『春の夢』
更新日:2020/07/12 Sun 20:51:48
春が窓から降ってきた。
私は春を抱き止めた。
春は優美な黒色をしていた。
「すまんの、お嬢ちゃん」
私の腕から春が飛び出していった。
「朱夏様、お母様がお呼びです」
太郎が私を呼びに来たが、私は春に恋していた。
私は春を抱き止めた。
春は優美な黒色をしていた。
「すまんの、お嬢ちゃん」
私の腕から春が飛び出していった。
「朱夏様、お母様がお呼びです」
太郎が私を呼びに来たが、私は春に恋していた。
~~~~~
愛歩はコテージのベッドで悩んでいた。
気絶してカレーは冷めたし、蛇の怪物は倒されたと言っていたし、のじゃロリ猫もどこかに行ってしまった。目が冷めたら夜の十時、皆疲れて眠っていた。
「あ~」
全然楽しくない……お金を払ってくれたお父さんとお母さんに申し訳ない……
「もう!」
苛立って毛布を叩いた。
5月だと言うのに虫の鳴き声がうるさい。
「あれ?」
部屋で寝ている人数が一人足りない事に愛歩は気付いた。
(むらサメちゃん、きゅーばんちゃん、天号ちゃん)
足りない一人を探すために、愛歩はベッドから飛び降りた。
気絶してカレーは冷めたし、蛇の怪物は倒されたと言っていたし、のじゃロリ猫もどこかに行ってしまった。目が冷めたら夜の十時、皆疲れて眠っていた。
「あ~」
全然楽しくない……お金を払ってくれたお父さんとお母さんに申し訳ない……
「もう!」
苛立って毛布を叩いた。
5月だと言うのに虫の鳴き声がうるさい。
「あれ?」
部屋で寝ている人数が一人足りない事に愛歩は気付いた。
(むらサメちゃん、きゅーばんちゃん、天号ちゃん)
足りない一人を探すために、愛歩はベッドから飛び降りた。
コテージの外にその人はいた。
「古代さん」
「あ、愛歩さん…」
古代はスマートフォンで何かしていた。
「…何か?」
「ううん、昼間あんな事があったから、ちょっと心配しただけ」
愛歩はホッとしながら言った。
「そう……」
古代が何をしているのか気になったが、言葉にはしなかった。
詮索されたくないだろうから。
「じゃあおやすみ」
「待って」
古代が引き止めた。至近距離でまともに目が合い、古代は慌てたように目を背ける。
「動物園行かない?」
「え?」
「今日三人で話してたんだけど、愛歩さん全然皆と過ごせてなかったから」
「なるほど」
愛歩は明るい顔をした。
「嬉しい。ありがとう」
「…別に、皆で考えただけだから」
愛歩は頷いて、おやすみと言う。
「…うん、おやすみ」
「古代さん」
「あ、愛歩さん…」
古代はスマートフォンで何かしていた。
「…何か?」
「ううん、昼間あんな事があったから、ちょっと心配しただけ」
愛歩はホッとしながら言った。
「そう……」
古代が何をしているのか気になったが、言葉にはしなかった。
詮索されたくないだろうから。
「じゃあおやすみ」
「待って」
古代が引き止めた。至近距離でまともに目が合い、古代は慌てたように目を背ける。
「動物園行かない?」
「え?」
「今日三人で話してたんだけど、愛歩さん全然皆と過ごせてなかったから」
「なるほど」
愛歩は明るい顔をした。
「嬉しい。ありがとう」
「…別に、皆で考えただけだから」
愛歩は頷いて、おやすみと言う。
「…うん、おやすみ」
翌日、愛歩は殆ど車の中で過ごした。
林間学校からの帰りのバスに、迎えに来てくれた両親のバス。
昨日の疲れも残っていたのか、ずっと眠気が残っていた。
唯一眠気を忘れたのは、荷物をバスから取り出していた時の事、体育教員である朝生先生がこっちに向かって走ってきた時だけである。
「大石!すまんすまん!行きに渡そうと思ったんだが、忘れててな」
麻生先生の手には、小さな手紙のような物があった。
「ほら、この前言っていた女性の顔写真だ。ちょっと管理が悪かったからか古ぼけているが……」
愛歩の視線がその写真に吸い込まれていく猫のバックを持った女性だ。顔も髪も、ナニもかも愛歩とそっくりだ。だが、彼女の目は愛歩の物よりも鋭く、無表情だった。
「この写真……どこで?」
「ん、天晴姉さん……いや、旭ちゃんのお母さんとも面識があってね、一緒に買い物に行った時に撮ったんだと」
「あの、この人の名前、なんでした?」
「朱夏だ。鐘明朱夏」
(朱夏)
愛歩はその名前を下で転がしてみた。
やはり変わった名前だ。
「ありがとう!先生!」
母親だと言う写真を握りしめ、愛歩はお礼を言ったのだった。
林間学校からの帰りのバスに、迎えに来てくれた両親のバス。
昨日の疲れも残っていたのか、ずっと眠気が残っていた。
唯一眠気を忘れたのは、荷物をバスから取り出していた時の事、体育教員である朝生先生がこっちに向かって走ってきた時だけである。
「大石!すまんすまん!行きに渡そうと思ったんだが、忘れててな」
麻生先生の手には、小さな手紙のような物があった。
「ほら、この前言っていた女性の顔写真だ。ちょっと管理が悪かったからか古ぼけているが……」
愛歩の視線がその写真に吸い込まれていく猫のバックを持った女性だ。顔も髪も、ナニもかも愛歩とそっくりだ。だが、彼女の目は愛歩の物よりも鋭く、無表情だった。
「この写真……どこで?」
「ん、天晴姉さん……いや、旭ちゃんのお母さんとも面識があってね、一緒に買い物に行った時に撮ったんだと」
「あの、この人の名前、なんでした?」
「朱夏だ。鐘明朱夏」
(朱夏)
愛歩はその名前を下で転がしてみた。
やはり変わった名前だ。
「ありがとう!先生!」
母親だと言う写真を握りしめ、愛歩はお礼を言ったのだった。
~~~~~
「やれやれ、とんだ悪評が書かれておるのぉ」
愛歩が寝静まった深夜、のじゃロリ猫はその部屋に不法侵入していた。
のじゃロリ猫の目的はただひとつ、『奇怪喫茶逢魔時』だ。
「これを書いたのは人間か……それとも……」
のじゃロリ猫は母親によく似た少女を眺める。
「こいつも、オウマがトキも狙っている妖怪だったら許せんの」
のじゃロリ猫は欠伸をして笑う。
「先ずはこれを書いた奴から締め上げるとするか」
「やれやれ、とんだ悪評が書かれておるのぉ」
愛歩が寝静まった深夜、のじゃロリ猫はその部屋に不法侵入していた。
のじゃロリ猫の目的はただひとつ、『奇怪喫茶逢魔時』だ。
「これを書いたのは人間か……それとも……」
のじゃロリ猫は母親によく似た少女を眺める。
「こいつも、オウマがトキも狙っている妖怪だったら許せんの」
のじゃロリ猫は欠伸をして笑う。
「先ずはこれを書いた奴から締め上げるとするか」