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「小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。
すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、
地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。」

~新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章より~


◆  ◆  ◆



1万年前に、現代の生物学を覆した、「ある戦い」が起こった。
氷河期が終わって間もない頃、地上に53体の「怪物」が姿を現した。

クワガタムシ、カブトムシ、熊、鷲等、様々なモチーフを持つ彼等は、本能のままに殺しあった。

知恵と力を振り絞り、怪物達は殺し合い続けた。その度に一体、また一体が倒されて行き、
それを示すように彼等の腰にあった装飾品がパリッと開く。
その瞬間、上空に巨大な石版が出現し、倒された怪物の肉体を吸収した。

そして吐き出されたのは、その怪物のモチーフが描かれた一枚のカード。
今の人間が生み出した「トランプ」というカードに良く似たそれは、その怪物に勝利した一体の手に取られ、
一体はそれを己の戦利品と見なしまた他の敵を狩りに向かう。何故こうして、彼等は戦うのか。

答えは単純明快。それは全て、己の子孫の繁栄の為であった。

それが「バトルファイト」、生物達の「進化」への限りない欲望が生み出した、知られざる戦い。

殺し合う宿命にある怪物「アンデッド」は、最期の一体となるまで殺し合い続けた。
そしてそれをいつも上空から眺めていたのは、「バトルファイト」の首謀者にして、
「アンデッド」を生んだ巨大な石版モノリス、その名をアンデッド達は「統制者」と呼んだ。


◆  ◆  ◆


そして今、「人間」のアンデッドが勝利し人間の時代が始まっても尚も、
月の海の中で殺し合う数多くの英霊達を、同じように「統制者」は眺めていた。

一万年前のあの時と全く同じように、統制者は、このバトルロイヤルを調和し、
ゲームセットへと導く事を使命とし「裁定者」のクラスを以って現界した。

しかし此度の聖杯戦争において、統制者には、自分にとっては唯一許せない参加者がいることが唯一つ許せなかった。

剣崎一真―仮面ライダーブレイド―ブレイド・ジョーカー。

この男は、自ら第二のバトルファイトの参加者となることで「戦いを永久に長引かせようとし」、
そのせいで300年はバトルファイトはある種の休戦状態に。
自らと対をなす「破壊者」と手を組んでまで「ジョーカー」と「ブレイド・ジョーカー」を戦わせようとしたのにも関わらず、彼等はそれに抗った。

そしてその結果己は、彼等の刃の下に斬り伏せられ消滅し、バトルファイトは永遠の終結を告げた。それが進化を促した存在の最期であった。

だからこそ許せない、あの男が、剣崎一真が。何としても、あの男を、この戦いにおいて封印してやりたい。
そんな思いが、「統制者」の審判としての公平さに、歪みを生じさせた。


あまりにも「石版らしからぬ」その思いを胸に、「統制者」は真下からその男を見下ろしていた。
だが「統制者」はその性質上掟を破る真似は出来ない。しかし同時にその性質に僅かな亀裂が走っている、
このままこのモノリスが「裁定者」で在り続けるとはあまり断言できない。

果たして、このモノリスはこのまま公平なる審判であり続けるのか、

それとも復讐者であろうとするのか。

それはまだ、誰にも分からない。




【クラス名】「争」のルーラー
【出典】仮面ライダー剣(小説版も含めます)
【性別】無
【真名】統制者
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具EX


【クラス別スキル】

対魔力:EX
魔力に対する耐性。
神代の魔術を含めるあらゆる魔術を無効化する。
原初の存在に、魔術など通じるはずもない。



【固有スキル】


変化:A-
漆黒の悪魔の姿に変化できる。
ルーラーは、嘗て悪魔の姿に転身したという逸話が残されているが、
その際には「破壊者」との融合が必要であったため、ランクが下がっている。



