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中南洋エリッツ沖海戦


概要

 中南洋エリッツ沖海戦は、第三次ロフィルナ革命の初期に生起した海戦である。
共立機構国際平和維持軍ジェルビア星間条約同盟(heldo軍)が主体となっており、中南洋のエリッツ島沖を戦場とした。

戦力

 作戦の目標は、エリッツ島沖の外洋を押さえ、コックス政権軍が頼る海上からの搬入路を断つところに置かれた。

連合軍
 セトルラーム共立連邦が動員した艦隊は、巡洋艦を先頭に据えた編成で組まれており、対潜の任務には哨戒艇が充てられている。索敵の中核はソナー艦が組んだ聴音の網であり、無人機は海面下に残る航跡を追う分担を受け持った。珊瑚礁の海底が音波を乱す海域であるため、探知の層は水深ごとに分けて重ねられた。heldo軍の各国は航空艦から戦闘機を出し、補給艦による長距離の輸送を引き受けている。航空優勢の確保は外洋の哨戒と一体で計画され、艦載機の発進は昼夜を通じて続く見通しが立てられた。共立機構国際平和維持軍は陸戦部隊を送り込み、監視艦による臨検の任務も同軍が受け持つ。サンリクト公国との折衝にあたる要員は、動員の段階から編成に加えられた。

政権軍
 迎え撃つ政権軍の中核には、深海を機動するザルバス級の潜水艦が据えられた。全長300メートル級の艦体は乗員700名を擁しており、艦首の発射管に収めた魚雷と対艦兵装が打撃の主力となる。ヴァルヘラ州から運ばれた鉱物資源の装甲にステルス塗装が重ねられたため、深海の潜航では探知の網から外れた状態が保たれる。同型の艦は二隻あり、外洋の広い範囲を分けて機動する構えが取られた。支援の戦力には通常潜水艦が回され、補給艦と武装商船が輸送の実務を引き受けている。偽装コンテナに隠された弾薬は、燃料の缶と同じ船倉に積み込まれた。レルナルト・ヴィ・コックス大宰相は補給路の死守を最優先に据え、南部の戦線に届く鉱物資源の搬入を守るよう命じた。

サンリクト公国
 エリッツ島の統治を握るサンリクト公国では、熱帯の珊瑚礁に囲まれた海域が勢力圏とされ、深海港を抱えた沿岸に要塞化された砲台が構えられている。砲座に据えられた対艦ミサイルの射程は、領海に踏み込む艦艇を捉える範囲に及んでいる。王党派の連合に加わった公国は港湾の使用を拒み、大宰相府に従う艦艇が寄港する道を早くから閉ざしていた。海軍の主力は南部沿岸の上陸作戦に投じられていたため、島の周辺には高速艇を軸とする哨戒の戦力が残されている。艇は領海の境界に沿って航行しており、通航する船の所属を確かめた。連合軍とは指揮系統を分けたまま同じ海域で動く見通しが立てられ、交戦の場を外洋に限る通告が双方の司令部に届けられた。

経過

 戦闘は共立公暦1001年4月末の交戦開始から11月まで続き、エリッツ島沖の外洋から深海の各層へ場所を移しながら推移した。

緒戦
 共立公暦1001年3月下旬、ヴェイルクラム作戦の上陸部隊がルナヴェイラの市街を制圧すると、連合軍は政権軍の海上補給路を断つ次の目標をエリッツ島沖に定めた。ヴァンス・フリートン大統領は、政権軍の海上戦力を根絶する方針を開戦の前の演説で掲げている。4月28日、heldo軍の航空艦から戦闘機が一斉に発進すると、外洋を進んでいた補給艦団が急襲を受けた。初日の空爆で武装商船が沈んでおり、補給艦は炎に包まれて航行の力を奪われた。潜水艦は深海に潜り込み、無人機のソナーに偽の反響を返して探知の網を撹乱した。連邦の艦隊は島沖70キロメートルに封鎖線を構築したものの、熱帯低気圧の強風によって戦闘機の飛行は乱されている。深夜、政権軍の潜水艦が対艦兵装を連射したため、封鎖線に就いていた海上航空母艦の甲板が火柱を上げた。政権軍の補給艦が領海へ逃げ込む動きを見せた際には、公国の砲台が正確な射撃を浴びせ、傾いた艦から乗員が海面に投げ出された。

  • ミサイル攻撃を受ける連合軍のサンドリス級海上航空母艦
*1

深海戦
 5月に入ると、交戦の主軸は深海へ移った。ザルバス級の一隻ザルバス・クロムが深夜の奇襲を仕掛け、heldo軍の輸送艦4隻を対艦兵装で沈めたうえ、燃料タンカー2隻も同じ雷撃で失われている。海面を覆った油が炎上したことから、連合軍の補給艦団は航路を南に振り替えた。南部戦線に届く弾薬では二割の減少が生じたため、前線の部隊は到着の遅れに悩まされる。連邦は対潜駆逐艦12隻を増援に送り出し、ソナー艦3隻が増援の船団に加わり、無人機60機が索敵の網を広げた。封鎖線は島沖120キロメートルまで拡大したものの、変異キメラの襲撃によって哨戒の戦闘機5機が失われた。平和維持軍の監視艦は武装商船を拿捕しており、船倉に隠された弾薬が押収される。6月、連合軍は潜水艦の掃討に着手した。ソナー艦が島沖300キロメートルの深海で推進機の音を捉えると、哨戒艇が爆雷と誘導魚雷を集中して投下する。海底4500メートルで爆発が連続し、ザルバス・ネブラの推進系が粉砕された。浮上に追い込まれた艦体は巡洋艦4隻の主砲に晒され、真っ二つに裂けている。政権軍は報復の手段として残る一隻を反攻に投じ、連合軍の駆逐艦4隻が大破し、うち2隻は黒煙を上げながら沈んだ。

