けた右腕を支えながら、美咲紀がそう呟いた。
美咲紀「腕を折られたのは初めてよ。称賛に値する健闘ぶりね……でも」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
そう言って消失した『ザ・ファイナルレクイエム』の――
丈二「な……!」
美咲紀「“一分”経ってしまったわ」
大量の分身たちが、庭中に出現した。
その数、ざっと20体あまり。
FR『………』ドバァーーーン!
丈二(分身しただと……!?)
美咲紀「お次はこの“分身”能力。あなたはきっとお腹いっぱいになる。デザートの『ハムバグキャンディ』まではたどり着けない」
美咲紀「フルコースは終わりよ……」
丈二「……ッ!!!」
◇都内某所 都立○○小学校跡地 同時刻
丈二と美咲紀が相対しているころ、都立○○小学校廃校舎前で、ある異変が起こった。
ミシェルが『ホテル・ペイパー』の試練を受けに、廃校舎の中へ入って行って一時間。
外で待つ天斗と航平の二人は、激しい地震を感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
航平「!? 地震!?」
天斗「あ、ああああッ!!!」
悲鳴に近い叫びを上げた天斗が、廃校舎を見上げていた。
航平がそばに駆け寄って天斗の視線の先をみやると、震源地となっていたのは廃校舎だった。
がたがたと建物自体が揺れ、窓ガラスを砕きながらその震動を大きくしていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
航平「な、なにが起きてる……?」
天斗「ミシェルさんが! 中にいるのに……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
航平「中で何が……? まさか、失敗したのか……!?」
天斗「いやだよ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ドゴオオオオオーーーーーン!!!
めしめしと不吉な音が響いて、校舎の一階部分が圧によって沈み、崩落した。
テレビで見るような、砂でできた城を崩すような、激しい建物の崩壊。
数年前まで学びの場であったそれは、爆音を轟かせながら、無数の瓦礫の集まりと化した。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
天斗「いやだああああああああああ!!」
涙ながらの少年を絶叫が、砕け散った校舎の残骸を震わせた。
航平は目の前の光景に絶句し、泣きながら崩れ落ちた校舎へ駆ける天斗を止められなかった。
すると、舞い上がる砂埃の中に、ゆらりと立ち上がった人影を見た。
航平「……!? まさか……」
天斗「あ、あぁ……」
人影はほこりを払いながら、ゆっくりと歩き出した。
天斗はその顔を見ると、勢いよく飛びついた。
ミシェル「げほっ、げほ……oh、どうなってんのこれ……」
天斗「ミシェルさんッ!」ガバッ
咳払いをしながら、ミシェルが粉じんの中から現れた。
ミシェル「テント」
天斗「よかった……よかった……ッ!」
航平「無事だったのか……!」
航平が二人に駆け寄る。
航平「試練は、成功したのか?」
ミシェル「死んでないってことは、そうなんじゃない?」
天斗を抱きとめながら、ミシェルはそう言って軽く笑った。
ミシェル「ところで、ジョージは?」
航平「いないんだ。車もないし、どっか行っちまったらしい」
航平の言葉で、少し考えたのち、ミシェルは顔を青くして立ち上がった。
そして駆け出し、校門から外へ出る。
校門の外には、校舎の崩壊音をきき、ぞろぞろと野次馬が集まってきていた。
ミシェルは騒ぎに乗じて、キーが刺しっぱなしの野次馬の車に乗り込み、天斗と航平に乗るように告げた。
ミシェル「早く乗って!」
航平「人の車だぞ……」
天斗「どうしたの? 丈二さんに、なにか……?」
心配そうに、顔を覗く天斗。ミシェルはハンドルに視線を落とし、苦しそうに言った。
ミシェル「ジョージは、あの女のところに行ったのよ……。一人で全部終わらせるために……!」
航平・天斗「!!」
ミシェル「急がないと、ジョージが殺される!」
もはや、一刻の猶予もないらしい。二人が後部座席に乗り込むと、それに気が付いた車の持ち主が車に走ってきた。
ミシェルはそれを無視して、アクセルを強く踏み込んだ。
◇都内某所 とあるお屋敷・中庭 同時刻
ザァァァァ……
ぽつぽつと降り出した雨は、瞬く間に激しい豪雨と化して、二人の体をずぶ濡れにした。
体に叩きつけられる雨粒が痛く、傷にしみた。
滴る雨に目を拭った一瞬に、20体ほどに増えた『ザ・ファイナルレクイエム』が、一斉に丈二に飛び掛かった。
FR『ヴォォォォォォオオオ!!』
丈二「くそッ! 『アークティック・モンキーズ』ッ!」
A・モンキーズ『ムヒーーーッ!』
応戦に、『アークティック・モンキーズ』の拳を繰り出すが、ほとんど意味がなかった。
迫りくる殴打の数に、追いつかない。攻撃はあきらめ、ひたすら防ぐことだけを考えた拳のラッシュ。
バキィッ!