自己保存:-
自身はまるで戦闘力がない代わりに、
あらゆる危機から逃れることができる。
ただし、悪魔の姿に変化した瞬間、このスキルは消滅する。



原初の一:EX
アルテミット・ワン。星のバックアップを完全に受け取り、霊脈と結合し魔力を無尽蔵に吸収、
更に己のみ抑止力が効かない様にしてしまう。




【宝具】


「捨てられた五十二の手札(シール・イン・ミスカード)」

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:20 最大捕捉:53

ルーラーが生前、バトルファイトから脱落したアンデッドをカードに封印した逸話から。
サーヴァントを吸収し、カード内に閉じ込める。閉じ込められた瞬間サーヴァントは脱落とみなされる。
第三魔法に相当するその力故にランクは規格外の数値を叩きだした。



「繁栄を求める不死の始祖達(バトルファイト)」

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:53

ルーラーが生み出した、地球上の全ての種族の始祖。自らが生み出した53のアンデッドを召喚することが出来る。
しかし、此度の聖杯戦争においてはどういう訳かダイヤスートとクラブスートのアンデッドしか生み出せずにある。
その代わり、別の並行世界に存在した「アルビノジョーカー」や、二体のジョーカーを貶める為の世界で生んだアンデッドなど、
オリジナルのアンデッドを作ることは出来るが、それらのアンデッドには不死能力が無い。



【人物背景】

生きとし生ける全ての生物の欲望が形となった、神であって神でない存在。
一万年前、53体の不死生命体「アンデッド」を生み出し、52の種族の何れかの繁栄か、それとも世界のリセットか、
それらをかけた「バトルファイト」を引き起こした存在。基本的にはねじれこんにゃくみたいなモノリスの様な姿で
行動し、テレポートで移動し、素手で殴られても粒子化したかと思えばすぐにまた現れる。バトルファイトの集結により
姿をくらましていたが、モノリスがある1人の資産家によって発掘され、全てのアンデッドが封印から解き放たれていても
暫くは発掘した男に従っていたが、その者が死んだ途端にバトルファイトの統制者としての行動を再開する。
そして、生き残ったアンデッドが、世界を仕切り直すジョーカーのカテゴリーを持つ者となった
瞬間、大量のダークローチを生成し世界を破滅に向かわせようとするが、
ある1人の人間がジョーカーとなりバトルファイトの参加権を手にしたことでバトルファイトを
再開と見なし、世界の破滅を一旦、終わらせる。
しかし、それから300年後、バトルファイトを強制的に再開させようと、
ある別の世界に二人のジョーカーを呼び寄せるも失敗。更には自らと対を成す「破壊者」と融合するも、
二人のジョーカーと、ジョーカーの接触に利用した二人の戦士によって消滅する。



【聖杯にかける願い】

バトルロイヤルの管理者となるべく生まれた統制者に願いなど無い。
だがそれでも、此度の聖杯戦争に現れた剣崎一真への憎悪は消えない。




◆  ◆  ◆



午後、帰宅の途に付く人が出始めた頃、駅近くの街にケータイショップがあった。
同じく帰宅途中であった【網島ケイタ】と、右手に握られている彼のバディ…セブンは、
偶然にも見かけたケータイショップで、ガラス越しにあるショーケースにある
「フラネット」が新たに発売したスマートフォン「ミゼル・ジーン」を眺めていた。

『ジーン…か…』

セブンが懐かしがるような声と、しかし訝しげな表情で呟く。
「ジーン」は、ケイタ、そしてセブンにとって忘れられない存在となった。

海外にいるロク、宇宙にいるネクスト、そして本来の用途とは異なるジャッジを除いた、
全てのフォンブレイバーが抹消されるきっかけとなったフォンブレイバー。
思えばジーンも、こうした格安値段で端末がばら撒かれ、
そしてそれら全てが並列分散リンクして大きな存在となっていった物であった。

