『螺旋階段』
更新日:2020/07/24 Fri 12:43:30
目次
物心ついたばかりの時、自分を見つめる眼はどれも懐疑を宿していた。
自分の父の部下が「あの子は不義の子供だ」「女狐が組長をたぶらかしたのだ」「あんなの置いておくなんて抗争の種だ、いなくなればいい」「いっそ殺してしまおうか?」などと言い合いをしているところを何度も目撃した。
他の子供達だって誰も自分に近寄ろうとしなかった。髪もボサボサで伏し目がちなやくざの子供なんて、誰も好きになら無いだろう。
敵意ばかりの中で自分を守る術を学んだ。みどりを擁護し慕ってくれる組員が何人かいたのだ。
彼等がいなかったら、自分は生きていなかった。
みどりは真剣に思う時がある。
そんな中で母が死んだ。
一番心の許せた相手だった。
父親は何も助けてくれなかった。
もはや、みどりが向ける眼には人間を映していなかった。
母を殺されたのだと思った。同じ組の者によって。
比護組からも悍ましいもの。名状しがたきもの。そういうものとして扱われた。
母の死を経験し、みどりは生き方を変えた。僅かな悪意も漏らさない。それは人間として異常な生き方であったが、全て母の復讐の為だった。
そんな時、美嶺とであった。
美嶺もこの世界を嫌っていた。
自分を蝕む病魔が憎い。母を殺した者が憎い。
二人はお互いの話をしていくうちに、すっかり親友のような間柄になった。
二人はお互いに理解者なのだ。
美嶺と一緒にいる事で、他の子も自分に話しかけるようになった。
みどりが自分を取り戻して行ったのは、このクラスメイトとの絆があったからだ。
厄介者扱いする者達が憎い。
何もしなくても幸せな奴らが憎い。
この世界が憎い。
クラスメイトと親好を深めるうちに、その気持ちは少しずつ消えていった。
そんな中、美嶺が病気で倒れた。
母を奪われた時よりも深い絶望に叩き落とされた。
喪失感に襲われたみどりだったが、ある日妖怪に連れ去られ、このような姿にされてしまった。
今までの事を全部忘れ、メローナとして生きていた。
時々妖怪が子供を連れてきて、『妹』を作り出していた。
メローナは純粋に喜び、新たに生まれた『妹』を歓迎した。
美嶺が妖怪に連れられてくるまでは。
顔色が悪く、意識の無いその顔を見て、みどりは今までの全てを思い出した。
「その子をどうするつもりなの……!」
メローナは震えながら妖怪に問い詰めた。
「危ないんだ!」
妖怪の声は焦っていた。その瞳には美嶺を失う恐怖が浮かんでいる。
メローナは何も出来なかった。
こうしてピオーネ、そしてロリポップ七姉妹が誕生したのである。
新しく出来た妹達と暮らす今の生活はとても楽しい。
このままメローナとして生きていこうと心に決めているのだ。
「ああ、もう。どうして放っておいてくれないの」
迷惑な侵入者が後を追ってくるのを察知しながら、螺旋階段を登っていった。
自分の父の部下が「あの子は不義の子供だ」「女狐が組長をたぶらかしたのだ」「あんなの置いておくなんて抗争の種だ、いなくなればいい」「いっそ殺してしまおうか?」などと言い合いをしているところを何度も目撃した。
他の子供達だって誰も自分に近寄ろうとしなかった。髪もボサボサで伏し目がちなやくざの子供なんて、誰も好きになら無いだろう。
敵意ばかりの中で自分を守る術を学んだ。みどりを擁護し慕ってくれる組員が何人かいたのだ。
彼等がいなかったら、自分は生きていなかった。
みどりは真剣に思う時がある。
そんな中で母が死んだ。
一番心の許せた相手だった。
父親は何も助けてくれなかった。
もはや、みどりが向ける眼には人間を映していなかった。
母を殺されたのだと思った。同じ組の者によって。
比護組からも悍ましいもの。名状しがたきもの。そういうものとして扱われた。
母の死を経験し、みどりは生き方を変えた。僅かな悪意も漏らさない。それは人間として異常な生き方であったが、全て母の復讐の為だった。
そんな時、美嶺とであった。
美嶺もこの世界を嫌っていた。
自分を蝕む病魔が憎い。母を殺した者が憎い。
二人はお互いの話をしていくうちに、すっかり親友のような間柄になった。
二人はお互いに理解者なのだ。
美嶺と一緒にいる事で、他の子も自分に話しかけるようになった。
みどりが自分を取り戻して行ったのは、このクラスメイトとの絆があったからだ。
厄介者扱いする者達が憎い。
何もしなくても幸せな奴らが憎い。
この世界が憎い。
クラスメイトと親好を深めるうちに、その気持ちは少しずつ消えていった。
そんな中、美嶺が病気で倒れた。
母を奪われた時よりも深い絶望に叩き落とされた。
喪失感に襲われたみどりだったが、ある日妖怪に連れ去られ、このような姿にされてしまった。
今までの事を全部忘れ、メローナとして生きていた。
時々妖怪が子供を連れてきて、『妹』を作り出していた。
メローナは純粋に喜び、新たに生まれた『妹』を歓迎した。
美嶺が妖怪に連れられてくるまでは。
顔色が悪く、意識の無いその顔を見て、みどりは今までの全てを思い出した。
「その子をどうするつもりなの……!」
メローナは震えながら妖怪に問い詰めた。
「危ないんだ!」
妖怪の声は焦っていた。その瞳には美嶺を失う恐怖が浮かんでいる。
メローナは何も出来なかった。
こうしてピオーネ、そしてロリポップ七姉妹が誕生したのである。
新しく出来た妹達と暮らす今の生活はとても楽しい。
このままメローナとして生きていこうと心に決めているのだ。
「ああ、もう。どうして放っておいてくれないの」
迷惑な侵入者が後を追ってくるのを察知しながら、螺旋階段を登っていった。