それでも防ぎきることは到底不可能で、許してしまった敵の拳が『アークティック・モンキーズ』の背中のギターケースを叩き割る。
この雨では、血が流されてしまって“赤色”を用意することができない。
よって“赤の世界”に逃げ込むこともできない。天候は丈二に味方しなかった。
幻影でない、全てが実体の20体と、それに対する小さな小猿1匹。
限界はすぐに訪れた。
ドスゥゥッッッッッ!!!
FR『……』
丈二「……あ……ッ……」
美咲紀「……」
ザァァァァァ……
背後から迫った一体の『ザ・ファイナルレクイエム』が――
丈二「……かはッ」
丈二の胴体を、その右腕で貫いていた。
ズボッ!
FR『……』
丈二「がは……」ドサッ
『ザ・ファイナルレクイエム』が勢いよく右腕を引き抜く。その場に倒れこんだ丈二の腹部に、大きな風穴が開いていた。
どくどくと溢れる血液が、暖かかった。
丈二「はっ……はっ……」ヒューヒュー
自分の残りわずかな“生命”の熱が、雨に流されていく。丈二は穴を押さえ、必死にそれを留めようとした。
うまく息ができず、頭の働きがどんどん鈍っていく。周りの景色がぼやけていく……。
眼前に拡がるねずみ色の雨雲から、降り注ぐ雨粒が丈二の顔を打ち付ける。
丈二「……や、だ……」ヒュー
こんな、こんな汚い色の空が、俺が最期に見る空なのか?
丈二「……いや、だ……死に……たくない……死にたくない……」ヒュー
美咲紀「城嶋 丈二……死ぬのが怖いのね」
神宮寺 美咲紀が、微笑みを浮かびながら丈二の顔を覗き込んだ。
学生服姿の、まだ幼げの残るその顔立ち。しかし彼女の瞳と表情は決して子どものそれではなかった。
いや、人間のものでもない。こんな表情を、人間ができるわけがない。
美咲紀「だけど“死”のなにを知ってるの? 死んだこともないのに、どうして怖いと思うの?」
こんな表情、悪魔にしかできやしない。
美咲紀「“死”は天からの恵みなのよ。美しい“死”を味わったとき、
そのとき初めて人は、この世の“幸せ”を感じることができる」
丈二「いや、だ……いやだ………」ヒュー
美咲紀「究極の幸福を、あなたもすぐに感じるわ。私も何度は味わっているのよ。
あんなすばらしいものが、一度っきりだなんて、私は満足できないもの」
丈二「いやだ……」
美咲紀「これからも私はずっと味わい続ける。“旅”は終わらない……」
美咲紀「さようなら、城嶋 丈二」
呼吸が止まり、丈二の瞳孔が大きく開いた。
悪魔の笑みとねずみ色にくすんだ空が、冷たい虚ろな瞳に、映し出されている。
“死”した瞳は、なんとも静かだった。
―B Part 2024―
◇東京織星シンフォニーホール・Aホール PM11:50
扉を押し開け、だだっ広いホール内へ足を踏み入れた比奈乃と彩の二人。
客席の列の間を抜け、階段を下っていき、ホール中央のステージへと向かう。
彩は、自分の前を歩く比奈乃の背中をいきなり刺したりはしなかった。
わざわざ大人しくこのAホールまで足を運んだのも、その間互いに手出しをしなかったのも――
二人の間に明確なルールは存在しなかったが――それは暗黙の了解だったからだ。
ステージに上がると、比奈乃がナイフを懐から引き抜いて、言った。
比奈乃「一番大人しそうに見えるけどさ……」
彩「……」
比奈乃「実はお姉さんが一番悪いでしょ? 違う?」
彩「悪いって?」
比奈乃「臭うんだよね、お姉さんから……生ゴミみたいな臭いがさ……!