デザインはやや未来的にイメージさせられる長方形の薄型。
ちょっと綺麗な、されど何の変哲も無いスマートフォン、という印象であった。

しかし、もっと注目するべきは値段だ。最新のスペックの割に本体料金はたったの980円(税込)、
スマホ業界においてはあまりにも破格過ぎる数値だ。

だが、ケイタとセブンが注目しているのはそんな物ではない、二人は、ショーケースの背景となっているフラネットの広告にある、
穏やかな顔を浮かべた青年の姿を直視していた。

「間明…」

『やはり奴も、NPCとして再現されていた、と言う事か…』

「何で気付かなかったんだよ、俺ら…」

「間明蔵人」、ケイタとセブンにとっては忘れられない相手だ。
並列分散リンクを行うために自分達アンダーアンカーに危害を加え、ゼロワンを殺し、
挙句世界までも巻き込もうとした男である。

アンダーアンカーが潰れ関係者全員が徹底的な事情聴取を受けている中、
彼だけはフラネットを捨てて行方を晦ましている…らしいが、まさかこんな形で相見えるとは。

「なあ、セブン。」

『む?どうした。』

「NPCって、皆に危害とか加えないんだっけ…?」

『そうだな、幾らこの男であろうと、 NPCである以上はあのような真似をするはずは無いだろう…多分な。』

◆  ◆  ◆


マスターがこうしている中、其処の近くにある、
街が見渡せる展望台の柵に手をかけているボロボロの紺色のジャケットを着た青年…剣崎一真もまた、
上空に、彼にとって忘れられない、あるものを眼にする。

「…統制者!?」

忘れもしない、天王寺が覚醒めさせ、始の意志を無視して世界を滅ぼしたモノリス。
時折ねじ曲がる巨大な石版の様な姿、その記憶は、300年経とうが剣崎の心にはしっかりしがみついていた。

此度の聖杯戦争において、「セイバー」のクラスを以って現界した剣崎は、
上空にいる統制者の姿に慄然としていた。それもそうだろう、あれは彼が「人間」であった頃に出会い、
そして自分や橘、睦月、そして始の運命に多大なる歪曲を齎した存在だ。

また、何かとんでもない事をするのか。それとも、アンデッドになった自分を追いかけてきたのか。
恐怖と驚愕の入り混じった表情となって、剣崎の恐れが露になっていく。

だがしかし、そんな彼の心境とは裏腹に、統制者は、剣崎のそんな気持ちなど察せず、直ぐに姿を消してしまった。
一瞬で、アニメで見るような忍者の如くドロンと、粒子化を初め上空にあるモノリスは姿を晦ました。

それでも、剣崎の中にあるモヤモヤは消えることは無かったが、その時。

「どうしたんだよ、セイバー。」

『酷い顔だな、一体何があった?』

近くにいた自分のマスター、網島ケイタと、
彼の右手に握られている喋るガラケー、「セブン」が、剣崎に声を掛ける。
剣崎はそれに咄嗟に気付き、ハッとケイタの方を振り向いた、未だ草臥れたような表情のまま。

「あ、いや、何でも…」

「本当に大丈夫か?」

『如何にも「疲れているような」表情だったぞ、汗も流れっぱなしだ。』

ケイタとセブンが表情を濁している中、剣崎も言葉を濁しながらも、その御蔭で我に返った。
ふと考えてみると、自分は今までもこうして「仲間」に救われてきた気がする。
自分がこうして1人で何でもかんでも背負い込もうとしている中、皆はそれを手助けしてくれていて、
だから、あの頃の自分は本当に幸せ者だったなと、尚更思い出させる。

そしてそんな気持ちが、剣崎を笑顔に呼び戻す。

「ありがとうな、ケイタ、セブン、俺なんかの事心配してくれて…でも、もう大丈夫だから、気にするなって。」

はにかんだ笑顔をケイタとセブンに見せる、1人と1機がそれを見てホッと息を着いた途端、ピロロロ~リリ~とセブンから着信音が鳴り響く。

『アンカー本部からのメールだ。』

セブンは一瞬でメールアプリを起動、受信ボックスから新着メールを開く。セブンの顔が表示されていたディスプレイには其処には「こう」書かれていた。





『GALAXに正体不明のプログラムが発現、現在セカンド、サード、フォースが対処を行っていますが、作業は依然困難を極めます。
至急網島君とセブンも本部に向かってください。


