深夜、ビルの隙間から大通りを覗く。楽器と、それを演奏する為にだけ作られたような異形のパレードとそれに惹き付けられる人々が見える。
彼らは私が最近注目している『楽団』の怪異。
青空町の大通りでクラシックを演奏しながら人を寄せつけ、どこかに攫ってしまうオーケストラの化け物達。
音楽は私の好みだけど、見た目と所業はいただけないわね。
彼らは私が最近注目している『楽団』の怪異。
青空町の大通りでクラシックを演奏しながら人を寄せつけ、どこかに攫ってしまうオーケストラの化け物達。
音楽は私の好みだけど、見た目と所業はいただけないわね。
踏み出そうとした瞬間、
「待った!」
と女の子の声がかかる。
多分前方、ビルか茂み辺りに声の主がいる。
彼女も『楽団』を待ち構えているのかしらね。
「待った!」
と女の子の声がかかる。
多分前方、ビルか茂み辺りに声の主がいる。
彼女も『楽団』を待ち構えているのかしらね。
《おい!変身前だぞ!正体が…》
訂正。彼女達、ね。男性が小声で喋っているけれど耳がいいので少し聞こえてしまう。
人影は1人しかいないように見えるけれど。
女の子Xと男性Yは何やら一悶着したと思うと
「ダイノフォーゼ!」
という女の子の掛け声と共に音楽百鬼夜行の前に躍り出る。
訂正。彼女達、ね。男性が小声で喋っているけれど耳がいいので少し聞こえてしまう。
人影は1人しかいないように見えるけれど。
女の子Xと男性Yは何やら一悶着したと思うと
「ダイノフォーゼ!」
という女の子の掛け声と共に音楽百鬼夜行の前に躍り出る。
《暴虐不尽!ティラノカラー!》
『 日曜朝のヒーローって本当にいるのね!』
と言った容姿の斧を持った女の子が月明かりに照らされてハッキリ見える。
彼女は早速コントラバスの一団に向かって斧を振り回し、4体全てを両断する。
と言った容姿の斧を持った女の子が月明かりに照らされてハッキリ見える。
彼女は早速コントラバスの一団に向かって斧を振り回し、4体全てを両断する。
こっちも負けてられないわね!
「『ナルカミ』!」
右手と左手で作った雷の槍を投げる。
着弾して破裂、第2バイオリンの全てと第1バイオリンの2体を消滅させることが出来た。
さすがに楽団員全員の意識がこちらに向いてしまったけれど…
「『ナルカミ』!」
右手と左手で作った雷の槍を投げる。
着弾して破裂、第2バイオリンの全てと第1バイオリンの2体を消滅させることが出来た。
さすがに楽団員全員の意識がこちらに向いてしまったけれど…
「誰!?」
と女の子が振り返る。それはそうよね。
ここは1つヒーロー物っぽくかっこつけさせてもらうことにする。
「天に代わってエフィ・ヴィンド、怪異を斬る!…っていうのは…うーん…」
「こんな状況で変なことで悩んでる…!」
《おい嬢ちゃん、戻ってきな!》
と女の子が振り返る。それはそうよね。
ここは1つヒーロー物っぽくかっこつけさせてもらうことにする。
「天に代わってエフィ・ヴィンド、怪異を斬る!…っていうのは…うーん…」
「こんな状況で変なことで悩んでる…!」
《おい嬢ちゃん、戻ってきな!》
男性Yの声で我に返る。決め台詞は後でちゃんと決めておくことにしましょう。
「私はエフィ。エフィ・ヴィンドよ!この状況ではあなた達の味方だと思う」
「私は……魔龍少女!よろしくね」
女の子Xのヒーローとしての名前なんでしょうね。ヒーローは本名は隠すものだもの。
「私はエフィ。エフィ・ヴィンドよ!この状況ではあなた達の味方だと思う」
「私は……魔龍少女!よろしくね」
女の子Xのヒーローとしての名前なんでしょうね。ヒーローは本名は隠すものだもの。
私達を楽団から振り払うようにヴィオラとチェロが楽器を振る。
私は氷の槍斧で、魔龍少女さんは斧で受けることでそれをへし折ることに成功した。
「カノープス!こいつらはどんなシードゥスなの!?」
《見たこと無い連中だ。この前みたいに封印していた奴を解放したのかもな》
「シードゥスっていうのはよくわかんないけど彼等の攻撃は単純よ。楽器を振り回す物理攻撃と音符を飛ばして洗脳する攻撃。後者をあまり食らわないように気をつけて!」
私は氷の槍斧で、魔龍少女さんは斧で受けることでそれをへし折ることに成功した。
「カノープス!こいつらはどんなシードゥスなの!?」
《見たこと無い連中だ。この前みたいに封印していた奴を解放したのかもな》