終息
 7月、連合軍は封鎖線の層を厚くし、政権軍の補給艦が外洋へ出る回数を月ごとに削った。深海の遊撃を続けた潜水艦でも燃料の残量が落ち込み、対艦兵装の在庫が尽きるに伴って攻撃の頻度は下がっている。8月30日、島沖150キロメートルで補給艦団が捕捉されると、巡洋艦と哨戒艇の一斉攻撃が加えられた。武装商船は一隻ずつ沈められ、随伴した通常潜水艦も海中で捉えられている。海面は油に覆われており、漂う残骸が航路を塞いだ。集中した爆雷を浴びたザルバス級の一隻は艦尾を大破させ、浮上した局面でheldo軍の戦闘機から一斉射を受ける。生き残ったザルバス・クロムは深海6000メートルまで潜り込み、連合軍のソナー網を回避した。9月5日、同艦は最後の反攻で連合軍の補給艦を撃沈したものの、弾薬の残量が尽きかけたため中南洋の未知の海域に姿を消す。熱帯嵐の到来によってソナー信号が途絶えると、追跡は打ち切られた。10月、文明共立機構は南部戦線の調整の場にサンリクト公国の代表を招き、海域の分担が取り決められている。政権軍の海上戦力はエリッツ島沖から退き、11月3日に交戦は終息した。

影響

 海戦がもたらした変化は共立公暦1002年まで持ち越され、南部の海域から星域の各地にまで及ぶ形で現れた。

補給の帰結
 海上からの搬入路を断たれた政権軍では、南部の沿岸に置いた集積の拠点が捨てられ、以後の輸送は内陸の経路に組み替えられた。鉱物資源の海上輸送が絶えたため、ヴァルヘラ州の鉱山から陸路で運ばれる分が生産の支えに回された。前線に届く弾薬の量は交戦の前の水準から落ち込んでおり、到着までの日数も延びた。コックス大宰相は抗戦の継続を宣言したものの、民兵に配られた装備の更新は滞った。市街の工房で修理を重ねた小火器が戦列に残り、部品の欠けは鹵獲品から補われる。政権の側は、姿を消したザルバス・クロムの生存を宣伝の材料に据えた。艦の帰還を待つ物語によって若年層が民兵の募集に引き寄せられ、動員の数字は一時的に押し上げられている。政権の内部では大宰相の強硬な方針に不満が生じ、海上戦力の再建を求める声が指揮官の間に広がった。

海域の帰属
 連合軍は政権軍の艦艇を海域から締め出したものの、島沖の帰属は宙に浮いたまま年を越した。南部の沿岸では小規模な砲撃戦が翌年まで続いており、輸送の船団は護衛を伴う航行を続けている。サンリクト公国が領海の境界に哨戒の線を敷いたため、連合軍の艦艇と海域を分けた形が保たれている。政権軍の港湾を封じた実績は王党派の連合における公国の位置を固め、アリウス公王との協議も沿岸の防衛を軸として重ねられた。交戦の余波は島の漁場に及び、油と残骸が沿岸の海面を覆う。珊瑚礁の浅瀬まで汚染が進み、稚魚の育つ海域が油に沈んだ。漁を生計とした住民が網を失ったため、抗議の旗が港の一帯に掲げられた。港湾の労働者は外部の勢力を疎む感情を強め、連合軍の上陸を拒む声が街路に広がる。公国の指導部は住民の不満を抑える目的から、配給の実務を島の内側で組み立てた。

同盟の動揺
 セトルラーム共立連邦では交戦の成功がフリートン大統領の支持を一時的に押し上げたが、駆逐艦の損失が議会で問題にされた。哨戒艇の沈没に無人機の喪失が重なった結果、艦隊の補修に要する費用が予算の審議で取り上げられた。野党は勝利に払った代償の大きさを追及しており、軍事予算の増額を巡る議論が長引いた。大統領は中南洋の制圧が革命の帰趨を決めると演説したものの、疲弊した艦隊の実情は国民の間にも知られている。heldo軍の各国では輸送艦と戦闘機の喪失が動揺を招き、連邦の独断が同盟の負担を増やしているとの声が中小国から上がった。次の交戦で艦を失えば戦列を離れると通告する加盟国も現れ、同盟の結束に亀裂が入った。平和維持軍は公国との折衝を続けており、汚染された漁場の周辺に救援の物資が運び込まれた。

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最終更新:2026年08月20日 12:02

*1 作:Grok