                                      アンダーアンカー本部長   美作千草』




「今度はGALAXかよ…」


「GALAX」といえば、巷で大流行しているソーシャル・ネットワーキング・サービスである。
アメーバピグやLINE、mixi等も、今ではその影に隠れているほどに大人気なスマホ用のアプリケーションだ。

質問は全て「X」というアプリが解決、アプリの所有者で力を合わせ社会の様々な問題を解決していく、
そんな画期的過ぎる素晴らしいアプリケーションだ。ケイタも一応スマホは買い与えてもらっているが、
仕事で愛用しているのがこの太いガラケーなので、少なくともインストールはしていない。

そして先程、其処のサーバーに未知のウィルスプログラムが侵入した、との情報だ。
見た所そちらのサーバーのファイアウォールも鉄壁のそれだったが、そのウィルスプログラムはどういう訳か容易くそれを突破、
このSE.RA.PHにおいて、セカンド、サード、フォース等の大破したはずのフォンブレイバーは生存しており、
未だ高校生ののケイタにもある程度暇が出来るぐらいにはシステムの制圧やフォンブレイバーの実験は間に合っていた。、

それでも対処が難しいというのだ。

「とにかく、急がねぇと!」

ケイタは直ぐにセブンを閉じ、本部に向かって足を急ごうと街の歩道を走り出す、剣崎もそれを追う。




◆  ◆  ◆


『世界をアップデートするのはヒーローじゃない、僕らだ。』

街中の広告板に張られている世界的SNS「GALAX」のキャッチコピーが、それだ。
GALAXは基本的には、従来のSNSアプリケーションとは大差なく、
アバターを会話させてコミュニケーションを取る、という物でしか無い。

しかし、このGALAXには、極めて特異なそれがあった。
このシステムは、1人が抱える些細なトラブルから、ニュースに載るような事件に至るまで、
アプリの利用者同士がネットワークを通して協力する、という機能があった。

アプリケーションの管理プログラム「X」が解決法を導き出し、それを利用者に教え事を解決する、
「ネットワークを通して協力し合う」という、「世界を改革した」というべきシステムだ。

そしてそのアプリケーションを独自に作成したとされる少年、【爾乃美家累】は今、
自宅の高級マンションのリビングにて驚愕の表情を浮かべていた。
何が起きたか、というと、いつもなら眼の前の巨大ディスプレイで
「GALAX」に関して起きている出来事を伝えているはずの「総裁X」に異常が起きているのだ。

累のいつもの落ち着いた雰囲気は崩れ、
全身に冷や汗がだくだくと流れていた、有り得ない事であった。

「X」がクラックされると言う事は、絶対に。
人々の「改革」への道標となる存在であるXは、いかなる方法で入ってこようと、
即席のファイアウォールを瞬間的に作成し抜け穴を封鎖してしまう…はずだった。
だが、今のXはどう考えても異常状態にある、地球を表す球体の色はワインレッド、それもノイズがブツブツと入っている。

「どういう事だ…おいX!X、返事をしてくれ!」

『I am Mizell,I am Mizell,I am Mizell.....』

「ミゼ…ル?」

「ミゼル」という言葉を反芻し続けるXを前にして累は呆然としながらも、自らの詰めの甘さが憎く思えた。
しかしその時、ブゥンという効果音とともにディスプレイの映像が切り替わる。

