(拝啓ピンク色になった貴女へ)
更新日:2020/03/25 Wed 22:23:26
「リーリー!」
「わっ」
後ろから声をかけてきたのは、友達のプラムちゃんだった。
「へへ、ウェルカムだよ、ようこそオウマがトキへ!」
「あはは、ありがとう」
「わっ」
後ろから声をかけてきたのは、友達のプラムちゃんだった。
「へへ、ウェルカムだよ、ようこそオウマがトキへ!」
「あはは、ありがとう」
ここは喫茶店オウマがトキ、お菓子と本のお店だ。
「さてと、何頼む?」
プラムちゃんがメニュー表を見せてくれた。
「うーん、オレンジジュースとショートケーキで!」
「了解~♪」
プラムちゃんは笑顔で手を振り、店の奥に消えていった。
「さてと、何頼む?」
プラムちゃんがメニュー表を見せてくれた。
「うーん、オレンジジュースとショートケーキで!」
「了解~♪」
プラムちゃんは笑顔で手を振り、店の奥に消えていった。
「あれ、リリちゃん?」
「その声は…やっぱり!初先輩」
振り返ると初先輩がいた。初先輩っていうのは、私の学校の先輩。白のメッシュのある茶髪に、黄色の瞳をしたクールな少女だ。黒の革ジャンがよく似合っている。
「リリちゃんもここの常連なの?」
「ううん。今日初めて来たの。友達のプラムちゃんに誘われて」
「そうなんだね」
初先輩の言葉に私は頷き、今来たのかと聞こうと思った。
まぁ出来なかったけど。
「あ!初君!」
プラムちゃんの黄色い声。
初君?
私は訝しげに初先輩を見ると、先輩は苦笑しながらウィンクした。
「もう行っちゃうの?」
プラムちゃんが名残惜し気な様子で言う。
「うん、ごちそうさま。今日もおいしかったってパティシエさんに伝えてくれる?」
「え、あ、うん」
プラムちゃんはなぜか少し複雑そうな顔をした。
「その声は…やっぱり!初先輩」
振り返ると初先輩がいた。初先輩っていうのは、私の学校の先輩。白のメッシュのある茶髪に、黄色の瞳をしたクールな少女だ。黒の革ジャンがよく似合っている。
「リリちゃんもここの常連なの?」
「ううん。今日初めて来たの。友達のプラムちゃんに誘われて」
「そうなんだね」
初先輩の言葉に私は頷き、今来たのかと聞こうと思った。
まぁ出来なかったけど。
「あ!初君!」
プラムちゃんの黄色い声。
初君?
私は訝しげに初先輩を見ると、先輩は苦笑しながらウィンクした。
「もう行っちゃうの?」
プラムちゃんが名残惜し気な様子で言う。
「うん、ごちそうさま。今日もおいしかったってパティシエさんに伝えてくれる?」
「え、あ、うん」
プラムちゃんはなぜか少し複雑そうな顔をした。
「はああああああ!ほんと初君かっこいいなぁ!」
プラムちゃんの言葉に、私は苦笑した。
先輩が女の子だってこと、プラムちゃんはしらないみたい。
プラムちゃんの悲しむ顔は見たくないので、黙っておくことにした。
「リリ」
なんだかいつもより真剣な顔のプラムちゃん。
「初君と仲良くするにはどうすればいいかな?」
「うーん、例えば初先輩の事をもっと知るとか?」
「あー!なるほど!じゃあリリ」
満面の笑みを浮かべたプラムちゃんが、私の肩に手を置いた。
「初君の事教えてね、同じ学校の後輩なんでしょ?」
プラムちゃんの言葉に、私は苦笑した。
先輩が女の子だってこと、プラムちゃんはしらないみたい。
プラムちゃんの悲しむ顔は見たくないので、黙っておくことにした。
「リリ」
なんだかいつもより真剣な顔のプラムちゃん。
「初君と仲良くするにはどうすればいいかな?」
「うーん、例えば初先輩の事をもっと知るとか?」
「あー!なるほど!じゃあリリ」
満面の笑みを浮かべたプラムちゃんが、私の肩に手を置いた。
「初君の事教えてね、同じ学校の後輩なんでしょ?」
数十分後、ケーキとジュースを食べ終えた私は、オウマがトキの近くにある公園にやってきていた。
「ごめん待った?」
「ううん全然!」
すぐにプラムちゃんはやってきた。いわく、おなかが痛いから休むって言えばメローナお姉ちゃんなら休ませてくれるし、フロートお姉ちゃんも他の子に気を取られればこっそり抜け出すのは簡単なこと…らしい。