高い香水振りまいてもごまかせない――」
比奈乃「“最低な人間”の体臭……おえっ」
鼻をつまんで、比奈乃がわざとらしくえずいてみせる。
彩はそんな彼女の揺さぶりに対し、張り付けた冷たい表情を崩さず応じる。
彩「勘違いしないでね。私は良い人間でも悪い人間でもない。そして……」
彩「大人しくもない」タッ
比奈乃「!!」
そう言って、一瞬で比奈乃との距離を詰めた彩が、ひゅっと相手の顔めがけて右手を突き出した。
その手には、いつの間にかナイフが握られている。
咄嗟に身を反らしてナイフを回避した比奈乃が、相手の右腕を落とそうと、半円を描くように自分のナイフを振う。
彩「……」バッ!
右腕を振り上げ、反撃をバックステップで避けた彩は、またしても相手の頭をめがけ、ナイフを投擲した。
飛んできたナイフを比奈乃が弾くと、宙に舞い上がった彩が、飛び回し蹴りの姿勢を取っていた。
比奈乃「……!」ガッ!
中空で炸裂する、鞭のようにしなる右脚の、回し蹴り。それを腕でガードして、比奈乃は空いた手に持ち替えた
ナイフの切っ先を、彩の脚にねじ込もうと突き出す。
彩は比奈乃の手を殴りつけ、ナイフをはたき落してそれを妨害した。
比奈乃「……」バシュッ!
彩「……」グルン
腹めがけて放たれた比奈乃の蹴りを、中空で器用に身をくねらせ躱し、彩がステージに足を付けた。
わずか数秒間の体術のやり取りで相手の力量を読み取り、二人は互いに一歩引いて距離を離し、構えを取る。
比奈乃(やばっ、やり手だこの人……めんどくさ……)
彩(かなり動けるな……こいつ、強い)
比奈乃(うっとうしいなー……殺さなきゃ……)
彩(美咲紀様を脅かす存在になり得る……ほっとくわけにはいかない、か……)
比奈乃「『ダーケスト・ブルー』!」
彩「『デッドバイ・サンライズ』!」
ドバァァーーーン!
スタンドの名を叫び、互いにスタンドを出現させたのは同時だった。
藍色に煌めく電気を纏う、『ダーケスト・ブルー』と、ウサギのような耳を垂らす女性型の『デッドバイ・サンライズ』。
それぞれのスタンドを通して、にらみ合いを続ける二人。
比奈乃・彩*1
バッ!
DB『ウオオオオオ!!』バチバチ!
比奈乃・彩*2
DS『……』ダッ!
二体のスタンドが、同時に相手めがけて駆けだした。
比奈乃・彩((こいつは不運だッ!))