其処に映っていたのは、はにかんだ笑顔を見せた青年であった、
累はその顔を知っている。

「間明、蔵人…」

『やあ、初めまして…と言った方が良いかな?爾乃美家累君。』

【間明蔵人】、近頃、超格安スマホ「ミゼル・ジーン」を発売し
急激に業績を伸ばしているとされている、携帯電話会社「フラネット」の若社長。

新聞を読んでいれば一回は目に着く程知られている男だし、
一応ではあるもののその業界の人間である累が知らないはずがない。
何故、よりにもよってこの男が、自分の前に。

『どうしても君とは直接話がしたかったんだけれど、君は常にXに応対を任せているというのがどうも残念でね、
彼には少し眠ってもらったよ。安心してくれ、用が済んだらすぐに元に戻すから。』

「…!貴方がこの一件を!」

「私はミゼル」、「総裁X」が呟いたこの言葉、
確かにこの男が売っている「ミゼル・ジーン」とかけ合わせれば、話は付く。
あまりにも直感的な結論だが、これもまた、彼が一ノ瀬はじめから受けた影響だからだろうか。

『まあ落ち着いてくれ爾乃美家君、ほんの少しだ、ほんの少しだけ質疑応答をさせてもらいたい、僕はただ、君の考えが知りたいんだよ。』

「僕の考え?…それなら、GALAXのキャッチコピーを…」

『「世界をアップデートするのはヒーローじゃない、僕らだ」、でしょ?知っているよ、
何せ殆どの広告バナーを独占している言葉だからね。爾乃美家君、僕はそれについて問いたいんだ…
いや、君の「考え方」について知りたいんだ、「GALAX」を使って、世界を変えた、君の考えが。』

累の眉間に皺がじわじわと寄せられ、それに反比例して画面越しに映る
間明の笑顔は少しずつ明るくなっていく、
累にとってこんな人物は類を見ない、強いて言うならあの
「ベルク・カッツェ」の同類、と言った方が良いだろうか。

『君が作った「GALAX」は、福祉医療からちょっとした事故に至るまで、多種多様な所で活躍し、
今の社会は「GALAX」によって構成されていると言ってまず差し支えないだろう、だが考えたまえ爾乃美家君、
もしだ…フフフ、もしもだよ…。』

画面に映って熱弁している間明は、何かしら笑いを堪えているように見えていた、そして丁度、累も1つ確信を覚えた。

―ああ、この男は狂っている、と。

『もし…君のGALAXが崩壊したら、世界はどうなると思う?』

恍惚たる笑みを浮かべた間明の口から吐き出された言葉は、正しく狂人のそれ、しかしその瞬間、
それまで間明の顔のみが映し出されていたディスプレイに小さなウィンドウが出現、
其処には「X」を失った事でパニックを起こした者達が大勢いた。

累はそれを見て立ち尽くすしか無かった。


◆  ◆  ◆


「あれ?何で使えねえんだよ『X』。」

GALAXの象徴となる「X」が乗っ取られた事で、勿論それは数多くの利用者にも被害は及んでいた。
【佐藤和真】もその1人であり、先程までポテチ片手に自室でスマホを弄りながら「GALAX」で情報収集を行っていた。

しかしやはりというか大した成果は得られなかったが、それでもやはり出来る限りの事はカズマもしたかった。
自らのサーヴァント、ランサーは遠距離の物も容易く見渡すことが出来る千里眼の持ち主であったが、
それでも視野の外にあるサーヴァントを探すのは困難、なので自分はネットで目ぼしい情報を探し当てて行動することにした。

今回も、何かを「X」に聞こうとしたら、このザマだ、幾らXボタンをタッチしても全然反応しない。
「X」が使えなくて何がGALAXだ、とっとと運営仕事しろよ、と言いたくなる。