「で、で、初君の好きな物とか好きなタイプとか、知ってること全部教えて!」
目を輝かせながら聞いてくるプラムちゃんに、私は困ってしまった。
初先輩の情報って女の子ってことも含まれるんじゃ…私はさっきの自分の発言に後悔した。
「えっと、何から話そう…」
私は必死に考えて閃いた。
「ごめん待った?」
「ううん全然!」
すぐにプラムちゃんはやってきた。いわく、おなかが痛いから休むって言えばメローナお姉ちゃんなら休ませてくれるし、フロートお姉ちゃんも他の子に気を取られればこっそり抜け出すのは簡単なこと…らしい。
「で、で、初君の好きな物とか好きなタイプとか、知ってること全部教えて!」
目を輝かせながら聞いてくるプラムちゃんに、私は困ってしまった。
初先輩の情報って女の子ってことも含まれるんじゃ…私はさっきの自分の発言に後悔した。
「えっと、何から話そう…」
私は必死に考えて閃いた。
「う、初先輩の声で聞きたくない?」
「え?何が?」
私は覚声機……アイムールを取り出しながら答える。
「私の能力。女児符号とはまた違った物なんだけど『相手の一番聞きたがっている人の声』を真似できるんだ」
「すご!」
「えへへ、それでね、プラムちゃんが本気で初先輩の声が聞きたいって思えば……」
「初君の声になるの?!リリの声が?!」
「プラムちゃんが強く望めばね」
私はウィンクしてアイムールを構えた。
「目を閉じて、一番聞きたい声の人を思い浮かべて」
私の声にプラムちゃんは従い、ピンクの瞳を閉じて祈るように手を組んだ。
「え?何が?」
私は覚声機……アイムールを取り出しながら答える。
「私の能力。女児符号とはまた違った物なんだけど『相手の一番聞きたがっている人の声』を真似できるんだ」
「すご!」
「えへへ、それでね、プラムちゃんが本気で初先輩の声が聞きたいって思えば……」
「初君の声になるの?!リリの声が?!」
「プラムちゃんが強く望めばね」
私はウィンクしてアイムールを構えた。
「目を閉じて、一番聞きたい声の人を思い浮かべて」
私の声にプラムちゃんは従い、ピンクの瞳を閉じて祈るように手を組んだ。
私は深呼吸し、プラムちゃんの姿を見つめながら符号を発動させる。
まだ覚声機は使わない。
発動したのは加速符号リードオブルクス。
相手が何を願い、何を欲するかが分かる符号だ。
これを使って、プラムちゃんの心の願いを探る。
初先輩の何が知りたいか、初先輩の声で何を言って欲しいのか、詳しく探るのだ。
人間、人外とわず、心のある生命体の脳の中は真っ暗で、関心ある物事に対してだけ明るく輝く。
創作が好きなら創作に関する事に、空腹なら食事に関する事に、お金が必要なら仕事に関する事に、関心事によって脳は光に満たされ、生命は活動を開始するのだ。
まだ覚声機は使わない。
発動したのは加速符号リードオブルクス。
相手が何を願い、何を欲するかが分かる符号だ。
これを使って、プラムちゃんの心の願いを探る。
初先輩の何が知りたいか、初先輩の声で何を言って欲しいのか、詳しく探るのだ。
人間、人外とわず、心のある生命体の脳の中は真っ暗で、関心ある物事に対してだけ明るく輝く。
創作が好きなら創作に関する事に、空腹なら食事に関する事に、お金が必要なら仕事に関する事に、関心事によって脳は光に満たされ、生命は活動を開始するのだ。
『相手と仲良くなりたいなら、まずその人の考えていることを知りなさい。能力を使って、相手を上手く楽しませれるようになりなさい』
私はミミに——―幼馴染の黄泉河命に、そう言い聞かされていた。
プラムちゃんの心の中に入り込むと、直ぐに初先輩について知りたいことが分かった。
私はいつものように、直ぐに切り離そうとした。
あまり深くまで潜りすぎると、深刻なプライベート侵害になる。
ミミは構わないって言ってたけど、弱みを探ってるみたいで、あんまり好きじゃなかった。
でも、今回は違った。
何かが私を呼び止めたのだ。プラムちゃんの何かが。
待って!いかないで!
