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第七章『血道の世界』その⑦

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orisuta

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―――杜王町内、カメユーマーケット前。


時間は前後し、零とディエスの戦いが始まった同じ頃……

駐車場の車のカゲに隠れるヴァン・エンドの視線の先には、いまだにカメユーマーケットの正面入り口前に座り込む武田陸の姿があった。


パコン!

陸「…………よし、行動するぞ『スペア・リプレイ』。」

陸はいじっていたケータイを閉じてポケットに入れ、立ち上がった。


スペア・リプレイ達に向けられたその声は、遠くに隠れていたヴァンにもかすかに聴くことができた。

ヴァン「………? ……いや、硬直状態で時間が過ぎていくだけより、このほうがいいが……。」


陸「敵の特徴はおぼえているな?」

スペア1「チャント、覚エテルゼィ。」

スペア3「マカセロヨ、陸。」

陸「……ああ、おまえたちにかかってるんだ。……頼むぜ。」


ヴァン(『敵の特徴』……『スペア・リプレイにかかってる』………。)

ヴァン「なるほど、そういうことか。そういうつもりなら、私にも活路はある……!」


ヴァンはニヤリと笑い、陸に見つからないように商店街のほうへと向かっていった。






【名前】
武田陸
【身長】
165.3cm
【血液型】

【好きな食べ物】
チャーハン、バニラアイス
【嫌いな食べ物】
きゅうり

【趣味】
バイクいじり
【好きなマンガ】
『今日から俺は!!』『めぞん一刻』

【スタンド名】
スペア・リプレイ
【タイプ】
遠隔操作型 群体型

【特徴】
目が歯車になっている小人型 5体いて、性格はまばら

【能力】
生物・無生物を問わず、整備する。
整備されると、本来以上の性能や能力を引き出せたり、傷や怪我、体調不良なども改善することができる。
5体それぞれに担当が決まっていて、1体でもやる気をなくして手抜きをすると、担当分野で不備が起きる可能性も・・・

