これは、二回目の放送が始まる前の出来事。
ウタが、とにかく今は身体を取り戻さなきゃと、行動を開始して直ぐのことだった。
轟音が響いた。
彼女のすぐそばで、巨大なモノが倒れるような大きな音が。
彼女が察したのは、既に戦闘が始まっていることと、その下手人が強力な力を持っているであろうこと。
ウタはシャンクス達と航海していたからよくわかる。
モノをぶって音を鳴らすのと壊して音が鳴るのではまるで違う。
破壊ということは対象のモノの耐えられる力を越えられるということであり、ただ道具なり素手なりでぶって音を響かせるのとは比べ物にならない。
彼女の脳裏に過るのは逃走と停滞。
逃走。
ウタには戦闘経験がない。あるのは、ウタウタの実に支配されているウタワールドでの絶対的な優位での蹂躙か、幼い頃のルフィとの子供じみた小競り合いくらいである。
いま、この会場にはそれらのような身の安全を保障されるものがどこにもない。
なにがなんでも身体を取り戻そうと決めているウタにとっては、ここで要らないリスクを背負う必要はなく、即座に逃げるのは決して間違いではない。
ウタには戦闘経験がない。あるのは、ウタウタの実に支配されているウタワールドでの絶対的な優位での蹂躙か、幼い頃のルフィとの子供じみた小競り合いくらいである。
いま、この会場にはそれらのような身の安全を保障されるものがどこにもない。
なにがなんでも身体を取り戻そうと決めているウタにとっては、ここで要らないリスクを背負う必要はなく、即座に逃げるのは決して間違いではない。
停滞。
ウタという少女は、人の死を許せない。
生死観こそ常人と異なれど、敵味方関係なく、目の前でたった一人でも瀕死になれば大いに動揺し冷静さを欠いてしまうほどに。
それは元来の性格か或いはかつてのトラウマか。
答えを知る者はいないが、誰かが争っているのであれば命を落とす前に止めたいという想いが足をその場に縫い留める。
ウタという少女は、人の死を許せない。
生死観こそ常人と異なれど、敵味方関係なく、目の前でたった一人でも瀕死になれば大いに動揺し冷静さを欠いてしまうほどに。
それは元来の性格か或いはかつてのトラウマか。
答えを知る者はいないが、誰かが争っているのであれば命を落とす前に止めたいという想いが足をその場に縫い留める。
逃走か。
停滞か。
停滞か。
その戸惑いが、彼女の足を止め、これからの運命をも変えてしまう。
ほどなくして、彼女の前に男が現われた。
その姿を視界に映した瞬間、ゾワリと全身の産毛が逆立ち肌が粟立つ。
現われた男は、巨大だった。
質実剛健を体現するかのような静謐な髭と顔立ち。
ウタの知る中でも大きな体躯の持ち主、ハウリング・ガブを優に超える巨体。
右手には湾曲した鉈のような大剣。
左手には刺すことに特化した巨大な三叉矛。
全身から放たれるプレッシャー。
その全てが見る者を萎縮させ、敬服を誘発させる。
だがそれ以上に。
ウタの目を引き付けるのは———隠すことなく曝け出された、股間のデッケェ『フルチン』である。
(うわ、スッゴ...でっか!!)
重力に従い頭を垂れるソレは、まだ彼が微塵も本気を出していない証左。
にも関わらず、幼き頃に男所帯の中で過ごしてきたウタの知る中でも最も大きなソレは、年頃の娘相手にも威厳を醸し出し、悲鳴をあげるという選択肢すら奪い去る。
「娘」
「へっ、あっ、なっ、なに?」
頭上よりかけられる声に、ウタはハッと我に返る。
「私は...上弦の壱『黒死牟』...貴様も...名を名乗れ...」
「あっ、えっと...あたしはウタ。映像電伝虫であたしの歌とか聞いたことないかな、ほら、新時代とか...」
「知らん」
「あっ、えっと...あたしはウタ。映像電伝虫であたしの歌とか聞いたことないかな、ほら、新時代とか...」
「知らん」
ばっさりと切り捨てられたことにシュンと気持ちが萎えるウタ。
一方で、男、黒死牟は彼女を見て一考する。
一方で、男、黒死牟は彼女を見て一考する。
(この娘...上弦という肩書にも反応はしなかった...鬼殺隊でもなければ...鬼でもないか...)
黒死牟はこの殺し合いに乗っても構わないと思っている。
だが、参加者が全員肉体と精神を入れ替えられているとのことから、彼は敢えて初手で斬りかかることはしなかった。
主たる無惨までもが巻き込まれ、己よりも脆弱な肉体を与えられている可能性を考えていたからだ。
万が一にも初手から斬りかかり、もしそれが無惨であれば、己の主を手にかけることになる。
そんなことになれば目も当てられない。
また、もしも鬼殺隊の面々であれば、上弦の鬼である自分に闘志を燃やし少しは楽しい戦いができるかもしれない。
だから、こうして踏み絵の如くまずは名乗りから入ることにしたのだ。
だが、参加者が全員肉体と精神を入れ替えられているとのことから、彼は敢えて初手で斬りかかることはしなかった。
主たる無惨までもが巻き込まれ、己よりも脆弱な肉体を与えられている可能性を考えていたからだ。
万が一にも初手から斬りかかり、もしそれが無惨であれば、己の主を手にかけることになる。
そんなことになれば目も当てられない。
また、もしも鬼殺隊の面々であれば、上弦の鬼である自分に闘志を燃やし少しは楽しい戦いができるかもしれない。
だから、こうして踏み絵の如くまずは名乗りから入ることにしたのだ。
では、無惨でもなければ鬼殺隊でもない相手にはどうするか?