―A Part 2027―
◇都内某所 とあるお屋敷・中庭 同時刻
ザァァァァァ……
屋敷の表に車を停め、ミシェルら三人が門をくぐって内部へ侵入する。
雨の勢いは衰えず、あっという間にずぶ濡れになった三人が、屋敷の廊下を濡らしながら歩く。
ふと中庭の方を見やると、豪雨の中、誰かが外に立っているのが見えた。
神宮寺 美咲紀だった。
ミシェル「……!」
彼女の足元を見て、ミシェルは絶句した。誰か、倒れてる。
ほぼ、間違いない。
中庭に飛び出し、美咲紀のもとへ歩み寄る三人。顔に張り付いた長い髪をかき分けて、美咲紀がほほ笑んだ。
天斗「うそだ……」
一歩一歩、歩み寄る。雨に流された血が、あたりの芝を赤く濡らしていた。
倒れていたのは、丈二だった。
ミシェル「ジョージ……」
航平「……ッ」
膝をついたミシェルが、丈二の体を抱き起こした。肌は凍ったように冷え切っていた。
当然のように脈はなく、見開かれた瞳に、生気は宿っていない。
ミシェルは雨でぐしゃぐしゃになった丈二の髪を整えて、開きっぱなしのまぶたをすっと閉ざした。
ミシェルの両目から零れた生温い涙の粒が、冷たい雨粒と混じって丈二の凍った頬に落ちる。
ミシェル「ごめんね、ジョージ……間に合わなくて……!」
天斗「なんでだよッ! なんでこんなことするんだよッ!」
微笑を浮かべる美咲紀に、天斗が吠えた。
美咲紀「会えて嬉しいわ天斗。……でもね、すべてあなたがいけないのよ」
美咲紀「私から逃げるみたいにコソコソ隠れて……かくれんぼは楽しめたけれど、そいつが死んだのはあなたのせい」
天斗「うるさい! 僕のせいじゃない!」
激しい雨音にかき消されてしまいそうな、か細い叫びだった。
航平「ふざけんなよ、お前……! 何様のつもりなんだ、人の命をなんだと思ってんだよ……!」
美咲紀「どーでもいいわよ。それよりさあ天斗。“方舟”を出しなさい」
そう言って、美咲紀は“スタンガン”を天斗の目の前に投げた。
美咲紀「使い方はわかるわね?」
航平「従わなくていいぞ、天斗!」
航平がミシェルと天斗の前に立ち、二人をかばう仕草を見せる。
美咲紀は航平など眼中に入っていないかのように、背後の天斗に向かって語りかける。
美咲紀「やらないならこいつとその女を殺すわ」
天斗「……っ」
航平「やめろ! まだ子どもだぞ、一体なにさせようってんだ!」
美咲紀「“来世”に行くだけよ。もうあなたたちに、興味なんかないの」
航平「は…? “来世”……!?」
思わず言葉を繰り返した航平に、美咲紀が続ける。
美咲紀「肉体は“棺”、命は“燃料”、そしてその子のスタンド……
『クライング・ライトニング』は“方舟”。私たちを“来世”に運ぶためだけのスタンド」
航平「い、意味わかんねえよ……何を言ってんだ……そんなとこ行って、どうすんだよ」
美咲紀「『どうする』じゃないのよ。“そこにあるから”行くの。理由なんか必要ない」
言い放った美咲紀の瞳を見据えて、航平は怒りに拳を震わせる。
爪が食い込むほど強く拳を握り、沸騰した熱い息を吐き出す。
航平「そんな、そんなくだらないことのために……みんな死んだのかよ……!」
航平「ふざけんなァッ!!」
拳を振り上げ、美咲紀に殴りかかる航平。だが、突然横からすっと伸びた白い手に腕を掴まれた。
傘を差した長身の女性、宮原 彩が強い力で航平の腕を握りしめていた。
航平「……なっ……!」ギリギリ
彩「……」ググッ…
そのまま彩に放り投げられ、航平は雨に濡れた地面に叩きつけられた。
美咲紀が泥のついた靴で航平の頭を踏みつけ、怒鳴る。
美咲紀「天斗! 『クライング・ライトニング』を出しなさい!」
天斗「……っ」スッ・・・
天斗が、目の前の“スタンガン”に手を伸ばした。
航平「だめだ……やめろ……」ググ…
ミシェル「テント……」
天斗「約束して……二人に、手を出さないって」
美咲紀「いいわ。約束しましょう。二人には手を出さない」
天斗「それと……」
美咲紀「?」
雨に濡れたスタンガンをぎゅっと握りしめ、天斗は美咲紀を見上げながら声を絞り出した。
天斗「“舟”には、丈二さんも乗せる。それでいいなら、出すよ」
提示された条件に、一瞬驚いた表情は見せた美咲紀は、そのあとふぅと呆れたように息を吐き出す。
美咲紀「もう死んだじゃない」
天斗「“魂”は、まだ遠くに行ってない。今ならまだ、途中で拾っていける」
美咲紀「拾ってどうするの」
天斗「“来世”で、丈二さんがあんたをやっつけてくれる。僕はそう信じる。
だから、丈二さんの魂もいっしょに、“来世”へ送り届ける!」
嘲笑を含んだ美咲紀の質問に、天斗はより一層強い意志を瞳に宿して、毅然とした口調で答えた。
美咲紀「ずいぶんインスタントな希望ね。いいわ。
私に異論はない、あなたの好きにしなさい」
そう言って合図すると、屋敷からもう一人、後藤 柚子季が出てきて美咲紀のもとへ駆け寄った。
棒付き飴を咥えながら、ひとりごちる。
柚子季「ふー、“現世”とももうお別れかぁ」
“方舟”とやらに乗ろうと集まった三人娘を見て、ミシェルが火のついた決意を口にする。
ミシェル「……私もいくわ」
天斗「…えッ!?」
突然の言葉に、動揺を隠せない天斗。
ミシェル「私も連れて行って、“来世”に」
天斗「な、なにを言ってるの……!?」
ミシェル「ジョージ一人じゃ、きっと勝てない。また殺されてしまうわ。だから……」
天斗「僕のスタンドで移動するってことは、死ぬってことなんだよ!?
