| 生年月日 |
宇宙新暦1012年8月19日 |
| 年齢 |
49アストラ歳(星年齢) 共立公暦1000年時点. |
| 出生地 |
星間文明統一機構 ロフィルナ行政管理区 |
| 人種 |
ハーフロフィルナ |
| 所属組織 |
ロフィルナ連邦共同体 |
| 階級 |
女大公、公王陛下(公陛下) 女王陛下
連邦筆頭公爵
連合帝国名誉大公
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| 主な勲章 |
連合帝国.五剣義勇勲章
大公等位冠持
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| 主な渾名 |
冷血母公 プレジデント・デストラクター 転がしのプロ アリウスおばさん アリウスママ アリウスお姉ちゃん 焼きそばパンの覇者 泉域を纏う人 気品と筋力を兼ね備えし者 E.S.B.B.A.(エキセントリックスイーツババア) 超魔界聖母ALIUS The Zeroth ファンブル・マスター メンブレ渋滞アクセルフォーマー |
概要
自己紹介
どうか楽にして頂戴ね。わたくしの名は、アリウス・ヴィ・レミソルト。知っての通り、とある国の要職を努めているのだけども、ここではそんなの関係ないわ。わたくしは貴方とお話をしたくて、この場を設けたのだから。そう、他でもない、貴方自身に対して言っているのよ。……逃げないでね。皆さん、そうやってすぐに距離を取りたがるのだけど、どうしてかしら?わたくしの身分が怖い?それとも性格?取り巻きが?……もう一度、言わせてもらうわね。ここでは、そんなの関係ない。貴方には誰にも手出しさせないし、そのつもりもない。……うん。約束するわ。だから一緒にお茶会、しましょ?わたくしは公僕としてではなく、一人の友として親睦を深めたいだけなの。本当よ。
来歴
王族としての困難
アリウスは、
星間機構の統治下に置かれたロフィルナで、レミソルト公家の血を引く娘として生まれた。出自を見込まれた少女に課されたのは、自国民の同化を監視する司法監視官の英才教育であり、同胞を見張る目を幼いうちから仕込まれている。宇宙新暦1029年、祖父
アルバスが連続爆破テロの主犯であったことが露見すると、アリウスは祖父のもとへ赴いて戦いをやめるよう説いた。支援者として拘束された実の母を始め、幼い弟たちの助命にも奔走したものの、統治委員会の追及は緩まず、同1032年、一族の死刑執行書には彼女自身の署名が求められた。ペンを取ったのは、本人の手である。この日を境に、少女の歩みは同志と祖先の無念を晴らすための権力闘争に向かった。執行猶予の取り消されぬ身の上で、
キューズトレーターの視線に怯える日々は続き、占領軍の捜査権限が広がるにつれて逃げ場も狭まっていく。進退の窮まったアリウスは、
ルドラス・エルク率いるレジスタンスとの接触に踏み切り、保護の代価として
ヴァンス・フリートンの脱獄に手を貸した。約束が守られることはなく、気づけば反乱軍の奴隷として、移民船団の最下層へ押し込まれていた。後に一国の政権を指先一つで倒す女の人生は、裏切られた側の席から始まっている。
最下層からの栄達
宇宙新暦1206年以降、船団の最下層に置かれたアリウスは、劣悪な環境で雑務をこなしながら、各階層の有力者を一人ずつ取り込んでいった。食料の配分を握る者には帳簿の誤りを、警備の班長には昇進の筋道を差し出し、最下層の娘が上の甲板に通される回数は、年を追うごとに増えていく。惑星ゼスタルに到達し、セトルラームが建国された頃には指導者
ルドラスその人の寵愛を受けており、第二夫人の座に就いていた。同じ頃、かつて脱獄を手伝った
男は初代大統領に出世しており、アリウスは先の裏切りを片時も忘れていない。弱みを見つけては静かに突き、体制の土台を少しずつ揺らす手口に危機感を募らせたヴァンスは、主戦派を束ねる第一夫人
ウラジスに取り入り、邪魔な第二夫人の排除を企てた。同2150年以降、責任共立の名のもとに出征を促されたアリウスは、内政の安泰を願う大統領府に見送られて戦場へ発つ。厄介払いのつもりで前線へ放り込んだ女が、そこで何を身につけて帰ってくるのか、当時の大統領府に想像できた者は一人もいなかった。元より分析に秀でた頭脳にとって、軍略は新しい帳簿の読み方にすぎず、指揮官としての頭角は間もなく現れ始める。
救国の大英雄
ギールラングとの長い戦いを通じて、アリウスは陸の部隊を率いる将としても艦隊を預かる提督としても実績を積み、空軍では上級大将まで上り詰めた。文武を兼ね備えて帰国した女傑は、救国の大英雄として迎えられ、退陣の危機に怯えるフリートン政権の支持基盤を正面から揺さぶっていく。
連合帝国との戦いでも連勝を重ね、
新秩序世界大戦の終盤には主力艦隊を自ら率いて戦場に立った。イドゥニア世界に厭戦の空気が満ちたのを見計らうと、なおも敵の粉砕を唱える艦隊司令部の粛清を断行し、戦争を畳む側に舵を切っている。宇宙新暦4500年に大戦が終結すると、直ちにギールラング方面へ転進し、その後は民主改革派の指揮を自ら執った。同4895年、父
ゾラテスから筆頭公爵の座を譲られたアリウスは、求心力を失ったフリートン政権に引導を渡し、体制の段階的な民主化を推し進めている。共立公暦を迎えた頃には女大公としての地位を固め、
ロフィルナ連邦を束ねる最上の国家元首として複数国の統合を果たした。
「なんなんだ、この女?」(
セ連大統領の談)
人物
柔和な微笑みと底の知れない中身の落差こそ、女大公という人物を語る際の入口であり、出口でもある。
柔和という名の深淵
アリウスの人柄を端的に言い表すなら、とにかく優しい。一般の民には惜しみなく情愛を注ぎ、陳情に訪れた老人の手を両手で包み、迷子の子供の目線まで膝を折る。表向きは礼節を重んじる
最高賢母として振る舞い、世間一般には物腰穏やかな貴婦人の像が定着した。厄介なのは、この優しさに一片の嘘も混じっていない点である。同じ微笑みのまま、政府関係者には事あるごとに陰湿な試練を課し、政局の節目ごとに政治家や軍人、著名人を何人も引退へ追い込んできた。本人の中では、民を慈しむことと官を締め上げることが、同じ一つの愛情として繋がっているらしい。声を荒らげた場面を記録に探す試みは歴代の側近によって幾度も企てられ、そのたびに空振りに終わってきた。怒りが表に出る段階を待つまでもなく、相手の方が先に崩れてしまうからである。
セ連大統領いわく、存在自体が
歩く災害と化しており、超然としていることから
「何を考えているのか未だに解明できない」とのこと。解明を試みた者は、だいたい茶会に招かれて帰ってこない。いや、帰ってはくるのだが、別人のように素直になっている。救いはない。