決まっている。
「剣を抜け...小娘...」
戦い屠るだけだ。
「ッ...!」
「ここは殺し合い...然らば...当然だろう...」
「あんた、殺し合いに乗るの!?」
「戦は嫌いではない...勝たねば帰れぬのなら...避ける謂れも無し...」
「ここは殺し合い...然らば...当然だろう...」
「あんた、殺し合いに乗るの!?」
「戦は嫌いではない...勝たねば帰れぬのなら...避ける謂れも無し...」
これ以上の言葉は不要、と言わんばかりに黒死牟は右手の大剣を頭上に振り上げる。
ただそれだけの動作で、ウタは己の死を予感させられる。
ただそれだけの動作で、ウタは己の死を予感させられる。
間違いない。
ここで動かなければ、この大剣は容赦なく自分を両断する。
わかっている。
わかっているのに、ウタの身体は震えるだけで動いてはくれない。
ここで動かなければ、この大剣は容赦なく自分を両断する。
わかっている。
わかっているのに、ウタの身体は震えるだけで動いてはくれない。
殺意。
ウタという少女は、大波乱の大海賊時代に産まれながらも、今まで誰にも高濃度な殺意を向けられたことがない。
幼き頃の航海中の海戦では、現場を目撃しないようにシャンクス達に大層大事に船室へ避難させられ。
エレジアでのトット・ムジカによる住民虐殺中には彼女は気を失っていて。
ライブに乱入してきた海賊たちからは景品扱いであり、且つウタワールドの中であるため命の危機には程遠く。
現実世界での海軍たちも、世界の歌姫という立場もあってか、まだ威嚇で済ませる程に手心が加えられていた。
ウタという少女は、大波乱の大海賊時代に産まれながらも、今まで誰にも高濃度な殺意を向けられたことがない。
幼き頃の航海中の海戦では、現場を目撃しないようにシャンクス達に大層大事に船室へ避難させられ。
エレジアでのトット・ムジカによる住民虐殺中には彼女は気を失っていて。
ライブに乱入してきた海賊たちからは景品扱いであり、且つウタワールドの中であるため命の危機には程遠く。
現実世界での海軍たちも、世界の歌姫という立場もあってか、まだ威嚇で済ませる程に手心が加えられていた。
そんな彼女の身体には、怒りもなく憎悪も無い、純然たる殺意と突きつけられる死の未来は重すぎた。
大剣が振り下ろされる。
動けない。
切っ先が迫ってくる。
目を瞑り現実から逃避する。
剣が彼女の髪の毛に触れ
「ドラァッ!!」
叫びと共に甲高い音が鳴り、黒死牟の身体が後方へと弾かれ、ウタは思わず尻餅を着いてしまう。
「間一髪ってのはこういうことを言うんだろうなぁ~」
聞こえてきた声に、ウタは瞑っていた目を恐る恐る開ける。
目に飛び込んできたのは、ズル剥けの赤黒い肉棒ではなく、小さく青白い体躯。
目に飛び込んできたのは、ズル剥けの赤黒い肉棒ではなく、小さく青白い体躯。
「おい、大丈夫かあんた!?」
「———ッ!」
「———ッ!」
くるりと振り返れば、そのくりくりとした大きな目と小生意気なギザ歯が向けられる。
その姿、まさに子供向けにデザインされた人形。
そんな彼にウタは。
その姿、まさに子供向けにデザインされた人形。
そんな彼にウタは。
「か...」
「か?肩でも痛め———」
「かわいいいいいいいいい!!!」
「か?肩でも痛め———」
「かわいいいいいいいいい!!!」
今までの緊張感が嘘だったかのように、頬を緩めて抱き着いた。
「どわーッ、なんだよ急に!?」
彼———東方仗助は、ハートマークを浮かべんほどに抱き着いてくるウタに大いに困惑する。
仗助は女子生徒にけっこうモテる。少なくとも不良のようなスタイルだからって毛嫌いされることはない。
しかし今しがた命の危機に陥ったばかりの少女にこうもすり寄られるのは予想外である。
仗助は知る由もないが、今の彼の身体であるアンチョビ究極体は、女子のみならず男子にも通用する癒し体である。
つい先ほどまで残虐ファイトを披露していたアンチョビ相手にも関わず、実況解説のポー、更には対戦相手であるTボーンやコロッケですらメロメロにしてしまうほどに。
そんな可愛さの塊であるアンチョビ究極体が窮地に助けてくれたとなれば、可愛いもの好きのウタが夢中になってしまうのもさもありなん。
仗助は女子生徒にけっこうモテる。少なくとも不良のようなスタイルだからって毛嫌いされることはない。
しかし今しがた命の危機に陥ったばかりの少女にこうもすり寄られるのは予想外である。
仗助は知る由もないが、今の彼の身体であるアンチョビ究極体は、女子のみならず男子にも通用する癒し体である。
つい先ほどまで残虐ファイトを披露していたアンチョビ相手にも関わず、実況解説のポー、更には対戦相手であるTボーンやコロッケですらメロメロにしてしまうほどに。
そんな可愛さの塊であるアンチョビ究極体が窮地に助けてくれたとなれば、可愛いもの好きのウタが夢中になってしまうのもさもありなん。
(い、いや、こんなかわいい子に抱きしめられるのは悪い気分はしねえけどよぉ...)