“来世”に行くっていうのは、僕のスタンドに殺されるってことなんだ!」
ミシェル「わかってる」
天斗「僕はイヤだ! これ以上、もう誰にも死んでほしくないッ!!」
震える声で訴える少年の姿に、決心した胸が痛んだ。
ミシェル「わかってるよ。わかってるから……だから行くんだよ。もう、誰にも死んでほしくないから」
天斗「……ッ!」
ミシェル「コーヘイ」
航平「……」
ミシェル「テントをよろしくね」
航平「……ああ。後のことは任せろ」
航平「……丈二を、あいつを頼む」
航平は、それ以上なにか言ってくることはしなかった。
満足した答えを聞けたのか、ミシェルはふっと柔らかい笑みを浮かべた。
天斗の方を見やると、ミシェルの言い分に折れた彼の苦しそうな表情が目に突き刺さった。
よかった。この子は、頭がいい。とっても大人だ。
この子のために死ねるなら、こんな幕切れも悪くない。
美咲紀「準備はいいわね?」
柚子季「いつでもいけますよぉ」
彩「同じく」
やりとりが終わるのを見届けてから、美咲紀が口を開いた。
同調する二人の取り巻きを侍らせ、天斗に合図する。
冷たくなった丈二の遺体を抱きながら、ミシェルが天斗に、言った。
ミシェル「天斗……」
天斗「……」
ミシェル「“来世”で、また逢おうね」
天斗が、スタンガンを自分の首元に付ける。そして――
美咲紀「それではみなさま」
美咲紀「ご機嫌麗しゅう」
カチッ
天斗「ああああああああああああ」バチバチバチバチ
そこから発せられる強い“電気”が、少年の細い首筋に放たれ、幼い体を震わせた。
ズズズズズズズズズズズズズズズズズ……
ミシェル「!! これが……」
美咲紀「出た……!」
すると、雨雲を遮って上空に、黄泉の川を渡る、巨大な舟が出現した。
船首部に、小さな“悪魔”のスタンドが立っている。
『クライング・ライトニング』と呼ばれるそいつは、地上から舟を見上げるミシェルたちを、上空から見下ろして、派手に笑った。
CL『キャハハハハーーーーーーッ!! “あの世”ニ行キテェノハ、全部デ何人ダ!?』
―B Part 2024―
◇東京織星シンフォニーホール・Aホール 同時刻
彩「あああああああああああああああ」バチバチバチバチ
一瞬の隙を付き、彩の腹部に押し当てた『ダーケスト・ブルー』の掌から、“藍色の電撃”が放たれる。
普通の大人なら一撃で気を失うほどの電気を体中に喰らい、あまりの衝撃が彩の体が後方に弾き飛ばされた。
比奈乃「やった!」
DB『……』バチバチッ
弾き飛んだ体が、壁に叩きつけられそうになったその瞬間、彩がコントロールを失ったはずの体を器用にロールさせ、
壁を蹴って、比奈乃の方へ飛んだ。
彩「……」グンッ!