絶対君主の風評
三大公家すべての頂点に君臨した絶対の権力者と評されるアリウスは、
ロフィルナ社会の象徴たる国民的指導者として、建前の上では静かに座っている。普段は構成国の政治に口を挟まず、玉座の上で茶を啜る姿は、権力を手放した君主そのものに映る。ところが、ひとたび動けば政権が一つ倒れる事実を、近隣の指導者たちは身をもって学んできた。とりわけ
ヴァンス・フリートンに対しては格別のシナリオを描いており、窮状に追い込まれる様子を愉しむ逸話には枚挙に暇がない。一方で、自分の非を一度認めれば、政府が止めに入っても頭を垂れる意向を表明しており、君主の謝罪がもたらす外交上の衝撃を計算に入れているのか、ただ律儀なのか、側近にも判別がつかない。「たまに軽率すぎて、よく分からない方ですね……」(
セ連首相の談)
茶会の作法
アリウスの政治は、茶会の卓の上で進む。招待状が届いた高官は、喜んで正装を整える者と、遺書を書き始める者とに綺麗に分かれ、後者の方が経験を積んでいる。お茶会に用いるクッキーを間違えただけで複数人の高級官僚がメンブレすると言われており、菓子の銘柄一つが政局の天気図を塗り替える。女大公の側から叱責の言葉が出ることは稀で、話題は、いつも和やかな世間話から始まる。客人の家族の近況、昔の失敗、好物の焼き加減と進むうちに、客人は自分が何を差し出したのかに気付かないまま、弱みを一つ残らず卓の上に並べ終えている。人の弱みを見抜く手腕は他の追随を許さず、地下深層に隔離されたシリアルキラーですら、面会の後には忠誠を誓ったのだという。人を壊すことに長けた者ほど、壊れる側の気持ちを初めて味わわされる場所が、この卓である。狂人を泣かせる狂人の名人、という呼び名が側近の間で囁かれているが、本人は、これを褒め言葉として受け取り、礼状まで書いた。天上の秩序を預かる存在でさえ、擬体の姿で女大公の前に立つ際には、まず茶器の数を数えてから腰を下ろすと伝えられる。
気品と筋力
柔和な面差しの美人であり、歳月の痕跡は表に一切残っていない。旧暦の戦場から数千年を経た今も、外見は若い頃と変わらず、どのような手立てで若さを保っているのかについて、本人は笑って話題を逸らす。それでも、各地の式典では「おばさん」「おばさま」と呼ばれ、幼い子供からも同じ呼び名で手を振られている。呼ばれた本人は嫌がるどころか嬉しそうに手を振り返しており、呼び名と実物の差は、沿道の初見の客を毎回混乱させる。礼服の下には、割れた腹筋と鍛え抜かれた背筋が隠されている。旧暦時代から一日も欠かさず続けてきた鍛錬は、剣の素振りから衛兵相手の組手にまで及び、気品ある所作の一つ一つに、重いものを軽々と扱える体の余裕が滲む。ティーカップを持ち上げる指先は優雅そのものだが、同じ指で倒れた石柱を起こし、扉の蝶番を外した逸話も残っている。茶会の卓で客人が背筋を伸ばす理由の半分は礼儀、残る半分は、目の前の貴婦人が『その気』になれば自分を片手で持ち上げられると知っているからだという。
理不尽の物差し
アリウスの怒りの沸点は、誰にも測れない。汚い格好の
ロフィルナ王国の民兵に罵倒されて許しを与えたかと思えば、
下僕が焼きそばの種類を間違えただけで政権交代に追い込むなど、もはや理不尽の域を超えた仕打ちをすることがある。罵倒した民兵には、後日、王都の衛兵の採用通知が届いた。焼きそばを間違えた大統領には、後日、首輪が届いた。どちらも本人なりの「愛情の形」だそうで、受け取った側の顔色は両極端である。方々から相当の恨みを買っていることは本人も承知しているが、旧暦時代から実戦経験を積んだ身に刺客が勝てた試しは一度もなく、多くの政敵は暗殺の計画書を燃やして諦めた。この徹底的な救いのなさが来歴のどのあたりで形成されたのか、研究を試みる動きもあった。しかし、人類最高峰に数えられる如何なる学者も口を閉ざしているのが現状で、謎は深まるばかりである。茶会に招かれた研究者は、今のところ全員が研究の主題を変更している。
作:kapahata#1016(Discord.acc)
共立公暦500年。いつもの交流に赴く道中のアリウス陛下。茶会に招待されて喜ぶ者と、恐怖し、打ちひしがれる者とで両極端らしい。
この顔にして闇落ちメンヘラとされる。スイーツサイコパス()とも。
悪名高き
星間文明統一機構が崩壊して以降、数千年もの長きにわたる思春期()を拗らせており、かつての政敵である
鉄の独裁者の心をへし折った。
『なんと申しますか、ご愁傷さまとしか言えませんな』(
ユミル・イドゥアム連合帝国.クロキルシ大太公の談)
人間関係
女大公を取り巻く人々は、血縁で結ばれた一族と、茶会の招待状で結ばれた友人たちとに大きく分かれる。
家族
三大公家を一つに束ねたレミソルトインフリー家の中で、アリウスは血を分けた者にも婚姻で結ばれた者にも、等しく家族としての顔を向けてきた。旧暦の革命で刃を交えた相手までが同じ食卓を囲む一族の現在は、女大公が一つずつ結び直してきた縁の積み重ねによる。
夫ルドラスは、アリウスが第二夫人として連れ添った。旧暦の頃、保護を求めて接触したレジスタンスの長でもある。約束を反故にされて移民船団の最下層に落とされた女が、寵愛を勝ち取って夫人の座まで這い上がった経緯には、誰もが舌を巻く。第一夫人
ウラジスとの確執も、この夫を巡って始まった。宇宙新暦2050年代に夫が謀殺されてから長い歳月が流れた今も、下手人の名は伏せられたままとなっている。公の場でアリウスが夫の死に触れる機会は少なく、命日も平日と同じ公務で淡々と埋められる。夫が好んだ茶葉の銘柄だけは、旧暦の頃から絶えず手元に置かれてきた。茶会の卓には毎回、蓋の閉じられた茶缶が一つだけ並び、中身を尋ねる勇気を持った客人は、今のところ皆無である。
実の祖父アルバスに対し、アリウスは長らく複雑な感情を抱いてきたのだという(本人談)。祖父の活動が露見したことで、残る一族の処刑を余儀なくされた過去を持つためである。大戦の末期、和平の印として孫娘が人質に差し出されかけた際、身代わりを申し出て
ユミル・イドゥアム連合帝国に渡ったのも、この祖父であった。事の次第は、アリウスも承知している。承知しているからこそ、帝国で寝ても覚めても女を侍らせる贅沢三昧の暮らしぶりには、心底から呆れている。度々、祖父の眼前に降臨してはお仕置きを加えており、訪問の回数は祖父のやらかしの数に比例して増えてきた。孫娘の訪問を減らすには真面目に働くのが一番早いと知りながら、祖父の側はなぜか毎回、遊ぶ道を選ぶ。お仕置きの予定は帝国の宮廷暦にまで書き込まれるようになり、予定日の前夜には祖父の屋敷から愛人たちが一斉に里帰りする。孫娘の訪問を告げる先触れの鈴が鳴るや、屋敷の使用人が窓を全開にして換気を始めるのが、今では名物の光景となった。