しかし冒険者に転生して暫く経つが、やはりというか舞台が舞台なのであの世界とは行動を切り替え無くてはならない。
ギルドも無ければ、あの愉快な仲間達もいない、いるとしたらあの学ランを着たランサーだ。まぁ、十分すぎるほどに頼もしいからいいが。
それに魔法が使えてネットが使えるというのは悪くない、金もクエストで稼ぐ必要なし(こらそこ、親のすねとか期間限定の金じゃないかとか言うな)。
中々悪くはない、ネットに関しては、GALAXの「X」が使えなくなったのは痛手だが、それでもGALAXは一応ただのSNSとしても便利過ぎる程使えるアプリだ。

(っても、全ッ然入らねぇよなぁ…情報。)

ハッキリと言わせてもらうと、カズマはこの世界に居座るつもりも無ければ、願いを叶えるつもりも無い。
強いて言うなら脱出方法を知りたいのだ。だがスマホをパチパチして抜け出せるのなら苦労はしないだろう。

(はぁもう最悪…)

溜息をつきながらも、取り敢えず宝具を使って辺りを見回しているランサーに念話をかけてみる。

『ランサー、誰かマスター見つかったか?』

『…数人ほどは目についた、この家に来るかどうかは知らねぇがな。』

『サンキュー、後でそのマスターの特徴とか教えといてくれ。』

念話を済ませた後、カズマはまた袋からつまみ出したポテチを口の中に入れ、
咀嚼しながらまたスマホを手にとった。

(そろそろランサーが見たいって言ってた相撲の時間だよな…)

と思ったその時だった、漸くGALAX運営からの通知が入った。

やっとかよ、とカズマは溜息をついた。


◆  ◆  ◆


「えっと…Xに不調…?」

【橘ありす】は、自室でタブレット端末でGALAXを操作し、其処のメッセージボックスに届けられた運営からのお詫びを見て、
少し残念な気になった、「GALAX」といえば「X」という程これは重要なアプリだが、これが使えなくなるのはやや辛い。

だが、どのアプリケーションにおいてもバグが起こるのはしょっちゅうあることだ、パッチが配られないアプリの方が寧ろ珍しい。
その内直るだろうと考え、ホームボタンを押した後ブラウザを起動してもう一度銃の撃ち方を読みなおそうとしたその時である。

『トナカイ、お前の作ったいちごパスタ、中々美味く出来ていたぞ。』

自らのサーヴァント、キャスターの念話が届く。両親がいない間、先程作ったありすの料理をキャスターは平らげていた。
苺と苺のムースをパスタのトッピングに使ったありすのパスタは、料理本を読みかじった彼女が作った自信作であるが、
気に入ってもらって良かった、とありすは思った。

『そう、良かった。』

キャスターにそう返事を返すと、もう一度タブレットを手に取りブラウザを起動し、一旦机にあるコンテンダーに目をやった後、
直ぐにタブレットに書かれている文章に目を通す。生半可な気持ちでは生きて此処からは帰れない。それはありすも重々承知していることだ。

ならばどうするか、キャスターが教えてくれた答えは1つ。「生き残れ」だ。その為にも、この銃の扱いにもある程度慣れなければならない。
そう思い、ありすは勉強机にある銃を取り上げ、タブレットの説明を読みながら構え方を練習し始めた。

◆  ◆  ◆

「何ですって!?Xが動作不良?」

運営からのメッセージを苛立った表情で睨みつけて【逸見エリカ】もまた、自宅でネットサーフィンの傍ら、スマートフォンで情報収集に徹していた。
戦争とは、より相手の事を知るものこそが長生き出来る、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というが、まさにその通りである。
そしてそれは戦車道においても、聖杯戦争においても変わりはしない。

だが現在、インターネットで収集できている情報は、

「GALAX」の「X」がやられて半ばパニックとなっていること。
「鬼兵隊」と呼ばれるテロリストが幅を聞かせていること。

ほんのそれだけだ、まだまだ敵の事を知らなさ過ぎる。まだまだ調べる必要がある。
そしてその為にも「X」をうまく使って良い話を手に入れようとしたら、こういう有様だ。

「何をやっているのよ!運営の人間は!」

もうダメだ、ネットは一旦お預けだと、エリカは叫びながらそう考えた。
エリカのインターネットを使った情報集めは、あくまで趣味の範囲内にすぎない、勿論ハッキングなんて真似事は難しいであろうし、
そもそもこういうのも気休めなのではないのか、やはり眼で直接調べていった方が良い。