仗助は健全的な思春期男子だ。
見た目可愛い女子に触れられれば普通に喜ぶし照れながらもイイ気分になる。
だが、状況が状況だ。
見た目可愛い女子に触れられれば普通に喜ぶし照れながらもイイ気分になる。
だが、状況が状況だ。
「いまはそれどころじゃあねえんだ...なあ、おっさんよぉ」
ウタを腕で除けつつ、仗助は黒死牟と向き合う。
「うむ...その体躯に見合わぬ膂力...実に興味深い...名はなんという...」
「東方仗助。そういうあんたは」
「私は...上弦の壱『黒死牟』...」
「こくしぼう...イカス名前じゃあねえか。尤も、丸腰の女の子に斬りかかるなんざ、名前とその立派なモンに比べてチト女々しいと思うがよぉ~」
「東方仗助。そういうあんたは」
「私は...上弦の壱『黒死牟』...」
「こくしぼう...イカス名前じゃあねえか。尤も、丸腰の女の子に斬りかかるなんざ、名前とその立派なモンに比べてチト女々しいと思うがよぉ~」
仗助は煽りつつ、普段の癖で櫛をズボンから取り出そうとして、そういえばいまの自分は服も来ていなければ髪もないことを思い出して止めた。
「くそっ、髪の毛セットしねえとなんか落ち着かねえぜ...おい、あんた。名前は?」
「あたしはウタ」
「ウタちゃん。向こうの小屋に俺の仲間を待たせてる...ワリィが、そいつのところに行っててくれねースか」
「...!」
「あたしはウタ」
「ウタちゃん。向こうの小屋に俺の仲間を待たせてる...ワリィが、そいつのところに行っててくれねースか」
「...!」
ウタは思わず息を呑む。
この子は自分を助けに来てくれた。それ自体は嬉しいことで、身体を取り戻すためにも非常に助かることだ。
けれど、彼はあの男を引きつけ自分だけ逃がそうとしている。その意味がわからないほど、ウタも馬鹿じゃない。
その不安を察した仗助は、安心させるようにフッと口元を緩めて笑いかける。
この子は自分を助けに来てくれた。それ自体は嬉しいことで、身体を取り戻すためにも非常に助かることだ。
けれど、彼はあの男を引きつけ自分だけ逃がそうとしている。その意味がわからないほど、ウタも馬鹿じゃない。
その不安を察した仗助は、安心させるようにフッと口元を緩めて笑いかける。
「別に犠牲になろうとか思ってるわけじゃねースよ。あんたに万が一のことがあったらヤダなぁっつーお節介心が湧いちまっただけだ」
「でも...悪いよ。お互い、なんにも知らないのにこんな、危険なこと...」
「それをこれから知る為に、お互い頑張ろーぜ...って考えるのはどースかね?」
「でも...悪いよ。お互い、なんにも知らないのにこんな、危険なこと...」
「それをこれから知る為に、お互い頑張ろーぜ...って考えるのはどースかね?」
その言葉にウタはぐっと唇を噛み締める。
少し会話をしているだけでも、この仗助という子が優しい人間だというのはよくわかる。
危険を自ら引き受けて。
こっちの重荷にならないように言葉を色々と考えてくれて。
少し会話をしているだけでも、この仗助という子が優しい人間だというのはよくわかる。
危険を自ら引き受けて。
こっちの重荷にならないように言葉を色々と考えてくれて。
言い換えれば。
彼は自分に対してなにも期待などしていない。
当然だ。
自分が支配するウタワールドの中でもなければ、自分の身体でもない。
いまの自分はただの歌が上手いだけの女の子。
彼は自分に対してなにも期待などしていない。
当然だ。
自分が支配するウタワールドの中でもなければ、自分の身体でもない。
いまの自分はただの歌が上手いだけの女の子。
求められた役割すらこなせないハリボテの救世主。
『助けてよウタ』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
今まで何度も求められた言葉が、重荷になっていたはずの言葉が、今は誰からも求められない。
あれだけ多くを犠牲にしたくせに。あれだけ多くの人に迷惑をかけた癖に。
一歩違う場所にくれば護られるだけのお荷物でしかない。
あれだけ多くを犠牲にしたくせに。あれだけ多くの人に迷惑をかけた癖に。
一歩違う場所にくれば護られるだけのお荷物でしかない。
それがかえってぽっかりとウタの胸中に穴を空け、胸を苦しくさせる。
「ごめん...ごめんね...!」
ウタは今にも泣き出しそうな顔で、仗助の示した方角へと走り始める。
「...?」
そんなウタの背景など知らぬ仗助にとっては、その意味が全くわからなくて。
そして。
その意味を推し測る暇も、時間は許してくれない。
そして。
その意味を推し測る暇も、時間は許してくれない。
「話は...済んだか...」
「ああ。ちゃんと待っててくれるなんざ、思ったよりも律儀じゃあねーか」
「かような弱者...私が下さずともすぐに散る...然らば興味深いお前に意識を注ぐのみ...」
「...もうちっとカッコイイ理由だったらこっちも色々と考えたけどよ。あんたにゃあ遠慮っつーモンは必要なさそうっスねぇ~~!!」
「ああ。ちゃんと待っててくれるなんざ、思ったよりも律儀じゃあねーか」
「かような弱者...私が下さずともすぐに散る...然らば興味深いお前に意識を注ぐのみ...」
「...もうちっとカッコイイ理由だったらこっちも色々と考えたけどよ。あんたにゃあ遠慮っつーモンは必要なさそうっスねぇ~~!!」
黒死牟が構える前に、仗助は地を強く踏み込み地面を蹴る。
繰り出されるは、アンチョビの身体から放たれる彗星の如き高速の跳び蹴り。
繰り出されるは、アンチョビの身体から放たれる彗星の如き高速の跳び蹴り。
「ドラァッ!!」
雄叫びと共に放たれる蹴りを、黒死牟は大剣で受け止め踏みとどまる。
先ほどは不意打ちのために留まり切れなかったが、今度は互いに認識し合ってのスタートのため、まるで違う。
仗助の蹴撃を受け止めるために必要な力はどれほどか、黒死牟の経験値ならば見極めるのは容易い。
先ほどは不意打ちのために留まり切れなかったが、今度は互いに認識し合ってのスタートのため、まるで違う。
仗助の蹴撃を受け止めるために必要な力はどれほどか、黒死牟の経験値ならば見極めるのは容易い。