玉座を譲り受けた後も、アリウスは実父ゾラテスと良好な父娘の間柄を保っている。フリートン政権の傀儡に甘んじながら改革を迫った父の静かな交渉を、若き日のアリウスは間近で見てきた。静かな声のまま相手を追い詰める技の手本は、半分ほどこの父に由来するのだろう。残る半分の出どころを問われるたび、父は茶を啜って聞き流す。公務を退いた父が古文書の整理に没頭していると聞いて以来、アリウスは訪問のたびに旧い記録の写しを一束ずつ持参する。父は娘の手土産を受け取ると、茶を淹れる前に必ず一頁目を読み始めてしまい、娘はその間、黙って父の分の茶まで淹れておく。父娘の会話の大半は、駆動剣技の稽古の場で交わされる。無駄を削ぎ落とした父の剣と、重さを乗せた娘の剣が打ち合う音は庭の端まで届き、稽古を終えた二人は勝敗の話を脇に置いて茶の席へ移る。侍従の記録によれば、稽古の勝敗を記す欄は、この数百年、空欄のまま綴じられてきた。
継母ガレルーノとアリウスの縁は、宇宙新暦4800年代、旧政権の取り調べに晒されていた停戦の人質の身柄を、レミソルトインフリー家が引き受けたことに始まる。応接に現れたアリウスと旧政権の待遇との落差に、ガレルーノは率直な驚きを口にしたと伝えられる。改革派に加わったガレルーノと共に独裁体制の切り崩しを進めるうち、二人の親交は深まっていった。やがて父
ゾラテスと結ばれたことで、かつての人質はレミソルトの家族の籍に入り、アリウスの継母となった。槍術に長けた継母を、アリウスは家族として敬いつつ、直属の側近として国事の場にも伴う。現職大統領を槍術の稽古相手に指名し、防具の質を落とした打ち合いを課す継母の日課について、アリウスには黙認の疑いが掛けられている。大統領府の調べは、稽古の予定表に押された決裁印の主を突き止める手前で止まったままである。姪の
トローネ皇帝を交えた茶会の卓では、槍術の講釈と皇帝の愚痴が入り乱れ、給仕の者はどちらの話題にも相槌を控える作法を早々に身に付けた。
夫を巡る諍いを境に、アリウスと第一夫人ウラジスの仲は非常に険悪なものとなった。顔を合わせるたびに罵詈雑言をぶつけられても、アリウスは適当に聞き流しているのが現状らしい。共立公暦983年には娘の誕生に際して一時の休戦が結ばれたものの、和睦の書面が乾くより先に、罵声の応酬は元の調子に戻っていた。聞き流す態度とは裏腹に、宿敵への敬意は胸の内に確かな根を張っている。アリウスを前に胸を張り、正面から挑み続ける相手は、連邦広しといえども数えるほどに限られる。同じ古代レミソルト王家の源流を誇る宿敵の覇気を、誰より高く買ってきたのも当のアリウスである。公爵会議の休憩室には、ウラジスの席にだけ、香りを抜いた白湯が用意される。誰が手配しているのか、侍従たちは知っていて口を噤む。宿敵の好みを知り尽くしたうえで、白湯の温度まで揃えてくる心遣いが、ウラジスの神経を最も逆撫でしている。罵声を浴びながら微笑み、白湯の温度を確かめ、また微笑む。二人の対決は毎回これで幕を下ろし、公爵会議の議事録には、議題と無関係な湯温の記録だけが几帳面に綴じられていく。
セレーナとは三元君主の同輩として共同大権を分け合う間柄ながら、アリウスの側には旧暦のロフィルナ革命に遡る因縁がある。王朝を倒す側に立ったアリウスは、幼い王女を王都の地下に置き去りにした戦乱の一端を、革命軍の将として担っていた。過去を承知したうえで、アリウスはセレーナを家族の一人として遇し、統合エルク家の成立に向けた交渉でも、姉妹の溝を埋める説得役を自ら買って出た。共立公暦650年代、エルクール側の正統を認めるよう説かれたセレーナが突き付けた答えは、両家の統合であった。交渉の成果を持ち帰るよう本人に迫られた一件は、年若い同輩から宿題を課された珍しい経験として、今もアリウスの楽しげな昔語りに上る。但し書きを重ねる同輩の起案は、アリウスにとって退屈と無縁の娯楽となっている。起案を読み上げる間にセレーナの眉が動いた回数は、毎回こっそり数えられてきた。数えた結果の使い道について、アリウスは純粋な趣味だと言い張っている。
旧暦時代のロフィルナ革命において、王朝を守る女王ロフィーリアと革命の将アリウスは、戦火を交える敵同士であった。共立公暦695年、アリウス自身が旧エルク王朝との和解を表明したことで戦後処理に区切りがつき、今では本音を語り合える数少ない家族の一人となっている。和解の後、ロフィーリアは女優として銀幕でアリウスを演じた。かつての敵将を主役に据えた作品の試写に招かれたアリウスは、上映後に一点だけ修正を求めている。主人公が部下を怒鳴りつける場面について、事実に反するため削ってほしい、という注文であった。監督は渋ったものの、アリウスが声を荒らげた記録を一件でも提示できれば場面を残すとの条件を呑み、三か月の調査の末に、場面は削除された。完成版の主人公は終始小声で、観客の評判は「怖さが増した」で一致している。ロフィーリアの側は、役作りのためにモデル本人と同じ食卓を囲んだ一週間を、生涯で最も緊張した撮影期間と振り返る。
ヨバンナは、故ルドラス大公との間に生まれたアリウスの実の娘である。世俗主義を掲げる夫の方針から、当時、軍との繋がりを強めていた
ヴァンス・フリートンのもとへ娘を嫁がせ、切り捨てざるを得なかった己の無力を、アリウスは数世紀の長きにわたって呪い続けた。その後の体制改革に心血を注いだ背景にも、この悔恨がある。政敵の妻となって久しい娘とは戦後も合わせる顔がなく、逃げるように直接の接触を避けてきたわけだが、宇宙新暦4800年代、二国間の関係修復の過程でイドラム二世から直々に和解を説かれると、アリウスは冷血の長たる覚悟をもって愛する娘との再会を決断した。帝国への亡命を果たして間もないヨバンナは、護衛の近衛騎士に持ち場へ戻るよう厳命し、反対を押し切って、たった一人で母と相対した。張り裂けんばかりの視線が交わされ、重苦しい沈黙を破ったのは娘の方であった。静かに距離を詰めてくる母に対し、ヨバンナはたった一言、祝福を表すイドルナートの一節を紡ぐ。それは、二人の間でしか通じない「
ひみつのけいやく」だった。全てを悟ったアリウスは涙を流し、一言も発することなく、その場を立ち去ったのだという。それから更に数世紀を経た頃、帝国貴族としての任務に一定の区切りを付けたヨバンナは自ら母のもとへ赴き、権力闘争とは無縁の牧歌的な光景を目にした。首輪を付けられ転がされた
限界夫の救命要請を受けて大笑いし、本当の意味で母との和解を果たしたのである。それは、平和の祈りを象徴する至高の美談の一つとして語り継がれた。ブラウザバックしろ。