比奈乃「なッ!?」
ロケットのように突っ込んだ彩の右ひざが、比奈乃の腹部にめり込んだ。
ドゴォ!
比奈乃「ぐふっ……」
彩「ごめんなさいね。電撃には慣れてるの」
敵が怯んだその一瞬に、『デッドバイ・サンライズ』が蹴りのラッシュを浴びせる。
両腕を構えガードする『ダーケスト・ブルー』だが、『デッドバイ・サンライズ』が放つ脚は、比奈乃の両腕を砕く勢いだった。
DS『……』シュバババババッ!
DB『グ……』ベキベキベキベキ
比奈乃「……ッ! ッざッけんな……この……」ミシミシミシッ
“藍色の電撃”が、どんどんと黒ずんだ色へと変色していく。
凶暴な雷鳴が轟いて、空気が割れる。そのとき、比奈乃の瞳は、怒りという“負”の感情で満たされていた。
“紺碧の電撃”と化したそれが、『ダーケスト・ブルー』からバリバリと激しく発せられる。
彩(! なんて、凶悪な……)
比奈乃「カス!!」
DB『ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!』バリバリバリッ!
『ダーケスト・ブルー』の右腕に“紺碧の電撃”が纏わって、拳が放たれる。
彩は大きくのけぞって、皮一枚のところでギリギリ避けるも、追撃は避けられないと判断した。
彩(二撃目の拳は避けられない! 仕方ない……!)
DS『……』ピピピッ
比奈乃「!!」
見てわかる“紺碧の電撃”の凄まじい破壊力。常人なら激しいスパークを見ただけで恐怖に慄くが、彩は冷静だった。
彩は『デッドバイ・サンライズ』に持たせた“スタンド爆弾”をその場で炸裂させ、二人の間に爆発を生み出した。
チュドォォーーーーーーン!!
『デッドバイ・サンライズ』の“スタンド爆弾”の威力は、デジタルカウントの残り時間と反比例する。
爆弾を出現させてから、カウントを刻むのを待たずすぐに爆発させれば、その威力は非常に小さい。爆竹ほどである。
逆に、爆弾を出現させてからしばらく時間を置けば、雪だるま式にその破壊力は増していく。
彩「……くッ! げほっ、げほ!」
比奈乃「げほっ、げほっ! 爆弾……!?」
今起動させた爆弾は、出して間もないもので、爆発の規模は大きくなかった。
煙の中から飛びのいた彩と比奈乃の体には、超近距離で爆発させたのにもかかわらず、大したダメージは刻まれていない。
爆弾が、急場で用意されたものであるからだ。
爆発で目をくらませ、“紺碧の電撃”を回避するために、起動させた小さな爆弾。せいぜい軽いやけどと、衣服が破けた程度であった。
比奈乃「ちっ、コートが破けて……。……!!!」
ボロボロになった黒いコートを脱ぎ捨てようとしたときだった。比奈乃は、首に巻いた長いマフラーの端が、
爆発によって焼け焦げているのを目撃した。
比奈乃「マフラー……」
彩「マフラー? そんなに大切なものなの?」
比奈乃「……」
彩「脱いで置くべきだったね。そもそも戦闘中に、そんなもの首に巻くなんて正気とは思えないけど」
彩「ま……どうせ死ぬんだし、別に関係ないでしょ? もう」
比奈乃「……うるさい、死ね」
そう呟いて、比奈乃が動こうとしたときだった。比奈乃は、自分の両腕や体中に、
無数の『デッドバイ・サンライズ』の爆弾が取り付けられていることに気が付いた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
比奈乃「!」
彩「さっきの攻撃の時……つけさせてもらったわ。あなたの体中に……。
あと三十秒ほど経ったら、一斉に起動する。人間花火の出来上がり」
比奈乃「このクズ……!!」
彩「助かりたい? いいよ、方法を教えてあげる。“私に触れればいいの”。
そうすれば爆弾を私に移すことができる。まあ、あなたじゃ私には触れられないけど」
彩「“爆弾ゲーム”、スタート!」
比奈乃の体から発せられる、“紺碧の電撃”がどんどん勢いを増していく。
彼女は完全に怒りに支配されていた。
ホール内を駆けまわる彩を追い、比奈乃の俊足が爆ぜる。
彩「鬼さんこっちよー!」
比奈乃「……」ビュンッ!