「うおっ、と...」
飛び蹴りが止められたことで、仗助の身体が宙に投げ出される。
その隙を逃す黒死牟ではない。
左手の三叉矛が仗助の身体を穿たんとはしる。
その隙を逃す黒死牟ではない。
左手の三叉矛が仗助の身体を穿たんとはしる。
「『クレイジー・ダイヤモンド』!!」
穂先が身体に届く寸前、仗助の身体から脚の形をした像が現われ矛を蹴り上げる。
その威力を以てして、黒死牟の体勢が崩れ、仗助もまた射程距離から離れる。
その威力を以てして、黒死牟の体勢が崩れ、仗助もまた射程距離から離れる。
「むっ...」
「そっちが二刀流なら、こっちも『俺』と『スタンド』の二刀流でいかせてもらうぜ」
「そっちが二刀流なら、こっちも『俺』と『スタンド』の二刀流でいかせてもらうぜ」
仗助の背後より人型のスタンド像『クレイジー・ダイヤモンド』が現われ、共に黒死牟を見据える。
「そんじゃあ改めて———行くぜぇ!」
地を蹴り黒死牟との距離を詰めれば、仗助とクレイジー・ダイヤモンドの両拳が同時に振るわれる。
それを迎え撃つ、黒死牟の大剣と三叉矛。
矛と仗助の拳が、大剣とクレイジー・ダイヤモンドの拳がぶつかりあい、激しい剣戟は一帯に砂塵を巻き上げ甲高い音を響き渡らせる。
それを迎え撃つ、黒死牟の大剣と三叉矛。
矛と仗助の拳が、大剣とクレイジー・ダイヤモンドの拳がぶつかりあい、激しい剣戟は一帯に砂塵を巻き上げ甲高い音を響き渡らせる。
剣を振り抜き、弾かれる仗助に追いつくように高速で動き、回り込む黒死牟。
仗助の身体を両断せんと大剣を振り下ろす。
が、手ごたえはなく、ただ地面を叩き土煙をあげるだけだ。
仗助の身体を両断せんと大剣を振り下ろす。
が、手ごたえはなく、ただ地面を叩き土煙をあげるだけだ。
(残像...)
背後に感じた気配目掛けて三叉矛を突き出す。
迫る矛にも一切動じず、仗助はクレイジー・ダイヤモンドの腕を支柱にし宙返りをして躱し、更にスタンドに矛を抑えさせ、その隙を突き仗助本人の拳が黒死牟の鎧に放たれ身体を揺らす。
迫る矛にも一切動じず、仗助はクレイジー・ダイヤモンドの腕を支柱にし宙返りをして躱し、更にスタンドに矛を抑えさせ、その隙を突き仗助本人の拳が黒死牟の鎧に放たれ身体を揺らす。
(やっぱすげえぜこのアンチョビくんの身体は!)
仗助たちスタンド使いにおいて、多くの者に共通している弱点は本体である。
本来の東方仗助という少年は戦闘での機転は優れているものの、基本的な肉体スペックは普通の人間である。
クレイジー・ダイヤモンドは確かに強力なスタンドではあるが、ソレと同じことを本体が出来るかは別問題。
例えば高速で迫る乗用車と正面から出くわした時。
クレイジー・ダイヤモンドであれば能力を使わずとも車を殴りつけるなり跳躍で躱すなりすれば対処できるが、普通の人間である東方仗助本体では抵抗しきれず最低でも手傷を負ってしまう。
スタンド使いの戦いにおいて本体スペックの差は戦局を左右するものなのだ。
本来の東方仗助という少年は戦闘での機転は優れているものの、基本的な肉体スペックは普通の人間である。
クレイジー・ダイヤモンドは確かに強力なスタンドではあるが、ソレと同じことを本体が出来るかは別問題。
例えば高速で迫る乗用車と正面から出くわした時。
クレイジー・ダイヤモンドであれば能力を使わずとも車を殴りつけるなり跳躍で躱すなりすれば対処できるが、普通の人間である東方仗助本体では抵抗しきれず最低でも手傷を負ってしまう。
スタンド使いの戦いにおいて本体スペックの差は戦局を左右するものなのだ。
だが、このアンチョビ究極体はまさにそんな弱点を補うかのような性能をしている。
オリンピックスポーツ選手を優に超える、クレイジー・ダイヤモンドにも匹敵する身体能力。
小柄な身体からは考えつかない力。
なにより、多少の傷であれば自前の能力でカバーが出来る。
オリンピックスポーツ選手を優に超える、クレイジー・ダイヤモンドにも匹敵する身体能力。
小柄な身体からは考えつかない力。
なにより、多少の傷であれば自前の能力でカバーが出来る。
つまり、いまの仗助は実質二体分の近距離型スタンドを操っているのに等しいのだ。
「うむ...反射神経...力と速さ...血鬼術染みた人形...なにより慣れぬ身体でも衰えぬ経験からくる状況判断...これほどの戦士は久しく目にかかれぬ...」
「随分と余裕こいてるが、んなこと言ってられんのもいまの内だぜぇ!」
「随分と余裕こいてるが、んなこと言ってられんのもいまの内だぜぇ!」
クレイジー・ダイヤモンドと共に躍りかかる仗助。
クレイジー・ダイヤモンドと自分に対する黒死牟が互角の身体スペックであるならば、相手に攻撃をさせる余裕を与えるべきではないという判断だ。
クレイジー・ダイヤモンドと自分に対する黒死牟が互角の身体スペックであるならば、相手に攻撃をさせる余裕を与えるべきではないという判断だ。
黒死牟は迫る仗助に対し、ぽつりと呟く。
「此方も抜かねば...無作法というもの...」
刹那。
下方向から殺気を感じた仗助は、咄嗟に両腕を交差させ防御の姿勢に入る。
そして。
黒死牟の下半身が光り輝くのと同時、『そういえば俺、亀が苦手だったなあ』なんてことが脳裏を過るのだった。
☆
「うぅ...いきなりとか勘弁してよ、もう...」
喜多郁代は、アンチョビの皮を被りながら小屋の隅で膝を抱えていた。
仗助と情報交換をしてほどなくして、なにかが倒れる音が響き渡り、仗助は様子を見てくると郁代を小屋に押しやり向かってしまった。
郁代としては一人残されるのは不安なので、向かってほしくなどはなかったが、万が一にも知り合いが荒事に巻き込まれていたらイヤなので、早く済ませて戻ってきてほしいと願うばかりだ。
仗助と情報交換をしてほどなくして、なにかが倒れる音が響き渡り、仗助は様子を見てくると郁代を小屋に押しやり向かってしまった。
郁代としては一人残されるのは不安なので、向かってほしくなどはなかったが、万が一にも知り合いが荒事に巻き込まれていたらイヤなので、早く済ませて戻ってきてほしいと願うばかりだ。
(気のせいかまだ音が響いてるし...まさか、本当に殺し合いが...)