アリウスを「おばさま」と呼んで慕うリティーアは、宿敵ウラジスの一人娘である。慕われる側は政敵の血筋を脇に置き、何事にも真摯に取り組む人柄を見込んで、一人の公女として重んじてきた。母の苛烈な教育から逃れて城を抜け出すたびに、尻拭いに走ったのは決まってアリウスだった。おばさまの背中を見るうちに、幼い公女は自らの立場への自覚を育てている。将来はレミソルト公家に連なる者として遇する考えから、アリウスは花嫁修行の道を勧め、
メレザ・レクネールのもとへ送り出した。母ウラジスはこれを事実上の亡命と断じたが、アリウスの側は黙認を貫いている。生活費を打ち切られた公女が怪しい私物を売りに出していると聞いた日にも、アリウスは手を差し伸べる代わりに、売りに出された品を一点ずつ匿名で買い戻した。買い戻した品は今、アリウスの私室の棚に、値札が付いたまま並べられている。公女が自力で暮らしを立てる誇りを、おばさまは値札ごと守っているのである。
娘ヨバンナが大統領との間に産んだ次女シーナは、アリウスから見て母方の孫娘となる。権力の腐敗を撃つ歌を書き、父の失言や政策を公然と揶揄する孫娘の奔放さに、女大公は今日まで沈黙で応じてきた。止めれば守れる立場にありながら、あえて沈黙を通す祖母の判断を、孫娘は許可として受け取っている。もっとも、沈黙の裏で、祖母の関心は孫娘の歌に注がれ続けている。公演の音源は随行の者を通じて欠かさず取り寄せており、新曲が出るたびに歌詞を書き写した帳面が私室に一冊ずつ増えていく。大統領が茶会の席で娘の振る舞いを嘆くと、女大公は嘆きを最後まで聞いたうえで、例の帳面を開いて該当する曲の歌詞を朗読し始める。朗読は一曲分で終わることが少なく、大統領は自分を撃つ歌を祖母の柔らかな声で聴かされ続ける羽目になる。救いはない。孫娘の公演の客席に祖母の姿を見た者は皆無である。ただし、警備名目で配置された係官の中に、妙に姿勢の良い婦人が混じっていたという証言は複数寄せられている。
交友
かつての政敵にして愛すべき下僕。現職大統領ヴァンスを、アリウスはそのように遇している。旧暦に脱獄を手伝った見返りを踏み倒された恨みから始まり、数千年にわたる権力闘争の末に、勝敗は誰の目にも明らかな形で決した。ヨバンナを始めとする家族の顔に免じて、女大公は男の命を助けた。今も大統領の椅子に座る下僕の成長を何よりも願い、ウィットに富んだ教育を施している。教育の中身は、至高の
焼きそばパンの調達から、スピリットナノチューブ合成素材のムチを用いた実技指導まで多岐にわたる。現職大統領の忠誠を勝ち取ったと世間は言うが、本人に言わせれば、忠誠を捧げる以外の選択肢を一つずつ丁寧に取り上げられただけだという。とはいえ、二人を結ぶ糸には憎しみ以外の色も混じる。救国の大英雄として帰国した女と、退陣に怯える独裁者として迎えた男は、互いの手の内を知り尽くした同世代の生き残りでもある。女大公は大統領の判断の癖を誰より正確に読み、大統領の側も、女大公の微笑みの角度で翌日の天国と地獄を判別できるようになった。観察眼の用途は、もっぱら逃走経路の選定に限られている。逃走の成功例は、記録の上で零件である。お察しください。
愛すべき下僕の生みの母ルフィリアに、アリウスは一人の女性として最大限の敬意を払っている。店主が営む港町の喫茶店「星海の休息」で頻繁に茶会を開くうち、二人の世間話は港町の風物詩となった。少女の姿の店主が国家元首を「アリウスちゃん」と呼び、手芸の針を動かしながらガールズトークに興じる光景は、初めて目にする客を例外なく固まらせる。孤高の座にある女大公の胸の内を、ルフィリアは早くから見抜いていた。店主の淹れるハーブティーの前でだけ、女大公は涙を見せたことがあるという。もっとも、二人の世間話の題材は、だいたい幼い頃の大統領である。母の口から語られる息子の黒歴史を、女大公は一つずつ相槌を打ちながら聞き、帰りの車中で側近に口述筆記させる。筆記された記録は、大統領が反抗的な態度を見せた際の切り札として、女大公の文箱に収められる。店に詰める公共局の職員は、報告書に何を書くべきか毎回頭を抱えている。距離を取るよう母に懇願する大統領の訴えは、今のところ全て笑顔で却下されている。
女大公の気まぐれに付き合わされる頻度において、連邦首相ゾレイモスは大統領に次ぐ二番手につける。政権交代に至った焼きそばの一件でも、事後処理の書類を山のように抱えたのはこの首相であった。女大公に苦言を呈する胆力を持つ人物として、アリウスは首相を高く評価している。高く評価しているからこそ、茶会の招待状は大統領と同じ枚数が届く。首相の側は、女大公が大統領を転がす現場に居合わせる機会が多いため、胃薬を常備するようになった。医学技官出身の知識を生かした自家製の配合で、効き目の良さが女大公の耳に入ると、茶会の前に一包だけ分けてほしいと頼まれ始めた。女大公が自分で服用するのか、誰かに飲ませるのか、首相は詮索を早々に放棄している。大統領と首相が任期ごとに職を入れ替える慣例についても、女大公は「お二人とも、同じ椅子が似合うのね」と評しており、首相はこの一言の真意を、今も解読の途上にある。
アリウスにとって、この男は、旧暦時代に一時の契約を取り交わした親友である。契約の中身は二人の間に伏せられたままで、契約が解かれた後も、女大公は度々茶会に誘い、茶化しては遊んでいる。人の身でありながら、彼の側が眉をひそめるほどの代物を平然と飲み干し、究極兵器の猛攻にも耐え抜く女大公を、ルスタスは魔の領域に踏み込んだ存在と疑っている。疑いを抱えたまま、紳士は毎回の招待に応じて席に着き、二人の腐れ縁は今日まで続いてきた。女大公は彼の古い肩書きを知ったうえで、近所の学者を招く気安さで茶を勧め、茶菓子の感想を求める。界の秩序に関わる存在に茶菓子の感想を書かせる行為が、どれほど常識外れであるか。茶会の給仕係の中で、事の重大さを自覚している者は皆無である。給仕係の一人が残した記録によれば、紳士はある日の茶会の後、帰り際に女大公へ向かって何事かを言いかけ、口を閉ざして去ったという。言いかけた言葉が苦情であったのか、忠告であったのかは、紳士本人のみが知る。
共立公暦0年の改暦セレモニーで、母の言いつけどおり笑顔で挨拶して回る幼い皇女トローネに、女大公は挨拶と一緒に菓子を手渡した。最愛の友人との縁は、この一幕に始まる。同5年、先帝の葬儀の日に、異様なほど落ち着き払っていた皇女の変化に気づき、本音を引き出せたのは、側近の