彩「わぁ、疾い! でもね、それだけじゃ……」
DS『キキキ』
彩「私は捕まえられないわ」プクプクプク
比奈乃が彩の背後を取り、その電撃を浴びせようと手を伸ばしたときだった。
彩がいつの間にか手にしていた“シャボン液”の容器から、“シャボン玉”を作って比奈乃に吹きかけた。
『デッドバイ・サンライズ』の爆弾を溶いたシャボン液が、玉となってふわふわ浮かび、破裂する。
チュドーーーン!
彩「子供だまし程度の威力だけど、目くらましには十分!」
比奈乃「……ッ、の……!」
彩「いくら脚が速くても……30秒逃げ切るくらい、わけない」
そう言って、彩はふたたびシャボン玉を吹いた。
空中でいくつも爆発し、比奈乃の行く手を阻む。怒りで前が見えなくなり、冷静さを欠いた状態で、
もはや捕えるのは不可能と言ってよかった。比奈乃は、完全に彩に遊ばれていた。
そして、さらなら不幸が彼女を襲った。
比奈乃「……あ、れ……?」ガクン
ひざががくんと崩れ、床につく。足に力が入らず、立ち上がることができない。
彩「……あら?」
“紺碧の電撃”使用時の超高速移動は、脚の神経に電気を流し、筋肉を過剰に稼働させることで行う技術であった。
早い話、ようするに力の使い過ぎで脚にガタがきたのである。
比奈乃「はぁ……はぁ……はっ」
彩「……終わりね」
刻々と刻まれる爆弾のカウント音が、脈打つ自分の心臓の鼓動と、重なって聞こえた。
表示を見ると、残り十五秒。
もうどうすることもできない。比奈乃は瞳を閉じた。
比奈乃「はぁ……はぁ……」
走馬灯の一種か? 脳裏に、様々な映像が映し出されていく。
マフラーをしてるのは、お母さんのまねだ。
「すぐに帰るね」と、寒い冬の日に、お母さんは長いマフラーを巻いて外へ出かけたっきり、戻ってこなかった。
お母さんが好きだったマフラー。マフラーをしていれば、きっとお母さんは私を好きになってくれる。
帰ってきてくれる。冬の季節が来れば、いつかお母さんが迎えに来てくれるような気がしていた。
「あの子、キモくない? いっつも一人でぽつーんとして、そのくせへらへら笑っててさ」
「年中真冬の格好して、浮いてんだよ。暑苦しい」
「しっ! 聞こえるってば、殺されるよ?」
「聞いたんだもん。あの子、バケモノだって」
比奈乃「……」ニコニコ
小さいころから、私は敵意と悪意に囲まれて育った。
手のひらから電気が出るからだ。
私は、とにかく作り物の笑顔を絶やさないように努力した。
「ひっ! やめてッ! やめてッ!」
比奈乃「……」ドガッバキッ
笑顔を絶やしてしまうと、内にため込んだ“負”が表にでてきてしまうからだ。
そうなると、私は頭の中が真っ白になってしまう。
昔、私はそれが原因で悪口を言ったクラスメイトを半殺しにしてしまった。中学生のときだ。
それ以来、笑顔には細心の注意を払ってきた。
どんな仕打ちを受けても、笑顔は絶やさないと決めた。
気味悪がる人もいたけど、大抵の人は笑顔の人間に対して、全開の悪意をぶつけたりしない。
まがい物でも、心では泣いていても、とりあえず笑顔でいれば、何事も丸く収まることが多いのだ。
これが私の処世術。人生の全てだった。
丈二「なんで笑うんだ? 傷ついたら泣くべきだし、傷つけられたら怒るべきだ」
ある日、私の全てをたった一言であっさり否定した人が現れた。
彼が差し伸べてくれた手を取ると、そこには初めてみる様々なものが広がっていた。
琢磨、忍、航平……仲間たちと、友情と、恋と、心から笑うこと。
私は初めて、鏡に映る自分の、作り物じゃない本当の笑顔を見ることができた。
その人は教えてくれた。
偽物の笑顔でフタをするだけじゃ、ネガティブな感情を閉じ込めるだけじゃ、幸せにはなれない。