郁代の不安を遮るように、ゴンゴンゴン、と扉を叩く音が鳴る。
「東方くん!?」
郁代は不安から解放されたかのようにパァッ、と頬を緩め顔を上げる。
「ごめん、ここに仗助って子の仲間いる!?」
しかし現れたのは仗助ではなく、幸薄な雰囲気を醸し出す天使のような美少女だった。
「えっ?だれ!?」
「あたしはウタ。さっき仗助って子に助けられて...って、お化けぇ!?」
「あたしはウタ。さっき仗助って子に助けられて...って、お化けぇ!?」
ギョッと目を見開くウタに、郁代は慌てて否定する。
「ちっ、違うよー!ほら、にんげんだよ、にんげん!」
被っていたアンチョビの皮をめくると、ぴかりんと光る禿げ頭が表れる。
「なんだハゲたお爺ちゃんか...なんでそんなもの被ってるの?」
「心は乙女なんで...いや、そんなことよりも助けられたって、東方くんは?」
「...ごめん、あたしを助けるために半裸のお爺さんを食い止めてて...」
「は?..ごめんもう一回言って」
「いや、だから、あたしを助けるために半裸のお爺さんを———」
「心は乙女なんで...いや、そんなことよりも助けられたって、東方くんは?」
「...ごめん、あたしを助けるために半裸のお爺さんを食い止めてて...」
「は?..ごめんもう一回言って」
「いや、だから、あたしを助けるために半裸のお爺さんを———」
ウタのその先の言葉は紡がれない。
バキリ、となにかが壊れる音がしたかと思えば、頭上を高速でなにかが通り過ぎていって。
その余波で小屋の屋根は吹き飛ばされ風が吹き荒れ埃を舞い上げる。
バキリ、となにかが壊れる音がしたかと思えば、頭上を高速でなにかが通り過ぎていって。
その余波で小屋の屋根は吹き飛ばされ風が吹き荒れ埃を舞い上げる。
「ぶわっ!?」
「なっ、なに!?」
「なっ、なに!?」
ほどなくして埃が収まり、飛来してきたソレの正体が露わになる。
月光に映し出される青白い臀部。
ピクピクと痙攣する小柄な体躯。
ソレはまさに、頭部を壁に埋め込まれた東方仗助の姿だった。
月光に映し出される青白い臀部。
ピクピクと痙攣する小柄な体躯。
ソレはまさに、頭部を壁に埋め込まれた東方仗助の姿だった。
「東方くん!」
郁代は慌てて頭上の仗助の身体を引っ張り、身体を下ろそうとする。
「ちょっと、あんたもてつだっ、て...」
振り返り、ウタに手助けを求めようとする郁代だが、その言葉は飲み込まざるを得なかった。
ウタの背後より現れたのは、郁代の倍はありそうなほどの巨漢。
だが、彼女の目を惹くのはその大柄な身体ではなく、その下。
郁代の身長の倍はありそうなほどに大きくそそり、筋張った巨大な宝剣。
幼き頃、お風呂で見たお父さんのモノの何十倍はありそうなほどの大きなモノ。
万人が「ばっちぃ」と思うであろうソレを見ても、あろうことか郁代にはソレが輝きを放っているかのように見えていた。
だが、彼女の目を惹くのはその大柄な身体ではなく、その下。
郁代の身長の倍はありそうなほどに大きくそそり、筋張った巨大な宝剣。
幼き頃、お風呂で見たお父さんのモノの何十倍はありそうなほどの大きなモノ。
万人が「ばっちぃ」と思うであろうソレを見ても、あろうことか郁代にはソレが輝きを放っているかのように見えていた。
「他愛のない...まだ半勃ちというのに...これで終わりか?」
ギロリ、と黒死牟は敵を見下ろす。
最初に出会った小娘も妙な皮を被った小柄な老人も、死への恐怖か、身を震わすだけでロクに動けない。
先ほどまで戦っていた小童も、壁に頭をめり込ませたまま動かない。
最初に出会った小娘も妙な皮を被った小柄な老人も、死への恐怖か、身を震わすだけでロクに動けない。
先ほどまで戦っていた小童も、壁に頭をめり込ませたまま動かない。
股間の剣を一度抜いただけでこの有様とは、期待外れだったか。
黒死牟は、屹立した肉棒をウタ目掛けて振り下ろす。
人の命を断つには十分すぎる重さのソレは、情け容赦なく少女に迫る。
黒死牟は、屹立した肉棒をウタ目掛けて振り下ろす。
人の命を断つには十分すぎる重さのソレは、情け容赦なく少女に迫る。
「———させるかよぉっ!!」
雄叫びと共に青白い影が躍り出て斬撃を防ぐ。
もはや先刻の巻き戻しかのような光景だが、その実はまるで違う。
振り下ろされたのはズル剥けの巨根であり、仗助の身体もまた、先ほどとは違い、胸部に鈍器で殴られたような跡が刻まれており、顔面も腫れあがっている。
もはや勝負は明らかな有様であった。
もはや先刻の巻き戻しかのような光景だが、その実はまるで違う。
振り下ろされたのはズル剥けの巨根であり、仗助の身体もまた、先ほどとは違い、胸部に鈍器で殴られたような跡が刻まれており、顔面も腫れあがっている。