セルブラーナと女大公の二人だけであった。皇帝が門閥貴族の操り人形に甘んじた同50年までの歳月、女大公は手紙を書き送り続け、検閲を潜って届いた一部が、若き君主の心を繋ぎ止める支えとなっている。権力を取り戻した皇帝は今も「アリウスお姉様」と慕い、女大公の側は「トロちゃん」と呼んで娘のように可愛がる。その将来に期待するあまり、不肖の下僕である
ヴァンス・フリートンの身柄まで委ねるほどの信頼を置いた。茶会に招かれる日、帝国の側近たちは揃って正装を整える一方、皇帝本人だけは普段着のまま出かけていく。女大公の卓に限り、皇帝は背伸びを解いて座れるからだという。
旧暦時代の和解交渉で、アリウスとメレザは息詰まる駆け引きを重ねた。交渉の卓で互いの手の内を探り合った日々を経て、今では女大公がメレザを妹のように可愛がり、何かと目をかけている。もっとも、可愛がられる側の心中は、穏やかさから程遠い。茶会に誘われるたびにメレザは緊張し、招待状を受け取った日から当日まで、執務室の空気がわずかに冷え込むと職員の間では囁かれている。女大公は緊張を承知のうえで、茶会のたびに相手の好む植物性の菓子を用意し、肩から力が抜けるのを見届けてから本題に入る。本題に入る頃には茶会の予定時刻を大幅に過ぎており、議長の次の公務は毎回、女大公の側近が先回りして調整済みである。古い記憶を少しずつ失っていくメレザに、女大公は旧暦の交渉の顛末を毎回、少しだけ自分に都合の良い形に脚色して語り聞かせている。脚色の度合いは回を追うごとに大胆になっており、首を傾げながら反論の材料を探す議長の前には、そのたびに次の茶菓子が差し出される。
フラウとアリウスは、定期的に茶会を開いて世の在り方を語り合う仲にある。二人の会話は超常的な内容で、常人には理解し難い。言語の習得に長けたフラウは相手の言葉の裏側まで汲み取ってしまうため、女大公にとっては言葉の半分を説明抜きで受け止めてくれる貴重な相手となった。同席を許された侍従たちは茶会の後に決まって頭痛を訴え、議事録係は三人目で辞表を出している。茶会の記録は両国の政府に保管されているものの、要約を任された担当者の筆は、今も最初の一頁で止まる。フラウが卓に差し出す品はどれも尋常の域を外れた代物で、受け取る女大公の側も、包みを開ける瞬間を心から楽しんでいる。受け入れ先を困らせるフラウの奔放さも、女大公の目には美点として映るらしい。
ラヴァンジェの外交官が詫びの言葉を探して口ごもる間、女大公だけは楽しげに茶を啜っている。二人が同じ品を前にして同時に微笑んだ場合、周囲の者は速やかに退避することが、両国の随員の間で申し合わされている。
アリウスがセレスと初めて向き合ったのは、セレスが建国の英雄として女王の座にあった頃である。宇宙新暦4895年、連邦の再建に乗り出したアリウスは、旧植民地の自立を再建の条件に数え、ユピトリー王国の領域拡張に向けた国際支援の扉を開いた。独立承認の見返りについて、アリウスは最初の会見で話題を最後まで伏せており、伏せた理由は今も女大公の胸の内にある。
ユピトルと連邦の間では、歴史認識と
ロフィルナ王国の扱いを巡る対立が今も続く。セレスは女大公個人への礼節を尽くす一方、政治の領域では警戒の構えを保ち続ける。女大公の側は、自分を測りかねて目を凝らし続ける年若い首相をいたく気に入っている。測りかねる相手を前にしても礼を守り抜く誠実さこそ、女大公が政治家に求める最上の資質だからである。伏せたままの見返りの件も、女大公にとっては、いつか茶会の卓で切り出すための楽しみとして取ってある。切り出す日が来るのかどうか、女大公本人も決めかねている節があり、首相府の担当官は、見返りの請求書が届く日に備えた想定問答集を毎年更新している。
新秩序世界大戦の戦場で、アリウスとテンゼムは同じ上級大将の階級を帯びて連邦軍の前線に立った。帝国軍との全面戦争の中で、焦土と化した星系を目の当たりにした二人の将は、同じ地獄を知る戦友として互いの指揮を認め合っている。戦後の歩みは分かれた。主戦派の旗手として力による秩序を唱えるテンゼムは、
ロフィルナ王国への準備指定を巡って、王国の元首たる女大公と真っ向から向き合う立場にある。軍閥が引き起こす騒乱を前に力の行使に踏み切る構えの上級大将と、粛清の人的被害を量りながら沈黙を守る女大公との間には、深い溝が横たわる。それでも、上級大将は女大公の茶会の招待に毎回応じている。卓の上の話題は、旧暦の戦場の記憶と、戦場で死なせた部下たちの名に限られる。戦友の名を読み上げる場面に限っては、女大公の茶会から笑い声が消える。上級大将の両肩の古傷について、女大公は沈黙を選ぶ。詮索を控える態度こそ、同じ戦場を生き延びた者への礼儀だと心得ているからである。
叱られるほど元気になる気質のエレイナにとって、女大公は長らく憧れの的であった。歴代の権力者を引退に追い込んだ伝説の貴婦人に叱られたら、どれほど昂るだろうか。期待に胸を膨らませて茶会に乗り込んだ代表理事を待っていたのは、終始穏やかな微笑みと、心からの労いの言葉だけであった。女大公は代表理事の働きぶりを褒めて体調を気遣い、焼き菓子を勧めた末に、頭を撫でて送り出した。叱られる準備を万端に整えてきた代表理事は、帰りの船で副官に「何もされなかった」と泣きついている。以来、代表理事は女大公を何とか怒らせようと、茶会のたびに無礼の度合いを少しずつ引き上げているものの、女大公の微笑みは今日まで保たれている。怒らせることに失敗し続ける体験そのものが、代表理事にとって新しい種類の昂りになりつつある。本人も副官も薄々気付きながら、揃って口を噤んでいる。女大公の側は全てを見抜いたうえで、次の茶会の焼き菓子を少しだけ甘く焼かせている。
世界平和のためにスケープゴートにされた少女。
この大恩をアリウスは決して忘れない。旧暦の頃、執行猶予の身にあったアリウスは、
星間文明統一機構の頂点から注がれる視線に怯えて日々を過ごした。二人の縁は、監視する側と監視される側として始まっている。初期化を経てキユラを名乗るようになった後も、元の監視者は記憶の外にある罪で咎人扱いされ続けた。原罪そのものの烙印を押されたキユラの悩みに寄り添い続けたのが、女大公であった。かつて自分を見張っていた機械の身の上話を、女大公は茶会の卓で最後まで聞き届けている。今ではキユラの戦技の師匠として稽古をつけ、教え子からは最大の恩人と仰がれる間柄にある。自らを生み出した創造主への憎悪を茶会の席で打ち明けられた日にも、女大公は諭す言葉の代わりに、空いた茶碗に黙って茶を注ぎ足した。稽古の場の女大公は容赦なく、アバターの身でへたり込むキユラを見下ろしながら、次の型を微笑んで示す。稽古の終わりに教え子がアバターを幾つにも分けて師匠の背中へ一斉に飛びつく習いは、師匠が足を地に据えたまま受け止めるため、毎回教え子の側が弾き返されて終わる。
