青空町のどこかの森の木々の間からも繋がる、不思議な世界にある図書館。
わたし、成城こまりことコマリは普通の女の子として青空町で生活しながらここで司書兼執筆家をしています。
わたし、成城こまりことコマリは普通の女の子として青空町で生活しながらここで司書兼執筆家をしています。
本日も来訪者が1人。
「ふぁ…おはよう…」
外部からではなく、内部からですが。
「ふぁ…おはよう…」
外部からではなく、内部からですが。
「おはようございますジャスミン。今回は100年寝てました」
「結構平均的な方…ね…」
当図書館の個人室を占拠してやがった(立地上まともに人が来ないので問題は無いのですが、それはそれです)この方はジャスミン。全体的に緑色の天使です。長い間起きることが出来る代わりに長い間寝てしまうんだとか…。
私が神ならルシフェルやエグリゴリの皆さんより真っ先に彼女を叩き落としています。
…ボロくそ言いましたが彼女は嫌いでは無いです。一応。
「結構平均的な方…ね…」
当図書館の個人室を占拠してやがった(立地上まともに人が来ないので問題は無いのですが、それはそれです)この方はジャスミン。全体的に緑色の天使です。長い間起きることが出来る代わりに長い間寝てしまうんだとか…。
私が神ならルシフェルやエグリゴリの皆さんより真っ先に彼女を叩き落としています。
…ボロくそ言いましたが彼女は嫌いでは無いです。一応。
閑話休題、緑色の天使は寝ぼけ眼を擦りながら私の向かいの席に腰掛けて伸びをします。
「ん〜…私が寝てる間に何か?」
「そりゃあもう。人間の生活も、芸術文化も…戦争も、大きく変わりました。1000年寝たんじゃないかって気分になりますよ」
「そう……」
『それは楽しそうですわね』と言いたげな表情を見せたと思ったら、すぐさまにいつになく物憂げに切り替わります。
「コマリ。人間から感情を取り去ったらどうなるのかしら?文化や、戦争は…」
「ん〜…私が寝てる間に何か?」
「そりゃあもう。人間の生活も、芸術文化も…戦争も、大きく変わりました。1000年寝たんじゃないかって気分になりますよ」
「そう……」
『それは楽しそうですわね』と言いたげな表情を見せたと思ったら、すぐさまにいつになく物憂げに切り替わります。
「コマリ。人間から感情を取り去ったらどうなるのかしら?文化や、戦争は…」
…………どういう意味でしょう?額面通り?
「こほん。人間に怒りという感情が亡くなれば確かに争いは無くなるかもしれません。
でも、恐れという感情を亡くした人間はすぐに死んでしまいます。これは分かるでしょう?」
「…うん」
「そして元が怒りにせよ楽しみにせよ、何もかもに決定的に『熱』を抱けなくなった場合も…心にせよ体にせよ…死に至るでしょう」
「熱…ですって?」
「何か…例えば恋や復讐、美味しい食事やゲームのランクアップなど…をしたいと思う気持ちと言った方が語弊がないでしょうか?」
わたしの言葉を反芻し、理解しようとしている様子。
彼女はこうなると長いのです。
「こほん。人間に怒りという感情が亡くなれば確かに争いは無くなるかもしれません。
でも、恐れという感情を亡くした人間はすぐに死んでしまいます。これは分かるでしょう?」
「…うん」
「そして元が怒りにせよ楽しみにせよ、何もかもに決定的に『熱』を抱けなくなった場合も…心にせよ体にせよ…死に至るでしょう」
「熱…ですって?」
「何か…例えば恋や復讐、美味しい食事やゲームのランクアップなど…をしたいと思う気持ちと言った方が語弊がないでしょうか?」
わたしの言葉を反芻し、理解しようとしている様子。
彼女はこうなると長いのです。
「私、決めましたわ!」
数分後、両手をテーブルに叩きつけて立ち上がる笑顔のジャスミン。
…短絡的な行動に走る時の彼女の癖です。