ポジティブに生きるのなら、自分にウソはつくな。正直に生きろ。
内にたまったフラストは、全部外に放出しろ。周りに撒き散らすのとは違う。
怒りや憎しみ、悲しみを上手にコントロールして、力に変えるんだ。
比奈乃「コントロール……するんだ……」
そうだ。支配されるんじゃない、コントロールするんだ。
例え“負”の感情でも、私の感情なら。私が支配できないわけがない。
でないと、私は、大切なものを守れない。
うわ言のように呟いた比奈乃の声は、彩には届かなかった。
彩はひざをついた比奈乃を離れたところから見下ろして、残り五秒とカウントした。
彩「4……」
比奈乃「弱い自分を……」
私を変えてくれたもの、私を救ってくれたもの――
比奈乃「心を……」
彩「3……」
絶対に失いたくない――
彩「2……」
比奈乃「コントロール……」
もう独りは――
彩「1ッ!!」
比奈乃「するッ!!」
イヤだッ!
最後のカウントが、力強く刻まれた、その瞬間。
バチバチバチッ
彩「……?」
一瞬、何かが弾けるような音が聞こえた。電撃のそれに似た、透き通った音だった。
次の瞬間、比奈乃の体に取り付けられていた、無数の“スタンド爆弾”が――
比奈乃「……」
DB『……』
彩「……は?」
全て、消失した。
比奈乃「これは……」
指先で小さく、今までみたことのない色の電撃が、びりっと弾けた。
深みのある、まるで海のような青紫色の電撃。決して暗くない、透き通る美しい青色。
まるで、宝石のような“蒼”の電撃だった。
比奈乃「綺麗……」
彩「な、なにが起きた……!?」
比奈乃「はぁ、はぁ……」
しかし依然として、比奈乃の脚は動かないまま。突然消滅した爆弾のことは考えず、
彩はこのチャンスに飛びついた。
彩「もういい! 死ね! 『デッドバイ・サンライズ』ッ!!」バッ!
DS『キキキーッ!!』
『デッドバイ・サンライズ』の右脚が比奈乃に迫ったそのときだった。
『ダーケスト・ブルー』の全身から、美しい青紫色の電撃が、ホール中に拡散した。
DB『……』
バチバチバチバチ
バァァァァァァァァァ
彩「―――!!
ホール全体を眩い閃光が包み込む。思わず目を閉じた比奈乃が、次に目を開けると――
比奈乃「!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
彩と『デッドバイ・サンライズ』を含め、Aホールそのものがまるっきり、ばっくりと消滅していた。
観客席やステージ、天井が消え、頭上には夜空が広がっている。
ビュォォォ……
比奈乃「消えた……」
“電撃”は新たな段階へ成長した。
“電撃”を操る力というのは、つまるところ“電子”を操る力と言い換えることができる。
物質と物質とを繋ぐ“電子”。それを直に操ることで――
比奈乃「そうか、この……電撃は……」
“電子”を断ち切り、物質を分子レベルで分解することが可能となったのであった。
この、“紺碧の電撃”を超えた、新たなる電撃で。
比奈乃「“蒼玉(サファイア・ブルー)の電撃”……」
“蒼玉の電撃”。全身の力が抜けたのか、比奈乃はそう呟いて、その場で気を失った。
天を覆う紺碧の夜空が、気絶した彼女の体を冷やしたが、首に巻いたマフラーだけが、彼女の勝利を讃えるように、優しく暖かく、包み込んでいた。
<<東京織星シンフォニーホール・Aホール 比奈乃vs彩 決着!>>
○『ダーケスト・ブルー』藍川比奈乃・・・・・・勝利 “蒼玉の電撃”を会得。その後気絶する。
×『デッドバイ・サンライズ』宮原彩・・・・・敗北 “蒼玉の電撃”により体を分解され、消滅
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