戦闘能力
女大公の個人戦闘は、駆動剣術と重力操作を一つの戦闘機動に束ねる点に要がある。
剣と重力
アリウスは、「ファラネヴェ
駆動剣術」を修めた達人とされる。その技量は、
ロフィルナ連邦圏の枠を越え、イドゥニア星域全域に名が伝わってきた。剣術の体系は
タクトアーツの理論を基盤に据え、専用兵装
レミソルティス・ファラネヴェを介して発動する。令咏術の言語コードは本来、一つずつ切り替えて扱う決まりにあり、複数の系統を一太刀に重ねる剣技の数々は、専用兵装が法具として束ねる働きの上に成り立つ。所作は精密な術式操作と、相手の心理を読み切る洞察に貫かれ、戦場における判断は冷徹な合理性に支えられている。剣術と並行して運用される能力が、体内に埋設された
グラヴィス調律器を駆動源とする重力操作である。広域に展開する重圧と狙いを絞った精密制御を切り替え、戦闘以外の局面でも瓦礫の浮揚による遮蔽形成などの戦術的運用が確立された。剣と重力の両系統を同一の戦闘機動に統合した戦い方は、他の剣士の追随を許さない独特の境地に達している。
身体と制約
肉体面では遺伝子強化と人工細胞の処置を経ており、歳月の重みを感じさせない身体は、共立公暦の時代にあっても戦盛期に相当する出力を保っている。
新秩序世界大戦においては、主砲の直撃を被りながら立ち上がり反撃に転じた逸話が連邦軍の記録に残されてきた。戦闘能力には、相応の制約も伴う。術式の行使には
液状半導体の継続的な消費が伴い、長時間の交戦では補給を要した。重力場の精密制御は神経系への恒常的な負担を強いるため、過度の連続使用が精神的疲弊を招く点も看過できない。遠距離攻撃は重力波の伝播特性に依存するため、極端な狙撃距離や強度の電磁妨害下では波動の安定性が損なわれる。それでもなお総合的な戦闘力は「単独で軍勢を凌駕する」と評された。彼女が戦線に立つこと自体が、戦場全体に張り詰めた緊張をもたらしたという。なお、近年の衛兵との組手では専用兵装を使わずに素手で応じる日が増えており、剣を抜かせた衛兵は、その日の詰所で一杯奢られる習わしとなった。奢られた者の数は、今のところ片手で足りる。
主なスキル
ファラネヴェ駆動剣術
「ヴァスティル・クルヴァ」
迅捷さと優雅さを兼ね備えた所作を象徴する一手であり、技名は古語で疾風と弧を示す。
剣先から解き放たれた晶気が空気を裂きながら弧を描き、周囲の戦列を風のごとく薙ぎ払う。春スクリプトの応用を基盤とするため、大気中の媒介エネルギーが豊富であるほど威力が高まり、無風下では効果が減じた。
発動の瞬間には剣身が細かく震え、微かな風鳴りが周囲に伝う。アリウスの剣戟の中でも初動の選択肢として運用されることが多く、戦線の前衛を切り崩す導入の一手に位置づけられた。
「ゼルティス・ヴェーラ」
戦場に静寂をもたらした後、敵の生命を的確に絶つ剣舞であり、技名は古語で静寂と真実を意味する。
神経接続を介した超人的な反応速度と相手の動作を先読みする洞察が、技の精度を担保した。
剣先が急所に触れた瞬間、晶気の小規模な爆裂が内部から構造を破壊する。心スクリプトの作用が重ねられるため、技の発動そのものが敵の心理的動揺を誘発する効果も伴う。
回避と一撃必殺を同居させた性質ゆえ、近接戦の局面で要人の制圧に振り向けられる場合が多い。
「ファラティス・エンディオ」
晶化炉を最大出力で稼働させ、剣から奔流のごとき晶気を解き放つ必殺の一撃である。
技名は古語で終焉と永遠を暗示し、新秩序世界大戦における殲滅戦の記憶と分かち難く結びついた。基盤に据えた夏スクリプトが膨大な熱量を増幅する性質ゆえ、行使の後には剣身が一時的な過熱状態へ陥り、冷却の時間を要する。
液状半導体の消耗も著しく、長時間の戦闘では発動回数に自ずと制約が生じた。広範な殲滅力を備える反面、運用にあたっては味方の退避を前提とした事前展開が欠かせない。
「封律空波」
超射程で対象のエネルギーシールドや異能を一時的に無効化する技であり、戦場支配の中核を担ってきた。
技名は古語で封じる法則と虚空を伝う波を意味する。冬スクリプトの応用に由来する性質として、低温環境下では効果が向上する反面、高温下では波動の安定性が損なわれた。
命中した者は「虚空に呑まれた感覚」に襲われると証言しており、心理的な威圧効果も看過できない。
封印符文の精緻な書き込みが要求されるため、発動の場ではアリウスの集中力が試された。
文明圏が組織と装置を総動員して行う封じ込めの手順を、一振りの剣と一人の術者の規模に縮めて一時的に再現した技とも言える。
重力操作
「グラヴィス・ドルメス」
収束させた衝撃波で対象を内部から粉砕する制圧技であり、技名は古語で重圧と苦痛を示す。
雷スクリプトの応用によって、大気中の電気エネルギーを媒介に重力波を増幅する。そのため、発動の前後には微弱な放電が走り、雷鳴のごとき轟音が響き渡った。
電気エネルギーが乏しい環境では威力が落ち、嵐や雷雨の下では破壊力が飛躍的に高まる対照的な性質を持つ。
連続使用には反動が伴い、調律器の一時的な過熱が運用上の懸念として指摘されている。
「ドミナ・プレストラ」
敵エリアに重圧をかけて動きを封じる戦術技であり、技名は古語の支配と圧迫を組み合わせた。
冬スクリプトの防御特性を取り込み、敵の進軍を遅滞させながら味方の反撃を支える運用が確立された。広域への一様な重圧から、狙いを絞り込んだ精密制御まで切り替えが可能であり、戦術的な汎用性が際立つ。
発動中には重圧による空気の歪みが視覚的に現れ、対象には心理的な拘束感も加わった。長時間の維持はアリウス自身の精神を疲弊させる。
「アセンディス・リベラ」
自身を無重力化し、予測困難な軌道から剣を振るう機動技であり、技名は古語で上昇と自由を示す。
春スクリプトの風操作を応用した結果、空中における立体機動と剣撃の同時遂行が成立した。敵の射線を外す回避運動から重力波を重ねたコンビネーション攻撃へと、なめらかに移行する点に特徴がある。
発動時には足元の塵が渦を巻いて舞い上がり、着地後の平衡感覚の乱れが一時的な制約となった。
「クラヴィス・コラプス」
重力波を一点に集中させて超重力場を形成し、対象を圧潰する究極の一撃である。
技名は古語で鍵と崩壊を示し、雷スクリプトと召スクリプトの要素を融合させた点に独自性が宿る。本来は同時に扱えない上位の系統二つを専用兵装の力で一つの剣筋に押し込むため、行使には並外れた技量が求められる。狙撃的な精密モードと広域の重力崩壊を引き起こすモードの切り替えが可能であり、新秩序世界大戦の終盤では敵旗艦の沈没に直結した記録が残った。