破壊力-D
スピード-C
射程距離-A

持続力-B
精密動作性-A
成長性-B






スペア・リプレイは、治療・修理のほかにも、人探しに長けたスタンドだった。

スペア1からスペア5まで、5人全員が自我を持ち、陸から離れて2キロくらい先までなら個別で行動することもできる。

さらに、スペア・リプレイたちがどこへ行っても、陸はそれぞれの居場所を把握できるのだ。


昔は、よく遠くへ遊びに行って迷子になるアッコを、スペア・リプレイたちで探したものだった。


陸「いいか、今回探すのはアッコじゃねえ。おまえたちの姿を見ても相手は反応しないだろう。

  よく観察して、見つけたら絶対に見逃すなよ。」

スペア3「ワカッテル。」

陸「よし、スペア1と2、スペア3と4の二人一組で行動しろ。スペア5は俺と引き続き建物の周りの監視だ。」

スペア4「リョーカイダゼ。」

陸「よし……行け!」



本来、ヴァン・エンドを建物に近づけさせないだけだったら、陸はヴァンを探す必要は無かった。


ヴァンにとっては一刻も早くカメユーマーケットに入らなければならないが、

陸にとってもヴァンの待ち伏せに時間はかけたくなかったのだ。


その理由は、カメユーマーケット内に入った五代、九堂、アッコのため。


もし、仲間達が命に関わる致命傷を負ったら……治せるのは自分しかいない。

一刻も早く、合流したかったのだ。



―――杜王町商店街。

商店街から裏路地に入ったところにある飲み屋街には、仕事終わりのサラリーマンや若者たちでにぎわっていた。

その中に、スペア1とスペア2が忍び込んだ。


……といっても二人の姿は一般人には見えないのだが。



スペア2「ヒェーッ、ズイブン人がイルゼ。」

スペア1「コリャア、探スノモ一苦労ダネ。」


ガヤガヤ ガヤガヤ

スペア1はあたりを見回し、ターゲットを探す。


スペア1「………!!」

スペア2「ドシタ、見ツケタノカ?」

スペア1「……ナア、『ヴァン・エンド』ノ特徴ッテタシカ……」

スペア2「『右肩ニ打撲』ノアル『ジジイ』ダゼ、タシカ……オ、イタゼイタゼ目ノ前ニ!」

スペア1「イヤ、ソレナンダガヨ……」

スペア2「エ?」

スペア1「俺モ見ツケタンダ……3人モ。」

スペア2「ナ、ナニ!?」


人でごったがえす飲み屋街……スペア1の視界には、ベンチに座り右肩をさする中年サラリーマン、

木によりかかり右肩に手を当てたおじいさん、首をかしげながら右腕をまわす男がいたのだ。


ヴァン(あれが……武田陸のスタンド、スペア・リプレイか……。

    ヤツが林原温子から得た俺の情報は『初老の男』、そしておそらくは私の右肩に石を当てたことも伝えているだろう。

    『人の体をも整備し』、ケガも治すスタンド……私が右肩に打撲を負ったことをカギに私を探すつもりだったんだろうが……

    だが、そう簡単にはいかせんぞ……!)


ドドドドドドドドドドドド……


ヴァン(私のスタンドで、数名の初老の男に攻撃し、私と同じケガを負わせた……!

    『スタンドはスタンド使いにしか見えない』……一般人を攻撃し、ダミーを作らせてもらった。

    そして、私の今の姿は『初老の男』ではない、いかにも『イマドキな若者』なんだ。)







ヴァンは飲み屋の軒先に立ち、困惑しながらあたりを見回すスペア・リプレイたちを見ていた。


ヴァン(そこで悩み続けているがいい、虫どもめ。)


ヴァンのとった作戦は、単純でありながら効果的なものであった。


スペア1「……ドウスル?」

スペア2「決マッテルサ、『ヤルコトハ変ワラネエ』。」



ただひとつ……ヴァン・エンドに誤算があるとすれば、スペア・リプレイたちの目的を、『自分の捜索』だと思っていたことだった。




スペア1「ソウダナ……ジャア、ヤルカ?」

スペア2「オオシ、競争シヨウゼ。」

スペア1「ヨシ、ジャア………ヨーイ、ドン!」




そして、スペア1とスペア2は、自分に近い人間の頭に乗り、次々と人の頭を渡り歩いていった!



スペア2「ドーダ、イルカ!?」

スペア1「コイツハ違ウ、コイツモ……コイツモ……!マダ始メタバッカダ!ソウ簡単ニ見ツケラレネエッテ!」

ピョンピョンピョンピョンピョンピョン!

ピョンピョンピョンピョンピョンピョン!


そのスペア・リプレイ達の行動に、今度はヴァンが驚かされた。


ヴァン(な、何をやってるんだ………まさか……!)


スペア1「ドーダ、スペア2!」

スペア2「酒ニ酔ッテル奴ラバッカダ、脚ケガシタヤツトカ、肺悪クシテルヤツモイルガ、マダ見ツカラネエ!」


スペア・リプレイは次々と人々の頭の上を渡り歩いていった。

誰となく、ひとりずつしらみつぶしに渡り歩いているようだった。


ヴァン(まさか、頭の上に乗っただけで、その人間の状態がわかるというのか!?これは予想外だが……)

スペア・リプレイたちは、どんどんヴァンに近づいていった。

飲み屋街の端からひとりひとり渡り歩いていっているスペア・リプレイは、いずれヴァン・エンドの頭の上にもいきつくだろう。


だが、ヴァンはスペア・リプレイから離れることができなかった。

ヴァン(私は今……あくまで一般人を装っている。ヤツらに気づいた素振りを見せれば、自分がスタンド使いだと言っているようなもの!どうすればいい……?)

スペア・リプレイはたった数メートルのところまで近づいていた。


ヴァン(だが……ヤツらは何を探しているというのだ……?右肩にケガをした人間なら、例え私がダミーを作らなくても他にいておかしくないというのに……)


スペア2がヴァンに近づく。どう対応すればよいか、ヴァンが考える時間は足りなすぎた。

ヴァン(もし……もし……スタンド使いかどうかが頭に乗っただけでわかるというなら、マズイ……!!)