そう言っている気がした。
プラムちゃんの心の中に入り込むと、直ぐに初先輩について知りたいことが分かった。
私はいつものように、直ぐに切り離そうとした。
あまり深くまで潜りすぎると、深刻なプライベート侵害になる。
ミミは構わないって言ってたけど、弱みを探ってるみたいで、あんまり好きじゃなかった。
でも、今回は違った。
何かが私を呼び止めたのだ。プラムちゃんの何かが。
待って!いかないで!
そう言っている気がした。
私は戸惑ったが、もう少し深く潜ってみることにした。
(あなたはだぁれ?)
心の中で呟くと、驚くことに返答があった。
———私は……―――
暗い心の中で、プラムちゃんによく似た……でも全然違う女の子が見えた気がした。
———やだ…お家に帰して…怖い———
女の子は一瞬で消え去り、私の目の前には深い闇が広がる。
(待って!あなたは!)
「リリ~?遅くない?」
私の中で声が響く。現実のプラムちゃんが痺れを聞いてきたんだ。
どうしよう。さっきの女の子の事も気になるし、プラムちゃんにも返事がしたい。
(あなたはだぁれ?)
心の中で呟くと、驚くことに返答があった。
———私は……―――
暗い心の中で、プラムちゃんによく似た……でも全然違う女の子が見えた気がした。
———やだ…お家に帰して…怖い———
女の子は一瞬で消え去り、私の目の前には深い闇が広がる。
(待って!あなたは!)
「リリ~?遅くない?」
私の中で声が響く。現実のプラムちゃんが痺れを聞いてきたんだ。
どうしよう。さっきの女の子の事も気になるし、プラムちゃんにも返事がしたい。
———さき……早生!———
プラムちゃんとも、さっきの女の子とも違う声がした。嬉しそうな、誇らしげな男の人の声だ。
———お前の名前は今日から早生だ!———
一瞬、赤ん坊を抱きかかえた若い男性の姿が見えた気がした。
続いて、女の人と幼い少女の声が聞こえる。
———早生、この子のお散歩、ひとりで行ける?———
———うん。任せてよ!だから安心してお仕事行ってきて!———
———ありがとう。早生———
プラムちゃんとも、さっきの女の子とも違う声がした。嬉しそうな、誇らしげな男の人の声だ。
———お前の名前は今日から早生だ!———
一瞬、赤ん坊を抱きかかえた若い男性の姿が見えた気がした。
続いて、女の人と幼い少女の声が聞こえる。
———早生、この子のお散歩、ひとりで行ける?———
———うん。任せてよ!だから安心してお仕事行ってきて!———
———ありがとう。早生———
唐突に、病院の風景が映った。
———ありがとう早生ちゃん———
黒髪の女の子と早生ちゃんが、病院のベッドの上に腰かけていた。
———これくらいどうってこと無いよ!……それより美嶺———
早生ちゃんが声を潜める。
もう一人の女の子…美嶺ちゃんの顔は逆光で見えない。
早生ちゃんは辛そうに言った。
ーーー檸檬もいなくなったのーーー
ーーー檸檬ちゃんが?ーーー
美嶺の声が驚きと悲しみに包まれた。
ーー!うん、ついでに太郎も……———
———そんな……———
———私、怖くて……もしかしたら次は美嶺じゃないかって!———
ーーーそんなことないよ、私は身体が弱いし、最近学校にもいけてないし……早生ちゃんのほうが心配よ……でも、もしかしたらお猿さんが……私の友達がなんとかしてくれるかもーーー
そこで目映い光が起こり、映像は途切れてしまった。正体不明の謎の現象に、頭がクラクラして、目を閉じる。
———ありがとう早生ちゃん———
黒髪の女の子と早生ちゃんが、病院のベッドの上に腰かけていた。
———これくらいどうってこと無いよ!……それより美嶺———
早生ちゃんが声を潜める。
もう一人の女の子…美嶺ちゃんの顔は逆光で見えない。
早生ちゃんは辛そうに言った。
ーーー檸檬もいなくなったのーーー
ーーー檸檬ちゃんが?ーーー
美嶺の声が驚きと悲しみに包まれた。
ーー!うん、ついでに太郎も……———
———そんな……———
———私、怖くて……もしかしたら次は美嶺じゃないかって!———
ーーーそんなことないよ、私は身体が弱いし、最近学校にもいけてないし……早生ちゃんのほうが心配よ……でも、もしかしたらお猿さんが……私の友達がなんとかしてくれるかもーーー
そこで目映い光が起こり、映像は途切れてしまった。正体不明の謎の現象に、頭がクラクラして、目を閉じる。
目が覚めると加速符号が解かれていて、プラムちゃんが驚いて目を丸くしている。