数分後、両手をテーブルに叩きつけて立ち上がる笑顔のジャスミン。
…短絡的な行動に走る時の彼女の癖です。
「今日から皆さんに新しいお友達が増えますー!」
「ごきげんうるわしゅう。こまりの親戚の成城まつりです。よろしくお願いしますね!」
ほーら、ね。うさ耳リボンと緑のワンピースの女児小学生。
彼女は「熱」についてもっと知りたい(これは半分わたしの失態です)とかで青空小に潜り込むことになりました。
根回しとか申請とかめちゃくちゃ大変だったんですから。
やはりと言うべきか、クラスのおしゃべりに猛烈な質問攻めを受けています。わたしも。
ジャスミン、もといまつりの方は桃井さんと話しながら表情をコロコロ変えているのが見えました。
すっかり馴染んだようで何より。
「ごきげんうるわしゅう。こまりの親戚の成城まつりです。よろしくお願いしますね!」
ほーら、ね。うさ耳リボンと緑のワンピースの女児小学生。
彼女は「熱」についてもっと知りたい(これは半分わたしの失態です)とかで青空小に潜り込むことになりました。
根回しとか申請とかめちゃくちゃ大変だったんですから。
やはりと言うべきか、クラスのおしゃべりに猛烈な質問攻めを受けています。わたしも。
ジャスミン、もといまつりの方は桃井さんと話しながら表情をコロコロ変えているのが見えました。
すっかり馴染んだようで何より。
「100年分話した気がしますわね!これが『熱』って奴なのかしら!」
放課後、別方向に帰る友達に手を振ってリボンを揺らしながら私に駆け寄ってくるまつり。
放課後、別方向に帰る友達に手を振ってリボンを揺らしながら私に駆け寄ってくるまつり。
「良かったですね…そうそう。人間の生活をするなら成城家のお手伝いとわたしの図書館の司書もしてもらいますから」
「ええ〜そんなぁ!第一に図書館の司書は人間としての仕事ではないですわよね!?」
四の五のうるさいまつりに対しては完全スルーを決め込みます。
「ええ〜そんなぁ!第一に図書館の司書は人間としての仕事ではないですわよね!?」
四の五のうるさいまつりに対しては完全スルーを決め込みます。
「そういえば。どうして『人間の感情が無くなったら』なんて聞いてきたんですか?」
「言えません………」
「そうですか」
言えない、という彼女の視線は余りに沈んでいました。せっかくのうさ耳リボンが大きく垂れ下がって見えます。
「言えません………」
「そうですか」
言えない、という彼女の視線は余りに沈んでいました。せっかくのうさ耳リボンが大きく垂れ下がって見えます。
「でも、私決めたんですの!今は何があってもこまりと、今生きている人間の味方をするって!」
「何を言っているか分かりませんよ。けれど…そうですね」
わたしはまつりの小さくて少しヒヤリとした手を取って続けます。
「わたしも何があってもあなたの味方をします。あなたは一人じゃないですよ」
「………ちょっとくさいですわね」
「なんですか!人の親切を小バカにして!」
「…………」
まつりは聞こえるか聞こえないかくらいの小声で何かを言うと、家の方へ駆け出していきました。
内容は分かっています。
全く、素直じゃないんですから。
「待ちなさーい!道路を走ると危ないですよ!」
「何を言っているか分かりませんよ。けれど…そうですね」
わたしはまつりの小さくて少しヒヤリとした手を取って続けます。
「わたしも何があってもあなたの味方をします。あなたは一人じゃないですよ」
「………ちょっとくさいですわね」
「なんですか!人の親切を小バカにして!」
「…………」
まつりは聞こえるか聞こえないかくらいの小声で何かを言うと、家の方へ駆け出していきました。
内容は分かっています。
全く、素直じゃないんですから。
「待ちなさーい!道路を走ると危ないですよ!」