(一旦街に出た方が良いかしらね…)


エリカはそう考えると、勉強机からスクッと立ち上がった。


◆  ◆  ◆


(Xが不調…これだと今の所GALAXの力を借りることは難しい…か…)

中学校の剣道場、ヤァ、メンといった掛け声とカンカンと竹刀がぶつかる音が喧しく響き渡るこの木で仕切られた空間で、
素振りをしている新入部員の【能美征二】は、加速研究会から借りた「BIC(ブレイン・インプラント・チップ)」を使用して
ネットを密かに使用していた。

今道着でうまく隠してあるニューロリンカーとは異なり、これはバレずにネットにアクセスすることが可能となる。
お陰様で能美は学業ではトップクラスの成績を取ることが出来た、全教科満点、文字通りの完璧だ。

今の能美は知る由もないであろうが、このBICはブレイン・バースト喪失の瞬間消滅する様に細工されていた物であった。
だが彼がポイント全損の直前の時期からムーンセルへと飛ばされた影響で、このBICも生きていた、と言う事になる。
そしてBIC、及びニューロリンカーはどういう訳か、此処ではスマートフォン時代の旧型アプリもインストール出来る様になっていた。
いや、元々理論上は可能だったのかもしれないが。

そのBICを使って、能美が使用していたアプリケーションの代表が「GALAX」だ。「X」というアプリで万事を解決する素晴らしいシステム。
それを能美はかなりの頻度で使用していた。此処の舞台は2010年代になるそうだが、その40年後の未来からやってきた能美からしても
このアプリは驚くべき代物だ、恐らくは「ブレイン・バースト」といい勝負であろう。

そのGALAXが駄目になった、という。基本的に気にする必要は無い、何せスマートフォンの時代において、アプリのバグと、
それを埋めるためのメンテのイタチごっこ等しょっちゅうある話だ、それは歴史の授業で習っている。
何れ直るだろう、と能美は直ぐに開き直った。

その時、自分の名前が、顧問の声から出た、そろそろ出番だ、と能美は思い、直ぐに防具を装着し相手の前に構える。

「始め!」

顧問の合図が発された瞬間、何時も通り能美は直ちにブレイン・バーストを起動し、コマンドを心内で叫ぶ。

(バースト・リンク!)

その瞬間、彼の思考は常人の千倍と化した。相手の動きはたちまちスローになり、振りかざした竹刀は動きを鎮めた。
彼の視界は、まるで世界が静止したかのように見えてきた。この間に、彼は戦略を立てる。
「バースト・リンク」、ブレイン・バーストを所持する人間のみに許される加速の力。それが能美征二の剣を形作っている。
最も、それは一種のドーピングと変わらない戦法だが。

気がついた時には、相手選手は一本を取られてしまっていた。まるで自分の剣を読み取られているような動きだった彼の剣に、
今だに混乱しているのだ。

その後能美が対戦相手と互いに視線を合わせ、礼をした直後だった。

「へえ、結構凄いね、その剣。」

不意に、道場の扉から少年のような声が響く。一斉がそれに振り向き、その顔を見た直後に、ここにいる部員は全員直ぐに頭を下げた。

「「押忍!」」

能美もそれに気づいて直ぐに合わせた、何せこの声の正体は、此処にいる人間の殆どは知っている顔であったからだ。
それも頭を下げなくてどうする、という様な存在である。

「いいよいいよ、そんなに畏まらなくても。」

笑いながら手を振る少年の名は【瀬田宗次郎】、この中学のOBにして、1年にしてこの剣道部の主将となった逸材である。
どういう訳か一昔前の袴を着て脇差し(のレプリカ?)をさしているというあまりにも時代錯誤な格好。
そして、まるで貼り付けられたかのように不自然に絶やさぬその笑顔、あまりにも変わり者という言葉が似合うのが、
この少年の出立ちであった。