「シードゥスっていうのはよくわかんないけど彼等の攻撃は単純よ。楽器を振り回す物理攻撃と音符を飛ばして洗脳する攻撃。後者をあまり食らわないように気をつけて!」
指揮者以外は鈍重で知能も耐久力も高くないため、互いを意識しながら戦うことも出来る。
指揮者はそんなものを操りながらこちらの攻撃をひょいひょい躱すだけ。
面倒なので放っておいて私は雷雨霰で、魔龍少女さんは斧や槌で楽器を破壊していく。
指揮者はそんなものを操りながらこちらの攻撃をひょいひょい躱すだけ。
面倒なので放っておいて私は雷雨霰で、魔龍少女さんは斧や槌で楽器を破壊していく。
「後はあなただけだよ!」
「演奏者も楽器も無いのに指揮者だけ生きてるなんて滑稽だわ。直ぐにみんなの所に送ってあげる」
指揮者は顔はないけれど怯えた様子が明らかに分かる。
そしてせっかく集めた観客を放ったらかして逆方向に逃げていく。
「逃がさないわよ!『春ハヤテ』!」
《縦横走破!ヴェロキカラー!》
水色に変化した魔龍少女さんはなんと『春ハヤテ』でスピードを強化した私に追いついてくる。
「なかなかやるわね。その勢いであいつにトドメをさしちゃいましょ!私が合わせるから!」
「うん!」
「演奏者も楽器も無いのに指揮者だけ生きてるなんて滑稽だわ。直ぐにみんなの所に送ってあげる」
指揮者は顔はないけれど怯えた様子が明らかに分かる。
そしてせっかく集めた観客を放ったらかして逆方向に逃げていく。
「逃がさないわよ!『春ハヤテ』!」
《縦横走破!ヴェロキカラー!》
水色に変化した魔龍少女さんはなんと『春ハヤテ』でスピードを強化した私に追いついてくる。
「なかなかやるわね。その勢いであいつにトドメをさしちゃいましょ!私が合わせるから!」
「うん!」
私の提案に快く応じた彼女は高く飛び上がる。
…正直予想していなかった。スピードを活かしてなにかする技だと思ってた。
ええいままよと氷で剣を作り更に速度を上げて突貫する。
「『トキツカゼ』!!」
「ライジングレイド!!」
…正直予想していなかった。スピードを活かしてなにかする技だと思ってた。
ええいままよと氷で剣を作り更に速度を上げて突貫する。
「『トキツカゼ』!!」
「ライジングレイド!!」
横と上から甚大なダメージを受けた指揮者は無惨にも倒れ込み爆散する。
「なんか締まらないけど一件落着ね」
「ありがとうエフィさん。その…良かったら私と一緒に来てくれないかな?」
「組織への勧誘ってこと?うーん…折角で悪いんだけどやめておくわ。こう見えて私はフリーが好きなの」
《目に見えてフリーって印象だがな》
「まぁ失礼ね!…こうしてお互い異形の存在を倒すことを生業にしてるならまた会うこともあるでしょう。その時までのお別れよ」
「ありがとうエフィさん。その…良かったら私と一緒に来てくれないかな?」
「組織への勧誘ってこと?うーん…折角で悪いんだけどやめておくわ。こう見えて私はフリーが好きなの」
《目に見えてフリーって印象だがな》
「まぁ失礼ね!…こうしてお互い異形の存在を倒すことを生業にしてるならまた会うこともあるでしょう。その時までのお別れよ」
彼女たちに背を向けて『春ハヤテ』で飛び上がる。
着地のことを全く考えていないけれど、なんとかなるでしょう。
着地のことを全く考えていないけれど、なんとかなるでしょう。
「昨日も化け物オーケストラが出たんだけど謎の2人組があっという間に片付けちゃったんだって!」
翌日。昼休みに屋上菜園に向かう途中、一際声の大きい一団に出会った。
その中の1人、桃井かおりさんは噂好きなのかどこから情報を仕入れてきて彼女の友達に話しているのをよく聞く。
翌日。昼休みに屋上菜園に向かう途中、一際声の大きい一団に出会った。
その中の1人、桃井かおりさんは噂好きなのかどこから情報を仕入れてきて彼女の友達に話しているのをよく聞く。
昨日のことがもう噂になっているのかと微笑して通り過ぎようとすると、彼女の話を聞いていた紫のポニーテールの女の子と目が合った。というより、なにかじっと見ているのを私が認識した。その姿はどこか覚えがあるけれど、明確には思い出せない
「もし…何か御用かしら」
「え…あ、いいえ!白い髪が綺麗だなって」
「?…そう。ありがとう」
「え…あ、いいえ!白い髪が綺麗だなって」
「?…そう。ありがとう」
友達同士の噂話を断ち切っては悪いので彼女にお礼を言ってそそくさと立ち去る。
「結局どこで会ったんだっけ?」という悩みも五分後には屋上菜園のお世話で上書きされた。