トン

ヴァン(くっ………!)

飲み屋の壁に寄りかかったヴァンの頭に、スペア2が乗った。

スペア2「…………」

ピョン


ヴァン「……………(気づかれなかったか……?)」

他の人よりも少し長く乗っていた気はしたが、スペア2はまた他の人間の頭に飛び移っていった。

ヴァン(目的がわからなかったが……一安心と言うところか。)


スペア2「オイ、スペア1!オレハコッチノ通リモ見テクルゼ!」

スペア1「リョーカイ!……ッテ、ソッチフーゾク街ジャネエカ!コノスケベ野郎!」

スペア2「チ、チチチゲーワ、バカ!」



ヴァン「離れていった……が、ここにはいないほうがいいな。もし他のスペア・リプレイも街中を探しているのならば、かえって今がチャンスかもしれん……。」


ヴァンは飲み屋の横から裏路地へ入っていった。






タタタタ……

ヴァン(もう少し……もう少しでカメユーマーケット前に再び出る。見張りの少ない今、武田陸の目さえあざむけば……!)


だが、ヴァンの望みは……裏路地を出る前に、潰えることとなった。


ザッ!

ヴァン「…………ッ!」


目の前に、武田陸が立ちはだかっていた。

そして、陸の肩に乗っていたのは、先ほどヴァンの頭に乗ったスペア2だった。


スペア2「コイツダゼ、陸!」

ヴァン「な……!」


ヴァンは思わず声を洩らしてしまった。

そしてそれは、ヴァン・エンドの最大のミスとなった。


陸「………おれがスペア・リプレイに探させたもの……それは、ヴァン・エンドじゃねえ。」

ヴァン(何……?)

ヴァンは動くことができずにいた。

陸は間違いなく自分をにらみつけ、自分に話しかけていた。

ここでいきなり走り出すことは不自然……だが、もはや正体はバレているとも言っていいかもしれない。

どうすればいいのかがわからなかったのだ。


陸「いや、正確にはヴァン・エンドも探していた……が、もっとターゲットを広くしたってだけか。

  スペア・リプレイたちに探させていたのは……『ディザスターの人間』だ。」

ヴァン(………?)


ヴァンにとって、わからないことだらけだった。

なぜ『ヴァン・エンド』ではなく『ディザスターの人間』なのか、スペア2が自分をディザスターの人間だと断定できたのか……


陸「零に聞いた、ディザスターの人間の特徴……それは、全員が共通した『傷』を負っていることだ。」

ヴァン(傷………? ………し、しまった!!)

ディザスターの人間が共通して持つ傷……それは、零も持っているものだったし、そして、ヴァン・エンドにもあるものだった。


陸「ディザスターのメンバーである証……『刺青』だ。ディザスターの構成員は皆、証としてエンブレムの刺青が彫られる……そうなんだよな?」

ヴァン「~~~~~~~~ッ!!」


スペア2は、それをヴァンの頭に乗ったときに見つけたのだろう。

そして、それを陸に報告して、ここで迎えた……。







陸「カメユーマーケットに近づこうとする人間……考えてみりゃ、それはヴァン・エンドだけじゃねえ。

  もしかしたらスタンドをもたないただの兵隊だって、向かっていたかもしれない。

  だから、おれはヴァン・エンドではなく、ディザスターのメンバーを探したのさ。」

ヴァン(完ッ全に……してやられた……!だが……まだ、俺がヴァン・エンドだとは判断できてはいないんじゃないか……?)


陸「そいつから情報を得ていけば、ヴァン・エンドにもたどり着くと思っていたが、もうその必要はねえな。」

ヴァン(何………?)