代償として膨大な液状半導体と精神力の消費が避けられず、連続使用は調律器のオーバーヒートを招く危険性を伴う。連合帝国の将官をして「戦場そのものを葬る技」と評された。
語録
「ふりーとんさん?あなたは、いつも首相と喧嘩ばかりして、またわたくしと対戦したいのですか?」
とある連邦の
大統領を教育する際に。スピリットナノチューブ合成素材のムチを撫でながら。
「よくお聞きなさい。あなたの未来には、これから想像もつかない多くの困難が降りかかるでしょう。それでも、あなたは国を背負う者としての自覚を持たねばなりません。そして、この難局にも、いずれ向き合うべき時が訪れます。わたくしはあなたの母から、あなたの将来を託され、ここにおります。たとえこの関係が一時的に引き離されたとしても、時の流れのように解けない苦しみなどないのです。良いですか?わたくしの言葉をよく覚えていなさい。力ある者は、あなたの心を脅かし、その権威を意のままに操る者たちだけではないということを。しかと記憶し、よく耐えるのですよ。……その時が訪れたら、わたくしは必ずやあなたのもとに駆けつけます」
時は共立公暦5年。先代皇帝が死去し、偽りの笑みを貼り付け、抜け殻のようになっている
トローネ皇女殿下(当時)に。このお言葉は、帝室の側近に妨害される直前の僅かな間に紡がれた。
「彼らの選り好みは裏を返せば純粋な母性の現れでもあります。安心させてあげてね」
連合帝国の体制に関して不満を漏らす公共局長に。柔和な笑みを浮かべながら。
「これは、暗に試されておられるようですが、ふふっ……今から実存を確定させてご覧に入れましょう」
フラウさんとの茶会において、差し出された泉域産のお茶を飲み干す。その後、無事に生還を果たし大統領を落胆させた。
「人様の領域には干渉せず。けれども、それで全てが許されると思うなら必ずや貴方を懲らしめる者が現れましょう」
「この決断に至るまで多くの犠牲を出しました。わたくしの行動が遅きに失したと非難する者もいることでしょう。わたくしにはロフィルナ社会に属するすべての国民の生命及び財産、その他の尊厳に関わる一切の安寧について、これを擁護し、全うしなければならない責務がございます。ロフィルナ政府の名のもとに実行された、すべての犯罪行為の責任は連邦共同体の長たるわたくしに帰属するものです。……ですから、大統領?何も心配する必要などないのですよ」
憔悴しきった時の
下僕政治家に。この後、彼は辞職の意向を表明し、帝国行きの専用機に駆け込んだそうです。お察しください。
「わたくしが今、なにを考えているかって?ふふ……何を考えているのか、当ててみてちょーだい?」
ロフィルナ問題を巡る連邦評議員の諫言に対して。儚げな笑みを浮かべて問いかけた。
「大きな声?あら、大きな声は遠くまで届いてしまうでしょう。わたくしは、目の前の方にだけ届けば十分なの」
怒鳴ったことはあるかと尋ねた記者に。インタビューの録音は、音量を最大に上げても半分しか聞き取れなかった。
「このパン、麺の向きが逆ではなくて?……いいのよ、責めてはいないの。ただ、どなたの手がひっくり返したのか、知りたいだけ」
献上された
焼きそばパンを一口かじって。
大統領は購買の監視記録を自ら提出し、ひっくり返した犯人が自分の手であったことを証明した。
「大統領、逃げ道を三本用意してきたのね。偉いわ。四本目はわたくしが塞いでおいたから、安心して三本とも試してみなさい」
茶会の開始前、公邸の見取り図を握りしめる大統領に。三本とも試した大統領は、四本目の前で正座していた。救いはない。
「首相、今日の議題はいくつ?……三つ?では、大統領が謝るのは四回ね。一つは前回の分よ」
閣僚会議の開始前、
首相に。大統領は冒頭で前回の分を謝り、残る三回も議題ごとに律儀に消化した。
「貴方、人を壊すのがお上手なのね。では、壊れる側のお話もしましょうか。時間はたっぷりあるわ」
地下深層の収容区画での面会の冒頭に。面会を終えた囚人は、収監以来、初めて、看守に向かって「ありがとう」と口にした。
「腕の角度は悪くないわ。でも、刃を握る指が一本多いの。次に来るときは、そこを直していらっしゃい」
寝所に忍び込んだ暗殺者を組み伏せた後に。三か月後、握りを直した元暗殺者が衛兵の採用試験に現れ、首席で合格した。
「その箱、わたくしが持つわ。貴方の腰は国の財産なのだから、大事になさい」
公務の移動で、文書箱を一人でまとめて抱え上げた際に。護衛官は翌日から、筋力訓練の時間を倍に増やした。
「ええ、おばさんは強いのよ。だから貴方も、強いおじさんになりなさい」
式典の沿道で「おばさん、つよそう」と叫んだ少年に。少年の母親は、その場で崩れ落ちた。
「ウラジス、今日の罵詈雑言は語彙が三つ増えていたわね。勉強熱心で嬉しいわ」
公爵会議の散会後、
宿敵と廊下ですれ違いざまに。翌日の罵声は、さらに五つ語彙が増えていた。
「メレザ、肩が上がっているわ。……ほら、深呼吸。わたくしの前で力むと、お茶がこぼれるのよ」
茶会の席で、
議長のカップが小刻みに震えるのを見て。言い終える前に、こぼれた。
「泣いてもいいのよ、リティーア。泣き終わった後に何を言うか、わたくしは、それだけ聞きたいの」
大統領との口論に負けて駆け込んできた幼い
公女に。泣き止んだ公女の第一声は反論の続きで、女大公は最後まで頷いて聞いた。
「お祖父様、遺言の下書きは何通目?わたくし宛ての分だけ、毎回、中身が増えているのは、なぜかしら」
帝国の
祖父の屋敷を訪ねた折に。増えていたのは、孫娘への詫びの言葉ばかりであった。
「署名は、自分の手でするものよ。誰かに代わらせた名前は、一生、その人のものになってしまうから」
死刑判決の署名を補佐官に委ねようとした若い判事に。判事はペンを握り直し、その日の夜更けまで判決文を読み返していた。
「天の方々は、お茶の席がお嫌いなのかしら。お招きするたびに、ご都合が悪くなるのよね」
宛名欄を空けたまま書き上げた招待状を眺めながら。招待状は今も文箱の一番上で、出番を待っている。
エピソード
女大公の日常は、本人にとっては平穏そのもので、周囲にとっては事件の連続である。
風評と日常
- 「公王」たる重責を担う一方、状況に応じて「筆頭公爵」としての立場を強調しなければならず、「個人的に面倒」である旨表明した。
- 気に入った高官に対して自分のことをファーストネームで呼ぶ許可を与えた。恐れ多くて断られると悲しげなお気持ち表明を発し、側近を困らせる。
- 普段は構成国の政治に口を出さず、大人しい。ただし、一度動き始めたら末法であるとも言われる。
- 事あるごとに大統領の耳元で「お気持ち」を表明し、メンブレさせることに定評がある。人の心ないんか?