もはや勝負は明らかな有様であった。
「満身創痍で...よく動く...」
「へっ...ここからが仗助くんの本気だぜ、おっさん」
「へっ...ここからが仗助くんの本気だぜ、おっさん」
仗助は己の角を掴むと、そのまま引っ張り上げる。
すると、ずるり、と皮が脱げ傷一つない仗助の姿が表れた。
これぞ、アンチョビ究極体の技『完全再生(パーフェクトリバース)』である。
すると、ずるり、と皮が脱げ傷一つない仗助の姿が表れた。
これぞ、アンチョビ究極体の技『完全再生(パーフェクトリバース)』である。
「ほう...鬼でもないのにその再生力...珍妙だ...」
「あんたには珍妙だのなんだのと言われたくねーな...さあ、第二ラウンド開始だぜッ!!」
「あんたには珍妙だのなんだのと言われたくねーな...さあ、第二ラウンド開始だぜッ!!」
仗助はクレイジー・ダイヤモンドで殴り掛かり、黒死牟は今度は聳え立つ宝剣一本で迎え撃つ。
「ドララララララララァァァァァ————ッ!!!」
クレイジー・ダイヤモンドから繰り出される機関銃の如き両拳のラッシュ。
黒死牟は内股で構え、腰のスナップを効かせることで四方八方に肉棒を走らせその全てを捌ききる。
黒死牟は内股で構え、腰のスナップを効かせることで四方八方に肉棒を走らせその全てを捌ききる。
「うぐ、こ、このおっさん...ち〇ぽ1本で戦ってる時の方が強くねぇーッスか...!?」
クレイジー・ダイヤモンドのラッシュを越える速さで襲い来る宝剣を前に、仗助は徐々に劣勢になっていく。
二刀流と一刀流。
どちらが剣術として優れている、という問題ではない。
どちらにも長所と短所が存在しており、使い手がどちらを好むか、という問題に過ぎない。
黒死牟は先ほどまで、ベオウルフの肉体に合わせた戦い方を試していた。
だが、本来の彼の戦闘スタイルは一刀流。
先ほどまではベオウルフの身体の慣らしとして二刀で戦っていたが、本来の得手は一刀なのである。
故に一太刀のキレも威力も、黒死牟本来の剣に近づいているのだ。
二刀流と一刀流。
どちらが剣術として優れている、という問題ではない。
どちらにも長所と短所が存在しており、使い手がどちらを好むか、という問題に過ぎない。
黒死牟は先ほどまで、ベオウルフの肉体に合わせた戦い方を試していた。
だが、本来の彼の戦闘スタイルは一刀流。
先ほどまではベオウルフの身体の慣らしとして二刀で戦っていたが、本来の得手は一刀なのである。
故に一太刀のキレも威力も、黒死牟本来の剣に近づいているのだ。
(クソッ、やっぱ俺の方でも攻撃しなくちゃ追いつかねえ!)
仗助としては、完全再生の為の腕を痛めつけるような危険は冒したくない。
しかし、このままでは再生どころか首を刎ねられるのもそう遠くはないと察し、己もまた攻勢に出る。
しかし、このままでは再生どころか首を刎ねられるのもそう遠くはないと察し、己もまた攻勢に出る。
「ドラァッ!!」
クレイジー・ダイヤモンドと仗助の拳が同時に突き出され、迫る逸物の先端と衝突する。
———が。
———が。
(う...ッソだろ!?)
拮抗したのは一瞬。
亀頭は瞬く間に仗助とクレイジー・ダイヤモンドの拳を押しのけ、パァンと甲高い音と共に弾き飛ばしてしまう。
しまった、と思った時にはもう遅い。
パァン、と音を置き去りにするかの如き腰の前後運動により、黒死牟の一物は仗助の胸部に被弾。
まるで鉄塊を直接ぶつけられたような硬さと威力に仗助は胸部を凹ませ吐血と共に再び吹き飛ばされる。
亀頭は瞬く間に仗助とクレイジー・ダイヤモンドの拳を押しのけ、パァンと甲高い音と共に弾き飛ばしてしまう。
しまった、と思った時にはもう遅い。
パァン、と音を置き去りにするかの如き腰の前後運動により、黒死牟の一物は仗助の胸部に被弾。
まるで鉄塊を直接ぶつけられたような硬さと威力に仗助は胸部を凹ませ吐血と共に再び吹き飛ばされる。
トびかける意識の中、仗助は角に手をやり、再び完全再生を果たす。
三度の仕切り直し。
だが、仗助のみならず、見ている二人ですらこれまでのやり取りで思い知らされた。
このまま戦えば、間違いなく仗助は負ける。
このまま戦えば、間違いなく仗助は負ける。
(いやだ)
郁代の背筋にドッと冷や汗があふれ出す。
半裸のハゲおやじに身体を変えられただけでも災難だというのに、始まって数分でこんな命の危険に晒されて。
親切な人に出会ったのも束の間、その人もろともいきなり巨大なちんちんに殺される。
嫌だ。そんなの、絶対に!
半裸のハゲおやじに身体を変えられただけでも災難だというのに、始まって数分でこんな命の危険に晒されて。
親切な人に出会ったのも束の間、その人もろともいきなり巨大なちんちんに殺される。
嫌だ。そんなの、絶対に!