陸「今さっき……スペア2の声に反応してたよな、ヴァン・エンドさんよ………!」

ヴァン「………!!」

陸「アッコの言ってた『メガネのおじーさん』じゃねえが……残るディザスターのスタンド使いはヴァン・エンド以外にはディエゴ・ディエスしかいない。

  どうみてもお前はディザスターのボスじゃねえな。」

ヴァン(完全に……窮地に立たされた!なぜ私がこのような目にあわなくちゃいけないんだ……。)

陸「おれのスタンドは戦闘向きとはいえねえが……それはおまえも同じなんだろ?」

ヴァン(私に護衛のひとりでもつけてくれればいいものを……。キルだって、私を護衛していればもっとラクにこいつらを殺せるはずが………!!)


ヴァン「こんなところで……貴様ごときにつかまってたまるか!!」




ビチッ!

陸「痛ッ!」


陸の顔面に、ヴァンの身につけていた金属製のブレスレットが当てられた。

陸「~~~~~~くそ……アッ!!」


陸が気づくと、ヴァンは背を向けて走り、逃げていった。

陸「ここで見失ってたまるか!!」

陸は、ヴァンを追って走り出した。



ダダダダダダ……

ヴァン(くそ……こんな無様なことになるなんて………だが、距離を置けば、逃げきるのはたやすい!)


ヴァンは裏路地にある空き店舗の中へ入った。

陸もそれを追って、閉められた戸のドアノブに手をかけようとしたが……


ヴァン「『ピープル・イン・ザ・ボックス』!!」


ドォ―――――――z_______ン!!



陸「っ!?」


『ピープル・イン・ザ・ボックス』の能力が発動した瞬間、

陸はドアノブに手をかけることができず、あたりを見回した。


ピープル・イン・ザ・ボックスの能力により、ヴァンがひとりで入った空き店舗が、外界から切り離されたのだ。


陸「くっそ……なんだかよくわからないが、これがエリックの言ってたヤツの能力なのか……。」

スペア2「オイ、ドースンダヨ陸!?」

陸「………おれの手でぶちのめしちまえば一番よかったが……仕方ないか。」

スペア2「ハア?」

陸「ふふ、目論見どおりなんだよ。おれがヤツの品物を手に入れれば……おれたちの勝ちなんだ。」


そのとき……陸の背後のほうから、一人の男が現れた……。







空き店舗の中、外界より切り離されたその空間は、窓の外も暗闇に包まれ、室内は静寂が広がっている。

ヴァン「私がここにいる限り……『ピープル・イン・ザ・ボックス』が発動している限り……誰も、私をつかまえることはできないッ!

    ふはは……はははは……ははははははははははははは!!!!」


ただ虚しく、ヴァン・エンドの声だけが響く。

ヴァン「はぁーっはははははははははははは!!アアァははははははハハハハハハ!!」





ドドドドドドドドドドドドドド……


墳上「……コレが、ヴァン・エンドってヤツの品物なんだな?」

陸「そうです先輩。………よろしくお願いしますね。」

墳上「ああ任せろ、この匂いの持ち主が現れたらすぐに居場所がわかる。」





陸の背後から現れた男……墳上裕也の手には、先ほどヴァンが陸に投げつけたブレスレットが握られていた。

墳上は以前ディエスに襲われ、死にそうになっていたところを陸によって救われた。

再び命を狙われることを恐れ、杜王町から離れていた墳上だったが、前日に陸から報せを受け、手助けするためにやってきたのであった。


墳上「陸、オメーには借りがあるが……それ以前にそんな奴らをこの街で好きにさせるのは、カッコ悪いことだ。そうだろ?」

陸「そのブレスレットの持ち主が明日までに出てこなかったら、きっとおれたちの勝ちです。

  もし出てきたところで……先輩にとっては相手にもならないでしょう。」

墳上「わかった、まかせておけ。」

陸「それじゃ……おれは行ってきますんで!」

墳上「おう、行ってこい!終わったらまた走りにでも行こうぜ!!」


陸は墳上に手だけ振って走り去った。

陸の向かう先はもちろん……カメユーマーケットだ。


陸(今いくからなアッコ……おれが着くまで、がんばっててくれ……!)
 
 
 
 
【杜王町商店街】

 武田陸  (決着つかず)  ヴァン・エンド 






to be continued...



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