「早生」
気が付くと、私は覚声機で話していた。
「早生、早く朝ごはん食べちゃいなさい」
「え」
プラムちゃんの困惑する声が聞こえた。
「あと、食べたあとはお皿片付けなさい。たまにはブルーベルにも餌さ上げて」
「なに…その声」
私はプラムちゃんの表情にぎょっとした。
「この声、この声って…」
あの明るいプラムちゃんが…泣いていた。
「ぷ、プラムちゃん?」
「声、これ、これあ、あ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」
突然叫びだしたプラムちゃん、私は覚声機を持ったまま怯えた。
プラムちゃんはどうしてしまったのだろう?苦しそうだ。何か私に出きることは……
プラムちゃんは頭を抱え、身体をぶるぶる震わせて一頻り叫ぶと、眠るように気絶してしまった。
『おいおいお嬢ちゃん』
「え、あ、マ……マロロン」
驚いた。いつの間にかマロロンが座って私の事を見ていた。
睨まれている気がする。
『なんかあったみたいだな?』
「うん、プラムちゃんが……」
『それは見れば分かるぜ、まあここは俺に任せときな!あんたはその子の側にいてやってくれ!』
そう言うと、マロロンは全速力で走っていた。
「早生」
気が付くと、私は覚声機で話していた。
「早生、早く朝ごはん食べちゃいなさい」
「え」
プラムちゃんの困惑する声が聞こえた。
「あと、食べたあとはお皿片付けなさい。たまにはブルーベルにも餌さ上げて」
「なに…その声」
私はプラムちゃんの表情にぎょっとした。
「この声、この声って…」
あの明るいプラムちゃんが…泣いていた。
「ぷ、プラムちゃん?」
「声、これ、これあ、あ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」
突然叫びだしたプラムちゃん、私は覚声機を持ったまま怯えた。
プラムちゃんはどうしてしまったのだろう?苦しそうだ。何か私に出きることは……
プラムちゃんは頭を抱え、身体をぶるぶる震わせて一頻り叫ぶと、眠るように気絶してしまった。
『おいおいお嬢ちゃん』
「え、あ、マ……マロロン」
驚いた。いつの間にかマロロンが座って私の事を見ていた。
睨まれている気がする。
『なんかあったみたいだな?』
「うん、プラムちゃんが……」
『それは見れば分かるぜ、まあここは俺に任せときな!あんたはその子の側にいてやってくれ!』
そう言うと、マロロンは全速力で走っていた。
暫くすると、アイベリーさんとマーマレードさんを連れたマロロンが戻ってきた。
『早く運んでくれよ!』
マロロンは伝わらないと分かっていてもそう言う。
まるでマロロンが何を言ったか分かるかのようにマーマレードさんとアイベリーさんは頷き合っていた。
『早く運んでくれよ!』
マロロンは伝わらないと分かっていてもそう言う。
まるでマロロンが何を言ったか分かるかのようにマーマレードさんとアイベリーさんは頷き合っていた。
『全くやれやれだぜ』
マロロンはオウマがトキのベッドに寝かされた主人を見守り、ほっと一安心しながら呟くと、私のほうに向き直った。
『ありがとな』
「え?」
私は間抜けな声をあげてしまった。怒られると思ったから。
『あいつに……親の声をまた聞かせてくれて』
「えっと……」
『詳しく知りたいか?』
マロロンの瞳を見て、私は首を降った。
『ううん、知らなくていい。知らないほうがいい事もあるって、教わったから』
マロロンはしばし黙ったのち、一言だけ私に聞いた。
『これからも……あいつの友達でいてくれるか?』
私は答えた。
「もちろん!ずっとずっと友達よ」
マロロンは嬉しそうに笑った気がした。
『そうか、ありがとう』
マロロンはオウマがトキのベッドに寝かされた主人を見守り、ほっと一安心しながら呟くと、私のほうに向き直った。
『ありがとな』
「え?」
私は間抜けな声をあげてしまった。怒られると思ったから。
『あいつに……親の声をまた聞かせてくれて』
「えっと……」
『詳しく知りたいか?』
マロロンの瞳を見て、私は首を降った。
『ううん、知らなくていい。知らないほうがいい事もあるって、教わったから』
マロロンはしばし黙ったのち、一言だけ私に聞いた。
『これからも……あいつの友達でいてくれるか?』
私は答えた。
「もちろん!ずっとずっと友達よ」
マロロンは嬉しそうに笑った気がした。
『そうか、ありがとう』