「ねっ、ねえ、貴女、このままじゃ東方くんが負けちゃう!お願い助けてよ!」
郁代は咄嗟に傍にいるウタに縋りつくように助けを求める。
彼女は死の脅威に晒され冷静さを欠いていた。
女の子一人に縋ったところで、あの超人バトルに混じれるわけがない。
そんなこと、冷静に判断できればわかるはずだが、しかしいまの彼女にそんな余裕はなかった。
彼女は死の脅威に晒され冷静さを欠いていた。
女の子一人に縋ったところで、あの超人バトルに混じれるわけがない。
そんなこと、冷静に判断できればわかるはずだが、しかしいまの彼女にそんな余裕はなかった。
けれど。
ただ我武者羅に言ったその言葉が。
救いを求めるその姿が、彼女の運命を大きく動かす。
『助けて』
その言葉は幾万も求められてきた。
『助けて』
ただ一人の歌姫には。
幾多の命を奪った罪人には。
それは過ぎた言葉であり重すぎる十字架であった。
幾多の命を奪った罪人には。
それは過ぎた言葉であり重すぎる十字架であった。
『助けて』
その言葉に日々苛まれてきた。
吐き気を催したこともある。
吐き気を催したこともある。
けれど。
『助けて』
ソレは呪いであるのと同時に、彼女にとって救いの言葉でもあった。
ウタは求められたからみんなの歌姫になれた。
孤独に心を塞いだ10年から掬い上げられたから、再び前向きになることができた。
みんながウタに助けてと縋ったように、ウタもまたみんなの『助けて』に縋っていたのだ。
ウタは求められたからみんなの歌姫になれた。
孤独に心を塞いだ10年から掬い上げられたから、再び前向きになることができた。
みんながウタに助けてと縋ったように、ウタもまたみんなの『助けて』に縋っていたのだ。
(そうだ。あたしがやらなくちゃ。どこでとか、いつだって関係ない。あたしはウタ。新時代を作る女なんだから)
ソレはもはや強迫観念に近いモノだが、しかしそれがいつだって悪し様に働くとは限らず。
少なくとも、いま、この場では、初めての死地に怯える心を隠すのにはうってつけだった。
少なくとも、いま、この場では、初めての死地に怯える心を隠すのにはうってつけだった。
だが。
郁代の助けてに応えるにはどうすればいいか。
仗助と黒死牟の戦いに割って入ることはできない。
しかし説得は無意味だというのは、見ていればわかる。
ならばどうする。
どうすれば、仗助を助けることができる。
郁代の助けてに応えるにはどうすればいいか。
仗助と黒死牟の戦いに割って入ることはできない。
しかし説得は無意味だというのは、見ていればわかる。
ならばどうする。
どうすれば、仗助を助けることができる。
『ウタ。この世界に平和や平等なんてものは存在しない』
ふと過る、父と慕った男の声。
聞きたくない、けれどずっと聴きたかったその声に、ウタは思わず身を委ねる。
聞きたくない、けれどずっと聴きたかったその声に、ウタは思わず身を委ねる。
『だがお前の歌声だけは、世界中の全ての人たちを幸せにすることができる』
「あたしの、歌声...」
ポツリ、と呟く。
そうだ。
赤髪海賊団の音楽家の時も。
世界の歌姫になってしまった時も。
自分に求められたのは、歌だ。
みんながみんな、あたしの歌声を望んでいるし、あたし自身もみんなが望むことを望んでいる。
そうだ。
赤髪海賊団の音楽家の時も。
世界の歌姫になってしまった時も。
自分に求められたのは、歌だ。
みんながみんな、あたしの歌声を望んでいるし、あたし自身もみんなが望むことを望んでいる。
あたしにはこれしかないから。
歌うことでしか、みんなを助けることが出来ないから。
歌うことでしか、みんなを助けることが出来ないから。
(だったら———ここでも、そうするしかない)
そう決めたら、フッと頭が軽くなった。
自分のもとの身体のことも。
罪に縛られる汚れた手足も。
目の前の光景も。
いまだけは、全てが削ぎ落されていく。
罪に縛られる汚れた手足も。
目の前の光景も。
いまだけは、全てが削ぎ落されていく。
たん、たん、たん、と自分の軽快な足踏みを楽器に、あたしはあたしの世界に沈んでいく。
荒れ果てた家屋をステージに。
鳴り響く剣戟を伴奏に。
鳴り響く剣戟を伴奏に。
(いくよ...3・2・1...)
あたしは深呼吸と共に、思い浮かんだ詞を一気に吐き出した。
———カミサマ、背界でどうか寄り添わせて サカサマの祈りを叩きつけて歌え!
叫ぶ。全てを絞り出すように、ありったけの想いを込めて、全力で叫ぶ。
———幸と業よ、後悔を剥がさないで 背中合わせのハレルヤが 飛んでいかないように!!
みんながギョッとして、あたしの言葉に集中している、気がする。
でももう止まらない。止められない。
あたしの歌は、まだ始まったばかりだから。
でももう止まらない。止められない。
あたしの歌は、まだ始まったばかりだから。
ようこそ、新しい×××へ
「え?これ、スピーカー?でもどこから...?」
ようこそ、新しい×××へ<
「いったい何事か...血鬼術か...?」
ようこそ、新しい×××へ
「こいつぁ...歌か?」
ようこそ、新しい×××へ<
まるで今までやっていたことのようにしっくりとくる。
そうか、きっとこの子も、『リグレット』も、こうやって歌を送っていたんだ。
そうか、きっとこの子も、『リグレット』も、こうやって歌を送っていたんだ。
ようこそ、新しい×××へ
「な...なんか妙だぜ...さっきまで結構追い詰められてたのによぉ」
仗助は笑みを浮かべつつ、地面を踏みしめ、思い切り蹴る。
先も放った、高速での飛び蹴り。
黒死牟は既にその威力も速さも見切っている。
冷静に一物の先端を向け、仗助の跳び蹴りに備える。
先も放った、高速での飛び蹴り。
黒死牟は既にその威力も速さも見切っている。
冷静に一物の先端を向け、仗助の跳び蹴りに備える。
ようこそ、新しい×××へ<
衝突。
しかし、今度は弾かれることなく、正真正銘、拮抗している。
しかし、今度は弾かれることなく、正真正銘、拮抗している。
「むぅっ...!」
「なんだか急に力がムンムン湧いてきやがったぜぇ~~!!」
「なんだか急に力がムンムン湧いてきやがったぜぇ~~!!」
ようこそ、新しい×××へ
仗助も、ウタ自身も自覚していないが、これこそがリグレットの『力』の恩恵の一端である。
彼女は特定の、あるいは不特定に対して己の歌を唄いあげることで対象の能力を増したり、洗脳して支配下におくことができる。
無論、大規模に支配する力は制限で封じられているが、いま、ウタが行っているのは個人に対しての簡易的な支配。
ウタは仗助を『助ける』ために、彼個人に対して歌による干渉を行い、思考に影響を及ぼさない程度の簡易的な支配———軽微なデジヘッド化現象を引き起こした。
言うなれば関域的なフロアージャック———本来は、リグレットに敵対するバーチャドール『キィ』の技を、疑似的に再現したのだ。
彼女は特定の、あるいは不特定に対して己の歌を唄いあげることで対象の能力を増したり、洗脳して支配下におくことができる。
無論、大規模に支配する力は制限で封じられているが、いま、ウタが行っているのは個人に対しての簡易的な支配。
ウタは仗助を『助ける』ために、彼個人に対して歌による干渉を行い、思考に影響を及ぼさない程度の簡易的な支配———軽微なデジヘッド化現象を引き起こした。
言うなれば関域的なフロアージャック———本来は、リグレットに敵対するバーチャドール『キィ』の技を、疑似的に再現したのだ。
(そうだ...あたしは歌で救うんだ。あたしはウタ。みんなの歌姫、ウタだから!!)