全国大会で「天剣」と呼ばれ恐れられ、数々の高校から寄せられた推薦を全て蹴飛ばして引退直後に姿を消したとされる宗次郎。
そのロール上の設定における宗次郎の実力が、志々雄真実の元を去る直前の彼の腕には到底及ばないことは、彼を除いて知る人なし。

ともかく宗次郎は、こうして剣道部の面倒を時折見に行っていた。別に後輩が可愛い訳じゃない。只の、ほんの一時の気まぐれに過ぎなかった。
感情を持たぬ前に、歴史に埋もれた志々雄真実に見初められ、あの大久保利通を斬り、かの人斬り抜刀斎と互角に戦った宗次郎にとっては、
道場を見に行くというのは公園で小学生のサッカーの試合を眺めるような感覚ではあったが、しかし時々、興味深い後輩を見つけることがある。


ふと、宗次郎は能美に声を掛ける。

「ねえ、確か君、新しく入った後輩だったっけ?」

「はい、今年入部した能美征二です、よろしくお願いします。」

能美はその声に気付き、飾りつけた可愛らしい態度で即座に反応した。
オォ、と一部から声が漏れた。1年であの天剣に声をかけられたなど凄いものだからだ、当然であろう。

「君の剣、見せてもらったけれど、本当に凄いよ。」

更に周囲がざわつき始める、1年で、況してや全国を軽く破る程の実力者に見初められた等快挙そのものであった。
能美も当然誇らしげに宗次郎の顔を見つめる、しかし次の言葉でその自信のある顔は崩れる音を立てた。

「君の剣は、まるで未来を先読みしているように見えていたよ、まるで糸の縫い目を素早く見分けるような動作、
とても並の人間の頭では難しいやり方だ、あんな芸当は僕も驚くよ。」

「瀬田先輩に褒めていただき、誠に光栄です、ありがとうございます。」

能美は丁寧な態度で返したが、しかし心内では驚いた。
誉められるのならまだしも、タネがバレていないとはいえまさか「ブレイン・バースト」による思考加速を使った戦い方を見破られるとは。
況してや彼は当然「ブレイン・バースト」の存在も知らない、そんな事は前代未聞だ。恐らく、いや確実に彼は只者ではない、
もしこの男が加速世界にいたらレベル9の王達も只では済まないのではないのか、と能美は一瞬思ってしまった。


◆  ◆  ◆


そんな中、既にサヨウナラの挨拶を教室で行い自宅へ向かう所謂「帰宅部」の生徒達は、明るく談笑を交わしながら帰宅の途についていた。
その中にも当然、手の甲に赤い紋章を宿した人物は幾らかはいた。



                                    【初めの一捲り~「飢」の章~へと続く…】




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プロローグ 「争」のルーラー(統制者)
網島ケイタ&セイバー 網島ケイタ 網も丸まれば繭となる
セイバー(剣崎一真)
指導者たち 爾乃美家累
ライダー(フル・フロンタル)
間明蔵人&ライダー 間明蔵人
ライダー(ミゼル)
このロクでもない戦争から生還を! 佐藤和真 強い戦車も後ろは弱い
ランサー(空条承太郎)
虎よ、虎よ 逸見エリカ
アヴェンジャー(エドモン・ダンテス)
ありす・いん・ないとめあ 橘ありす 裏切りの魔女「お前らちょっとそこ座れ」
キャスター(ナーサリー・ライム)
能美征二&ランサー 能美征二 無秩序な切っ先
ランサー(スカルナイトモン)
明治剣客浪漫譚異聞録 瀬田宗次郎 邂逅
アサシン(シルベストリ)
最終更新:2016年11月09日 06:03