- 物腰が柔らかく、いつもニコニコしてるが、怒ると無表情になって無言の「お気持ち光線」を浴びせてきたりする。おそろしい。(
- それなりに高い教養を持ち、所作が上品。たまに砕けた口調で喋ることも。唐突に砕け始めるので側近から「心臓に悪すぎます」と指摘された。
- 気がついたら背後に立ってる。物理的な意味で束縛が強く、大統領から地縛霊呼ばわりされることも。
- 歩く破滅概念。冗談がきつく、人を苦しめるためのラインナップが豊富である。人を活かすための引き出しも豊富で方々に助言を与えた。
- 猫かぶりおばさん。一線超えるとめんどくさいので本性を知る者は基本的に誰もお近づきになりたがらない。意図せずアリウスの感心を引いてしまった高官の行く末は。。。
- 旧暦時代から訓練を欠かさず、適度に衛兵達と交流している。駆動剣術を極めており、凄まじく強い。
- 賭け事を嗜んでおり、多くの高官が餌食にされてる。負けたら素直に賞賛し、褒美を与えている。
- 現職大統領をペットのようにかわいがり、試練という名の独特すぎる愛情を注いでいる。
- 周囲の部下は主に自分好みのイケメン、イケオジで固めており、地獄のカップリングを演出する。
- 壁ドンされて赤くなる髭面や、顎を掴まれ恍惚の表情を浮かべるイケメンにドヤ顔。
- そんな野郎共に嫉妬の炎を滾らせる侍従官(メイド)がいたりなど、人間模様が色々と愉快らしい。
- 勝利の美酒を片手に人を弄ぶのが趣味で、よく転がしている。(被害者は主に大統領)
- 闘争競技において、惑星統括AIアンデラを本気にさせた。近年稀に見る大惨事に。
- フラウさんとの茶会で差し出された泉域産の自然茶葉を飲み干し、己の実存可能性を証明した。(?)
- 伝説の存在を女装させ、憔悴しきった現職大統領(魔法少女風)と並ばせる。地獄が生まれた。
- レルナルト・ヴィ・コックス大宰相をして、「この世の終わりのような女性である」と評された。
茶会の顛末
- 茶会の招待状に「服装自由」と書き添えたところ、出席した閣僚が全員喪服で現れた。女大公は一人ずつ襟元を整えてやり、その日の茶会を予定より三時間延長した。
- 茶菓子の焼き加減を当てる遊びを提案したところ、最下位に終わった閣僚が翌月から製菓学校に通い始めた。卒業制作の焼き菓子は女大公の茶会で正式に採用され、本人には今も政務より菓子の注文の方が多く届く。
- 茶会の席次表を作る担当官が、毎回こっそり自分の名を女大公から一つずつ遠い席へ移して提出していた。百回目の茶会で担当官の席は卓の外の芝生に達したが、女大公は芝生に二つ目の卓を運ばせ、担当官の向かいに自ら腰を下ろした。
- 砂糖壺の中身を塩に入れ替える悪戯を仕掛けた侍従を、女大公は咎めることなく、塩入りの紅茶を最後の一滴まで微笑んで飲み干した。侍従は翌朝自ら辞表を提出したものの受理されず、菓子係に昇格している。
- 終了時刻の書かれた招待状が一度も発行されたことがなく、出席の予定がある閣僚の間では、翌日の公務を午後から組む慣習が定着した。ある閣僚が終了時刻を尋ねたところ、女大公は、その場で茶会を閉じ、間を置かずに次の茶会を開いた。
公務の顛末
- 連邦評議会の審議で、筆頭公爵が一度も発言しないまま議事が終わった日があった。散会の後、出席者の半数が自らの発言を撤回する書面を提出し、議決は翌週にやり直しとなった。
- 連邦の公文書館が、筆頭公爵の怒声を収めた音声記録の提出を求められたが、該当する記録は一件も見つからなかった。代わりに提出された「最も怖かった沈黙」の記録は再生時間が四時間に及び、聴取した審査員の二名が途中で退席している。
- ロフィルナ王国の軍閥の長が、忠誠の証として私兵の名簿を献上してきた。女大公は名簿を一晩で読み終えて全員の誕生日に祝いの品を送り、私兵の過半数が軍閥を辞めて王都の衛兵に応募した。
- 公式行事の司会がうっかり「アリウスおばさま」と口走り、会場が凍りついた。女大公は壇上で一礼して「はい、おばさまです」と応じ、翌年から同じ呼び方で紹介するよう式次第を書き換えさせた。
- 外交の場で非を認めて頭を下げたところ、相手国の首脳も慌てて頭を下げ、互いに顔を上げる機会を譲り合ったまま長い沈黙が流れた。随行員の合図で同時に顔を上げる段取りが即席で組まれ、以後、両国の首脳会談には顔を上げる係が置かれている。
鍛錬の顛末
- 衛兵の腕相撲大会に飛び入りで参加し、決勝まで勝ち進んだ。相手が手加減していると見抜いた女大公は三度の再戦を求め、本気を出させた相手を一瞬で倒している。
- 式典用のドレスの背中が、手を振った拍子に裂けた。仕立て職人は背筋の動きを計算に入れた型紙を一晩で書き上げ、以後、女大公の礼服は全て伸縮する生地で仕立てられている。
- 定期の健康診断で医師が腹部を触診したところ、指が押し返され、医師の方が手首を捻った。診断書の所見欄には、受診者の異常の代わりに医師自身の負傷が記録された。
- 稽古用の模造剣を一日で全て折ってしまい、武具工房が新しい合金の開発に乗り出した。完成した剣は衛兵の間で「折れない剣」と呼ばれていたが、翌週の稽古で二本折れ、工房は再び徹夜に入った。
- 公邸の昇降機が故障した日、会議に遅れそうな老齢の評議員を背負って最上階まで階段を駆け上がった。評議員は議場に一番乗りしたものの、到着から半刻ほど、自分が何階にいるのかを把握できなかった。
批判
連邦国内での人気に留まらず、多くの指導者から高い評価を得ているアリウスではあるが、
メイディルラングなど一部の自由主義メディアからは
ロフィルナ王国を巡る厳しい批判を受けているのが現状である。また、
キルマリーナ政府の高官(後に更迭)もアリウスの動向に関して酷薄な策略家としての一面を指摘しており、「
フリートンや
コックスなどとは比較にならない最悪の怪物である」との見方が一部で広がった。尤も、このような報道は国際社会において広範な協力関係を持つ諸外国の利益に抵触する恐れがあり、言及自体忌避される傾向にあることから、政府間で一定の配慮を講じている説が有力視された。
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最終更新:2025年10月20日 23:42