>ようこそ、新しい×××へ<
決意と共に、ウタの歌が鳴り響く。
それが2回目の放送を迎える直前の、前哨戦の顛末だった。
【一日目/深夜/G-4】
※各キャラが魘夢の放送を聞き取れるかは次の書き手の方にお任せします。
※各キャラが魘夢の放送を聞き取れるかは次の書き手の方にお任せします。
【ウタ@ONE PIECE FILM RED】
[身体]:リグレット@Caligula2
[状態]:精神的疲労(中)、熱唱中
[装備]:ウタのアームカバー@ONE PIECE FILM RED
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:エンムから体を取り戻す。
1:仗助を『助ける』ために歌う。
2:体を取り戻す方法を探す。その後は…
[備考]
※参戦時期はライブ会場に赤髪海賊団到着後~トットムジカを歌う前。
※殺し合いの会場がウタウタの実の能力により創られた世界ではないかと考えています。
[身体]:リグレット@Caligula2
[状態]:精神的疲労(中)、熱唱中
[装備]:ウタのアームカバー@ONE PIECE FILM RED
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:エンムから体を取り戻す。
1:仗助を『助ける』ために歌う。
2:体を取り戻す方法を探す。その後は…
[備考]
※参戦時期はライブ会場に赤髪海賊団到着後~トットムジカを歌う前。
※殺し合いの会場がウタウタの実の能力により創られた世界ではないかと考えています。
【黒死牟@鬼滅の刃】
[身体]:ベオウルフ@ローゼンガーテンサーガ
[状態]:健康、フルチン
[装備]:姑獲鳥の三叉矛@彼岸島 48日後... 十咎ももこの大剣@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:生還し元の肉体を取り戻す。
1:まずは目の前の敵との闘争を愉しみ、斬る。
2:無惨がいないか確かめたい。
[身体]:ベオウルフ@ローゼンガーテンサーガ
[状態]:健康、フルチン
[装備]:姑獲鳥の三叉矛@彼岸島 48日後... 十咎ももこの大剣@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:生還し元の肉体を取り戻す。
1:まずは目の前の敵との闘争を愉しみ、斬る。
2:無惨がいないか確かめたい。
【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:アンチョビ(究極体)@コロッケ!
[状態]:疲労(中)、簡易的なデジヘッド化による能力の強化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶっ飛ばして殺し合いを止める。
1:目の前の黒死牟に対処。
2:とりあえず郁代の為にまともな服を探す。
[備考]
※肉体のアンチョビは究極体以外の姿に変化することはできません。
※ウタの歌を通じて、簡易的に支配下に置かれていますが、思考にはさほど影響はありません。
ウタの歌が止まればデジヘッド化も消えます。
[身体]:アンチョビ(究極体)@コロッケ!
[状態]:疲労(中)、簡易的なデジヘッド化による能力の強化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶっ飛ばして殺し合いを止める。
1:目の前の黒死牟に対処。
2:とりあえず郁代の為にまともな服を探す。
[備考]
※肉体のアンチョビは究極体以外の姿に変化することはできません。
※ウタの歌を通じて、簡易的に支配下に置かれていますが、思考にはさほど影響はありません。
ウタの歌が止まればデジヘッド化も消えます。
【喜多郁代@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:アドバーグ・エルドル@魔法陣グルグル
[状態]:健康
[装備]:アンチョビ究極体の皮@コロッケ!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:元の世界に帰りたい
1:とりあえず目の前の危機をどうにかしてほしい。
2:とりあえずまともな服が欲しい。
3:キタキタおやじってなによ…いくら私が『キタ』だからってあんまりじゃない?
[備考]
※「郁代」呼びよりも「喜多」呼びへの忌避感の方が強くなっています
[身体]:アドバーグ・エルドル@魔法陣グルグル
[状態]:健康
[装備]:アンチョビ究極体の皮@コロッケ!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:元の世界に帰りたい
1:とりあえず目の前の危機をどうにかしてほしい。
2:とりあえずまともな服が欲しい。
3:キタキタおやじってなによ…いくら私が『キタ』だからってあんまりじゃない?
[備考]
※「郁代」呼びよりも「喜多」呼びへの忌避感の方が強くなっています
| 08:私は完璧で究極のムスカ大佐だ | 投下順に読む | 10:岸辺露伴、温泉宿へ行く |
| 時系列順に読む | ||
| 登場話105:SuicidePrototype | ウタ | 16:眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編) |
| 登場話179:抜かねば無作法、ヌいたら無法 | 黒死牟 | |
| 登場話07:キターン!東方仗助究極体爆誕! | 東方仗助 | |
| 喜多郁代 |